弥勒
評判
弥勒の評価:
4.45/5点 レビュー 62件。 B ランク
Amazonレビュー一覧
Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全100件 21〜40 2/5ページ
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弥勒の評価:
4.45/5点 レビュー 62件。 B ランク
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小説の詳細ページを閲覧すると、ここに履歴が表示されます。最近閲覧した小説詳細ページへ簡単に戻る事が出来ます。
永岡は日本に帰ることを選ばず地獄のようなパスキム国内に再び入国することを選んだ。日本に戻れば安全で清潔で不自由のない生活が保障されているというのに。
なぜパスキムへ?
そんなことがいったいあり得るだろうか?
そのあり得ないことを、あり得ることとして描いた。
パスキムにいく前、永岡はビジネスの取引相手に妻を暗黙のうちに「貸す」ことも厭わないような乾き切った人間関係の中で生きていた。
パスキムに入国した後、永岡は政変直後の過酷な状況に巻き込まれて行くのだが、そのなかで日本にいた時にはわからなかった自分を見出して行く。
暴力と飢餓の渦巻く状況の中で怯えながらも人に対して見せる彼の優しさ。スパイだと思われる少年を逃して命を救った。
強制結婚させられた相手であるサンモを始めは拒むが、しだいに心を通わせ愛しさを覚えるようになる。そんな自分の気持ちに戸惑い、「サンモと東京で暮らすことは考えられない」と思っていた永岡だが、やがて愛情が深まっていく。初めて愛した女がかけがいのない存在になっていく心の変化が、細やかな心打つ文で描かれている。二人が最後の時を持つ場面は、深い叙情と悲しみに満ちて美しい。
永岡をそもそもパスキムに導いたのは、きらびやかで高度なパスキム文化だった。彼はパスキム文化の粋とも言える弥勒像を手に入れたが、サンモこそ彼の本当の「弥勒」だったのだろう。
永岡がスパイの少年救ったことで何人もの人が無惨に殺された。
永岡は生きるために人の肉を食った。
彼はサンモの遺体を守るために人の命を奪い、自らの命の危険もかえりみなかった。
宗教禁止の厳しい統制下、亡くなった家族のために祈る心優しい人びとがいた。
永岡は最後に弥勒像を放ち、遊行僧が遺していった段ボールの仏がんを背負うことを選ぶ。これは日本を選ばずパスキムを選ぶことと同じなのではないか。
段ボールの仏がんを背負った永岡は祈りそのものの姿だ。
声にならぬ声で、人間の恐ろしさを叫び、同時にその果てに知った人間のもう一つの姿を訴えているようだ。
祈りは永岡の改心そのものだし、パスキムを生まれ変わらせる力ともなるだろう。
その祈りが、声が、この本から聞こえてくるようだ。