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(短編集)
切れない糸
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切れない糸の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.29pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全56件 41~56 3/3ページ
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人も死なない、犯罪も起こらない、今では少なくなったシャッターの降りていない商店街を舞台にしたミステリーです。 クリーニング屋が預かった衣服から謎が生じ、クリーニングという仕事の難しさや苦労、喜びなどを織り交ぜて、謎が解決される過程は見事でした。 個人情報といって何もかも秘密にする現代では問題視されるような場面も多々ありますが、夕食前にコロッケを買った店のおばさんから「晩ご飯はちゃんと食べれるの」と注意を受けるような濃密な人とのつきあい方の良さを伝えてくれます。 | ||||
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坂木司なので、今回も優しい、心温まるミステリだろうとは分かっていたのだが、今回はなぜだか、特に心に沁みた。それに細かい価値観までいちいちうなずいてしまい、普段、人とそういうことをあまり確認する機会はないので、何だか友達が増えた気分になる。本書はクリーニング業を継いだ若者が、仕事を通して気がつく出来事を、友人に相談し解決してもらう連作短編集だ。それにしてもあまりにクリーニング業に詳しいので、著者の実家がクリーニング屋さんかと思ったほど。あとがきによれば、かなり取材、調査していることが分かるのだが、それにしてもクリーニング屋さんの立場にやけに詳しく、ここまでクリーニング屋さんの心情を語っているものはないだろう。ぜひ、全国のクリーニング屋さんに読んでもらいたい気がする。(チェーン店は専門家ではないそうなので、織物からアイロンがけまで職人的な個人店が対象)また、クリーニングに出す際にもこちらが気をつけることがよく分かるし、西欧と日本の生地や洗剤の違いまで専門的なところも分かりやすく習得できる。 和也は町の「生物委員」を自負しており、傷ついた動物たちが彼の前に現れ、放っておけなくて、手当し、回復すると彼の元からさっさと離れていくことに傷ついている。それは時に、人間も同じで、つきあった彼女も、そして今度は父もこの世を去っていったことが大きな心の傷になっていた。そんな和也がクリーニングという仕事を本気で続けようとしていく様子が、ミステリとともに語られていく。 「グッドバイからはじめよう」、父が急死し、大卒後、就職する周囲を尻目に、それほど乗り気でないまま父のクリーニング屋を継いだ和也。母や、松竹梅(3人それぞれの名字の頭文字を取っている)のパートのおばさんたち、アイロンがけのエキスパートで昔からいるシゲさんで切り盛りしている。近所に住むある男性(妻子あり)が出すクリーニングの謎からこの男性の抱える秘密が分かる。ヒントとなったのは男性の子どもの「次のせんたくもの、洗わないでほしいんだ」の一言。それを和也は自分と同じく、大卒後、就職せず、町の喫茶店「ロッキー」で極上のコーヒーを出しているバイト店員の沢田に相談し、沢田はあっさり「魔法の言葉」を、相手に告げるよう和也に命じると、いともあっさり解決してしまう。 「東京、東京」、同じ町内の不動産屋の娘は和也、沢田と同級で同じ大学だったのだが、就職後、突然1人暮らしをしたいと言い出し、彼女の苦悩を和也はまたも沢田の力を借りて和らげることに。今回もクリーニングと関係している。 「秋祭りの夜」、商店街あげての秋祭りが近づいた頃、あるお客さんの持ちこんでくるクリーニングの洋服から、その職業が類推されるのだが、それと合わせて、その客のムラのある性質が謎。 「商店街の歳末」、ある日、幽霊のように見える、逃げ足の速い女性が商店街で目撃される。歳末とあって、商店街でグループを作り、火の用心の見回りをするのだが、その女性の正体から、今まで分からなかったある謎も解ける。 全編、クリーニングの話ではあるのだけれど、時に、心の汚れも洗い流す話でもある。「泥だとか、ペンキだとか、それは物理的なだけじゃない。精神的な部分も汚されることがある」、それらもすべて和也は洗浄していくのだ。 | ||||
