仮想儀礼

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仮想儀礼の評価:

4.43/5点 レビュー 102件。 B ランク

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平均点4.43pt

Amazonレビュー一覧

Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

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全149件 121〜140 7/8ページ
No.29
(5pt)

いかがわしい素材を確かな筆力で描出した

宗教をビジネスと割り切って、桐生正彦は新興宗教を立ち上げる。
 詐欺まがいのゲーム関連出版社と甘い見通しのために、家庭も職も失うゼロ・スタート。
それが確かな経営ビジョンでぐんぐん成長していく。上巻はサクセス・ストーリー。
宗教というよりビジネスの側面に光を当てている。清泉真法会は、日本人の宗教観を的確に捉え、ニッチにしっかりと食い込んでいく。
あたかも実在する、あるいは実在したいくつかの新興宗教のように。
 感情に流されない作者の筆力が、生臭い素材を、癖のない高級料理に仕上げた。
仮想儀礼〈上〉 Amazon書評・レビュー: 仮想儀礼〈上〉より
4103133619
No.28
(4pt)

誰か読んだ人、どうでしたか?

2009.6上・下で1000頁弱の長い小説でした。読み終えれるかな?と心配でしたが大丈夫でした。うん。まぁ良かったかな。最後まで読めたし。★4ほどでしょうか誰か読んだ人、どうでしたか? コレと言ってレビューは無いかも私。
仮想儀礼〈上〉 Amazon書評・レビュー: 仮想儀礼〈上〉より
4103133619
No.27
(4pt)

「信じる」ことの無限のパワーと恐怖

結構分厚い上下2巻の単行本を5日で読了。1998年の著作「夏の厄災」以来、久しぶりに著者の作品を堪能した。自ら撒いたタネによって職を失い行き倒れ寸前まで身を持ち崩した二人の男が、あこぎな金儲けを企んで怪しげな新興宗教を立ち上げる。そして本人達も戸惑うほどのスピードでそれが大きな宗教団体に成長し、やがて最後には...。身内の法事などを除き普段ほとんど宗教に縁の無い生活をしている自分にとって、怪しい新興宗教を取り巻く魑魅魍魎たちの世界がまず何よりも新鮮で興味深かった。しかも、控えめながら克明な筆致によって著者はそのおどろおどろしい世界に見事なリアリティを与え、まるで実在するモデルを元にしたドキュメンタリーのような印象を読み手に抱かせる(卓越したその技法は「夏の厄災」でも遺憾なく発揮されていた)。作品の核をなしているのは、「教祖」である男の心理描写だと思う。宗教団体立ち上げ当初の脂ぎった野心から始まり、それは自信、躊躇、良心の呵責、達観、絶望と、様々に形を変えて変遷を繰り返す。新興宗教という題材からすればオカルト的で軽薄な展開に陥りそうなものだが、その生々しい心理描写がこの作品に深淵で味わい深い厚みを加えている。結局著者が語りたかったことは、「信じる」ということの無限のパワーと、それが究極の形をとった時の恐ろしさではないだろうか。その人間心理の闇を見誤った「教祖」が迎える結末が、圧巻である。
仮想儀礼〈下〉 Amazon書評・レビュー: 仮想儀礼〈下〉より
4103133627
No.26
(4pt)

