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(短編集)

町かどの穴 ラファティ・ベスト・コレクション1



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町かどの穴 ラファティ・ベスト・コレクション1の評価: 3.67/5点 レビュー 6件。 Cランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.67pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全6件 1~6 1/1ページ
No.6:
(5pt)

kindle版が紙の半額で購入できました(期間限定)

欲しかったのですが、大部分の作品を既に持っていたので見送っていました。しかし今日見たらkindle版が紙の半額くらいになってました!! 今日は12/26なのでクリスマスプレゼント?? コレクション2冊まとめて購入しました。とくに「九百人」収録作はハードカヴァーしか持ってないので携帯端末で読めるのはうれしいです!
町かどの穴 ラファティ・ベスト・コレクション1 (ハヤカワ文庫SF)Amazon書評・レビュー:町かどの穴 ラファティ・ベスト・コレクション1 (ハヤカワ文庫SF)より
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No.5:
(5pt)

「町かどの穴」は、どこにある?

本書の表題となった「町かどの穴」って、町かどの歩道にあいてる穴?
本書の表題が気になりました。表題に選ばれた理由は何でしょう?

「道路の穴じゃないよ、ホーマー」(17頁)
だったら、どこの穴?

2021年に刊行されたアメリカ版のタイトルは、“the best of r. a. lafferty”
そのタイトルのどこにも「町かどの穴」なんてありません。
それもそのはず、作品「町かどの穴」は収録もされていません。
編者の編集方針なのでしょう。

本書(日本語訳書)の編者「牧 眞司」さんには、
編集上の何か思い入れのようなものがありそうに感じました。

牧さんによる「編者あとがき」の中に、

「第一巻を『アヤシイ篇』にすることは揺らいでいない。ラファティと言えば、アヤシイ世界でしょう。私たちが暮らしている日常の外にアヤシイ世界があるのではなく、現実そのものがアヤシイのである」(547頁)

やっぱりね。

「ラファティは『禁酒によってポッカリと空いた穴を埋めるため』に小説を書きはじめたそうだ」(548頁)

禁酒による禁断症状のひとつに<自意識の分裂>がありそうです。このへんがアヤシイぞ。
「町かどの穴」とは、行きつけの町かどの穴場(酒場)のことかもしれません。

と思いながら、冒頭作品「町かどの穴」を読んでいくと、
「すぐその角」(15頁)の医者のうちが「町かどの穴」のようにも思えました。
「町かどのコート医師の家」(16頁)

「『わしはこのブロックの住人たちの進入点として、バス停のそばに穴をこさえた』とディオゲネス」(26頁)

あらら。町かどの「バス停のそば」に作られた、その「進入点として」の穴は。
バスで乗り降りする人が落っこちやすい場所にある穴。落とし穴。

主人公のホーマーは毎日朝晩、バスで通勤しているのでしょうね。
夕方、疲れて帰ってくるときに「バス停のそば」の自分で作った
「穴」に落っこちてしまうのでしょう。

「偶然発生的な進入の穴や方法はたくさんあるが、計画的なそれは、わしのこしらえたそれだけなんだよ」(27頁)

もしかして自慢? 自慢にならないと思いますけど。

この短篇小説「町かどの穴」も、著者ラファティ自身によると、
計画的にこしらえたオリジナル作品ということなんでしょう。

それにしても、ラファティという作家は、
「前衛や先鋭ではなく、むしろ古い物語の系譜につらなっている」(542頁)
と編者の牧さんは位置付けています。

作品「町かどの穴」の結論。「おれの女房は大グモだ」(33頁)
悪夢です。

主人公の女房レジナは医者にききます。
「『あたしがこのごろ見ているあのたのしい夢を、なんとかやめられないものかって?』レジナがきいた。『もう、つくづくうんざりなんです。せんによく見た、あの鳥肌立つような夢にもどれません?」(20頁)

「おれの女房は大グモだ。おれをガツガツ食べてるよう。もう手足がなくなっちまった。こんなことなら、はじめの悪夢のほうがましだよう!」(33頁)

