蟲の楼閣
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展開が読めない謎が謎をよぶ素晴らしい構成で一気に読みきりました | ||||
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1976年9月祥伝社から出版された本書は1975年10月から1976年8月にかけて「週刊ポスト」に長期連載された本格的な社会派の推理小説です。本書の特色はアズキゾウムシという害虫の生態が事件の解決につながるところが奇異なところです。しかし面白いのは、事件の本質が、政治家や国家の役人が起こした巨悪な事件で、それを如実に記述しているところにあります。蟲と言う字は政治家や役人を揶揄しています。 あずきを食害するアズキゾウムシという害虫は、28℃の定温で飼育すると一か月で成虫になるという生態を持っています。この虫が人から人へ移動することによって、思わぬ展開で犯人が確定し事件が解決します。本書の初めにこの害虫の生態を詳しく解説していて、この虫が事件の解決に繋がりそうだ、とは感じてしまいます。 しかし、そんな謎解きよりも興味深いのは、事件の根幹をなすものに政治家や役人が私利私欲のために企んだ国家犯罪が絡んでいるところです。森村氏は、その巨悪がいかにして起こるかを詳細に解説しています。また、その巨悪を追及し、暴露していくところに最も読み応えがあります。 東京の菱井産業開発という財閥系の名をした会社が、東北地方の二束三文の土地を買い漁っていました。菱井産業の実態は、大物政治家で大臣経験のある小田切篤成の二号で和村園枝が実権を握っていました。この時期は東北高速道の建設の真最中でしたが、インターチェンジの場所をめぐり、農民たちは大切な農地を奪われることに、多くの人たちが反対し大規模な反対運動が起こっていました。 小田切は、とある省の官僚に、その反対運動を理由にインターチェンジの場所を変更するよう指示します。その変更の場所に選定されたのは全て菱井産業が買い占めていた土地なのです。二束三文で買い占めた土地は高値がつきます、莫大な利益が菱井産業にはいります。それは、当然小田切の表に出ない自由な金となるのでした。 インターチェンジの変更に関わっていたのは建設省の官僚たちでした。役人たちは、有力な政治家のヒキで自分たちも権力の頂点である政治家へ跳躍することを企てたり、公社公団だったり一般企業への横滑り天下りを狙っているのです。 菱井産業に入社した三流大学出の若い二人は、財閥系の企業の名と似た求人に応募して菱井産業に入社します。東北の二束三文の土地を買収するのが彼らの仕事でした。しかし広大な土地を売り渋っていた老人が突然死してしまいます。もともと社名からして胡散臭さを感じていたところに、会社の実権を握っているのは政治家と繋がりのある和村園枝と知ることになります。そこで二人は老人の死と菱井産業の実態を独自に調べ始めました。しかし、二人の動きを感じた影の悪人によって儚い運命になってしまいます。 1969年「高層の死角」で江戸川乱歩賞を受賞した以前から、森村氏はサラリーマン時代の経験を生かして、若者たちが蟷螂之斧となり巨大な権力に立ち向っていく姿を、多く書いてきました。本作品も森村氏が権力者たちの狡猾な悪事を見事に暴いています。今日、読んでみると政治家の悪事は当たり前のように起こっていて、本当に政治家や役人たちはこういう事をしているのだろうと思えて素直に読めてしまいました。 | ||||
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