(短編集)

風に舞いあがるビニールシート

【この小説が収録されている参考書籍】

【この小説が載っている参考書籍】

評判

風に舞いあがるビニールシートの評価:

4.11/5点 レビュー 122件。 C ランク

Amazon書評・レビュー点数毎のグラフです

平均点4.11pt

Amazonレビュー一覧

Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全244件 141〜160 8/13ページ
No.104
(5pt)

号泣します。そして動揺します。

自分だけはまっとうに生きて、何かをつかむんだときっと思っているのだろうけれども、人生って、やはりあっという間に過ぎていく走馬灯のようなもので、そんなに完璧な人生なんて所詮ないもので、でも、もがきながらみんな何かを探しているのだろう。

「犬の散歩」は、なんかいいよなと思いました。義理の父母が最後にビビを引き取るところとか、ドンペリの代わりに餌代にとお金をおいていく常連客や、なかなかいいよこの話。

「ジェネレーションX」は、ありそうでなさそうな、そうだな大人になっても、純真な心を持ち続けられる人って、ある面、成功者なんだと思う。「風に舞い上がるビニールシート」には、号泣してしまいました。愛をもらえなかった男が、妻を愛しているのに心からさらけだすことができず、風に舞い上がるビニールシートのような人生をおくらなければならない人達のために自分の人生を犠牲にするような選択を選ぶ。どこかでわかっていたような・・・そうなのです。

普通の家庭に育たなかった人には、普通の家庭の暖かさが時として、居心地の悪いものでどこかに逃げ場所を作るものなのだと。
風に舞いあがるビニールシート Amazon書評・レビュー: 風に舞いあがるビニールシートより
4163249206
No.103
(5pt)

心に痛い短編集

洋菓子作りの才能だけでなく、容姿でも注目を浴びるヒロミと、彼女の作る菓子に魅せられ、ショップ経営から雑用までこなす弥生。恋人の高典からから大切な話があると言われたクリスマスイブの朝、弥生はヒロミから用を言いつけられる。新作のプディングに合う美濃焼を現地に行って調達して来いというのだが…。果たしてこれはヒロミの嫌がらせなのか…高典の機嫌の悪い声を電話越しに聞きながら、弥生は後ろ髪を引かれる思いで新幹線に乗り込んだ。(「器をさがして」ほか5編)

 ついにやった〜♪待ってました!直木賞です。6編とも主人公も置かれた状況も全く違うのだけど、どれも心をきゅっと締め付けられるような内容で短編ながらも重厚で読み応えのある作品でした。
 表題作「風に舞いあがるビニールシート」は不覚にも主人公の気持ちに共鳴してしまい、切なくて苦しくて…でも読後は不思議と元気が出てきます。
 YA小説もいけれど、こんな風に大人が楽しめる本を書いてもらえるとうれしい♪やっぱりいいなぁ〜森絵都はいい。一生懸命、誠実に、自分の気持ちも大切な人への思いも大事にし続けたら、人はどんな状況でも決して悪いようにはならないのだと勇気をもらいました。
風に舞いあがるビニールシート Amazon書評・レビュー: 風に舞いあがるビニールシートより
4163249206
No.102
(5pt)

粒よりの短編集

このほど直木賞を受賞した短編集です。表題作を含め六編の、どれも素晴らしい粒よりの短編集です。

「器を探して」「犬の散歩」の二編は、女性が自分のもやもやとした人生に対して、ある吹っ切りをして自己をしっかりと掴んで、新たな歩みを始める物語です。

前の二編はやわらかさの中に描かれていますが、それを更に突き詰めて、個人の幸せと世界の幸せを対決させて、主人公の女性に大いなる一歩を踏み出させる作品が、表題作の「風に舞いあがるビニールシート」です。この難民たちの「風前の灯」のような人生を著わす言葉が、何度も登場しますが、元夫の死の様子を聞いた時、本当の意味でこの言葉の意味を理解し決断をしたのだろうと思います。

私が男だからなのか、ミステリー好きだからかは解りませんが、この表題作以上に気に入ったのが、仏像の修復師を主人公にした「鐘の音」です。タイトル自身の捻りも気に入ったのですが、とにかく主人公の心理描写が素晴らしくぐんぐん引き込まれましたし、そこにあった「謎」が氷解し意外な形を見せるミステリー風の終わり方も気に入りました。

「守護神」もややミステリー風の展開で面白いですし、「ジェネレーションX」も軽妙で楽しい作品でした。

いずれにしても大満足の一冊で、私としては今年120冊近く読んだ中で、BEST1の本でした。
風に舞いあがるビニールシート Amazon書評・レビュー: 風に舞いあがるビニールシートより
4163249206
No.101
(3pt)

