凶学の巣

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長編
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あらすじ

2011年08月23日 凶学の巣 (中公文庫)

校内暴力で荒廃し、不良生徒に牛耳られる都内S区の公立中学校。ついに、女生徒が公園で殺害される事件が発生。交際相手で不良グループのリーダー・牛山に嫌疑がかかる。しかし、牛山には犯行時刻、学年主任・樹木の妻をレイプしていたというアリバイがあった。「官僚は落日を見て」併録。(「BOOK」データベースより)

評判

凶学の巣の評価:

0.00/10点 レビュー 0件。 B ランク

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凶学の巣の総合評価:

8.00/10点 レビュー 6件。

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Amazonレビュー

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No.6
(5pt)

「凶学の巣」「官僚は落日を見よ」の2編を収録しています!

「凶学の巣」
東京下町の飲食街や遊戯場やラブホテルなどを多く抱えるS区の公立中学校で起こった、不良生徒による校内暴力と、不良女子中学生が殺害された事件を扱った作品。元々、S区は、地域の環境が悪く、非行少年の発生率が高い地区だった。非行化の原因としては、社会的要因と心理的要因が考えられる。一般的なものとしては、家庭環境、遺伝的要素、学校不適応、地域環境の四つが挙げられる。S区には、大規模な繁華街があり、ブルーカラー層の住人も多く、それらの要素を、すべて含んでいた。日本は、学歴偏重主義である。義務教育を終え、高等学校、大学校と勉強し、最も成績が良かった者がエリートとなる。それだから、中学校教育として、重要視されるのが、進学率である。有名大学校への進学率が高い高等学校への合格者数が、その中学校の評価となる。成績優秀な生徒を、より高い所へ導くエスカレーターシステムである。生徒を評価する基準は、成績とクラブ活動しか無い。成績が基準に満たない生徒には、ダメレッテルを貼り付けた。それでも、クラブ活動で活躍できる生徒は、まだ、救いがある。クラブ活動で、地域や全国で上位の記録が出せるようであれば、その特技に精進すれば良い。だが、どちらにも属せない生徒は、基準外として、切り捨てられてしまう。勉強には、付いて行けない。スポーツもダメだとなれば、毎日、学校へ来ても、存在すら無視された。そんな彼らの切羽詰まった叫びが、学校内で暴力という行動になって表れるのである。だが、まだ、そういう反乱行為に、自己を生かすための代償を、見つけた生徒はまだ良い。その代償行為を見つけられない生徒は、もはや、死んだのも同然であった。一応、推理小説という形式をとっているが、学歴偏重主義社会への疑問と、その犠牲者となった生徒たちが、細胞の隅々まで充満した、鬱憤を発散させた物語です。

「官僚は落日を見て」
役人の世界には、公然たる身分差別が存在する。それは、キャリア組とノンキャリア組と呼ばれる差別である。前者は、国家公務員の上級試験に受かった者たちだ。多くは、東京大学を筆頭に、名立たる有名大学校の卒業生が、この試験に通過する。キャリア組は、入省して、三年もすれば、課長職を得て、次々とステップアップしていく。ところが、ノンキャリア組は、一生かかっても、その課長職にすら付くことは出来ない。最も良くて、課長の下職の課長補佐である。ノンキャリア組の中里は、運輸省自動車局車両部自動車保安課のスタッフである。中里は、それほど、自分は、悪いポストに就いているとは思っていなかった。地方の陸運事務所に数年いた経験があり、能力を認められて本省へ抜擢されたからである。役所は、利益を上げる必要もなく、どんなに不景気になっても倒産しない。絶対に沈まない親船の上で平穏無事な生活が保障されていたからだ。しかし、出世は望めない、いや、望んではいけないという、前提の上で、その身分が保証されていた。その日は、課長が出張で留守だった。何を思ったのか、今年、上級試験に合格して、入省してきたばかりの、佐木山は課長の椅子に座った。そして、体を動かし、椅子をくるりくるりと回転させた。中里よりも十五才も年下の若者である。彼は、三年もすれば課長職に就くであろう。だが、佐木山は、その時のための練習だと言い放った。それも、ノンキャリア組が多数見ている前であった。さすがに、中里も黙っていられなかった。直ぐに椅子から降りるよう大きな声で注意すると、不承不承椅子から降り、トイレへでも行ってしまった。この事は、ノンキャリア組の間で話が広まった。普段、ノンキャリアとして鬱屈していた者たちから、絶賛され、中里は、一時のヒーローになってしまった。ところが、数日後、その若手キャリアが団地から飛び降りて、自殺してしまったのだ。しかし、現場を詳しく捜査したところ、何者かによって、突き落とされた疑いがでてきた。さらに、中里と佐木山の間にトラブルがあったことを聞いた警察は、中里が、若手キャリアにコンプレックスを抱いたための犯行ではないかと疑った。こうして、今までのヒーローだった中里に対する省内の目が百八十度逆転してしまった。そして、中里は、自分の無実を証明するため、素人探偵となり、事件の真実を追求することになる。この事件が契機となり、中里は、安全安泰の庇護の下から、自由業として飛び立って行くのである。大きな傘から飛び出した清々しい中里の姿がラストにありました。
(付)本書は1981年9月に新潮社から初出版されたものです。1984年には同社で文庫化されています。その後、1995年廣済堂文庫、2000年ケイブンシャ文庫から再出版され、2011年には、中公文庫がkindle化しました。
凶学の巣 (1981年) Amazon書評・レビュー: 凶学の巣 (1981年)より
B000J7VB02
No.5
(5pt)

