ひとがた流し

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評判

ひとがた流しの評価:

3.84/5点 レビュー 45件。 B ランク

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平均点3.84pt

Amazonレビュー一覧

Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全41件 1〜20 1/3ページ
No.41
(5pt)

自分が生きてゐることを切實に願ふ誰かがゐるかどうか

この作品には、学生時代からの親友同士の女性が3人登場する。
アナウンサーで独身の「トムさん」こと石川千波。
千波の小學校時代からの友人で作家の、水澤牧子。
この2人が高校で知合つた日高美々。
「學生生活を共にした、かつての娘たちも、いまは四十を越した。さういふ女三人の日常的付き合ひが、いまだに續いてゐる。かなり、珍しいことだろう。」

粗筋を書いても仕方がない。
この作品のなかで、印象に殘つた會話がある。
千波が玲に語る言葉だ。
「人が生きていく時、力になるのは何かつていふと、−《自分が生きてゐることを切實に願ふ誰かがゐるかどうか》だと思ふんだ。−人間は風船みたいで、誰かのさういふ願ひが、やつと自分を地上に繋ぎ止めてくれる。(後略)」

友情つて素晴らしい。
それが若い頃からずつと繼續してゐるのであれば、なほのこと素晴らしい。
彼女達の共有して來た時間といふものの素晴らしさよ。
その時々で濃淡はあれど、最後の瞬間まで分かち合へる、共に積み重ねられてきた時間。

そして、お互ひがお互ひを理解し合へることの嬉しさ。
友情もそして愛も。
かけがへのない時間をともに過ごすことの大切さ。

あなたは、自分の大切な人のつむじの形を知つてゐますか?
私は、そこまでは知らない・・・
「そんな、ささいなこと」といふなかれ。
些細なことの積み重ねが人生といふものではないか。

千波は倖せだつたと私は思ふ。
なぜなら、《自分が生きてゐることを切實に願ふ誰か》が、少なくとも確實にひとりはゐることを知ることができたから。
ひとがた流し (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: ひとがた流し (新潮文庫)より
4101373310
No.40
(5pt)

大切な親友に、ありがとうと伝えたくなりました

千波、牧子、美々。
3人は40代、それぞれに自分の家族があり、仕事があり、生活がある。
車で気軽に行けるほどそばに住んでいたって、頻繁に会う時期もあれば
1年以上会わない時期もある。
それでも、心はつながっている。
この世に自分が生きていることを、家族と同じ次元で、切実に願ってくれる。
そういう「思い」を、3人それぞれが抱き合っている。

そういう親友が、私にもいます。
自分らしい生き方をしてほしい、悩んでいることがあったらすぐにでも駆けつけたい、と
心から思える友達が。
私はまだ30代。
自分でも生活基盤を作っている途中だし、友達も夢に向かって勉強し続けている途中ですが、
これから10年後、20年後までずっと支えあう存在でいたい。
この本を読んで、その思いが一層強くなりました。
ひとがた流し (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: ひとがた流し (新潮文庫)より
4101373310
No.39
(5pt)

よりいっそう北村薫が好きになった

ミステリー作家としての実力や面白さは衆目が認めるところ。その北村薫が書いた女性を主人公にした小説。

もともとストーリーテラーとしての実力があるところに、泣かせる物語を当てはめてみると、もうとまりません。すごいです。

あつい友情物語というわけではない。一人一人がしっかりとしていながら、どこかに脆さなどが出てくる。そして依存するわけではなく、ただ3人は寄り添って時を重ね続けてきた。お互いがお互いを支えあいながら。

人間が生きるとき。こういう人が身の回りにどれだけいるか。それが重要なのかもしれない。
ひとがた流し Amazon書評・レビュー: ひとがた流しより
4022501995
No.38
(5pt)

北村ワールド堪能しました

一気に読んでしまいました。そのあと千波さんの出ていたところに戻って読み返さずにはいられませんでした。とくにプロポーズを受けるところは頭のなかで「ラストシーン」(西城秀樹)という曲がBGMにかかっていました。

3人の女友達の友情と台詞はさすが北村薫さんだなと思いました。

おすすめです。
ひとがた流し Amazon書評・レビュー: ひとがた流しより
4022501995
No.37
(5pt)

