仮想儀礼

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仮想儀礼の評価:

4.43/5点 レビュー 102件。 B ランク

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平均点4.43pt

Amazonレビュー一覧

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全149件 141〜149 8/8ページ
No.9
(5pt)

虚業のリアル

 怖い。
 新興宗教に限らず、宗教というものが全く信用できないウチが、この作品はどうしても読んでみたくなって購入しました。
 公務員だった男が作家になる夢につけ込まれ、気がつくと家族も職も失ってしまう。唆した男を責めながら目撃してしまった9.11、ワールドトレードセンタービルディングが崩壊する中、二人は「宗教」を事業として起こすことにする。
 ゲームブックと各種宗教の組み合わせた事業としての癒し、宗教を求める様々な人、どんどんと大きくなっていく宗教団体、そして小さな綻びからの転落。宗教の持つ胡乱さと、それをどうしても求めてしまう人の思い。 ステロタイプな登場人物が、逆に作り物じゃなく思えてしまえて、とんでもなく怖い。
 上下巻900ページにも及ぶ長編は、グッと鷲づかみにされるほどの強烈さで一気に読み進められて、教団がふくらんでいくと過程に高揚し、転げ落ちていく過程に恐怖を覚えてしまう。ジェットコースターのように揺さぶられ続けて読み終えてしまった。
 穏やかそうに見えるラストでも、信者に潜む心の内がやっぱり怖い。
仮想儀礼〈上〉 Amazon書評・レビュー: 仮想儀礼〈上〉より
4103133619
No.8
(5pt)

宗教はこころをもてあそぶのか、それとも、心を救うのか

環境にメスを入れるのが工学技術
心のメスを入れるのが宗教
工学技術が環境を改善する一方では、破壊もする。
宗教も心を癒し育てる一方では、心を破壊もする。
宗教の2面性を見事に描ききった好著
仮想儀礼〈上〉 Amazon書評・レビュー: 仮想儀礼〈上〉より
4103133619
No.7
(5pt)

ビジネスとしての宗教は成り立ちうるのか

本書は「読み始めたら止められない」極めて優れた娯楽小説であり、読後感も決して悪くない。
支払った「お代」以上のものを返してくれる、ちゃんとしたエンターテインメントだ。
しかし、本書を読み終わった読者は、それぞれに考え込むことになる。
この「豊かなあまりに人と人との関係が薄くなった世の中」で、「サービス業としての宗教」というものが成り立つのか?という問いに対するひとつの回答を著者は本書で示したと言える。
著者による回答は極めて説得的だが、人によっては違う回答もあるだろう。
少なくとも本書の主人公が言うように、現代は過去とは違う。
「昔の宗教は確かに存在理由があった」「家は貧乏、嫁ぎ先じゃいびられる、子供は病気で死んじまう。そういう女なんかに、神様が憑いた。」「しかし今じゃ、退屈した人間が自分の精神を玩具にして、宗教はそのためのワンダーランドだ。笑わせてくれるなよ。」(上巻93頁)
本書は、そういう時代の宗教とは何なのかについての、思考実験であるとも言える。
本書を読んで高橋和巳の「邪宗門〈上〉 (朝日文芸文庫)を猛烈に読み返したくなった。「宗教が宗教らしかった時代」、日本が貧乏にまみれていた時代の新興宗教の物語である。実に残念なことに絶版となっているが、図書館には必ずある本なので借り行くつもりだ。戦前の日本の想像を絶する貧苦の中から立ち上がってくる宗教のパワーを、これほど迫真性に満ちて描いた作品は、他にはない。
仮想儀礼〈上〉 Amazon書評・レビュー: 仮想儀礼〈上〉より
4103133619
No.6
(5pt)

人々が宗教に求めるもの

宗教団体設立の理由がそれぞれ異なるように
信者がその宗教に求めるものもそれぞれだろうし
信者が増え、組織が大きくなればその方向性も変わっていく。
主人公が遊び半分で始めた宗教団体もどきが
あらぬ方向に暴走していく展開となっています。
随所に見られるシニカルな常識人の主人公の
教祖らしくない俗世的で現実的な判断がけっこう笑えます。
いやはや、信者の人生を引き受けるのは並大抵のことではないですね。
結末は哀しいけれど、不思議な爽快感がありました。
仮想儀礼〈上〉 Amazon書評・レビュー: 仮想儀礼〈上〉より
4103133619
No.5
(5pt)

テーマに気遅れするより、読書の醍醐味を取るべき

「信仰は金を産む」の帯が印象的な上巻469頁は、ネットから始めた新興宗教が大教団になってゆこうとする過程が着々と描かれてどうにも引いてしまう。
それは宗教という実体の無い所から金を産もうとする人模様を、如何わしく思ってしまうからかもしれない。
「自分たちで作り、立ち上げた宗教だから、その神は自分の手の内にある。しかしそれを信じた人々の感情や行動は、決して自分の手の内にはない。人の心は得体が知れず、制御もできない。」168頁の正彦の胸の内は、この作品をも表現している。
人間の心の脆さと宗教の関係を正彦が冷めた視線で見ながら布教していく始まりは面白く読めるのだが、教団が大きくなり破綻の幕開けのような事件で終わるこの上巻から下巻に手を伸ばすには気力が必要な内容だ。
だが、上下巻読み終わった状況から上巻の紹介となると、ここまでの作品を読まずに終わるのはもったいないと思う。読み応えある力量作品を読書の醍醐味として味わったことがある人ならば、昨今の作品には無い重量感あるこの作品に手を出して損は無い。
仮想儀礼〈上〉 Amazon書評・レビュー: 仮想儀礼〈上〉より
4103133619
No.4
(5pt)

あなたにとって心の拠り所は?

