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隠し剣秋風抄
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隠し剣秋風抄の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.54pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全37件 21~37 2/2ページ
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映画『武士の一分』の原作は、この本に収められている『盲目剣谺返し』だ。 そして当然のことながら、映画と原作はちょっと違う。 何が違うのかというと、原作の三村新之丞はキムタクほどかっこよくないのだ。当たり前だけど。 その代わり、生活感があってたくましく、それまでの人生を背負った「男」であり、「武士」なのだ。 美男子となっているのだが、そんな雰囲気ではないのだ。 新之丞は妻の加世を愛している。愛しているので、「男がいる」との噂に絶えられない。 武士の一分の大義の下に、憎い間男を成敗するのだ。 多分そうに違いない。 藤沢周平の小説で描かれる、真の武士、真の男というものは、そのような自身のプライドよりもっと大切なものをもっているのだから。 新之丞にとっては、加世の存在なのだ。 離縁するのも、万一に備えて、加世に難儀が及ばせないため。 憎い間男である島村は組頭という権力者なのだから。 その証拠に、見事、島村を討ち果たし、加世が戻ってきてくれたときに、喜んでいるのだから。 プライドよりもっと大切なもの、それを見つけてこその人生なのかもしれない。 | ||||
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「隠し剣」シリーズ第二段。主人公達の秘剣と男女の機微の融合が本シリーズの特徴だと思うが、本作は女性の魔性と清廉さを対比して鮮明に描いている印象。 「酒乱剣石割り」は酔う程に剣技が冴える主人公が痛快だが、さして効果的とは思えない主人公の妹の淫乱な転落物語を挟む所が本作の趣向か。「汚名剣双燕」は驕慢な女に振り回される主人公の悲哀に忸怩とさせられる。「女難剣雷切り」は女運の悪い主人公がコキュ役まで演じさせられる悲哀を滑稽味の中に描いたもの。「陽狂剣かげろう」は藩主の息子に許婚を奪われた主人公が陽狂を装っているうちに、本当の狂気に陥ってしまう様を描いた異色作。前二作と合わせ、現代にも通じるテーマが続く。「偏屈剣蟇ノ舌」は偏屈者の藩士を扱って「たそがれ清兵衛」を思わせるが、偏屈者だからと言って刺客役を仰せつかる構想は無理があろう。「好色剣流水」は主人公が本当の好色なので読んでいて共感が沸かない。女性だけでなく、男性の色欲と堕落を描こうとしたものか。「暗黒剣千鳥」は藩の権力闘争を背景に、主人公の婿入り話と暗殺劇を巧みに織り交ぜた佳作。「孤立剣残月」は過去に上意射ちを行なった主人公が四十を過ぎて、その弟の仇討ちの意志の噂を聞き、周囲に右顧左眄するが相手にされない様子をユーモア味で描いておいて最後に泣かせる心憎い構成。「盲目剣谺返し」は味見役として盲目となってしまった主人公とその妻の苦悩と夫婦愛を描いた秀作。「武士の一分」と言う言葉は有名になった。 バリエーションを付けようとしたものか、作品毎にレベルの差が大きい気がする。姉妹作に比べ凄みのある秘剣が少なく、人物設定やストーリー展開も物足りない気もするが、藤沢作品の味が堪能できる好短編集。 | ||||
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どの短編もおすすめであるが、私が出色と思うのは、暗黒剣千鳥と盲目剣谺返しである。 両編ともに、主人公とそばにいる女性のこれからが余韻となって非常に気にかかる。 とくに、盲目剣谺返しは、映画を見てみようかという気にさせる。 隠し剣シリーズを読んでいて感じるのは、藤沢周平の江戸時代への思いである。 主人公がいて、その妻あるいは婚約者がいて、 その二人の関係を通して江戸時代をうまく書いていると思うのである。 あるときは、江戸時代の風習に対するやりきれなさであり、 またあるときは、逼塞感であり。 こういう書き方って好きだなぁ。 藤沢周平といえば中年にならないとそのよさが分からないと勝手に思っていたが、 何冊か読んでみて、 高校生にぜひ読んで欲しいと強く思う。 | ||||
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私が読んだ藤沢作品2作目がこれです。 映画化されるのを良い機会に1作目は蝉しぐれを読みました。 この作品を読んだきっかけも映画化です。 この隠し剣秋風抄には9つの話が書かれており、一番最後の盲目剣谺返しが木村拓哉主演の武士の一分に映画化されています。最後にはどこかホッとしてしまうお話です。 どのお話の主人公も秘剣を操るのですが、暗黒剣千鳥と孤立剣残月が個人的には好きです。他のレビュアーの方が書かれているように、この作品のお話に出てくる主人公はみな、それぞれの武士の一分を守るために闘います。そしてその闘いの後、死に逝くものもいます。ですが、やはり私個人としては最後に希望の光が見えるような、この先を見守りたくなるようなこの2つのお話を特におすすめしたいです。 | ||||