『秋の花』と響きあう物語------《一所懸命》はどこに残るか。

第三章「道路標識」以降、《一所懸命》という言葉が繰り返し出てきます。

尊敬する父、類の言葉を受け止めようとする玲の姿の表現として。

美々と類の夫婦が、父を慕う娘=玲の心を語る言葉として。

牧子が類に語った、彼の写真に見入る親友・千波の姿を示す表現として。

千波が類に、自らの病を宣告された時の思いを語る言葉として。

鴨足屋良秋が千波との思い出を書いた手紙の中に。

*   *   *

若き日の屈辱を胸に、二十年以上、病も寄せ付けずに誇りを持って仕事を続けてきた千波。

その心に秘めた目標が遂に現実のものになろうとした時、その未来は唐突に奪われます。

これまで《一所懸命》に生きてきて、これからもそう生きていこうとしていた人。その生が明日を失った時、その美しい人の《一所懸命》はどこに残るのか。

この叫びは、『秋の花』での《私》の疑問、

「明日輝くような何かをしようと思った、その明日が消えてしまったら、どうなのですか。その人の《生きた》ということはどこに残るのです」

と重なります。

その答えもまた、『秋の花』のそれと響きあう。思い出が残る。同じく《一所懸命》に生き、彼女と触れ合い、彼女が《生きていて欲しい》と心から願い、支えた人の中に。

真理子が明日へと向けた《きっと》という清冽な思い。

千波がその胸に棘が刺さった時から抱き続けた思いと、重ねていった《時》の重み。

北村薫はそうして宝石のような輝ける意志を描いた上で、そうした美しいものが、花開かないまま終わることもあることを示します。

そして、彼らに餞(はなむけ)を贈り、《それでも》その意志には意味があると謳うのです。

*   *   *

《子、川の上に在りて曰く、逝く者は斯くのごときか。晝夜を舍かず。》

ひとがたは思いを乗せ、消えない記憶を残し、《時》という川を流れていく。
ひとがた流し Amazon書評・レビュー: ひとがた流しより
4022501995
No.36
(5pt)

一気に読んじゃいました

前にも読んだ事のある北村薫さんの本ということで、それ以外の一切の先入観なしに読みました。
とにかくよかった・・・。読み出したら、とまらなくなって一気に読んでしまいました。
心があったかくなるような人の温かさに満ちながら、それでいてせつせつとして哀しく、しんしんと冷えた澄んだ冬の空気のような感じのする小説です。
ひとがた流し Amazon書評・レビュー: ひとがた流しより
4022501995
No.35
(4pt)

育まれてうまれるもの

『月の砂漠をさばさばと』に出てくるさきちゃん親子の友達、トムさんのお話です。

主人公は病気になってしまい、彼女をとりまく人たちや彼女自身のいろんな想いとともに話はすすんでいきます。
読んでいて・・・
人と人の繋がりが持つ力に感動していました。友達っていう定義はどこにあるのか。
ごはんを食べるだけでも「友達」、重要なことを相談できるのが「友達」・・・。尺度は人それぞれあると思います。
大人になると面と向かってあなたは私の友達です!と言うのはくすぐったい。
くすぐったいけど、親や恋人とは違う、やっぱり大事な存在なんです。

学校が一緒だったから仲良くなった、から始まって友情を育んできた主人公たち。トムさんが玲に「生きていてと願ってくれる人」の話をするところにはぐっときました。
今いる自分を想ってくれる人、それは縁だけではない、育まれたものなのです。
自分の生きてきた意味はそういうところにあるんだろう。そう思います。
久々の友達に電話をしたくなるような作品でした。

朝日新聞の夕刊に掲載され、そちらには毎回おーなり由子さんの挿絵が入っていて素敵でした。
本の方に入っていなかったのが残念でした。
ひとがた流し Amazon書評・レビュー: ひとがた流しより
4022501995
No.34
(5pt)

深い悲しみもしみじみと流れていく

あとがきに、あえて「涙」という言葉を使わなかった、と作者が書いていますが、深い悲しみもしみじみと流れていく、そんな話に思えました。友情を軸に、親子、夫婦、といった人間関係を問う内容がさりげなく込められている、という印象を持ちました。物語の軸となるのは、子供のときからの友情が続いている3人の女性とその家族や周りの人たちの話です。

中心人物から脇役までさりげないところで納得させる人物描写で、しみじみと読みました。

蛇足ですが、NHKドラマ(私はドラマを先に見ました)は重要な部分のいくつかを原作と変えています。私は原作の方が好きですし、納得ができます。
ひとがた流し Amazon書評・レビュー: ひとがた流しより
4022501995
No.33
(5pt)