夫婦そろって悪夢のほうが好きみたいです。絶句。

「女王どくぐも(リコサ・レジナ)があたしの学名」(32頁)
女房レジナは、女王どくぐもだなんて! 読者は読んでて鳥肌が立ちました。

冒頭作品「町かどの穴」は、本書『ラファティ・ベスト・コレクション1』の
最高傑作だと思います。アヤシサという点で抜群ですもの。

編者の牧さんも、作品「町かどの穴」が、
このコレクション第一巻中の全19篇のうちでアヤシサ最高、ナンバー1だ
と思っているのでしょう。冒頭に配置しているのですから。

《備考》
<翻訳語の疑問について>
「ホーマーはドアの取手にいささかてこずった。どの校訂版にもあるというものではない」(9頁)

ドアの取手に対して、「校訂版」という日本語はおかしい。変だ。
ドアの取手は、本ではないので、「校訂版」には違和感を感じます。

もしかして誤訳か? とも思い、原文を確認しました。
「校訂版」に対応する原語は「recentions」でした。

誤訳ではありませんでした。
してみると、著者ラファティは意図的に「校訂版」という語を使ったということでしょう。
著者は、こんな風な逆説的な言い方をする作家のようです。

「バカだけど、かわいいやつ! 利口な犬などだれがほしいか!」(9頁)

校訂者は、著者の間違いを正して訂正するひと。作家の女房役。

ここではたと気づきました。
きっとホーマーの家のドアの取手は最近、具合が悪かったのでしょう。
だから奥さんが昼間に修理屋に頼んで、
夫に相談せずに勝手に、別のタイプの取手に交換させたのでしょう。

ドアの取手なんて、無意識でも開け閉めできるもの。てこずるほうがおかしい。

主人公の奥さん(レジナ)は、
夫の原稿を勝手に読んでイジル<校訂者>のような女性だったのでは。
「女王どくぐも(リコサ・レジナ)」のような女性なんて、恐すぎる。ブルブル。

間違っていても、すてきな文章は素敵です! 正しい文章など「だれがほしいか!」

初めてラファティの作品を読みました。いっぺんでとりこになりました。
第二巻の「カワイイ篇」を読むのが楽しみです。
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No.4:
(2pt)

私が好きなのは、ユーモアと奇想とSFとが見事に混合していた初期作品だけのようです、

私がSF小説を読むのは、基本的に、ユーモア文藝としてのSF小説を非常に愛しているためです。
そのため、「ユーモアと奇想とSFとが見事に混合していた」ラファティの初期作品を読んだ時には、非常に衝撃をうけました。

だが、その後のラファティ作品は、SF的なロジックが弱くなり、ストレートに笑える箇所も少ない、独自の「奇想小説作家」になってしまった。結果として、そういう作家、ラファティには、残念ながらあまり興味がもてない私、であることを再確認いたしました。
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No.3:
(3pt)

喜んでひとに勧められない

目次を一瞥した瞬間に思ったのは、このセレクトは決してベストではないし、この本ではじめてラファティに触れた読者はもう読まなくなるだろうな、ということ。
「編者あとがき」には「なるべく多くの読者にラファティの魅力がつたわるように企画した」とあるが、であれば並列的なベスト本を複数出版するのではなく、まず比較的とっつきやすく楽しい作品を集めた入門編的選集を出すべきだったのでは。
短編集初収録作品があるのは嬉しいが、これらもベスト本に含まれるべき作品というより、あくまでボーナストラック的な扱いが順当な作品だろう。
といったうっぷんを晴らすために以下、妄想の『ラファティ入門コレクション』を選んでみる。
  『みにくい海』(1961)
  『せまい谷』(1966)
  『断崖が笑った』(1968)
  『ブリキ缶に乗って』(1970)
  『また、石灰岩の島々も』
  『われらかくシャルルマーニュを悩ませり』(1967)
  『コンディヤックの石像』
  『うちの町内』(1965)
  『つぎの岩につづく』(1970)
  『太古の殻にくるまれて』(1971)
タイトルは『みにくい海』、カバーイラストと挿画は片山若子さんにぜひ。
町かどの穴 ラファティ・ベスト・コレクション1 (ハヤカワ文庫SF)Amazon書評・レビュー:町かどの穴 ラファティ・ベスト・コレクション1 (ハヤカワ文庫SF)より
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No.2:
(3pt)