たぶん作者は小説と宗教を重ね合わせているのだが、通俗の域を抜けない恨みが残る

 小林信彦『ぼくたちの好きな戦争』プロローグに、ベルガウル島で玉砕を覚悟した中隊長が、傍らの少尉に辞世の句の披露を促す場面がある。少尉からお先にと譲られ、ではと聞かせたのが〈環礁に寄せ来る波を眺めつつ皇国の栄祈らむ我は〉。続いて少尉が〈大君の御楯となりて捨つる身と思へどなほも神風を待つ〉と詠むと、次の行に「む、む」。これはお笑いコントの一つの定型だが、小林は説明抜きでその笑いを成り立たせるだけの歌を作っている。
 何でこんな話をするかと言えば、本書に落ちぶれた性格破綻の元・芥川賞作家が登場し、主人公の教祖がこの男に教団機関紙への短文寄稿を依頼する件りがあるのだが、期待せずに受けとったその文章について次のように描写される。「そこで使われていることばの一つ一つに、美しい狂気が宿っている」「明らかに普通の人間の文章力とは格段の差があった。ほとんど天才的と言っていいような、きらめきにあふれていた」「絶望の淵で聖泉真法会と出会う、その感動が、素人臭い泣かせではなく、煩悩から逃れられぬ人間の弱さと悲しさを通して主知的に描かれ、仏教説話をからませて、単なる告白録を越えた一編の物語として仕上がっている。しかも枚数はわずか三枚半だ」(上p198)。しかしもちろん、そこには男の書いた文章そのものは1行たりとも引用されていない(他方、宗教分野に強いらしい安藤という「ルポライター」(下p234)がいて、彼が教団について書いた文章は引用されている(下p263)。ただし引用の直後、主人公は「何もわかってねえ」と呟くのだが)。
 実はこの種の描写は小説にはよくあることで、確か村上龍が『コインロッカー・ベイビーズ』のハシの歌について、小説なら「その歌に聴衆は魅了された」で済むが、映画では嘘がつけないみたいなことを書いていた気がする。ただ、言葉の有するそのような虚構性というか、いやむしろ出鱈目さとか荒唐無稽さと呼ぶべきかもしれない性能に意識的であることは、ジャンルを問わず、現在を生きる作家が備えるべき美徳ではないだろうか。
 端的に言って、元・芥川賞作家の文章を空疎で無意味な形容を連ねて表象しようとする作家の言葉が、他の箇所では何らかの意味を持つ充実した表現や描写に到達していると考えるのは難しい。ただし、この小説の言葉がそのような知性や強度を欠いていたとしても、まさしくゲームのように、いったん中に入り込んでしまえば終わりまで駆け抜けたくなるように仕上がっているという意味では、達者だと思う。
仮想儀礼〈上〉 Amazon書評・レビュー: 仮想儀礼〈上〉より
4103133619
No.25
(5pt)

流れるような文章に乗って一気読みが可能

これだけ分厚い本で、しかも上下巻ともなると、内容はかえって薄いんだろうな、と思っていたのですが、どうしてどうしてw
無駄な文章や場面はまったくなく、しかもスムースに読み進めてしまえます。
これは明らかに作者の力量の凄さなのでしょう。
現代社会では宗教に限らず、株やパチンコ、競馬、酒、携帯電話?など個人がはまり込んでしまうものがたくさんあります。
宗教の話と思わずにぜひ一読して欲しい本です。
仮想儀礼〈上〉 Amazon書評・レビュー: 仮想儀礼〈上〉より
4103133619
No.24
(5pt)

リアルで残酷でありながら、美しい理想。

 とんでもなく過酷な状況に直面することによって、凡庸で卑俗な男が、現代では困難に思われる、純粋な宗教的境地にまで到達する。
 この枠組みは1998年に出版された同じ作家の手になる『弥勒』と同じです。
 しかし『弥勒』が日本人にとって明らかに別世界であるチベット周辺を舞台にしたのと異なり、本作は現代日本が舞台であるため、より一層リアルであり、読者は嫌でも自分をかえり見なくてはなりません。
 篠田節子の描く人物は、完全な善人でも完全な悪人でもなく、完全に愚かでもなければ、完全な賢者でもありません。まさに現実の人々の等身大モデル、あり得る我々です。
 にもかかわらず、主人公は否応もなく人間的成長を遂げてしまう。
 状況があまりにも過酷であり、それが避けようがなく、まさしく実際に起こりそうなことだから。
 とても残酷な話でありながら、この結末に、読者はある種独特の感動をえることになるでしょう。
仮想儀礼〈下〉 Amazon書評・レビュー: 仮想儀礼〈下〉より
4103133627
No.23
(4pt)