一気に読んじゃいました

前にも読んだ事のある北村薫さんの本ということで、それ以外の一切の先入観なしに読みました。
とにかくよかった・・・。読み出したら、とまらなくなって一気に読んでしまいました。
心があったかくなるような人の温かさに満ちながら、それでいてせつせつとして哀しく、しんしんと冷えた澄んだ冬の空気のような感じのする小説です。
ひとがた流し (朝日文庫) Amazon書評・レビュー: ひとがた流し (朝日文庫)より
4022650605
No.32
(4pt)

育まれてうまれるもの

『月の砂漠をさばさばと』に出てくるさきちゃん親子の友達、トムさんのお話です。

主人公は病気になってしまい、彼女をとりまく人たちや彼女自身のいろんな想いとともに話はすすんでいきます。
読んでいて・・・
人と人の繋がりが持つ力に感動していました。友達っていう定義はどこにあるのか。
ごはんを食べるだけでも「友達」、重要なことを相談できるのが「友達」・・・。尺度は人それぞれあると思います。
大人になると面と向かってあなたは私の友達です!と言うのはくすぐったい。
くすぐったいけど、親や恋人とは違う、やっぱり大事な存在なんです。

学校が一緒だったから仲良くなった、から始まって友情を育んできた主人公たち。トムさんが玲に「生きていてと願ってくれる人」の話をするところにはぐっときました。
今いる自分を想ってくれる人、それは縁だけではない、育まれたものなのです。
自分の生きてきた意味はそういうところにあるんだろう。そう思います。
久々の友達に電話をしたくなるような作品でした。

朝日新聞の夕刊に掲載され、そちらには毎回おーなり由子さんの挿絵が入っていて素敵でした。
本の方に入っていなかったのが残念でした。
ひとがた流し (朝日文庫) Amazon書評・レビュー: ひとがた流し (朝日文庫)より
4022650605
No.31
(5pt)

深い悲しみもしみじみと流れていく

あとがきに、あえて「涙」という言葉を使わなかった、と作者が書いていますが、深い悲しみもしみじみと流れていく、そんな話に思えました。友情を軸に、親子、夫婦、といった人間関係を問う内容がさりげなく込められている、という印象を持ちました。物語の軸となるのは、子供のときからの友情が続いている3人の女性とその家族や周りの人たちの話です。

中心人物から脇役までさりげないところで納得させる人物描写で、しみじみと読みました。

蛇足ですが、NHKドラマ(私はドラマを先に見ました)は重要な部分のいくつかを原作と変えています。私は原作の方が好きですし、納得ができます。
ひとがた流し (朝日文庫) Amazon書評・レビュー: ひとがた流し (朝日文庫)より
4022650605
No.30
(4pt)

湘南ダディは読みました。

高校で同級であった40台の女性3人、それぞれバツイチの美々と牧子、独身のまま民放局でそれなりに名が売れているキャスター、トムさんこと千波の物語。三様の生き方を選択してきたこの3人が本当の姉妹よりも打ち解けあい頼りにしあいながら生きていく日常が細やかに語られています。この物語で素敵なのは登場人物たちが事に当たって、友人のため、友人の娘のため、あるいは自らのため本当に真正面から語りかけるところです。自分が尊敬してきた父親が実の父親でないことを知ってしまった美々の娘、玲にトムさんは諭します。「いい玲ちゃん、あなたにはお父さん、お母さん、それに私をふくめてあなたのことを大事に思ってくれる人が何人もいるのよ。でもお父さんには夫婦であるお母さんを別にしてあなた一人しかいない、だったらあなたの方がお父さんに気を使うべきだね」他人の娘の、こんな重いテーマに対してこれだけ真正面から語れるでしょうか。自分は一人で生きていけるとずっと考えてきたというトムさんのかなり長い独白があって「でもね、私が病院でわかれる時、牧子が生きていてという顔をしたのよ、私の腕を持って行ってもいいから生きててってね。そのとき私は思ったね、一人で生きているんじゃないんだって」「結婚式の時にいっておやり、お父さんありがとうって、それで十分なのさ」こんな会話があって、玲は父親との関係に自分なりの納得をすることになります。
人生の深遠な切片を何気ない日常のなかで淡々とかたりながら物語は進むのですが、中半から一気に緊張感を持った展開になり、ギンジローという牡猫しかいなかったトムさんに10歳年下の伴侶ができるのですが・・・・。
  女同士、親子、大人と若者という異なった生活や背景をもった者同士の間でも、友情や愛がどれだけ悲しみや苦しみ、孤独からの救済になっていくかが声高にではなく語られ、読後に静かな感動にうたれる作品です。
ひとがた流し (朝日文庫) Amazon書評・レビュー: ひとがた流し (朝日文庫)より
4022650605
No.29
(4pt)

