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梁山泊 さんのレビュー一覧
梁山泊さんのページへレビュー数48件
全48件 41~48 3/3ページ
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【ネタバレかも!?】
(1件の連絡あり)[?]
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完璧。
まず「全ての謎が、実はたった一つのある事実に気付きさえすれば、綺麗に解けてしまう」という構成が秀逸です。 探偵役が、その「事実」を明かす前に、ご親切にも全ての謎が羅列されます。 その数なんと37個。 「見落とすなよ」と言わんばかりの作者の自信。 読者を挑発しているようにすら感じたのですが、兎に角、怒涛の勢いで解明されていく様子は爽快です。 その「事実」を隠蔽するため、冒頭からある人物のある性癖の記述で強烈にミスリードさせておいて、更に怪奇描写を絡めて読み手の視点を逸らせたりと、その技巧も素晴らしい。 また、全ての謎が解明されても、1つの結論に帰結する訳ではなく、犯人を特定するには至りません。 トリックが解明されたら必然的に犯人も明らかになるといった「並の」作品とは違うのです。 この作品は、ラストが物凄い事になっているのですが、これにより、読み手に熟考する暇も与えない、しかし納得のいく、どんでん返しの繰り返しを可能にしています。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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被害者であるお婆ちゃんが誘拐犯に全面協力する。
・身代金100億円。 ・被害者と家族との対面をTV生中継。 ・身代金受け取りを世界生中継。 兎に角、奇想天外でスケールがでかい。 誘拐犯3人組の間抜けっぷりも憎めないのですが、何と言ってもお婆ちゃんのキャラクターが最高。 日本ミステリー史上に燦然と光り輝くキャラクターではないでしょうか。 器が大きく、80歳を超える年齢でありながら、西之園萌絵並みに計算が早い(笑 誘拐という題材を、ここまでユーモアたっぷりに描いているのも凄いが、ただユーモラスなだけではない。 作者は、そのスーパー婆ちゃんを通じて、家族愛であったり、社会問題に対する意見提起を行なっている。 読み手も、お婆ちゃんがそう言うなら間違いない という気にさせられるのではないだろうか。 絶大なるお婆ちゃん効果である。 そして、この作品の一番素晴らしいところは、主要登場人物の誰も悪人にならず、皆が成長するという点である。 これを傑作と呼ばずして何が傑作か!! 絶対にお薦めです。 |
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法制度に問題提起する社会派ミステリー。
「死刑制度」という重いテーマを「加害者」「被害者」「執行者」の立場、視点から描いてます。 この作品を読まないと一生知りえなかったような事柄も多く、自分にとってもいい勉強をさせてもらったと思っています。 現在の法制度のいたらぬ点、死刑制度の在り方について考えさせられます。 死刑制度は果たして是か否か。 この作品の一つのテーマにもなっているとは思いますが、作者は一方に肩入れした立場を取る事なく、絶妙なバランスで描いています。 個人的に、更生の余地のない犯罪者を死刑に処する事は、至極当然だとは思っています。 この作品を読んだ後もその考えに変わりはありません。 ですが、そんな単純なものではないのだと思い知らされました。 刑務官が死刑執行をするシーンが、臨場感たっぷりに描かれていました。 これまで刑務官の事など考えた事もなかったし、彼らの苦悩が痛いほど伝わってきて、読んでいていたたまれない気分になりました。 強烈に印象に残りました。 残された人間(家族)の苦悩も、読んでいて辛かった。 人間一人を殺してしまうとはどういう事なのか、心の奥底まで響きました。 ラストは、ハッピーエンドとはいきませんでしたが、みんなが少しずつでも救われた、成長できた、新しい一歩を踏み出せたという感じがして凄く良かった。 お薦めします。 |
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中年詐欺師二人、女スリと何もしないその姉、そしてマジシャンを廃業した姉の彼氏。
前半は、そんな面々の共同生活が描かれます。 各々辛い過去を抱えていますが、暗さはなく、人間性もあり、詐欺を生業とする彼らの活躍に感情移入出来てしまいます。 ただ最後の「作戦」決行の時点で、既に全体の3分の2程度過ぎており、キャラクタ紹介にしては長すぎる、「これではまるで家族ものではないか」とすら思ったのですが、読み終えた時点で色々思い返してみると、何気なく交わされていたちょっとした会話にも、何か登場人物それぞれの人間味や暖かさが感じられます。 非常に効果的な描写になっている事に気づきました。 「カラスの親指」というタイトルからは、ノワールな印象を受けますが、全く違う。 そのタイトルに込められた思いに胸が熱くなります。 最後の最後に「どんでん返し」があります。 読者だけでなく主人公すら騙されてしまうのですが、嫌な思いなど微塵も感じません、清々しい気分です。 これまで読了した作品の中で、後読感は群をを抜いて最高です。 こんなハッピーエンド見た事ありません。 お勧めです。 |
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いわゆる「新本格」と呼ばれる流れの草分け島田荘司氏のデビュー作にして、氏をもってしても「超えられない壁」と評する名作中の名作。
という事で手に取りました。 島田氏の作品で最初に読んだのがこの作品でした。 多くの方が言われていますが、私も、冒頭に配されている手記が何とも読みづらく途中挫折しそうになりました。 「名作」という前知識がなければ、その段階で投げ出していたかも知れません。 「奇跡の1行」で鮮烈なデビューを飾った綾辻氏に対し、その師である島田氏のデビュー作は、猟奇的でありながら緻密に計算された犯行トリックが秀逸な事は勿論のこと、御手洗、石岡のコンビもまさにホームズ、ワトソン、しかも本家に劣らないキャラ設定がされており魅力的、そしてそのワトソンが読者を大混乱させて、作品に奥行きを与えている。 いきなりの完成度の高い作品かと思います。 デビュー作の冒頭に、あんなリーダビリティの低い手記をもってこれるというのも凄いです。 別格。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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他のレビュアーの方も言われている通り、主人公である二人の視点からは全く描かれていません。
第3者から見た印象で語られているので彼らの実際の心情は正確には誰にもわかりません。 また物語のラスト近くに、この一連の事件を長年にわたり追い続けてきた老刑事の激白があり、 自分なりに解釈したこの事件の真相を語る場面がありますが、これに関しても物証はない訳で推測の域を出ません。 ここに来て全く見当違いな解釈であるはずありませんが、100%正解している保証はありません。 亮二が歪んだ人格の持ち主である事は多数の読者共有の認識かと思いますが、雪穂に関しては人それぞれでしょう。 「善?」「悪?」あるいは「巨悪?」 従ってラストのあのシーンにしても、みなさん異なった解釈、考えを持たれているのではないかと思います。 かなりの長編の物語ですが、複数回読むべき作品、そして他人と語り合いたい作品だと思いました。 怪作。 ちなみに私はドラマは見ていません。 |
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