どっ迫力

宗教の内容は難しくてわかりずらい。 が、とにかく、展開の速さ、えぐさに引き込まれる。 最後の終わり方も楽しめる。 集中したい人にはオススメです。でも、宗教の説明が長いので、めんどくさがりやの方にはオススメできません。
仮想儀礼〈上〉 Amazon書評・レビュー: 仮想儀礼〈上〉より
4103133619
No.22
(5pt)

寝不足覚悟

最初 割に軽い感じで始まります、が、 段々事態が 大掛かりな事になっていきます、 どうなるの、どうなるのと 気になって 読み進めることになります、凄く面白いです。内容は他レビューにゆずります、では 時間のゆとりをもって覚悟を決めて仮想儀礼の世界観へ 行ってらっしゃーい迷ってるあなた、読みたまへ。
仮想儀礼〈上〉 Amazon書評・レビュー: 仮想儀礼〈上〉より
4103133619
No.21
(5pt)

篠田節子に称賛

下巻の帯には「狂信が常識を食い破る」と太字で刷られている通り、狂気が下巻に充満している。が。その狂気が宗教だけに留まらない所に篠田節子の筆力が光る。
正直まやかしで作られた宗教が破綻していく展開は、教祖である鈴木正彦が逃げだいと切に願う心情に共感出来るくらい教団の内も外も崩壊してゆく。
怪しい宗教団体と世間から見なされた時、社会からの弾圧はここにも狂気が生まれるという恐怖が見事に描かれているのだ。
「空疎だからこそ、それを心底必要とする者が、まるで自らの鏡像と対峙するようにして、強固な中身を作り出していった」404頁の正彦が見た宗教の本質。
帯に書かれた正彦の叫び「もう勘弁してくれ、目を覚ましてくれ」は、読んでいる間私にも生じた感情になったくらいこの作品は重いしキツイ。
それでも読み終わった後評価が下がらなかったのは、締めである最後の一行で戦慄が走り、読んでいた間の嫌悪をも打ち消したからだ。
人間がいかに脆く弱い側面を持つのか私たちは知っている。
そこに読み応えある重量感ある作品を読む醍醐味を味わったことがある人なら、この作品を描ききった篠田節子に称賛を称えずにはいられない作品だと思う。
仮想儀礼〈下〉 Amazon書評・レビュー: 仮想儀礼〈下〉より
4103133627
No.20
(5pt)

「宗教」の真相へ

この下巻はすごい。「ゲーム」として捏造された「宗教」が、迫害されたコアな女性信者たちの間で完全な実体と化し、やがてその「教祖」の心身をも支配していく過程を刺激的なストーリー展開にのせ、説得的に描き出している。苦痛すぎる現実的な不幸からの逃走と狂気じみた妄想に、それらしい「教義」と「儀礼」が形を与え、やがて暴走していくとき、何が起るのか、その実情を著者は巧みに小説化した。
そうした息を呑むような「仮想現実」のなかで、しかしなお現実と虚構のはざまを行き来しつつ苦悩する主人公の姿が、誠に立派であった。自分の軽率な思いつきにより精神を呪縛され破滅していく人々を、最後まで引き受けるという責任の自覚が、ついには心底からの敬虔な「祈り」を彼に自然に行わせるに至る。あくまでも人間としての「常識」をまっとうしようとする誠実な態度が、結果として「常識」を超えた信心の次元を切り開く。
「宗教」とは何か。エンターテイメント小説という体裁でその真実に肉迫しようと試みかなり成功した、これは稀有な傑作である。
仮想儀礼〈下〉 Amazon書評・レビュー: 仮想儀礼〈下〉より
4103133627
No.19
(5pt)

ページを捲る手が止まらない!

