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聖餐城
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聖餐城の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.83pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全6件 1~6 1/1ページ
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これはお勧め。読んだ後にヨーロッパの歴史本の何冊か思わず購入・勉強し直しました。 | ||||
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大長編といえる分量だが 読後感はまず「続きはないのかぁ」というものでした。 主人公の波乱万丈でありながら圧倒的な現実感のある物語は 面白く、心に深く残りました。 若い世代から年長世代まで歴史小説好きなら まず楽しめると思います。 誰かドラマ化かアニメ化しないかなぁ。 | ||||
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三十年戦争を描いた作品は、百年戦争のそれに比べて、意外なほど少ない。 戦争そのものが、宗教戦争、他国の侵略戦争、傭兵の無秩序な破壊略奪と、その性格を変えていったために話としてまとめにくいことや、百年戦争におけるジャンヌ・ダルクのような絶対的なヒーロー・ヒロインが不在なのがその原因かもしれない。 それを克服するために、この作品では、ユダヤ人の富豪の少年イシュアと傭兵となった少年アディの無名な2人の人物を主人公としている。 イシュアは、物語の初めで過酷な体験をし、人工人間「ホムンクルス」かと思われるほど老成した人格となり、醒めた目で将来を見通す力を獲得する。そして物資補給を通して、戦争そのものをも支配するようになる。 一方アディは性質を千変万化させる戦争の中で、心酔する傭兵隊長に愚直なまでに忠実にまっすぐ成長して行く。 この小説は、アディのビルディング・ストーリーであると同時に、戦争の内・外の2つの視点を駆使することで、醜く変貌して行く戦争の姿を描き出す作品となっている。 壮大な物語。作者の構成力、描写力に打ちのめされました。 | ||||
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この本を昨年図書館で偶然に見て読みたくなりました。『聖餐城』というタイトルに惹かれた訳ですが、読んでみて30年戦争についての小説だと知りました。 30年戦争というのはドイツ国民の約三分の二が犠牲になったということ、カトリックとプロテスタントの宗教戦争だったということしか知りませんでしたが、この本を読んで当時の実情がよく分かりました。 ドイツの文豪であったシラーは『ヴァレンシュタイン』(岩波文庫)で30年戦争のことを書いています。 またその当時生きていたグリンメルスハウゼンは『阿呆物語』(岩波文庫)というのを書いていますので、30年戦争についてもっと知りたい人は参考になるかもしれません。 皆川さんの小説は歴史的に詳しいので、大変参考になると同時に臨場感にあふれていると思います。 私はもっぱら西洋の歴史に関する内容が書かれた本しか読んでいません。 そのうち何かのきっかけに日本物も読むかもしれませんが。 | ||||
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皆川博子のヨーロッパを舞台とした作品「死の泉」や「冬の旅人」の20世紀とは 時代が異なり、17世紀の神聖ローマ帝国、三十年戦争を舞台とした少年の成長もの、 とも言える作品か? 同じ作者の15世紀の戦乱中の日本を舞台とした「乱世玉響」と同じく、 全編には透明な寂寥感が漂よっている。 「三十年戦争」と言えば教科書で身につけた知識ではグスタフ・アドルフ、 傭兵隊長バレンシュタイン、ウェストファリア条約と言った歴史上の人物、政治の流れ ぐらいしか思い浮かばない。 が、本書では戦乱の中で生まれ、踏みにじられる側ではなく、 踏みにじる側の傭兵になることを自ら選び取り、成長していく 主人公アディを通じて、ユダヤ人、刑吏といった差別された人々との関わり中で、 戦争が日常となった時代のひとびとの生活と感情がまざまざと描かれ、 教科書的三十年戦争から血肉を持ったものとして三十年戦争がイメージできる様になった。 アディが純情、というか生まじめすぎるので星ひとつ落とします。 フロリアンとアディの別れの場面なんぞは美しすぎます… | ||||
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戦争にくっついて回る最下層の傭兵達。その傭兵達の尻にくっついていくその家族、 あるいは彼らを相手に商売する酒保や娼婦達の集団である“輜重隊”のどん底の生活の中で 偶然出会った「馬の胎から生まれた少年」アディと「ユダヤの名家コーヘン家の末弟」イシュア。 国内諸侯に対する皇帝の権威と求心力の失墜した神聖ローマ帝国の末期 対立するキリスト教の新教徒と旧教徒の宗教戦争が、近隣各国の派兵や干渉を呼び、 国を超えた情報、流通網を持ち戦争自体を金儲けの手段と見なすユダヤ商人の台頭と 傭兵による国内の蹂躙によって国内が泥沼化して疲弊していく30年戦争を舞台に、 本来出会うはずのない二人の少年が、自らの出自に悩みながらも苦境の中で人生を全うする物語。 世界史的にあまり扱われていない30年戦争を、その時代背景と宗教的な歴史を丁寧に描き、 登場人物も実在の人物から架空の人物まで魅力的に彫り下げ、また練り上げられています。 綿密な資料の研究と精細な筆致、骨太なストーリーで読み応えもあり、一気に読めました。 タイトルの“聖餐”とは、イエスの最後の晩餐の逸話を基に信者達が口にするパンとワインの事ですが、 実はその起源はキリスト教以前に遡ると言われ、キリスト教の新教と旧教でも教義が違っています。 もし仮に、広義で聖餐とは神の恩寵とそれによってもたらされる富や食物である、とするならば、 この物語はまさに聖餐とその解釈を巡って、上は皇帝貴族から下は商人傭兵達、さらに賤民まで あるいは新教徒と旧教徒そしてさらにユダヤ教徒が対立し、入り乱れて争う姿であると言えます。 その中で、登場人物達が自らがどうあるべきか、また、どう生きるべきかを見つめ、 力強く生きようとする姿は現代の私達の心を打つものがあります。 私達もまた聖餐城を探して戦っているのかも知れません。 重厚な装丁に負けぬ、戦場の大地と血の臭いに満ちたヨーロッパ史を基にした傑作です。 | ||||
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