「凶学の巣」「官僚は落日を見よ」の2編を収録しています!

「凶学の巣」
東京下町の飲食街や遊戯場やラブホテルなどを多く抱えるS区の公立中学校で起こった、不良生徒による校内暴力と、不良女子中学生が殺害された事件を扱った作品。元々、S区は、地域の環境が悪く、非行少年の発生率が高い地区だった。非行化の原因としては、社会的要因と心理的要因が考えられる。一般的なものとしては、家庭環境、遺伝的要素、学校不適応、地域環境の四つが挙げられる。S区には、大規模な繁華街があり、ブルーカラー層の住人も多く、それらの要素を、すべて含んでいた。日本は、学歴偏重主義である。義務教育を終え、高等学校、大学校と勉強し、最も成績が良かった者がエリートとなる。それだから、中学校教育として、重要視されるのが、進学率である。有名大学校への進学率が高い高等学校への合格者数が、その中学校の評価となる。成績優秀な生徒を、より高い所へ導くエスカレーターシステムである。生徒を評価する基準は、成績とクラブ活動しか無い。成績が基準に満たない生徒には、ダメレッテルを貼り付けた。それでも、クラブ活動で活躍できる生徒は、まだ、救いがある。クラブ活動で、地域や全国で上位の記録が出せるようであれば、その特技に精進すれば良い。だが、どちらにも属せない生徒は、基準外として、切り捨てられてしまう。勉強には、付いて行けない。スポーツもダメだとなれば、毎日、学校へ来ても、存在すら無視された。そんな彼らの切羽詰まった叫びが、学校内で暴力という行動になって表れるのである。だが、まだ、そういう反乱行為に、自己を生かすための代償を、見つけた生徒はまだ良い。その代償行為を見つけられない生徒は、もはや、死んだのも同然であった。一応、推理小説という形式をとっているが、学歴偏重主義社会への疑問と、その犠牲者となった生徒たちが、細胞の隅々まで充満した、鬱憤を発散させた物語です。