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精神的に本を読むのが億劫になっていたときに、偶々出会いました。40頁ほどの短編が9本入っていますが、一編一編の読後の満足感と余韻は半端なものではありません。各編とも、良質な長編小説を読み終わった後のそれに匹敵するといっても過言ではなく、改めて読書の醍醐味と藤沢作品の素晴らしさを教えられました。(単純な私には、描かれた女性像はどれも官能的でした。個人的には、「偏屈剣蟇ノ舌」と「好色剣流水」、「盲目剣谺返し」がベスト3です。また、「陽狂剣かげろう」は、シチュエーションこそ異なりますが、小林正樹監督の名作映画である『切腹』を思わせるものがあります。)いずれにせよ、暇のある方もない方も、とにかく一読をお薦めします。 | ||||
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初出はオール読物の昭和53年7月から昭和55年7月。単行本は昭和56年2月。 本書のあとがきは珍しく藤沢周平自身が書いていて、前作の『隠し剣孤影抄』も含め3ヶ月毎にやってくる締め切りが楽しめた、と書いている。なかなか無い感想だ。このシリーズ最後へいくほど面白い。シリーズ最後の3作の『暗黒剣千鳥』・『孤立剣残月』・『盲目剣谺返し(これが山田洋次監督の第3作武士の一分の原作)』は超傑作である。このシリーズと『秘太刀馬の骨』はほぼ同じ範疇でくくれる作品で僕の中では藤沢作品で最も好きな作品だ。 『隠し剣』を習得している武士っていいなぁ、って男なら誰でも思うでしょう、きっと。 | ||||
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秘剣を使わざるをえない主人公たちをしみじみ描く、日が沈むようにゆっくり余韻が残る短編ですね。 この短編の主人公たちは必ずしも現役バリバリの剣士ばかりでなく、 やむを得ず受けた果し合いで最後の最後に昔授かった秘剣で立ち向かう。 そのときの心の動きに臨場感があります。 いつもながら藤沢の描く 御新造さん、寡婦さんはときに美しく、ときにもの悲しく、 描かれる男の哀愁を引き立てていますねぇ。 | ||||
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映画化された「盲目剣谺返し」も素晴らしいですが、私が気に入ったのは「陽狂剣かげろう」と「暗黒剣千鳥」です。 特に「暗黒剣千鳥」はサスペンスというか全体的に緊張感のある物語で、こうゆう作品もあるんだな〜とハラハラしながら読みました。 | ||||
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この中の、『盲目剣谺返し』を読む。云わずとしれた『武士の一分』の原作である。この原作にかなり忠実に映画化されていることがわかる。 しかし、語り部としては、藤沢周平がいかに、優れているかがわかる。 「隠し剣谺(こだま)返し」なんて、映像化できはしないが、小説ではきちんと詳細に述べられている。 時間の経過が実に慎重に語られている。映画『武士の一分』では、この時間経過が、不明瞭になってしまっている。 小説の豊かさをかみしめることが出来る。 藤沢周平の作品で映像化され、私が 納得したのは、現在のところ、NHKで連続ドラマ化された『三屋清左衛門残日録』だけである。 | ||||
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藩のため、愛する者のため、そしておのれのプライドのため、人を切るには それなりの理由があった。日常の様子からは想像もできぬほどの剣の腕。 この作品に登場するのはそういう武士ばかりだ。だが、どんな理由があるに せよ、人を切り殺すことに変わりはない。その悲哀さも含め、人の心の揺れ 動くさまを作者はじっくりと描いている。いつの世も、生きることには悩み がある。すっきりしたラストばかりではないけれど、心に余韻を残す作品 だった。 | ||||
