■スポンサードリンク
蜻蛉の夏
新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!
蜻蛉の夏の評価:
| 書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.46pt | ||||||||
■スポンサードリンク
Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全1件 1~1 1/1ページ
| ||||
| ||||
|---|---|---|---|---|
| 戦国時代を舞台にした時代小説と聞いて侍の剣劇をイメージしたのですが、 本作は「止観」と呼ばれる超能力のようなものを使う道士たちが主人公とのことで、 このようなタイプの時代小説はあまり読んだことがなく新鮮でした。 「止観」にもいろいろな流派があり、 「水観」の円四郎、「炎観」の平助、「月観」の桂月、 以上異なる「止観」の使い手の若い三人が主人公の立ち位置です。 まず物語の冒頭から、 主人公たちの過酷な生い立ち、「止観」を習得するための師匠との命がけの特訓、 それぞれの道士たちの生き様や信念、乱世に翻弄される人々の有様などが描かれており、 全体的にハードボイルドで重厚な筆致で物語世界にぐいぐい引き込んでくるので、 さすがは直木賞作家の筆運びだと思いました。 ただ、正直に言うと、この部分が一本調子のうえに長すぎる! 6頁から174頁までの第一章がそれに該当するのですが、 ず~~~っと同じ雰囲気、同じリズム、根底は似たり寄ったりの人生訓描写が続きます。 先ほどは冒頭から物語世界に引き込まれたと書きましたが、 50頁くらい読み進めてからは、 「もう作品の設定は理解したし、世界観も十分に伝わってきたから、 いい加減本筋のストーリーを始めてくれません……?」と逆に冷めていきました。 第二章に入ると道士たちがそれぞれ織田信長とつながりや因縁を持ち始め ようやくストーリーが駆動していきます。 戦国時代は個人的に好きなのでここから興味が持ち直したのですが、 第一章のハードボイルドな雰囲気かつ奇想天外な道士の世界観から、 第二章以降はわりとオーソドックスな歴史小説かのごとく 信長の合戦史をなぞっていくような雰囲気が強くなっています。 そしてその両成分の結合があまりうまくいっていないような感じで、 構成に若干のぎこちなさを覚えました。 織田信長 松永久秀 明智光秀 明智秀満 秋山虎繁 おつやの方 本作には数多くの歴史上の人物が登場しますが、 上記の6人、特に織田信長は物語に深くかかわってきます。 多分にフィクション上の人物ですが、果心居士もキーパーソンです。 ただ気になったのは、 信長、久秀、光秀は、エンタメ系に登場する彼らの人物像の最大公約数的な 「いつもの彼ら」なんですよね。 正直に言って本作独自の切り口や深みはなく、あまり魅力的には描けていないと感じました。 これは道士たちの方を際立たせるためにあえてしているのかなとも思ったのですが、 信長の人物造形がありきたりな点は、作品全体の弱点にもなっています(後述)。 対する道士たちの方も、そこまで言うほど魅力的かというとちょっと心もとないです。 個人的には、「炎観」の平助だけは読んでいて楽しかったです。 3人の中で一番悲惨な境遇で、なし崩し的に信長の大量虐殺に手を貸してしまい 自らの所業に苦しみながら、それでいて抜けていて憎めない面もあって、 お茶目なギャグ描写もこなす彼は誰もが応援できる人物だと思います。 というよりも、第二章以降は物語の推進力を平助に頼りすぎているように感じます。 私がこの作品を楽しめたのは、彼が生き生きと活躍していた時だけでした。 結論を先取りすると、この作品は終盤にかけてかなり失速しています。 平助が織田軍に所属して働いている中盤は、 比叡山焼き討ちや一乗谷の戦いなど、彼の「炎観」を用いた迫力のあるシーンが満載ですし、 「水観」の円四郎や、一乗谷の戦いで(脈絡に乏しいながらも)登場した「風観」の使い手などとの対決もあります。 「止観」の使い手同士の派手な戦いや緊迫したやり取りでぐいぐい引き込んできますし、 互いの視点を絡ませることによって飽きない場面展開が続いたり コメディめいたすれ違いの描写などもあってとても楽しめたのでページをめくる手が止まりませんでした。 己の所業に打ち震えながらも、居心地のいい明智家臣団の中で初めて自分の居場所を見つける 平助の描写もとてもよかったです。ほかの二人の道士と比べて内面の深堀りがうまくいってると思います。 結局、平助は信長の苛烈さについていけずに織田家から退出するのですが、 この時点で平助自身の物語がひと段落し、 それと同時に物語全体の推進力がガタ落ちになっていきます。 後半に行くほど描写の密度が薄くなり、駆け足で史実の表層をさっとなぞって、 肝心の道士たちはその片隅でちょこまかと動いているだけの感じです。 また、平助が織田家から罷り出た直後から 3人の道士が協力関係になってともに織田家に抵抗していくのですが、 そこに至る経緯や意気込みがなし崩し的であまり熱くなれませんでした。 3人の道士がほどよい緊張関係にあって「止観」バトルが繰り広げられていた 前半の方がよほど読みごたえがありました。 また、前述の通り本作の信長像がありきたりの上、 3人が協力関係になって以降は信長自身が登場することがほとんどなく、 巨大な敵としての存在感が後半に行くほど減っていくので、 それに伴って道士の共闘もあまり盛り上がりません。 実際、道士たちは信長軍に徐々に押され始めていくのですが、 これは蜻蛉である道士たちの敗北の美学を意識的に描いているというよりは、 エンジンが止まって推進力の無くなった飛行機が ふらふらと迷走しているだけのような印象を私は受けました。 ただ、最後のシーンである本能寺の変と道士たちの絡ませ方は 割とうまくいっていたしそれなりの余韻も残るので、 個人的にはそこそこ満足できました。 参考文献一覧に歴史系の文献はあまりありませんが、 永禄の変に直接関与していたのは松永久秀ではなく嫡男の久通の方だったり、 織田家と長宗我部家の取次役としての光秀の立ち位置をおさえていたり、 筆者の方は戦国時代についての取材は普段からしているのだなと感じました。 | ||||
| ||||
|
■スポンサードリンク
|
|
|
新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!