「官僚は落日を見て」
役人の世界には、公然たる身分差別が存在する。それは、キャリア組とノンキャリア組と呼ばれる差別である。前者は、国家公務員の上級試験に受かった者たちだ。多くは、東京大学を筆頭に、名立たる有名大学校の卒業生が、この試験に通過する。キャリア組は、入省して、三年もすれば、課長職を得て、次々とステップアップしていく。ところが、ノンキャリア組は、一生かかっても、その課長職にすら付くことは出来ない。最も良くて、課長の下職の課長補佐である。ノンキャリア組の中里は、運輸省自動車局車両部自動車保安課のスタッフである。中里は、それほど、自分は、悪いポストに就いているとは思っていなかった。地方の陸運事務所に数年いた経験があり、能力を認められて本省へ抜擢されたからである。役所は、利益を上げる必要もなく、どんなに不景気になっても倒産しない。絶対に沈まない親船の上で平穏無事な生活が保障されていたからだ。しかし、出世は望めない、いや、望んではいけないという、前提の上で、その身分が保証されていた。その日は、課長が出張で留守だった。何を思ったのか、今年、上級試験に合格して、入省してきたばかりの、佐木山は課長の椅子に座った。そして、体を動かし、椅子をくるりくるりと回転させた。中里よりも十五才も年下の若者である。彼は、三年もすれば課長職に就くであろう。だが、佐木山は、その時のための練習だと言い放った。それも、ノンキャリア組が多数見ている前であった。さすがに、中里も黙っていられなかった。直ぐに椅子から降りるよう大きな声で注意すると、不承不承椅子から降り、トイレへでも行ってしまった。この事は、ノンキャリア組の間で話が広まった。普段、ノンキャリアとして鬱屈していた者たちから、絶賛され、中里は、一時のヒーローになってしまった。ところが、数日後、その若手キャリアが団地から飛び降りて、自殺してしまったのだ。しかし、現場を詳しく捜査したところ、何者かによって、突き落とされた疑いがでてきた。さらに、中里と佐木山の間にトラブルがあったことを聞いた警察は、中里が、若手キャリアにコンプレックスを抱いたための犯行ではないかと疑った。こうして、今までのヒーローだった中里に対する省内の目が百八十度逆転してしまった。そして、中里は、自分の無実を証明するため、素人探偵となり、事件の真実を追求することになる。この事件が契機となり、中里は、安全安泰の庇護の下から、自由業として飛び立って行くのである。大きな傘から飛び出した清々しい中里の姿がラストにありました。
(付)本書は1981年9月に新潮社から初出版されたものです。1984年には同社で文庫化されています。その後、1995年廣済堂文庫、2000年ケイブンシャ文庫から再出版され、2011年には、中公文庫がkindle化しました。
凶学の巣 (中公文庫) Amazon書評・レビュー: 凶学の巣 (中公文庫)より
4122055210
No.4
(5pt)

「凶学の巣」「官僚は落日を見よ」の2編を収録しています!

「凶学の巣」
東京下町の飲食街や遊戯場やラブホテルなどを多く抱えるS区の公立中学校で起こった、不良生徒による校内暴力と、不良女子中学生が殺害された事件を扱った作品。元々、S区は、地域の環境が悪く、非行少年の発生率が高い地区だった。非行化の原因としては、社会的要因と心理的要因が考えられる。一般的なものとしては、家庭環境、遺伝的要素、学校不適応、地域環境の四つが挙げられる。S区には、大規模な繁華街があり、ブルーカラー層の住人も多く、それらの要素を、すべて含んでいた。日本は、学歴偏重主義である。義務教育を終え、高等学校、大学校と勉強し、最も成績が良かった者がエリートとなる。それだから、中学校教育として、重要視されるのが、進学率である。有名大学校への進学率が高い高等学校への合格者数が、その中学校の評価となる。成績優秀な生徒を、より高い所へ導くエスカレーターシステムである。生徒を評価する基準は、成績とクラブ活動しか無い。成績が基準に満たない生徒には、ダメレッテルを貼り付けた。それでも、クラブ活動で活躍できる生徒は、まだ、救いがある。クラブ活動で、地域や全国で上位の記録が出せるようであれば、その特技に精進すれば良い。だが、どちらにも属せない生徒は、基準外として、切り捨てられてしまう。勉強には、付いて行けない。スポーツもダメだとなれば、毎日、学校へ来ても、存在すら無視された。そんな彼らの切羽詰まった叫びが、学校内で暴力という行動になって表れるのである。だが、まだ、そういう反乱行為に、自己を生かすための代償を、見つけた生徒はまだ良い。その代償行為を見つけられない生徒は、もはや、死んだのも同然であった。一応、推理小説という形式をとっているが、学歴偏重主義社会への疑問と、その犠牲者となった生徒たちが、細胞の隅々まで充満した、鬱憤を発散させた物語です。