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鳥井と坂木が活躍する、日常の謎系の「ひきこもり探偵シリーズ」の著者による、こちらも日常の謎系列のミスりです。主人公はクリーニング店の息子の大学生、新井和也。「新井」と「洗い」をかけた「アライクリーニング」店の跡取り息子ながら、本人にはそんな気は全然なかったのですが、突然父親が亡くなった為に就職もまだ決まっていなかったこともあり、そのあとを継ぐことになります。 普通の就職と違って、行き来するのは町内のお得意さんのところと、クリーニング工場のみ。予想していた未来とは違って小さなエリアで生活することになった彼は、最初はクリーニングの仕事にそれほど気合いも入っていなかったのだけれど、そんな彼が幾つかの事件を経ながら成長していくところも読みどころとなっており、ミステリものでありながら、誰かが死んだり悪質な事件が起こったりはしない「日常の謎」系の典型的な作品となっている。 さて、この作品が秀逸なのは、そんな成長中のまだまだ頼りない彼のところに持ち込まれる日常の謎の一つ一つを、ホームズ役である友人の沢田とともに彼は解いていくのだが(というよりは解くというか見抜くのは沢田ばかりだが)、その事件のプロットやトリックや解決がクリーニング店という舞台なしでは成立しないところで、よく練り込まれた上の舞台設定だったんだろうなぁと感心します。 あと特徴的なのは前の「ひきこもり探偵」シリーズもそうでしたが、この坂木さんのタッチはとても繊細で優しくいところ。読んでいて、とても優しい気分になります。この作品を読むと自然とまわりにも優しくしたくなります。 また、マニア的な読みどころとしては、作品の章タイトルが映画のもじりになっていて、クリーニング店の専属アイロン師で映画好きのシゲさんとあいまって、映画ファンなら思わずニヤリとしてしまいます。 | ||||
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親父の急死で、いきなり街中を継ぐことになった和也。 商店街ミステリーに遭遇していく。 ミステリーと言っても死人も出ないし、大した謎じゃない。 謎がとかれても、なんとなく曖昧ですっきりもしない。 平凡な日常の平凡な事件の中だからこそ暖かいのかもしれない。 つながった糸 もつれた糸 ほつれた糸 色んなところで繋がっているのがいいなあ。 自分の周りにはどれだけの糸が繋がっているのか考えさせられました。 あんまりないかなあ。 ついつい、コンビニクリーニングでなくて、近所の街のクリーニング屋さんに だしてみました。いい味だしたおばあちゃんがいました。 | ||||
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数年前に単行本を読んで以来、文庫が出たら絶対買おうと思ってました!なかなか出なかった!やっと出た! 大黒柱の父親が亡くなって、息子がいやいや継いだクリーニング店。個人経営の、しかも商店街の中。クリーニングの仕事がまる分かり、とまではいかなくてもこだわり職人な面が読めて面白い。しかもクリーニングに出された衣類から軽いミステリーの綻びやら、家族構成やら背景やらと浮かび上げていく過程も面白い。ほぼ探偵。 喫茶店でバイトしている友人との付き合いも、坂木司ならではのストーリーでしか読めない!アップテンポのノリではなく、スローバラードなお話。マンガにするなら、羽海野チカの絵柄が合ってると思う。 | ||||
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坂木さんの心温まるテイストは健在です。 今度はかつて町の生物委員と呼ばれた過去を持つある意味お人好しで真っ当な精神の持ち主・和也と 誰にでも優しいが実は他人と明確に距離を置く青年・沢田が、クリーニング屋に持ち込まれる 衣服を通して小さな不思議を解いていくお話。 今回はクリーニング業界のあれこれが興味深く、勉強になりました。 町の商店街の温かみが凄くいい。 個人的にはアイロン・マイスターのシゲさんがどっしりした味のあるおじさんでお気に入りですが、小さな謎を提供してくるお客さんも、どこにでもいそうでありながら、きちんと 個性を持って描かれていてよかったです! 切れない糸が続編を引き寄せてくれることを期待します。 | ||||
