わたくし率 イン 歯ー、または世界

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評判

わたくし率 イン 歯ー、または世界の評価:

2.84/5点 レビュー 32件。 D ランク

Amazon書評・レビュー点数毎のグラフです

平均点2.84pt

Amazonレビュー一覧

Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全28件 1〜20 1/2ページ
No.28
(5pt)

Excellent.

予定より早く到着し、とても良い状態で届きました。
わたくし率 イン 歯ー、または世界 (講談社文庫) Amazon書評・レビュー: わたくし率 イン 歯ー、または世界 (講談社文庫)より
4062767104
No.27
(5pt)

Excellent.

予定より早く到着し、とても良い状態で届きました。
わたくし率 イン 歯ー、または世界 Amazon書評・レビュー: わたくし率 イン 歯ー、または世界より
4062142139
No.26
(4pt)

「わたし」と「私」の根源的差異

この作品は明らかに永井均の影響を受けていると思う。彼の議論を下敷きにすれば一見めちゃくちゃにも見えるこの物語もしっかり読み解くことができる。
しかし、今のところコメント欄に「わたし」と「私」の使い分けに言及した人すらいなさそうなので、この作品をそのように読み解いた人はいないのだと悲しくなる。私は、そのような読み方こそが必要なのだと思っている。
わたくし率 イン 歯ー、または世界 (講談社文庫) Amazon書評・レビュー: わたくし率 イン 歯ー、または世界 (講談社文庫)より
4062767104
No.25
(4pt)

「わたし」と「私」の根源的差異

この作品は明らかに永井均の影響を受けていると思う。彼の議論を下敷きにすれば一見めちゃくちゃにも見えるこの物語もしっかり読み解くことができる。
しかし、今のところコメント欄に「わたし」と「私」の使い分けに言及した人すらいなさそうなので、この作品をそのように読み解いた人はいないのだと悲しくなる。私は、そのような読み方こそが必要なのだと思っている。
わたくし率 イン 歯ー、または世界 Amazon書評・レビュー: わたくし率 イン 歯ー、または世界より
4062142139
No.24
(4pt)

著者の本は続けては、決して読めない。

佐々木幹郎著『中原中也 沈黙の音楽』を読み終えてから、読みたくなった。

理由は前著の内容や、かつて著者が「情熱大陸」で、息つく間もなく詩を朗読していた姿を見たことも関係がありそうだった。きっかけはそれぐらい。

三年子に止められても、青木を追い。女に罵られてもraison d'etreを叫び続ける。また、自己に問い続ける。〈新しい意識の流れ〉という感じがした。読みやすいといっても、斜めには読めない。読む側が試されている感覚が残る。

著者の幼児体験は、どこか私の幼児体験と重なっていた。オセロはなかったが、母方の祖母と訪れた家にゼンマイ仕掛けでシンバルを叩く猿の人形があった。

しかし〈空間充填〉とも言える連続したエネルギーの放出。著者の本は続けては、決して読めない。
わたくし率 イン 歯ー、または世界 Amazon書評・レビュー: わたくし率 イン 歯ー、または世界より
4062142139
No.23
(4pt)

著者の本は続けては、決して読めない。

佐々木幹郎著『中原中也 沈黙の音楽』を読み終えてから、読みたくなった。

理由は前著の内容や、かつて著者が「情熱大陸」で、息つく間もなく詩を朗読していた姿を見たことも関係がありそうだった。きっかけはそれぐらい。

三年子に止められても、青木を追い。女に罵られてもraison d'etreを叫び続ける。また、自己に問い続ける。〈新しい意識の流れ〉という感じがした。読みやすいといっても、斜めには読めない。読む側が試されている感覚が残る。

著者の幼児体験は、どこか私の幼児体験と重なっていた。オセロはなかったが、母方の祖母と訪れた家にゼンマイ仕掛けでシンバルを叩く猿の人形があった。

しかし〈空間充填〉とも言える連続したエネルギーの放出。著者の本は続けては、決して読めない。
わたくし率 イン 歯ー、または世界 (講談社文庫) Amazon書評・レビュー: わたくし率 イン 歯ー、または世界 (講談社文庫)より
4062767104
No.22
(5pt)

少しだけ、キャッチャーインザライを思い出しました。

芥川賞を受賞した乳と卵よりも面白かったです。
一人称独特の仕掛けが肝で、心を持っていかれます。
おすすめです。
わたくし率 イン 歯ー、または世界 Amazon書評・レビュー: わたくし率 イン 歯ー、または世界より
4062142139
No.21
(5pt)

少しだけ、キャッチャーインザライを思い出しました。

芥川賞を受賞した乳と卵よりも面白かったです。
一人称独特の仕掛けが肝で、心を持っていかれます。
おすすめです。
わたくし率 イン 歯ー、または世界 (講談社文庫) Amazon書評・レビュー: わたくし率 イン 歯ー、または世界 (講談社文庫)より
4062767104
No.20
(5pt)