「官僚は落日を見て」
役人の世界には、公然たる身分差別が存在する。それは、キャリア組とノンキャリア組と呼ばれる差別である。前者は、国家公務員の上級試験に受かった者たちだ。多くは、東京大学を筆頭に、名立たる有名大学校の卒業生が、この試験に通過する。キャリア組は、入省して、三年もすれば、課長職を得て、次々とステップアップしていく。ところが、ノンキャリア組は、一生かかっても、その課長職にすら付くことは出来ない。最も良くて、課長の下職の課長補佐である。ノンキャリア組の中里は、運輸省自動車局車両部自動車保安課のスタッフである。中里は、それほど、自分は、悪いポストに就いているとは思っていなかった。地方の陸運事務所に数年いた経験があり、能力を認められて本省へ抜擢されたからである。役所は、利益を上げる必要もなく、どんなに不景気になっても倒産しない。絶対に沈まない親船の上で平穏無事な生活が保障されていたからだ。しかし、出世は望めない、いや、望んではいけないという、前提の上で、その身分が保証されていた。その日は、課長が出張で留守だった。何を思ったのか、今年、上級試験に合格して、入省してきたばかりの、佐木山は課長の椅子に座った。そして、体を動かし、椅子をくるりくるりと回転させた。中里よりも十五才も年下の若者である。彼は、三年もすれば課長職に就くであろう。だが、佐木山は、その時のための練習だと言い放った。それも、ノンキャリア組が多数見ている前であった。さすがに、中里も黙っていられなかった。直ぐに椅子から降りるよう大きな声で注意すると、不承不承椅子から降り、トイレへでも行ってしまった。この事は、ノンキャリア組の間で話が広まった。普段、ノンキャリアとして鬱屈していた者たちから、絶賛され、中里は、一時のヒーローになってしまった。ところが、数日後、その若手キャリアが団地から飛び降りて、自殺してしまったのだ。しかし、現場を詳しく捜査したところ、何者かによって、突き落とされた疑いがでてきた。さらに、中里と佐木山の間にトラブルがあったことを聞いた警察は、中里が、若手キャリアにコンプレックスを抱いたための犯行ではないかと疑った。こうして、今までのヒーローだった中里に対する省内の目が百八十度逆転してしまった。そして、中里は、自分の無実を証明するため、素人探偵となり、事件の真実を追求することになる。この事件が契機となり、中里は、安全安泰の庇護の下から、自由業として飛び立って行くのである。大きな傘から飛び出した清々しい中里の姿がラストにありました。
(付)本書は1981年9月に新潮社から初出版されたものです。1984年には同社で文庫化されています。その後、1995年廣済堂文庫、2000年ケイブンシャ文庫から再出版され、2011年には、中公文庫がkindle化しました。
凶学の巣 (ケイブンシャ文庫) Amazon書評・レビュー: 凶学の巣 (ケイブンシャ文庫)より
4766934156
No.3
(5pt)

「凶学の巣」「官僚は落日を見よ」の2編を収録しています!

「凶学の巣」
東京下町の飲食街や遊戯場やラブホテルなどを多く抱えるS区の公立中学校で起こった、不良生徒による校内暴力と、不良女子中学生が殺害された事件を扱った作品。元々、S区は、地域の環境が悪く、非行少年の発生率が高い地区だった。非行化の原因としては、社会的要因と心理的要因が考えられる。一般的なものとしては、家庭環境、遺伝的要素、学校不適応、地域環境の四つが挙げられる。S区には、大規模な繁華街があり、ブルーカラー層の住人も多く、それらの要素を、すべて含んでいた。日本は、学歴偏重主義である。義務教育を終え、高等学校、大学校と勉強し、最も成績が良かった者がエリートとなる。それだから、中学校教育として、重要視されるのが、進学率である。有名大学校への進学率が高い高等学校への合格者数が、その中学校の評価となる。成績優秀な生徒を、より高い所へ導くエスカレーターシステムである。生徒を評価する基準は、成績とクラブ活動しか無い。成績が基準に満たない生徒には、ダメレッテルを貼り付けた。それでも、クラブ活動で活躍できる生徒は、まだ、救いがある。クラブ活動で、地域や全国で上位の記録が出せるようであれば、その特技に精進すれば良い。だが、どちらにも属せない生徒は、基準外として、切り捨てられてしまう。勉強には、付いて行けない。スポーツもダメだとなれば、毎日、学校へ来ても、存在すら無視された。そんな彼らの切羽詰まった叫びが、学校内で暴力という行動になって表れるのである。だが、まだ、そういう反乱行為に、自己を生かすための代償を、見つけた生徒はまだ良い。その代償行為を見つけられない生徒は、もはや、死んだのも同然であった。一応、推理小説という形式をとっているが、学歴偏重主義社会への疑問と、その犠牲者となった生徒たちが、細胞の隅々まで充満した、鬱憤を発散させた物語です。