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『引きこもり探偵』シリーズの後に出た作品。ですよね? テイストが『引きこもり探偵』シリーズに似通っていました。 和也が坂木に 沢田が鳥井に。 まぁ、沢田は鳥井よりはアクティブだけど・・・。 でも旅に出た後、その地方の名物を送ってくるところなんか、 ネットで色々その地方のお菓子を取り寄せていた 鳥井と何か似ているよな。 舞台がクリーニング屋ってところは面白いなぁ〜と思う。 なるほど、そうだったのか、という発見もできて なかなか面白かった。 ただ、もう少しキャラを変えてもらうと もっと良かったかな〜と。 そこだけが難でした。 クリーニング屋に持ち込まれる謎は クリーニング屋が解く。 どこかで見たような、聞いたような感じだけど 読後感は悪くなかったです。 っていうか、結構好きかもなぁ〜。 クリーニング屋のある商店街が なんとなく懐かしい感じがして その雰囲気もとても気に入りました。 | ||||
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『引きこもり探偵』シリーズの後に出た作品。ですよね? テイストが『引きこもり探偵』シリーズに似通っていました。 和也が坂木に 沢田が鳥井に。 まぁ、沢田は鳥井よりはアクティブだけど・・・。 でも旅に出た後、その地方の名物を送ってくるところなんか、 ネットで色々その地方のお菓子を取り寄せていた 鳥井と何か似ているよな。 舞台がクリーニング屋ってところは面白いなぁ〜と思う。 なるほど、そうだったのか、という発見もできて なかなか面白かった。 ただ、もう少しキャラを変えてもらうと もっと良かったかな〜と。 そこだけが難でした。 クリーニング屋に持ち込まれる謎は クリーニング屋が解く。 どこかで見たような、聞いたような感じだけど 読後感は悪くなかったです。 っていうか、結構好きかもなぁ〜。 クリーニング屋のある商店街が なんとなく懐かしい感じがして その雰囲気もとても気に入りました。 | ||||
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出だしの場面転換が見事で、ひきこまれた。脇役達まで魅力的で、専門家の矜持が格好いい。これみよがしな悪役が出てこない、日常生活のなかの悲喜。近所の商店街も見直してしまう。 喪失体験を超えて、繋がれていく糸。絡みつかず、張り詰めず、離れていても、繋がっている。 居場所をくれる人。しっかりと地面につなぎとめてくれる存在。確かな拠り所、いつか、いつでも、還ることのできる場所。 そばにいなくても大丈夫。連絡だって、たまにでいい。私が弱り果てたときに必ず頼る昔からの友人を思い出しながら、読んだ。 絶対の信頼と安心。その関係の構築のドラマが、心地よかった。ミステリではあるが、学生という浮遊した立場から、社会や世間に軟着陸していく成長過程の物語でもある。 | ||||
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父親の死によって、クリーニング屋を急遽継ぐことになった主人公。毎日勉強の日々の中で、クリーニングにだされた衣類の些細な異変などから、日常に潜まれた謎を解き、クリーニング屋の、奥深さを知っていく。 個人的には謎を秘めた、探偵役の友人・沢田の、身の置き場のない漂っている感じが今の自分と重なり、どこにいても切れない糸のような場所が自分にもいつか作れたらいいなーって、うらやましく思いながら読みました。 | ||||
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私も誰かのそんな存在でありたい。 ひきこもり探偵シリーズのような関係もいいけど、 このクリーニング屋シリーズ(勝手にシリーズにしちゃいました) のような関係もいいです。 クリーニング屋さんってなんかすてきですね。 坂木さんの話は、読んでいてとてもあたたかい気持ちになれます。 今現実社会ではいろいろ目を覆いたくなるような事件も多いですが、 この本を読むとまだまだ人間も捨てたもんじゃないなと思えます。 ぜひ続編を読みたいです。 | ||||
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坂木司さんの新シリーズです。 前シリーズ同様、人が死んだり傷ついたりしないミステリーです。 今回は、父親のクリーニング店を継ぐことのなった大学生と喫茶店のアルバイトが、クリーニング店で起こる小さな謎を解いていきます。 そこには優しい気持ちになれる結末が待っています。 そして、謎を解くことで、謎に巻き込まれた人もそして二人も、癒され、成長していきます。 脇を固める人物たちも、前シリーズ同様にあたたかく魅力的です。 おいしそうなご飯も登場します。 前シリーズと違う点は、主人公が「鳥井」と「坂木」ではないこと。 鳥井と坂木は性格や関係が特殊だったけれど、今回の二人は普通の青年なので、読みやすいと思います。 | ||||