購入してよかったです。

彼女にしか書けない小説です。
川上未映子作品を読むなら芥川賞受賞の「乳と卵」より確実にこちらの作品をオススメします。
なんともない物語を面白くする力は文章に秘められた彼女の才能だと思いました。
わたくし率 イン 歯ー、または世界 Amazon書評・レビュー: わたくし率 イン 歯ー、または世界より
4062142139
No.19
(5pt)

購入してよかったです。

彼女にしか書けない小説です。
川上未映子作品を読むなら芥川賞受賞の「乳と卵」より確実にこちらの作品をオススメします。
なんともない物語を面白くする力は文章に秘められた彼女の才能だと思いました。
わたくし率 イン 歯ー、または世界 (講談社文庫) Amazon書評・レビュー: わたくし率 イン 歯ー、または世界 (講談社文庫)より
4062767104
No.18
(4pt)

川端康成の雪国には主語がない。

「トンネルをぬけたら雪国だった。夜の底が白くなった」。

主語がないってステキやん、とかいいながら、男にストーカーして「奥歯くれ」とかいったり。

わたくし率、イン歯ー、または世界、タイトル買いしましたが、このタイトルはないだろと思ったらきつそうです、本文にもにたような言葉づかいのセンスが横溢していると思います。

デパートでメイクをしているが、、外国人のモデルの切り抜きをもってきて、これにしてくださいというような客を相手にして夢でうなされ、念願の歯科助手に。

そういうモチーフとこの文体が好きかどうかで割れると思います。

延々と私語りが続き、オチまでサービスシーンがないと書かれていましたが、好きな人にはそういう文体やモチーフ自体がサービスになっています。
わたくし率 イン 歯ー、または世界 Amazon書評・レビュー: わたくし率 イン 歯ー、または世界より
4062142139
No.17
(4pt)

川端康成の雪国には主語がない。

「トンネルをぬけたら雪国だった。夜の底が白くなった」。

主語がないってステキやん、とかいいながら、男にストーカーして「奥歯くれ」とかいったり。

わたくし率、イン歯ー、または世界、タイトル買いしましたが、このタイトルはないだろと思ったらきつそうです、本文にもにたような言葉づかいのセンスが横溢していると思います。

デパートでメイクをしているが、、外国人のモデルの切り抜きをもってきて、これにしてくださいというような客を相手にして夢でうなされ、念願の歯科助手に。

そういうモチーフとこの文体が好きかどうかで割れると思います。

延々と私語りが続き、オチまでサービスシーンがないと書かれていましたが、好きな人にはそういう文体やモチーフ自体がサービスになっています。
わたくし率 イン 歯ー、または世界 (講談社文庫) Amazon書評・レビュー: わたくし率 イン 歯ー、または世界 (講談社文庫)より
4062767104
No.16
(4pt)

頭の中がコンガラガルような本でした。

この本は哲学書?とも思わせる本です。
文章も言葉遊び?それとも子どもの作文?みたいに文字が並んでいます。

純文学としては、理解不能な所があります。

関西弁でしゃべり、そして「歯」の事を重要視する主人公は、自己中心的な考えと意味不明な喋り方です。
本の展開は、主人公中心で進んでいくストーリーです。

絶対にこの本は読者を選びます。
こんなに読み手を選ぶ本もなかなかありませんね。

タイトルからしてもその雰囲気は醸し出しているかもしれません。

そんな否定とも取れる感想を連呼して来たわけですが
それでも読んでみたいと思った方は是非読んで欲しいです。
寧ろ、そんな人こそ読むべき本だと思います。

物語は、恋愛です。
主人公は歯科医院の助手であり、青木という男を好きになります。

ここだけを読んだら普通の恋愛小説みたいですが、違います!

話の展開がうまくは言えませんが、「わたし」と「歯」の二本柱が一直線に進んで行きます。
途中、「えっ今のなに?」と言う描写や意味不明な感情になると思います。
それが、川上未映子先生の真骨頂であり、これを理解しないといけません!

きっと、川上未映子先生の作品は読者を選び、読みにくと言われると思いますが
最後まで読んだら、意外と面白いと思えてくるかもしれません。
そして、これが川上未映子テイストです!
わたくし率 イン 歯ー、または世界 Amazon書評・レビュー: わたくし率 イン 歯ー、または世界より
4062142139
No.15
(4pt)

頭の中がコンガラガルような本でした。

この本は哲学書?とも思わせる本です。
文章も言葉遊び?それとも子どもの作文?みたいに文字が並んでいます。

純文学としては、理解不能な所があります。

関西弁でしゃべり、そして「歯」の事を重要視する主人公は、自己中心的な考えと意味不明な喋り方です。
本の展開は、主人公中心で進んでいくストーリーです。

絶対にこの本は読者を選びます。
こんなに読み手を選ぶ本もなかなかありませんね。

タイトルからしてもその雰囲気は醸し出しているかもしれません。

そんな否定とも取れる感想を連呼して来たわけですが
それでも読んでみたいと思った方は是非読んで欲しいです。
寧ろ、そんな人こそ読むべき本だと思います。

物語は、恋愛です。
主人公は歯科医院の助手であり、青木という男を好きになります。

ここだけを読んだら普通の恋愛小説みたいですが、違います!