バラエティにとんだ短編集

とりわけ印象に残る作品はなかった。表題作も、ラストは涙してしまうが、そこだけ。一番よかったのは「ジェネレーションX」さらりとした読後感でうまいと思う。これからはこういう作家なのだろうか?
風に舞いあがるビニールシート Amazon書評・レビュー: 風に舞いあがるビニールシートより
4163249206
No.100
(5pt)

価値観について考えさせられました

この本の帯には「大切な何かのために懸命に生きる人たちの、6つの物語」と書かれていますが、そのことば通り、この本には、様々な価値観を抱えた人たちが登場します。

有名パティシエの専属秘書として働く女性、行き場のない犬たちを預かるボランティアをしながらスナックで働く主婦、フリーターをしながら大学に通う男性、仏師を目指していたが、あきらめて仏像修復師を目指そうとした男性、団塊の世代を疎み、若い世代にも大きなギャップを感じている男性、国連難民高等弁務官事務所で働きながら、元夫の死を悲しんでいる女性。

立場は様々ですが、彼らの中には、誰かと出会うことによって、あるいは何かの事件によって価値観を変えていく人もいます。また、自分の価値観を見出せずに悶々としていたり、自分の価値観と周りの価値観のギャップに苦しんでいたりしている人もいます。違う価値観をもつ人どうしがぶつかったり、相手をうらやましく思ったりする場面も出てきます。まさに、現代社会の縮図です。

昨今、「勝ち組」とか「負け組」などのことばをよく見かけますが、この本では「どの価値観が良くて、どの価値観が悪い」という類のことは述べられていません。一貫して描かれているのは、「自分の価値観に従って生きることによって幸せを感じている人たちの姿」です。

「自分にとっての幸せ」と「他人にとっての幸せ」が同じとはかぎらない。だからといって、下手に相手に迎合したり、逆に自分の価値観を相手に押しつけたりする必要もない。

当たり前のことかもしれませんが、私はこの本から、改めてそのことを教わりました。
風に舞いあがるビニールシート Amazon書評・レビュー: 風に舞いあがるビニールシートより
4163249206
No.99
(5pt)

挑む人の小説

はじめにあったのは、正直、座りの悪さだった。短篇集ならばもう少しテーマやトーンを揃えてもいいのではないか。直木賞を意識して近作を集めて刊行という出版社の思惑が透けて見える気さえした。けれど「守護神」を読み終えて楽しくなり、「鐘の音」でまた違う色合いの世界を覗かせられ、作品集に統一感を求めるのは、そうした収まりのいい本に慣れすぎていたためかも、と思い直した。そして「ジェネレーションX」で爽快感を味わった後、表題作でいきなり横面を張られた気分になった。構えが外されていた分、死と隣り合わせの難民に関わる物語の衝撃波は強かったのだ。

森さんは難民や死を、その渦中からではなく、すぐ近くに居場所を得ながらも踏み込めずにいる人の目線で書き出した。二重三重の意味で宙ぶらりんな主人公が、複数の葛藤を抱えて苦しむ様が痛かった。もしかしたら、あくまで作家で当事者ではない森さんが、この苛烈な世界を内側から書くことを敢えて控えた「わきまえ」の産物であるのかもしれない。と、これまた勝手な想像をしたりしたが、ともかくこの設定に、非日常を日常にひきつける引力があった。

読了後、森さんは現在進行形で「挑む人」なのだ、と思った。だからどこかはみ出す。そういえば、森さんの本の惹句や紹介文はいまひとつピンと来ない場合がある。それもはみ出し現象ゆえか。本書の新刊案内の文章には「市井で懸命に生きる人を描く六篇」とある。確かにそうだが・・・表題作の迫力は伝わるだろうか?(『DIVE!!』も「森絵都、初の『スポ根』小説」で、?と思ったものだ) 他の作品も、表題作ほどでないにせよ懸命になるあまり突き抜けてしまった人たちの話だ。それは森さんの姿とも重なる。なのに、森さんにお行儀のいい本を求めていた自分を恥じた。森さんがどこへ向かうか、まだ誰にもわからないと思う。
風に舞いあがるビニールシート Amazon書評・レビュー: 風に舞いあがるビニールシートより
4163249206
No.98
(5pt)