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坂木さんの本は初めて読みました。昔ながらの下町の商店街、職人肌のクリーニング店という舞台背景がなかなか新鮮で、急死した父親の跡を継いで頑張る二代目というのも泣かせるではありませんか。ミステリー小説のジャンルに入るのでしょうが、人が一人も死なないところが素晴らしい!クリーニング店の奥深さもよく分かったし、これでクリーニングに関するウンチクも少しは喋れるぞ(どこで役に立つか分からんが。。。)。解決してゆく謎も非常に人間的で泥臭いものだったりして、クリーニング店だけに「心も洗われる」物語です(このキャッチコピーは本屋さんのパクリ)。坂木さんのデビュー作「青空の卵」にはじまる”ひきこもり探偵シリーズ”も読んでみようかなあと思いました。そういえば坂木さんって今時珍しい覆面作家らしいですね。プロレスファンである僕はこの覆面って言葉にも弱い。正体は誰なんだろう? | ||||
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”推理小説のように謎を解いて『どうだ、あってるだろう』と言ったところで現実は何も進展しない。 原因が分かったなら、次はどうするかを考えなきゃ”抜粋した一文にうなづけるだけの前向きさを物語は示してくれる。著書の中で様々にとびかう暖かで時に心臓を綿棒でつつかれたように不思議とドキリとさせるエピソードや言葉が魅力的な作品です。これは坂木氏が描く作品全てにおいて言える事ですが、生活の中で何気なく不安に、不満に、喜びに、得意に感じる事、忘れがちになる事が、登場人物たちがぶつかる謎や問題を通してこちら側に伝わって来ます。目まぐるしい現代社会の中で見過ごしがちな事を、やんわりと教えてくれます。また登場人物を使い捨てにしない作者の拘りは、生活や登場人物同士の繋がりが途切れる事無くありつづけ時に複線として存在し『あぁそういえば!』と頷かされる事も。物語に創造された人物達には、けれどありふれた、例えば近所のおばちゃんにさえ当てはめられそうな平凡で優しい何かを感じさせる。死体なんて出てこない、ちょっとした人の生活に潜むミステリ。読後には近所の商店街に、なんだか愛着が湧いてくる。周囲と繋がりを持つことはうっとうしいけれど、それはとても暖かな事。旅立ちが近い貴方へ、周囲がわずらわしく感じる貴方へ、ぜひ読んでみてください。 | ||||
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突如亡くなった父の後を継いだ主人公新井和也商店街の人たちはエキスパートの集団だという現在の商店街が見落とされがちな特徴を再認識させ父の後を継いだ和也の成長と合わせて人間関係を再度見詰め直させる希薄な人の繋がりや、始まったばかりの仕事への不安や不満もつれた糸をほぐすのは、とても地味で邪魔臭いそのほぐれた先にある何かをこの本はじわじわ感じさせる切れない縁を紡ぎたくなる心穏やかになれる本でした | ||||
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確かに、「商店街のクリーニング店」という設定でしか成立しない推理とトリック。とはいえ、謎解き手法は前シリーズを踏襲しています。前作の主人公(鳥井)が「部屋から外へでないひきこもり探偵」(≒「坂木」から聞いた状況だけで推理し、問題を解決する、という特徴)であったのに対し、今回の主人公(沢田)は「喫茶店のアルバイト」である分、自由度が高い。(ただし、主人公(新井)の話を聞いただけで解決)前作が「主人公が外に出られない」という制約。「どんな場所の事件でもOK」という自由。今作が「舞台はクリーニング店」という制約。「主人公が外に出られる」という自由。前作により魅力を感じますが、今作も十分に楽しませてくれます。とはいえ、前シリーズが坂木司という作者(覆面作家)が、坂木司という主人公で物語を語っていく、というスタイル。当然、新作の「切れない糸」も坂木&鳥井と信じこんでいました(笑)。坂木司が書いているのに、坂木司が出てこないのであれば、この「切れない糸」の作者は「新井 和也」にすべき?・・・と思うのですが、どうなんでしょう。(どうもこうもない) | ||||
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