 9・11同時多発テロのニュースは、生放送で見ていた我々には、余りにも衝撃的で、生々しいものであった。そのニュースを見ながら「第四次産業=虚業としての宗教」を商売として思いつく。しかも、教団名は、「聖泉」:昔の彼女の出身校、「真法」:司法試験を目指したゼミの名から命名するといった、ふざけた出発。
 以下、成功に至るまでは、中島らもの『ガダラの豚』のように、時々吹き出しながら、楽しく読める。篠田節子の長編はすべて読んだが、こんなにユーモアのセンスあったっけ?と思うほど、似非宗教が戯画的に描かれる。
 時に心の傷を生の意味として、トラウマ乗りの「生きづらい系の若者」と、教団をワンダーランドのように転々とする「おばさん連中」との女同士の対立や、ユーザー主導型の宗教が、急展開する成功談より面白く読める。
 なぜなら、似非宗教をインチキ商売としてやるには、主人公は余りにも、「良心的過ぎる」のだ。彼の内的葛藤も、相棒の女に甘すぎる優しさも面白い。「永遠のマザコンである日本人」ときっぱり言い切ってしまう所もさすが。
 かけこみ寺のように入信する者、近親相姦によるトラウマを引き摺る者など、五人の女性の過去が丁寧に描かれる。虐待の記憶が現実なのか捏造なのか、ひいては、過去と現在の我々の存在の在り方に一石を投じてくれる問い、等々。900ページに及ぶ必然性も肯ける。
 闇の政治家やマスコミとの戦いも去ることながら、教祖の教えを深化、血肉化させる女性たちが、一気にラストへと収斂していく系譜が、私は一番楽しんで読めた。
 新興宗教団体をカルトと危険視する精神構造(正直、私にもある)は、実は、マスメディアや偏った教育によって洗脳されたものであり、「西洋的合理主義の行き詰まりから、機能不全に陥った現代社会」において、何を心の拠り所として生きていくか、極めて大きな問題提起をしてくれている。
仮想儀礼〈上〉 Amazon書評・レビュー: 仮想儀礼〈上〉より
4103133619
No.3
(5pt)

信仰という商品を売る第四次産業、それが宗教だ!

この部分で、まずビックリ…。
信仰心など全くなく、金儲けのためだけに宗教団体を作る。
ニセ宗教が、どうやって金儲けをしていくか。
仏像を手作りしたり、安い材料で何となくそれらしく見せたり…と、地味な二人の作業。
こんなので儲かるの?と思いつつ読み進めると、徐々にではあるが様々な人々をひきつけて、団体は発展していく。
この上巻の過程は、なかなか面白く読みました。
仮想儀礼〈上〉 Amazon書評・レビュー: 仮想儀礼〈上〉より
4103133619
No.2
(5pt)

仮想宗教のリアル

ほとんど思いつきで創作した宗教団体が、その「教祖」の思いもよらないような力や出来事に導かれるかたちで飛躍的に発展し、やがて危機に陥っていく様を描いた力作小説である。架空の宗教の創作、そしてその維持と展開の際に、既存の宗教の教理や教団の運営システムなどが豊富に参照され、主人公、というか著者がよく勉強していることを窺わせる。実名が出てくる場合もあるので、これは現代における宗教事情の勉強にもつながる有益な本だなと思った。
しかしそれ以上に興味ぶかいのが、この宗教団体を拡大させていく、信者たちの姿である。「生きづらい」系の若者たち、現世利益を求める中高年、他の新宗教団体やカルトから脱会してきた人々、超能力の獲得を希求する少年、精神の安定と金儲けの一挙両得を願う経営者やビジネスマン、人生の無常に目覚めた資産家、落ち目になり宗教に活路を見出す文学者、等々、ややステレオタイプ的ながら、しかし誠にリアリティあふれる人間たちが次々に登場し、それぞれのスタイルでこの宗教団体にかかわり、時に大問題を起す。
この人間たちの言動が実に身近に感じられるからこそ、本書はあくまでも「仮想」の現実を記述した作品でありながら、非常に説得力があり、そこに現代社会を生きる我々の偽らざる心情を発見してしまうのである。
仮想儀礼〈上〉 Amazon書評・レビュー: 仮想儀礼〈上〉より
4103133619
No.1
(5pt)

新興宗教団体の虚実を描き切った力作!

新興宗教団体の虚実を描き切った力作。
ただただ金儲けのためだけに作られた宗教団体が、いかにして発展し、かつ、崩壊してゆくのか、教祖の心の動きを中心に描いている。
作られた虚構でしかない団体が、信者を集め、その信者の盲信のゆえに、教祖の手を離れて暴走してゆく‥‥。
これと並行して、この団体を取り込もうとしたり取り潰そうとする外部の暗躍が。
非常にスリリングな展開が綴られてゆく。
宗教法人の会計のしくみなどを十分に取材していなければ意外と描けないような、そういった場面も出てくる。
また、行政の福祉関係の職員だった作者の体験が活かされているのではないか、という場面も、ところどろに効果的にちりばめられている。
いわば、社会的弱者がいかにして新興宗教団体に取り込まれてゆくか、ということをも描いているのだ。
むしろ、そこが本書の言わんとしているところなのかもしれない。
一気に読ませるだけの力がある。
いわゆる「カルト宗教団体」はこのように作られてゆくのかもしれないな、と思わせる、そんなリアルさにも満ちた作品となっている。
仮想儀礼〈上〉 Amazon書評・レビュー: 仮想儀礼〈上〉より
4103133619