挑戦者としての生き方

6編から成る。きちんと人生に対して向き合い、挑戦している確かな人たちの足取りを描いている。人気パティシエのマネージャーの話から始まり、ホステス、社会人大学生と、それぞれひとひねりあるものの、比較的地味な話が続く。へえ、正統派に近い作品も書くんだな、と思っていると、「鐘の音」で、仏像修復師なんていう奇抜な世界が用意されている。この作品は、オチが少々鼻につくが、それ以外は迫力がある。「ジェネレーションX」は、うまい。ラストの余韻もいい。

 ところが、最後の「風に舞いあがるビニールシート」が、もう感動作品なのである。国連難民高等弁務官事務所が舞台だ。重い。でも胸にこたえる。まいった。

 この作家自身も、色んな世界に挑戦する気概のある人だ。
風に舞いあがるビニールシート Amazon書評・レビュー: 風に舞いあがるビニールシートより
4163249206
No.97
(5pt)

2000年代の市井小説

表題作を除けば、決して当事者以外にとっての大事件は起こらない。仏像の復元職人、有名パティシエの秘書など新奇な立場の人物は登場するが、どこか山本周五郎や藤沢周平の時代小説を彷彿とさせる淡彩だが深い味わいの短編集。著者の昔からの愛読者は驚かれるかもしれないが、間違いなく本書で著者は本年度の賞レースの主役となるだろう。
風に舞いあがるビニールシート Amazon書評・レビュー: 風に舞いあがるビニールシートより
4163249206
No.96
(1pt)

ちょっと期待外れ

ひとつひとつのお話が、盛り上がりをみせる手前で終わってしまう感じがした。
風に舞いあがるビニールシート (文春文庫) Amazon書評・レビュー: 風に舞いあがるビニールシート (文春文庫)より
4167741032
No.95
(5pt)

やられた

やられた。
この一言につきます。
この本の主軸は、三十代をこえた人達を軸としており
全体的に、大人の雰囲気をかもしだしています。
その中で、大人のそれぞれの悩みや
人生において大切な事とは何かを
人間臭さをもって、語ってくれる
そんな小説です。

最初読んでいるときは、森絵都ってこんな人だっけ?と思うくらいに
他の作品と比べると少し趣がかわっていて
その中にも凄い魅力がたくさんつまった本だと思います
風に舞いあがるビニールシート (文春文庫) Amazon書評・レビュー: 風に舞いあがるビニールシート (文春文庫)より
4167741032
No.94
(4pt)

不思議

里佳の決意はなんとも不思議な…、でも不思議とも思えないその心の動き。幸福を知らない人間が幸福を増やすことはできない、ということか。
風に舞いあがるビニールシート (文春文庫) Amazon書評・レビュー: 風に舞いあがるビニールシート (文春文庫)より
4167741032
No.93
(5pt)

直木賞受賞作の表題の短編以下5編 何かを大切にして生きている人々の描写が秀逸 性的表現があるのが苦手な人はあわないかも

UNHCRの東京スタッフの女性と難民保護の現地で働きたがる男性との逢瀬を扱った表題作ほか5編

この作者のほかの作品を読んでこの作品を読んでいなかったので
入手はしていたものの久しぶりに読んでみました。
他の作品とは違い、性的な表現も含んでいるので苦手な人も
出てくるのかなと思います。

あらすじは
器を探して:天才的なケーキ作品を作る人に惚れ込み、惚れ込んだ弱みに
   つけ込まれ、良いように使われる女性を扱った作品
犬の散歩:普通の専業主婦と生きてきた女性が、引き取り手のない
   犬を保護し、その費用を捻出するために夜の商売までがんばるぐらい
   価値観が変わった作品
守護神: 大学の2部に通うバイト青年が、レポートの代筆の天才に
   レポートをお願いする作品
鐘の音: 仏像を作るのにとても器用なだけに仏像に魂が入っていないと
   感じるジレンマに苦難する人の半生を振り返る作品
ジェネレーションX:苦情処理に向かう車の中で、新人類と
   思っていた得意先営業と最後は心あわせる作品
風に舞い上がるビニールシート: UNHCRで体の相性は抜群のものの
   価値観が大きく異なる男女を扱った作品

性的表現が無く、全年齢的作品が多いこの作者ですが、この短編は
器を探してとか風に舞い上がる・・・とかはもうちょっと年齢層が
高い作品の様に感じました。その分少しこれまでと違うのでは
と感じる人もいるのではと思います。
でも、全作品を通じて、価値観を大切にして生きてゆく人々の
真剣さがとてもよく描かれて、重たくも無くしかし薄っぺらくもなく
気持ちよく読めるのは私はとても好きです。