時の流れ

北村薫さんの描く様々な作品に流れる大きなテーマの一つは「時」だと思っています。「スキップ」「ターン」「リセット」の時の三部作は言うまでもなく、代表作の「私(と円紫師匠)」シリーズでも様々な形で「時」を強く意識させてくれます。どの作品でも大きな流れの中で抗う人の弱さや強さを感じさせてくれます。

今回の作品でも読み終わった後、まず感じたのは過去から現在、未来へと流れる「時の流れ」でした。生きていく中で忘れてしまった記憶や、戻せない過去。今はもう会えない人や、残したい思い。何気ない日常を丁寧に描きながら、端々で感じるせつなさはとても大事なことを思い出させてくれるような気がします。

特に娘をもつ父親として、類と玲のエピソード(p279-280)は胸に響きました。
ひとがた流し (朝日文庫) Amazon書評・レビュー: ひとがた流し (朝日文庫)より
4022650605
No.28
(4pt)

こうありたいと思わせられる作品。

私は千波と同じ病になったこともなければ、同じ病を得た身近な友人もいない。

だから、実際に身近に見てきた人と同じ見方はできない。

それはもう、仕方ない。

でも、この本は何もその病を得た苦悩を書いたわけではないと感じている。

それよりはむしろ、女三人の友情のあり方や、彼女たちを取り巻く人々の、

相手を思う心の温かさを描いたのではないかと思う。

もちろん、私は北村薫本人ではないから、本当のところは分からない。

登場人物が多少、理想的過ぎるのは、北村作品にはよくあることではないかと思う。

こうであったらいい、こうありたい、と感じて読むのも、悪くはない。

紅白以来、大ヒットとなったあの曲を思い出させるラストシーンだった。
ひとがた流し (朝日文庫) Amazon書評・レビュー: ひとがた流し (朝日文庫)より
4022650605
No.27
(4pt)

流れるように

私は北村先生の小説は全て読みました。

その上で、レビューを書かせていただきますが、この作品は北村作品の中では地味な方ではないかと思います。とりたてて大きな事件のない、淡々としたお話です。流れゆく水のような、穏やかなリズムで展開されていきます。ですが、読み終わって心がじんとしました。

私も千波と同じように、病気の検査をしたことがあり、不安な日々を過ごしたことがあるので、他人事とは思えませんでした。この小説でリアリティを求めたり、トリックを求めることは必要ありません。日常のミステリーが、この小説にに潜んでいます。それを楽しみながら読んで欲しい、そう思います。

私が言うのもおかしな話ですが、北村先生は(文章を読んだことのある方ならご存知だと思いますが)繊細な気配りのできる方です。敢えて病名を伏せたり、死に至るまでの細かな描写をしないこと、同じ病気の女性に対して失礼にならないように注意を払って書いているのだと思いました。

「月の砂漠をさばさばと」を読んでから読むと、より一層この小説を楽しめるのではないかと思います。

北村作品初心者の方は、「夜の蝉」「リセット」などをお薦めします。
ひとがた流し (朝日文庫) Amazon書評・レビュー: ひとがた流し (朝日文庫)より
4022650605
No.26
(5pt)

よりいっそう北村薫が好きになった

ミステリー作家としての実力や面白さは衆目が認めるところ。その北村薫が書いた女性を主人公にした小説。

もともとストーリーテラーとしての実力があるところに、泣かせる物語を当てはめてみると、もうとまりません。すごいです。

あつい友情物語というわけではない。一人一人がしっかりとしていながら、どこかに脆さなどが出てくる。そして依存するわけではなく、ただ3人は寄り添って時を重ね続けてきた。お互いがお互いを支えあいながら。

人間が生きるとき。こういう人が身の回りにどれだけいるか。それが重要なのかもしれない。
ひとがた流し (朝日文庫) Amazon書評・レビュー: ひとがた流し (朝日文庫)より
4022650605
No.25
(4pt)