「官僚は落日を見て」
役人の世界には、公然たる身分差別が存在する。それは、キャリア組とノンキャリア組と呼ばれる差別である。前者は、国家公務員の上級試験に受かった者たちだ。多くは、東京大学を筆頭に、名立たる有名大学校の卒業生が、この試験に通過する。キャリア組は、入省して、三年もすれば、課長職を得て、次々とステップアップしていく。ところが、ノンキャリア組は、一生かかっても、その課長職にすら付くことは出来ない。最も良くて、課長の下職の課長補佐である。ノンキャリア組の中里は、運輸省自動車局車両部自動車保安課のスタッフである。中里は、それほど、自分は、悪いポストに就いているとは思っていなかった。地方の陸運事務所に数年いた経験があり、能力を認められて本省へ抜擢されたからである。役所は、利益を上げる必要もなく、どんなに不景気になっても倒産しない。絶対に沈まない親船の上で平穏無事な生活が保障されていたからだ。しかし、出世は望めない、いや、望んではいけないという、前提の上で、その身分が保証されていた。その日は、課長が出張で留守だった。何を思ったのか、今年、上級試験に合格して、入省してきたばかりの、佐木山は課長の椅子に座った。そして、体を動かし、椅子をくるりくるりと回転させた。中里よりも十五才も年下の若者である。彼は、三年もすれば課長職に就くであろう。だが、佐木山は、その時のための練習だと言い放った。それも、ノンキャリア組が多数見ている前であった。さすがに、中里も黙っていられなかった。直ぐに椅子から降りるよう大きな声で注意すると、不承不承椅子から降り、トイレへでも行ってしまった。この事は、ノンキャリア組の間で話が広まった。普段、ノンキャリアとして鬱屈していた者たちから、絶賛され、中里は、一時のヒーローになってしまった。ところが、数日後、その若手キャリアが団地から飛び降りて、自殺してしまったのだ。しかし、現場を詳しく捜査したところ、何者かによって、突き落とされた疑いがでてきた。さらに、中里と佐木山の間にトラブルがあったことを聞いた警察は、中里が、若手キャリアにコンプレックスを抱いたための犯行ではないかと疑った。こうして、今までのヒーローだった中里に対する省内の目が百八十度逆転してしまった。そして、中里は、自分の無実を証明するため、素人探偵となり、事件の真実を追求することになる。この事件が契機となり、中里は、安全安泰の庇護の下から、自由業として飛び立って行くのである。大きな傘から飛び出した清々しい中里の姿がラストにありました。
(付)本書は1981年9月に新潮社から初出版されたものです。1984年には同社で文庫化されています。その後、1995年廣済堂文庫、2000年ケイブンシャ文庫から再出版され、2011年には、中公文庫がkindle化しました。
凶学の巣 (広済堂文庫) Amazon書評・レビュー: 凶学の巣 (広済堂文庫)より
4331604969
No.2
(5pt)

「凶学の巣」「官僚は落日を見よ」の2編を収録しています!