特に表題作は、かたくなに自分の価値観を守っていた女性が恋人の
価値観を最期を通じて知ることによりわだかまりが氷解し
新しい世界へと踏み出す姿がとても好きです。

どの作品もしっかり調べてから作品を作っているのか特殊な
背景にも関わらず、無理なく展開するのは作者の力量を感じます。
良い作品になっていると思います とてもオススメです
風に舞いあがるビニールシート (文春文庫) Amazon書評・レビュー: 風に舞いあがるビニールシート (文春文庫)より
4167741032
No.92
(5pt)

読みやすい

短編集です。私はタイトルの作品より、守護神という作品が好きです。
風に舞いあがるビニールシート (文春文庫) Amazon書評・レビュー: 風に舞いあがるビニールシート (文春文庫)より
4167741032
No.91
(5pt)

100人いたら100通りの人生がある

6編の短編集には6人の人生が描かれている
自分とは価値観が異なるキャラクターもいるが
多種多様な考え方や生き方を読めるのが読書のいい部分だと思う
表題作『風に舞いあがるビニールシート』を初めて読んだのは何年も前だが
主人公が立ち上がる場面は未だにずっと心に残っている
風に舞いあがるビニールシート (文春文庫) Amazon書評・レビュー: 風に舞いあがるビニールシート (文春文庫)より
4167741032
No.90
(5pt)

手を差し伸べる勇気

短篇集だが、その中でも「ジェネレーションX」と「風に舞いあがるビニールシート」がよかった。

これまでは犬の保護活動を応援している作家ということくらいしか認識していなかったが、それだけではなかった。
対人間でも、自分を必要としている相手に手を差し伸べる、自分の殻を割って一歩踏み出す勇気を応援している。

物語の流れが自然で、いつの間にか、無理なく、読者の私もその流れに乗ってしまっている。
「風に舞いあがるビニールシート」の中で、安楽な生活や財産に目がない友達を、絶妙なタイミングで登場させる。彼女達の登場で、ヒロインが「あの友達と私とは同じじゃないか?」とそれまでの自分に疑問を持つようになる流れが無理のないものになっている。
「ジェネレーションX」では、若者言葉で延々としゃべりまくる青年に、主人公と同様私もウンザリしてくる。しかし止まらない、わけがわからない!と思っていると、そのおしゃべりが次第に輝いてくるのだ。主人公がおしゃべりの意味に次第に気がついて行くタイミングと読者の私が気がつくタイミングが重なり、主人公の感動と私の感動が重なる。森絵都さんに、気持ちの良い流れに乗せていただいた気がする。そして、そこで「終わり」とはならない。主人公は最後に青年を手助けするためちょっとした行動に出る。「あなたも主人公のように、一歩踏み出すことができるのよ。」という森絵都さんの柔らかな微笑みが見えるようだ。
風に舞いあがるビニールシート (文春文庫) Amazon書評・レビュー: 風に舞いあがるビニールシート (文春文庫)より
4167741032
No.89
(4pt)

読後感がとても爽やかな作品集

タイトル作「風に舞いあがるビニールシート」を含む全6編からなる短編集。それぞれに通低するのは、人が迷いをふっきる瞬間となるだろうか。

国連機関で働く夫婦を描いたタイトル作は、愛と使命のはざまで逡巡し、すれ違っていく二人の姿が印象的だ。難民救済の重い現実を盛り込みつつ、スッキリとまとめ、ラストは清々しくも淡い感動を呼ぶという短編にしては充実した内容になっている。

本作品集の他の収録作も、背景や主人公の年代、性別、置かれた立場や、シチュエーションは異なるものの、読後感がとても爽やかである。

作品の中で語られる、専門的な分野に対する著者の知識量には脱帽。
風に舞いあがるビニールシート (文春文庫) Amazon書評・レビュー: 風に舞いあがるビニールシート (文春文庫)より
4167741032
No.88
(5pt)

文句なし

森絵都さんは初めて読んだのですが、なんでもっと早くに読まなかったんだろうと悔しくなった。まったくカラーの違う短編で、でも底に流れる人間ドラマと、じんわりくるユーモアが抜群。作者のほかの作品も読んでみたいです。
風に舞いあがるビニールシート (文春文庫) Amazon書評・レビュー: 風に舞いあがるビニールシート (文春文庫)より
4167741032
No.87
(3pt)

”夕べ”の秘密

第135回の直木賞を受賞した森絵都氏の短編集。
直木賞受賞作としてはどうにか及第点といったレベルです。この作者は前作の「永遠の出口」で受賞すべきでした。高評価のレビューを書いていられる方もいらっしゃいますが、本作が直木賞受賞作でなかったら、高い評価をされたか疑問です。「永遠の出口」は集英社、この「風に舞いあがるビニールシート」は文藝春秋刊という点が左右したのでしょうか(笑) 森氏の作品を初めて読むなら「永遠の出口」をお勧めします。まあ、あちらは長編ですが。