発展を遂げた団体が、今度は破滅していく様を描いた下巻。
教祖の正彦の思いとは違う方向に、どんどん堕ちていく。
ここが凄い…。
いったいどうやって結末を迎えるのかと、ページを捲る手が止まりません。
信者からも見放され、落ちぶれて、また一文無しになる正彦を予想していましたが、そんな簡単には終わってくれませんでした。
正彦の思惑からどんどん離れ、信者の中でどんどんと違うものに成長し暴走していく。
想像以上に悲惨な最後でした。
新興宗教の様々な事件が起こるたび、感じていた疑問。
何故、人が宗教に頼り、落ち、狂っていくのか。
その様子がありありと描かれ、疑問の一部を解いてくれました。
本書に描かれた様々な信者たちの姿が非常にリアルに感じられたのは、著者の取材力と描写力の為せる技でしょう。
とにかく凄い作品でした。
上下巻、900ページ超ですが全く飽きることなく、一気に読みました。
仮想儀礼〈下〉 Amazon書評・レビュー: 仮想儀礼〈下〉より
4103133627
No.18
(5pt)

心が壊れてゆく恐怖‥‥

作られた虚構でしかない新興宗教団体。
しかし、そこで人間の営みが行なわれれば、虚構だったはずのものが否応なく現実となって、ひとりひとりを苦しめてゆく。
信者の盲信と暴走、それを止められずにどんどん追いつめられてゆく教祖。そして、ついには最悪の結末が‥‥。
心が壊れてゆく。
団体そのものが壊れる、ということ以上に、そこにかかわるすべての者の心が壊れてゆく。
それを深く描いた小説である。心理描写が非常に巧みであった。
ひとりひとりの登場人物の、リアルな描写も際立っている。
小説そのものも虚構ではあるが、すぐ目の前で現実にその場面が繰り広げられているような、ある意味で「ぞっ」とするような凄みのある小説だ。
仮想儀礼〈下〉 Amazon書評・レビュー: 仮想儀礼〈下〉より
4103133627
No.17
(5pt)

アイタタタタ・・・

ページをめくるたびにアイタタタタ・・・、と目をつぶってしまうくらい痛い本です。こんなに痛い本をよく書かれるものだと恐れ入ります。主人公たちのこれからの生活にエールを送らずにはいられません。
仮想儀礼〈上〉 Amazon書評・レビュー: 仮想儀礼〈上〉より
4103133619
No.16
(5pt)

見事

新興カルトの運命を中心に据え、人々の心の動き、社会の思惑を交え描かれている。構成も引きもリアリティも、作家がかなりの腕を持った人物であることを物語っている。それでいてエンタテインメントとして成立しているのだから凄いの一言につきる。だがしかしここに描かれていることは新興カルトのみならず、『古参の』宗教にも当てはまる。実は由緒あるというアレらの宗教も新興カルトも大して変わらない構造なのだ。信者総数が膨大で、内包する犯罪者の数よりも模範的な信者の数の方がいくらか多いという一点しか違わない。解体することが出来ないほどに膨れ上がったカルト。それが古くから続く宗教の実体のひとつだ。2000年頃に、『カソリックの教会関係者が孤児院の少年たちを強姦していた』というニュースが世界を駆け巡った。神父ら4000人以上の教会関係者の凶行。被害者数は1万5千人以上にものぼった。判明したものだけで。さらにこの少年強姦は1600年代には書物にも残されている古くからの根深い問題だという。人は道に迷うとき、事故や病気に見舞われたとき、とかく安易によりどころを求めがちなものだ。しかし、それは仕方のないことだし何かを信仰することも時には役立つ。だが信仰とはおうおうに麻薬的であることも把握しておかなければならない。
仮想儀礼〈上〉 Amazon書評・レビュー: 仮想儀礼〈上〉より
4103133619
No.15
(5pt)

力作ですよ〜

長〜い大作ですが
飽きさせず破綻なく最後まで持っていく筆力はお見事です。
主人公とその相棒の人物造形がうまくてリアルだし、
なにより二人のキャラに好感が持てるのでイヤにならずに読めました。
男性の作家なら必ず書きそうなありがちなハーレム的な描写もない。
世間のしくみもよくわかって書かれていて(著者は元公務員だそうですね)
とにかくげっそりするとこが少なかったです。
ラストの後味もよい。
ただどうでもいいことですが
女性の服装の描写が?????
ファッションに興味のない著者なんでしょうか。
くわしく描写されるほど、意味不明な感じになります。
オシャレでハデな服装を表現しているらしいのに
なんかすごくダサいカッコだったり。
ちょっと惜しい。
仮想儀礼〈上〉 Amazon書評・レビュー: 仮想儀礼〈上〉より
4103133619
No.14
(4pt)

