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少年トレチア
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少年トレチアの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.17pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全6件 1~6 1/1ページ
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難読漢字を使うパターンの方の作品でした。短編なら集中力を切らさずに読めるのですが、好感を抱ける登場人物がいない作品でこの長さはちょっと辛かった。もったいぶった謎がどんどん提示され、最後は収拾がつかないままカタストロフィで幕を閉じるという印象です。あとがきの猿渡「女史」の言葉を借りるなら「すべてが無意味」の大長編でした。1999年の大災害を取材して、苦しみながら書かれたようですが、その大災害が何なのかもわからずに読む方も苦しかった。 「11」の表紙(四谷シモン)同様、この単行本の表紙(画面と違ってましたが七戸優)もインパクト大で、装丁は大成功です。 | ||||
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今まで読んだ津原さんの作品は、怪奇や猟奇の雰囲気はあってもどこかユーモア含みで全体としては明るいものだったのですが、この作品はかなりダークです。殺戮、罰、破壊、世界の崩壊、みたいなイメージでしょうか。後味も、最後に救いらしきものはあるものの、必ずしもいいとは言えません。 始まりから3分の2(1章、2章)までは、子供たちの残酷さがむき出しになります。舞台は、通称、緋谷サテライトと呼ばれる高層住宅群と一戸建てエリアが一緒になった東京郊外の新興団地。合間に中央公園と呼ばれる緑が豊富で大きな池もあるエリアがあり、左右対称になった2つの大型ショッピングセンターも入っていて、団地の中だけでひとつの世界ができあがっています。どこか無機的で近未来的なそのイメージがまず圧倒的です。 一見住みやすそうで快適に見える団地の中で、動物が次々に殺されたり、行方不明になる人が続出します。登場人物たちも襲われて大怪我をしたり、連れ去られて体中を切りつけられて池に沈められたりするのですが、死体が見当たらないためか警察が大きく動いている様子はありません。このあたりの表現はかなりスプラッタできついので、苦手な人はダメかもしれません。 漠然とした不安が漂う団地の中で、子供たちの間にトレチアという少年の話が伝説のように伝わっていきます。いつも白い帽子をかぶっているトレチアがいろいろとおもしろいことを指図してくれて一緒に遊ぶ、彼がどこから来たのか、どこに住んでいるのか知らないけれど、誰もそんなことは気にしない。子供たちの残酷な遊びはだんだんエスカレートしていき・・・・、とこのあたりまでは、子供たちの犯罪、都市伝説がテーマなのかと思ってドキドキしながら読み進みました。これで完結していたら、完成度が高いと感じたかもしれません。 最後の3章からは話ががらっと変わってしまいます。もちろん前半に登場した子供たちも出てきますが、後半はどこか壊れた、それでもかろうじて理性と良識を保っている大人たちが中心になります。謎の魚マカラの伝説が出てきたりして、まるで別の小説のようです。前半の流れをまとめようという意図は感じられるのですが、起こる出来事があまりに唐突すぎたり、SFなのか幻想小説なのかわからない話が入ってきたりして、かなり抽象的になってきます。個人的には、ソドムとゴモラやバベルの塔の話を思い出しました。つまり悪しき行いと残虐、そして破壊、崩壊です。あれは狂った社会と人々に対する天の罰だったのか? 繋がりがスムーズでなく、話がうまく流れなかった印象があるので、冷たい新興団地の雰囲気や全体の世界観が圧倒的でひきつけられるだけに、もったいないと思いました。前後を別々の小説に仕立てた方がよかったのではと感じます。いつも斬新な津原作品ではありますが、ちょっと実験的すぎたかな。 | ||||
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殺人は起こりますが、殺人者の一応の所の顔は探偵役によってではなく作者から直接明らかにされるので決して推理小説ではないでしょう。 かといってホラーに分類するには人間の狂気が色濃く出すぎていますから、粗筋にあった『幻想小説』というのが作品の持つ空気とあいまってぴったりかもしれません。 さて、『一応の所の』といいますのも殺しの首謀者『トレチア』は1人ではありません。 実際に行動を起こしている『トレチア』の影を読者は追っていくわけですが、子供たちの記憶の中で1人歩きしてできた空想の産物である『トレチア』もまた畏敬すべき対象『トレチア』そのものです。 そこに純然たる区別は存在せず、したがって『トレチア』はかつてそれに怯えた者たちの心と飛び交う何の根拠もない噂の数だけ存在します。 『トレチア』は誰か、あるいは何なのか? 真実に至った登場人物は結局いないのですが、読者はこの謎に否応なしに翻弄されます。 物語全体としては非常に暗い話。 突発的な事件はあってもそれは一発逆転の契機とかでは全然なく、テンポはどちらかというと悪いです。 これらは『トレチア』の存在自体が赤黒くモヤモヤしたものである以上常に付きまとう弊害なんでしょうね。 が、『トレチア』という言葉に込められる人々の感情は、彼ら自身の心の闇を隠すため、直視するには過ぎていてかつ十分なぐらいに常に揺れ動いていました。 その機微を捉えることができるたび、この本はよりおもしろくなっていきます。 | ||||
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すごすぎます、この話。今敏監督の「少年バット」みたいな話の導入部。都市伝説というか、噂が実体化してしまったような、そういう話。 それがまわりを巻き込み、子供の残酷さを押しだし、それが大人になったときに襲い掛かってくる。 こういう力作をかける作者はあんまりいない。小野不由美とか、恩田陸とか、そういう系なんだけど、個人的には「屍鬼」レベルの面白さだった。 | ||||
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都市伝説的な雰囲気と子供たちの無垢な冷酷さの融合した部分はなかなか読める。しかし、大人たちが関わってくる中盤以後が全くいただけない。大人の鑑賞に耐える「小説」にしたかったのかもしれないが、子供たちのリアリティとは対照的に登場する大人にあまりにも現実感がない。 確かに佐久間七与にせよ蠣崎旺児にせよ、どうしてそういうキャラになったのかくどいくらい背景説明はされている。しかし、いかんせん、話の進行の都合上造形されたキャラでしかない。例えば、蠣崎旺児のダウジング趣味(これは実は結末と深い関係があるのだが)なんか、いかにもとってつけたようなものだ。書ける作者だけに、いかにもありそうな感じではあるのだが、「ありそうな」エピソードを積み重ねてみても、「小説」にはならんでしょう。そりゃあ自己満足だ。 「少年トレチア」に絞った物語にして、小賢しいメタフィジクス(ネタバレになるので具体的には書けないが)なんかやめておけばよかったのに、残念。 | ||||
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自分は、この本を、ホラーとしては読みませんでした。そして、初めの方から、本に引き込まれてしまいました。表現の仕方も、カセットテープから起こしたものであったり、ホームページの書き込みの部分があったりして、飽きずに読むことができ、独特な世界観や、この本の舞台である特殊な地域にも、ひきつけられました。 | ||||
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