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ここでのほとんど事件の端緒は<女>である。 属する組織の命令や世間の風評も、元は正せば全て女絡みで、彼女たちの嬉し泣きの涙や可憐な想いが、歴史に名を残さない凡庸武士の人生に逆説的に彩りを与える。 <やっぱり、男ってこうでなくちゃ〜>がタンノー出来る短編集だ。 実にジミな連中が主役を張る。 確かに好色だったり、偏屈だったり、盲目だったりと属性はあるが、そんなヘタレ武士がヤるときゃ、ヤるるぜ!という話なので、それは属性に過ぎないと思う。 更に名前もジミだ。 康之助、惣六、半之丞、新之丞、である。 ジミな奴らが、女に迷い、自分の信念を曲げぬように生きるが、彼らの希望はほぼ断たれる。 さて、彼らに浮かぶ瀬は無いのか?と云えばそんなことはない。 藤沢周平は過去の時代小説の作者に比べ、ケレン味がないと云われる。 つまり凝った名前やかっちょええ前口上やSFや伝奇っぽい設定である。 だが、このケレン味の固まりのようなタイトルにある必殺剣を最大に活用する最後の一行のため、彼の短編は存在する。 まさに、フィニッシング・ストローク! 女を寝取られ、下級武士の身で清貧に甘んじ、人から後ろ指指され、時代小説なのに歴史に一切関与しない彼らはラスト1頁の1行で、必殺剣を振るう瞬間だけヒーローとなる! | ||||
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今回映画化ということで、もう一度 三村新之丞=木村拓哉という前提で読み直してみた。 既にマスコミ・CM等でご存知の通り、「盲目の侍」。ただし「座頭市」と異なり目は開いている。文中 「・・・以前とちっとも変わらずに美男子なのに・・」「・・・外界が見える物のように開いている」。 要するに“かなり腕の立つかっこいい若侍”=木村拓哉 あのいい顔がそのまま武士になる。 ピッタリである。監督が、「この侍は、木村拓哉でいきたい」と最初から願っていた通り、 ”完全なるはまり役”である。 ストーリーはご存知の通り、 「盲目にならされて、妻の・・・が・・・・・に・・・・・・・させられて・・・・・」、 「武士の一分」にかけて・・・」 泣かせどころアリ、しかし最後は「ハッピーエンド」。 藤沢作品“文句なし!” 小説は昭和55年の今から26年前の作品だが、 映画にするなら多分「木村拓哉」以外にこの役はいないであろう。 今回の作品は「たそがれ清兵衛」「隠し剣鬼の爪」に続く藤沢周平作品三部作の最後。 「たそがれ清兵衛」は原作の短編3編を、 「隠し剣鬼と爪」は2編を合わせたストーリー。 今回は「盲目剣谺返し」1編、かなりオリジナルに近いはずである。映画公開が楽しみである。 | ||||
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隠し剣孤影抄とセットで1巻らしいが、孤影抄が藤澤作品の中では男女の愛欲や情といったものを如実に描いていたのに比べ、秋風抄は藩内の政争的問題が多く描かれている感がする。なので、いくつかの作品では本題に入るまでに少し退屈な時間を通らなければならない。 武士の一分だけが必要以上に取り上げられているのは、木村拓哉の影響だけど、他のどの作品の中にも、必ずどこかにその一分は見つけられる。 当時の美男子と現代の美男子とが一致するのかどうかは疑問であるが、藤澤作品の色と木村拓哉の色がどう絡まっているのかは観てみたい気はする。 | ||||
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今日ニュースで報道されていましたが、あんなの女の人はただキムタクが見たくて見に来ているだけでしょう。 ずっと前から藤沢周平を読んでいる者としてははっきり言って不愉快です。 もっと本質の藤沢周平が書いたものを見てもらいたいと思いました。 | ||||
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今回、木村拓哉さんの時代劇の原作です。それ以外の話でも、武士の心をきめこまやかに書いてあり、読みやすい感じです。 映画の原作は、ほんの少しですが、これをキムタクがどういうふうに演技してくれているのか今からとても楽しみです。 | ||||
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舞台はいずれも架空の藩で、小藩のようなのに、命のやりとりにもつながる政争があり、超絶的な飛剣を編み出す剣士がいる。 そうした設定だけ見れば荒唐無稽にも思えるのに、そうならないのは筆力があるからだ。大袈裟に書かず淡々と書いている。 とくに、この本にまとめられているのは、主人公が精神的に弱い側面を持っていることが多く、それによって、小説の中の世界に奥行きが生まれている。 電車の中で読み終わり、ほかに本を持っていなかったので、最初の方をまた読み返したが、それでも面白かった。 | ||||
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剣技にテーマを絞った短編集ですが、主人公にあるまじき性癖の持ち主ばかりで、やはり長編小説には向かない輩ばかり。 感心したのは、各短編毎に喜怒哀楽が明確に分かれていて、最後まで飽きさせないこと。 最初の「酒乱剣‾」の滑稽さで見事に読者を引き付けます。 先に発売されている「孤影抄」も佳作ですが、よりバラエティに富んでいる「秋風抄」がお勧め。 全9編の中に「たそがれ‾」に匹敵する、大いに泣かせる傑作が含まれています。 どこに隠されているか、楽しみながら探してください。 | ||||
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