リアルすぎて怖い

簡単なあらすじは、普通の公務員だった主人公が、ゲームのシナリオのアルバイトで小銭を稼いでいたが、ある担当者から乗せられて、脱サラする。公務員という安定を求めて結婚した奥さんはその時点で離婚。学生時代に少し体験したり勉強したりした宗教の知識で8000枚の壮大なシナリオを書き上げるが、その仕事自体が架空の話だったという事で、すべてを失ってしまう。
失意の中、自分をだました担当者と道で出くわし、なぜか共同生活が始まり、冗談でネット上に新しい宗教を立ち上げる。
最初は簡単な人生相談のようなメール対応だったのが、集会所を創ったりして人が集まりだし、バーチャルからリアルになっていく。
色々な偶然やラッキーが重なり、当初50人で食べていける、300人でベンツに乗れる…という軽い目標があったのだが、はるかにそれを上回る信者と金が集まる。
絶頂期を迎えたら、落ちていくのは世の常。別の宗教団体からの弾圧、妬み、脱税などの悪への誘い…。
そのような外的要因だけではなく、内部の信者の色々な問題が山ほど出てくる。
最終的に教団は社会から抹殺されてしまうのだが、話はそれで終わらない…。
オウムまで行かなくても、この話に近いような事は、知られていないだけで日常茶飯事で行われているのだろうと思えるくらい、リアルなストーリーに仕上がっています。
特に組織が崩壊してから、それでも残っていた信者たちの行動は、あのオウムのニュースで見た、トランス状態で体がゆらゆらしたり、バタンバタンのたうちまわったり…というシーンの再現。なぜあんなことになるのだろうと不思議に思っていたし、何かやらせではないのか?と思ったりしたが、この本を読むとあの状態に陥るのは無理もないというか、理解できるようになった。
この作者は、本当によく調べたと思う。世の中で実際にこんな事が起こっているのかもしれないと思わせる筆力には参った。
仮想儀礼〈上〉 Amazon書評・レビュー: 仮想儀礼〈上〉より
4103133619
No.13
(5pt)

宗教団体というものの危うさ

 ビジネスのつもりででっち上げた宗教団体(聖泉真法会)ではあるが,徐々に軌道に乗り,一時は7000人の信者を獲得するまでに至る。その聖泉真法会の教えは,密教を参考にでっち上げたものとはいえ,「仏は自分の内にある」というもので,それなりに魅力的なものに感じた。入信するからといって従来所属していた宗教団体から離脱する必要はないなど,微温的な教義は,詐欺的な新興宗教とは一線を画している。
 そんな聖泉真法会であるだけに,上巻の興隆期は読んでいて応援したくなるほどだった。家族の誰からも必要とされない主婦,統一協会を思わせる団体に入って心がボロボロになった女性。そうした人たちが「癒し」を受けられる場としては,やはり宗教と,宗教で結び付いた仲間との生活しかないのだろう。
 そうであれば,正彦らのでっち上げた聖泉真法会は,それほど悪い存在ではなかったと思われた。
 人が宗教に頼らざるを得ない心理的・社会的状況や,宗教団体が本質的に持たざるを得ない危うさなどをリアルに描いた作品であり,分厚い上下巻ではあるが,一気に読み切ってしまった。
仮想儀礼〈上〉 Amazon書評・レビュー: 仮想儀礼〈上〉より
4103133619
No.12
(5pt)