まっすぐ。

「月の砂漠をさばさばと」が大好きだったので、さきちゃんにまた逢えるのが嬉しかったのですが、連載されていた当時、切り取るだけで読むのは断念してしまってました。
北村作品に登場する女性は何でいつも魅力的なんだろう。千波のやり直せないことが好きな生き方に象徴されるように、挫けそうになっても、いつもまっすぐに前を向いて歩いてる印象があります。北村氏の描く女性に憧れてしまいます。
後半は涙が溢れる場面が目白押しで、電車の中で何度も本を閉じてしまいました。哀しい終わり方なのに、読後感が爽やかなのは、北村マジックかなと思います。
ひとつだけ残念なのは、新聞連載時に素敵に添えられていたおーなり由子さんの挿絵が見られなかったことです。
なので、星4つ。
ひとがた流し (朝日文庫) Amazon書評・レビュー: ひとがた流し (朝日文庫)より
4022650605
No.24
(5pt)

北村ワールド堪能しました

一気に読んでしまいました。そのあと千波さんの出ていたところに戻って読み返さずにはいられませんでした。とくにプロポーズを受けるところは頭のなかで「ラストシーン」(西城秀樹)という曲がBGMにかかっていました。

3人の女友達の友情と台詞はさすが北村薫さんだなと思いました。

おすすめです。
ひとがた流し (朝日文庫) Amazon書評・レビュー: ひとがた流し (朝日文庫)より
4022650605
No.23
(5pt)

『秋の花』と響きあう物語------《一所懸命》はどこに残るか。

第三章「道路標識」以降、《一所懸命》という言葉が繰り返し出てきます。

尊敬する父、類の言葉を受け止めようとする玲の姿の表現として。

美々と類の夫婦が、父を慕う娘=玲の心を語る言葉として。

牧子が類に語った、彼の写真に見入る親友・千波の姿を示す表現として。

千波が類に、自らの病を宣告された時の思いを語る言葉として。

鴨足屋良秋が千波との思い出を書いた手紙の中に。

*   *   *

若き日の屈辱を胸に、二十年以上、病も寄せ付けずに誇りを持って仕事を続けてきた千波。

その心に秘めた目標が遂に現実のものになろうとした時、その未来は唐突に奪われます。

これまで《一所懸命》に生きてきて、これからもそう生きていこうとしていた人。その生が明日を失った時、その美しい人の《一所懸命》はどこに残るのか。

この叫びは、『秋の花』での《私》の疑問、

「明日輝くような何かをしようと思った、その明日が消えてしまったら、どうなのですか。その人の《生きた》ということはどこに残るのです」

と重なります。

その答えもまた、『秋の花』のそれと響きあう。思い出が残る。同じく《一所懸命》に生き、彼女と触れ合い、彼女が《生きていて欲しい》と心から願い、支えた人の中に。

真理子が明日へと向けた《きっと》という清冽な思い。

千波がその胸に棘が刺さった時から抱き続けた思いと、重ねていった《時》の重み。

北村薫はそうして宝石のような輝ける意志を描いた上で、そうした美しいものが、花開かないまま終わることもあることを示します。

そして、彼らに餞(はなむけ)を贈り、《それでも》その意志には意味があると謳うのです。

*   *   *

《子、川の上に在りて曰く、逝く者は斯くのごときか。晝夜を舍かず。》

ひとがたは思いを乗せ、消えない記憶を残し、《時》という川を流れていく。
ひとがた流し (朝日文庫) Amazon書評・レビュー: ひとがた流し (朝日文庫)より
4022650605
No.22
(4pt)

大切な人はいますか?

40を過ぎた3人の女性の友情と
彼女達を取り囲む家族たちを描く感動作です。

みんなが自分以外の大切な人を思う優しい気持ちに
涙がとまりませんでした。
人は1人では生きられない。
大切な人の悲しみや喜びに触れた時に、
頭で考えるより先に体で行動してしまうのが
本当の愛情なのかもしれません。
人を頼って寄りかかって生きることは
実は恥ずかしくも情けなくもなんともない。
むしろ、そんな存在がいることは誇れることなのかもしれません。

千波さんが飼っているギンジローという猫が
とても効果的に関わっていて物語を彩っています。
特にイチョーヤさんのプロポーズにギンジローを絡めたとこなんか流石!!
あれで落ちない女はいないと思います(笑)

題字・装画はおーなり由子さん。
ひとがた流し (朝日文庫) Amazon書評・レビュー: ひとがた流し (朝日文庫)より
4022650605