「凶学の巣」
東京下町の飲食街や遊戯場やラブホテルなどを多く抱えるS区の公立中学校で起こった、不良生徒による校内暴力と、不良女子中学生が殺害された事件を扱った作品。元々、S区は、地域の環境が悪く、非行少年の発生率が高い地区だった。非行化の原因としては、社会的要因と心理的要因が考えられる。一般的なものとしては、家庭環境、遺伝的要素、学校不適応、地域環境の四つが挙げられる。S区には、大規模な繁華街があり、ブルーカラー層の住人も多く、それらの要素を、すべて含んでいた。日本は、学歴偏重主義である。義務教育を終え、高等学校、大学校と勉強し、最も成績が良かった者がエリートとなる。それだから、中学校教育として、重要視されるのが、進学率である。有名大学校への進学率が高い高等学校への合格者数が、その中学校の評価となる。成績優秀な生徒を、より高い所へ導くエスカレーターシステムである。生徒を評価する基準は、成績とクラブ活動しか無い。成績が基準に満たない生徒には、ダメレッテルを貼り付けた。それでも、クラブ活動で活躍できる生徒は、まだ、救いがある。クラブ活動で、地域や全国で上位の記録が出せるようであれば、その特技に精進すれば良い。だが、どちらにも属せない生徒は、基準外として、切り捨てられてしまう。勉強には、付いて行けない。スポーツもダメだとなれば、毎日、学校へ来ても、存在すら無視された。そんな彼らの切羽詰まった叫びが、学校内で暴力という行動になって表れるのである。だが、まだ、そういう反乱行為に、自己を生かすための代償を、見つけた生徒はまだ良い。その代償行為を見つけられない生徒は、もはや、死んだのも同然であった。一応、推理小説という形式をとっているが、学歴偏重主義社会への疑問と、その犠牲者となった生徒たちが、細胞の隅々まで充満した、鬱憤を発散させた物語です。

「官僚は落日を見て」
役人の世界には、公然たる身分差別が存在する。それは、キャリア組とノンキャリア組と呼ばれる差別である。前者は、国家公務員の上級試験に受かった者たちだ。多くは、東京大学を筆頭に、名立たる有名大学校の卒業生が、この試験に通過する。キャリア組は、入省して、三年もすれば、課長職を得て、次々とステップアップしていく。ところが、ノンキャリア組は、一生かかっても、その課長職にすら付くことは出来ない。最も良くて、課長の下職の課長補佐である。ノンキャリア組の中里は、運輸省自動車局車両部自動車保安課のスタッフである。中里は、それほど、自分は、悪いポストに就いているとは思っていなかった。地方の陸運事務所に数年いた経験があり、能力を認められて本省へ抜擢されたからである。役所は、利益を上げる必要もなく、どんなに不景気になっても倒産しない。絶対に沈まない親船の上で平穏無事な生活が保障されていたからだ。しかし、出世は望めない、いや、望んではいけないという、前提の上で、その身分が保証されていた。その日は、課長が出張で留守だった。何を思ったのか、今年、上級試験に合格して、入省してきたばかりの、佐木山は課長の椅子に座った。そして、体を動かし、椅子をくるりくるりと回転させた。中里よりも十五才も年下の若者である。彼は、三年もすれば課長職に就くであろう。だが、佐木山は、その時のための練習だと言い放った。それも、ノンキャリア組が多数見ている前であった。さすがに、中里も黙っていられなかった。直ぐに椅子から降りるよう大きな声で注意すると、不承不承椅子から降り、トイレへでも行ってしまった。この事は、ノンキャリア組の間で話が広まった。普段、ノンキャリアとして鬱屈していた者たちから、絶賛され、中里は、一時のヒーローになってしまった。ところが、数日後、その若手キャリアが団地から飛び降りて、自殺してしまったのだ。しかし、現場を詳しく捜査したところ、何者かによって、突き落とされた疑いがでてきた。さらに、中里と佐木山の間にトラブルがあったことを聞いた警察は、中里が、若手キャリアにコンプレックスを抱いたための犯行ではないかと疑った。こうして、今までのヒーローだった中里に対する省内の目が百八十度逆転してしまった。そして、中里は、自分の無実を証明するため、素人探偵となり、事件の真実を追求することになる。この事件が契機となり、中里は、安全安泰の庇護の下から、自由業として飛び立って行くのである。大きな傘から飛び出した清々しい中里の姿がラストにありました。
(付)本書は1981年9月に新潮社から初出版されたものです。1984年には同社で文庫化されています。その後、1995年廣済堂文庫、2000年ケイブンシャ文庫から再出版され、2011年には、中公文庫がkindle化しました。
凶学の巣 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 凶学の巣 (新潮文庫)より
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