何度も楽しめます。

この小説は三回楽しめます。
最初は喜劇として。食い詰めた元公務員と元編集者の二人がその場の思いつきで始めた新興宗教が軌道に乗り出すまで。
次に悲劇として。迷いの末に救いを求めた若い信者がさまよった挙句一人で死んでいくまで。
そして最後がホラーとして、既に主導権をなくした教祖が信者に引きずられるように事件を起こしながらさ迷ってラストに流れ込むまで。
とにかく長いですがそれだけのことはあります。
仮想儀礼〈上〉 Amazon書評・レビュー: 仮想儀礼〈上〉より
4103133619
No.11
(4pt)

仮想化された社会における現実的破綻

篠田節子さんの作品のなかでは、「ゴサインタン」、「弥勒」などの系譜に属する宗教ものといえるでしょう。内容が重いということも、共通しています。
主人公たちは金もうけを目的に軽い気持ちで新宗教を立ち上げますが、そこに「生きにくい系」の若者、超能力嗜好者、巨大教団の中年女性信者、不安を抱える中小企業の経営者などがこの順番に、吸い寄せられるように集まり信者になっていきますが、問題が発生し教団が社会からバッシングを受けるようになると、その逆の順番で信者たちが潮が引くように去っていきます。
てっとり早く教義をこしらえるために主人公がつくったのは、チベット仏教をベースにした密教系の教義でした。著者は「ゴサインタン」や「弥勒」でもチベット系密教をとりあげており、チベット仏教に対する関心が強いのでしょうか。
「ゴサインタン」では、自然発生的な小教団の中心になるネパール出身の女性は、神がかり的な能力を持っていましたが、今回の作品では教祖となる男性主人公がきわめて世俗的な人物であるのは現代社会の風潮を反映しているのかもしれません。
彼がむしろ理性的であり、ときとして良心的ともいえる人物であるため、かえってなすすべもなく、数人の女性信者たちの宗教的狂熱に巻きこまれ、破綻へと突き進んでいきます。
長編ですが、一気に読ませてくれます。「ゴサインタン」や「弥勒」に比べればやや軽めの読後感ですが、多くのことを考えさせてくれる力作であることはまちがいなく、読んで損のない作品だと思います。
仮想儀礼〈上〉 Amazon書評・レビュー: 仮想儀礼〈上〉より
4103133619
No.10
(5pt)

類稀れな筆力、素直に感動。読後感もよし。

最近は面白い小説に当たらずにすっかり小説の食わず嫌いになっていた自分だが、新聞の書評につられて手に取ってみた。
数ページで引き込まれ、下巻のラストまでほぼ退屈せずに読むことができた。
上巻ではもっぱら二人の失業者による宗教ビジネスの立ち上げ、それから思いの他とんとん拍子で拡張していく様を描写。下巻ではその劇的な衰退が描かれる。どっちの方向もできすぎ(たとえば何の信仰心もないはずの元役人は舌を巻くほどうまく教祖を演じ、信者側では勝手に奇跡のようなことが起こる)の感があるが、それは所詮「小説」だということで読者は納得するのだろう。実際には数年のスパンにわたるストーリーなののだが、主な出来事が凝集されているので上下にわたる長編だといってもさながらダイナミックなジェットコースターに乗っているように新興宗教体験(信者の側ではなく作り手の側から)ができる。
登場するキャラクター群もいわゆる「生きづらい系の」壊れかけた若者から孤独な金持ち、企業経営者まで多岐にわたり、それぞれのリアリティも伝わってくる。特に最後に残る五人の女性信者にはその狂信的な言動を超えて親しみを感じてくるほどだ。
また著者の仏教教義、儀式から法律、経営に関する素養、様々な土地の描写から確かな取材力とそれを物語の中での編集力もうならされる。
最後のくだりでは静かな感動さえ覚え、しばらくこの物語世界から離れることができなかった。お話の内容は全然ロマンチックではないのにね。。
こんな作家が日本にもいたんですね。今まで「直木賞作家」には裏切られてばかりいたので、素直に感動。
仮想儀礼〈上〉 Amazon書評・レビュー: 仮想儀礼〈上〉より
4103133619