ところで、森氏の作品では”昨日の夜”の意味の”ゆうべ”を”夕べ”と書かれているのが気になります。“夕べ”は「秋の夕べ」とか童謡の「♪夕べ浜辺をさまよえば~」のように夕方のことです。“昨日の夜”の”ゆうべ”は漢字表記するなら”昨夜”です(ちゃんと読まれるか不安ならルビを振るしかないですが)。ちなみに小川知子さんの往年のヒット曲は「ゆうべの秘密」とかな表記となっています。

辞書をひけば一目瞭然なんですが、この”夕べは”森氏以外の小説家の方の作品にもたくさん出てきます。直木賞選考委員の方の作品でも見られますが、編集の方は気にならないのでしょうか?
風に舞いあがるビニールシート (文春文庫) Amazon書評・レビュー: 風に舞いあがるビニールシート (文春文庫)より
4167741032
No.86
(5pt)

いい話が集まってます

生き方を考えさせられる本。6本の短編が収録されている。どれもいい話である。忘れていた感情や忘れてはいけない気持ちに気がつかせてくれる。表題作の「風に舞い上がるビニールシート」は2006年上半期の直木賞受賞作品。この作品は自分の心をえぐるように入ってくる作品。愉快に読める話ではないが、作品としてすばらしい。この他に気に入った作品は「犬の散歩」「守護神」「ジェネレーションX」。自分の生き方について考えさせられる。

以下、個別作品の感想。

◎器を探して
私がよく知る岐阜県多治見市での器探しの物語。スイーツを撮影するために、それを乗せる器を探す。クリスマスイブに東京から出張を命ぜられ、恋人との重要な約束を果たせなくなってしまう。シチュエーションだけでもドキドキしながら読める。そして、スイーツに映える器に出会うまでの話は、新しい恋人を見つけるかのよう。偶然の出会いが必然と思ってしまうのは、器探しが恋愛と同じであることを暗に示している。結末はもう少し先まで物語を進めてもよかったのではないかと思う。前菜だけ食べて終わったみたいな感じだ。そこだけが物足りないところ。

◎犬の散歩
えぇ話や。読んでいて涙が出そうになった。犬を飼っている人ならこうなってしまう気持ちを理解してもらえるだろう。ええ話である。

◎守護神
最後の方で明らかになる登場人物の背後にあるストーリーに瞠目した。格好いい生き方だなあと。元気をもらえた。これもええ話である。

◎鐘の音
不空羂索(ふくうけんじゃく)という仏像と交わるシーンが印象的な物語。

◎ジェネレーションX
石津の生き方が格好いい。格好悪いように見えるけど格好いい。

◎風に舞い上がるビニールシート
風に舞い上がるビニールシートはどこかに飛んでいって消えてしまう命を表現している。地球上にははかなく奪われる命が、今もどこかで散っている。誰かかがその命をきちんと見なければいけない。誰かがその命が飛ばないように押さえないといけない。難民を救う仕事に携わる命のストーリー。心をえぐられたような読後感だった。
風に舞いあがるビニールシート (文春文庫) Amazon書評・レビュー: 風に舞いあがるビニールシート (文春文庫)より
4167741032
No.85
(5pt)

驚きの時間をありがとう

「器を探して(2006年3月号・256号、「美濃焼の器」を改題)」、「犬の散歩(2006年5月号・257号)」までは他の作家に秀でる/差別化されるとも思えないが、「守護神(2006年7月号・258号)」で呆気、とても気に入る。
「鐘の音(2006年9月号・259号、「残響」を改題)」も好い味で、元が童話作家だけに、お話に逃げ道がない。
 別のところで書いたが、構成が緻密なので読者が寄り添って読むのに最適。
 その代償は別の結末が想起されないとなるが、それはまた別の作家に任せよう。
「ジェネレーションX(2006年11月号・260号)」でやや失速し(つまり結末が見えるお話なのに経緯まで見えてしまう)、「風に舞いあがるビニールシート(2007年1月号・261号)」では大量の資料をバックボーンに究極の恋愛劇を語る。
 もっともこのお話も結末の予想は付くし、資料が煩い(世間に反感を持たれるような意見を言わない)部分も併せ持つので短篇集中の最高作ではないだろう。
 ……というようなことを書くとアンチが騒ぐんだよね。
風に舞いあがるビニールシート (文春文庫) Amazon書評・レビュー: 風に舞いあがるビニールシート (文春文庫)より
4167741032