(短編集)

風に舞いあがるビニールシート

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評判

風に舞いあがるビニールシートの評価:

4.11/5点 レビュー 122件。 C ランク

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平均点4.11pt

Amazonレビュー一覧

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全244件 241〜244 13/13ページ
No.4
(5pt)

価値観について考えさせられました

この本の帯には「大切な何かのために懸命に生きる人たちの、6つの物語」と書かれていますが、そのことば通り、この本には、様々な価値観を抱えた人たちが登場します。

有名パティシエの専属秘書として働く女性、行き場のない犬たちを預かるボランティアをしながらスナックで働く主婦、フリーターをしながら大学に通う男性、仏師を目指していたが、あきらめて仏像修復師を目指そうとした男性、団塊の世代を疎み、若い世代にも大きなギャップを感じている男性、国連難民高等弁務官事務所で働きながら、元夫の死を悲しんでいる女性。

立場は様々ですが、彼らの中には、誰かと出会うことによって、あるいは何かの事件によって価値観を変えていく人もいます。また、自分の価値観を見出せずに悶々としていたり、自分の価値観と周りの価値観のギャップに苦しんでいたりしている人もいます。違う価値観をもつ人どうしがぶつかったり、相手をうらやましく思ったりする場面も出てきます。まさに、現代社会の縮図です。

昨今、「勝ち組」とか「負け組」などのことばをよく見かけますが、この本では「どの価値観が良くて、どの価値観が悪い」という類のことは述べられていません。一貫して描かれているのは、「自分の価値観に従って生きることによって幸せを感じている人たちの姿」です。

「自分にとっての幸せ」と「他人にとっての幸せ」が同じとはかぎらない。だからといって、下手に相手に迎合したり、逆に自分の価値観を相手に押しつけたりする必要もない。

当たり前のことかもしれませんが、私はこの本から、改めてそのことを教わりました。
風に舞いあがるビニールシート (文春文庫) Amazon書評・レビュー: 風に舞いあがるビニールシート (文春文庫)より
4167741032
No.3
(5pt)

挑む人の小説

はじめにあったのは、正直、座りの悪さだった。短篇集ならばもう少しテーマやトーンを揃えてもいいのではないか。直木賞を意識して近作を集めて刊行という出版社の思惑が透けて見える気さえした。けれど「守護神」を読み終えて楽しくなり、「鐘の音」でまた違う色合いの世界を覗かせられ、作品集に統一感を求めるのは、そうした収まりのいい本に慣れすぎていたためかも、と思い直した。そして「ジェネレーションX」で爽快感を味わった後、表題作でいきなり横面を張られた気分になった。構えが外されていた分、死と隣り合わせの難民に関わる物語の衝撃波は強かったのだ。

森さんは難民や死を、その渦中からではなく、すぐ近くに居場所を得ながらも踏み込めずにいる人の目線で書き出した。二重三重の意味で宙ぶらりんな主人公が、複数の葛藤を抱えて苦しむ様が痛かった。もしかしたら、あくまで作家で当事者ではない森さんが、この苛烈な世界を内側から書くことを敢えて控えた「わきまえ」の産物であるのかもしれない。と、これまた勝手な想像をしたりしたが、ともかくこの設定に、非日常を日常にひきつける引力があった。

読了後、森さんは現在進行形で「挑む人」なのだ、と思った。だからどこかはみ出す。そういえば、森さんの本の惹句や紹介文はいまひとつピンと来ない場合がある。それもはみ出し現象ゆえか。本書の新刊案内の文章には「市井で懸命に生きる人を描く六篇」とある。確かにそうだが・・・表題作の迫力は伝わるだろうか?(『DIVE!!』も「森絵都、初の『スポ根』小説」で、?と思ったものだ) 他の作品も、表題作ほどでないにせよ懸命になるあまり突き抜けてしまった人たちの話だ。それは森さんの姿とも重なる。なのに、森さんにお行儀のいい本を求めていた自分を恥じた。森さんがどこへ向かうか、まだ誰にもわからないと思う。
風に舞いあがるビニールシート (文春文庫) Amazon書評・レビュー: 風に舞いあがるビニールシート (文春文庫)より
4167741032
No.2
(5pt)

挑戦者としての生き方

6編から成る。きちんと人生に対して向き合い、挑戦している確かな人たちの足取りを描いている。人気パティシエのマネージャーの話から始まり、ホステス、社会人大学生と、それぞれひとひねりあるものの、比較的地味な話が続く。へえ、正統派に近い作品も書くんだな、と思っていると、「鐘の音」で、仏像修復師なんていう奇抜な世界が用意されている。この作品は、オチが少々鼻につくが、それ以外は迫力がある。「ジェネレーションX」は、うまい。ラストの余韻もいい。

 ところが、最後の「風に舞いあがるビニールシート」が、もう感動作品なのである。国連難民高等弁務官事務所が舞台だ。重い。でも胸にこたえる。まいった。

 この作家自身も、色んな世界に挑戦する気概のある人だ。
風に舞いあがるビニールシート (文春文庫) Amazon書評・レビュー: 風に舞いあがるビニールシート (文春文庫)より
4167741032
No.1
(5pt)

2000年代の市井小説

表題作を除けば、決して当事者以外にとっての大事件は起こらない。仏像の復元職人、有名パティシエの秘書など新奇な立場の人物は登場するが、どこか山本周五郎や藤沢周平の時代小説を彷彿とさせる淡彩だが深い味わいの短編集。著者の昔からの愛読者は驚かれるかもしれないが、間違いなく本書で著者は本年度の賞レースの主役となるだろう。
風に舞いあがるビニールシート (文春文庫) Amazon書評・レビュー: 風に舞いあがるビニールシート (文春文庫)より
4167741032