従来からの読者にとっては「抱き合わせ販売」でしかない

長らく『ホークスビル収容所』収録作としてしか読むことができなかった「いなかった男」を含め、日本ではラファティの単著には未収録であった短編が収録されている。
しかし、これまで『九百人のお祖母さん』『つぎの岩につづく』『どろぼう熊の惑星』『昔には帰れない』を読んできた者にとっては、これら既存の短編集からの再録との、抱合せ販売でしかないところがツラい。
新しい読者を獲得したいなら、これまでの4冊はKindle版で再刊するなりした上で、未収録短編を集めたオリジナル短編集を1冊加えれば良いのでは?
それなら、従来からのファンも困らない。
せめて青心社版『子供たちの午後』等から、新たにハヤカワで新訳したものも収録するとか、もう少し「サービス」が欲しいところ。
本書と、ポーランド語原典からの新訳である『インヴィンシブル』(国書刊行会 スタニスワフ・レム・コレクション第二期)とを比べて、昭和の昔からのSFファンがどちらを先に買うか。
『インヴィンシブル』では?
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No.1:
(4pt)

珍無類の妙味! ラファティ短篇のよみがえりに、感謝します。

とってもユニークで、すっごく変てこ。面白いものは無類に面白いんだけど、分からんものはとことん分からない。レイフェル・アロイシャス・ラファティの、風変わりな短篇が19個、収められています。

本短篇集ならではのサービスだなと思ったのは、短篇集初収録となるラファティの作品が六つもあったこと。「今年の新人」「いなかった男」「苺ヶ丘(いちごがおか)」「カブリート」「その曲しか吹けない」「《偉大な日》明ける」の六篇が、それ。

先述したとおり、どこが面白いのか全く分からん作品がいくつもあったけれど、無類の味があって、なんとも言えず面白かった短篇もありました。「その町の名は?」「われらかくシャルルマーニュを悩ませり」「他人の目」と続く〈不純粋科学研究所〉シリーズの作品群が、その筆頭。初めて読んだ時から、「やあ、こいつは面白いね!」と気に入っているんだけど、今回久しぶりに読んでみて、「こいつはもう、別格と言ってもいいくらいにおもしれぇなあ」と、舌鼓(したつづみ)打つしかなかったです。
収録作品中、ほかに楽しめた短篇は、「町かどの穴」「クロコダイルとアリゲーターよ、クレム」「いなかった男」かな。

本短篇集収録作品は、次のとおり。カッコ内の数字は、その作品の初出年です。
 町かどの穴(1967)浅倉久志訳
 どろぼう熊の惑星(1982)浅倉久志訳
 山上の蛙(1970)浅倉久志訳
 秘密の鰐(わに)について
          (1970)浅倉久志訳
 クロコダイルとアリゲーターよ、クレム
          (1967)伊藤典夫訳
 世界の蝶番(ちょうつがい)はうめく
          (1971)浅倉久志訳
 今年の新人(1981)浅倉久志訳
 いなかった男(1967)浅倉久志訳
 テキサス州ソドムとゴモラ
          (1962)伊藤典夫訳
 夢(1962)伊藤典夫訳
 苺ヶ丘(1976)伊藤典夫訳
 カブリート(1976)松崎健司訳
 その町の名は?(1964)浅倉久志訳
 われらかくシャルルマーニュを悩ませり
          (1967)浅倉久志訳
 他人の目(1960)浅倉久志訳
 その曲しか吹けない(1980)山形浩生訳
 完全無欠な貴橄欖石(きかんらんせき)
          (1970)伊藤典夫訳
 《偉大な日》明ける(1975)伊藤典夫訳
 つぎの岩につづく(1970)浅倉久志訳

巻末の「編者あとがき」は、〈とってもアヤシイ、そして素敵なラファティの世界〉と題した牧 眞司(まき・しんじ)さんの文章。
編者によれば、ラファティ短篇集の第2巻『ファニーフィンガーズ』は〈カワイイ篇〉とのこと。2021年12月上旬、発売予定。
楽しみです!
町かどの穴 ラファティ・ベスト・コレクション1 (ハヤカワ文庫SF)Amazon書評・レビュー:町かどの穴 ラファティ・ベスト・コレクション1 (ハヤカワ文庫SF)より
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