話の展開がうまくは言えませんが、「わたし」と「歯」の二本柱が一直線に進んで行きます。
途中、「えっ今のなに?」と言う描写や意味不明な感情になると思います。
それが、川上未映子先生の真骨頂であり、これを理解しないといけません!

きっと、川上未映子先生の作品は読者を選び、読みにくと言われると思いますが
最後まで読んだら、意外と面白いと思えてくるかもしれません。
そして、これが川上未映子テイストです!
わたくし率 イン 歯ー、または世界 (講談社文庫) Amazon書評・レビュー: わたくし率 イン 歯ー、または世界 (講談社文庫)より
4062767104
No.14
(4pt)

シュールレアリズムを言語に落とし込んだ感じ

シュールレアリズム的な絵画・映像を言語に落とし込んだらこんな感じになるのかな、という印象の本。

意味不明なような、どことなく哲学的な感じのするような、、不思議な文体の本です。
いや、どことなく、どころかかなり哲学色がつよいかも?そういう観点で読み込んでみると面白いかもしれない、と思いました。

一見でたらめな言葉の羅列のような文章ですが、たぶんこれ、書けといわれたら相当難しいように思います。
わたくし率 イン 歯ー、または世界 Amazon書評・レビュー: わたくし率 イン 歯ー、または世界より
4062142139
No.13
(4pt)

シュールレアリズムを言語に落とし込んだ感じ

シュールレアリズム的な絵画・映像を言語に落とし込んだらこんな感じになるのかな、という印象の本。

意味不明なような、どことなく哲学的な感じのするような、、不思議な文体の本です。
いや、どことなく、どころかかなり哲学色がつよいかも?そういう観点で読み込んでみると面白いかもしれない、と思いました。

一見でたらめな言葉の羅列のような文章ですが、たぶんこれ、書けといわれたら相当難しいように思います。
わたくし率 イン 歯ー、または世界 (講談社文庫) Amazon書評・レビュー: わたくし率 イン 歯ー、または世界 (講談社文庫)より
4062767104
No.12
(5pt)

壊れそうなのは……

表題作「わたくし率 イン 歯―、または世界」。歯々。母。はは。ははっ。
 壊れそうな言葉を目で追う自分、壊れそうなのは言葉なのか、あるいは自分なのか? 増殖していく、分裂していく、薄まっていく、……、そもそもが、空っぽだった? あるいは、……と思わされる、反復されるモティーフ。

(前略)三年子はらっきょうの名前でもあるのです。三年かけて作られて、けっきょく芯も何もなくて奥歯にかかれば一回で完全に噛み砕かれてまう、そんならっきょうの三年子でもあるんです。

大きな口の中の舌のうえにもうひとつ口が現れます。そしてその口の中にもう一枚の小さな舌。それならばあの治療室をのせているさらに大きな舌があるのかもしれないですねえ。

振り返れば一歩ごとのわたしが列になってつづいている、並んでる、過ぎていった無数の今がゆるい曲線の軌跡になって、おお、わたしは無数のわたしの先頭となって走りつづけ青木の後を追うようにして夜の中を前進します、前進します、

人間が、一人称が、何でできてるかゆうてみい、一人称なあ、あんたらなにげに使うてるけどなこれはどえらいもんなんや、おっとろしいほど終りがのうて孤独すぎるもんなんや、これが私、と思ってる私と思ってる私と思ってる私と思ってる私と思ってる私と思ってる私と思ってる私と思ってる私!! これ死ぬまでいいつづけても終りがないんや、私の終りには着かんのや、ぜんぶが入ってぜんぶが裏返ってるようなそれくらい恐ろしいもんなんや私っていうもんは考えたら考えるだけだだ漏れになっていくもんなんや私ってもんはな、

 併録作「感じる専門家 採用試験」。母胎回帰への願望が生み出した世界、ということなのだろうか? 

 二作とも、自分には、おどろき、の衝撃波が強すぎて、頭が働かない。頭が働かないのは、生まれつきだろ、と自分に突っ込みを入れて、痛む歯を押さえながら、レヴューに、幕。
わたくし率 イン 歯ー、または世界 Amazon書評・レビュー: わたくし率 イン 歯ー、または世界より
4062142139
No.11
(5pt)

壊れそうなのは……

表題作「わたくし率 イン 歯―、または世界」。歯々。母。はは。ははっ。
 壊れそうな言葉を目で追う自分、壊れそうなのは言葉なのか、あるいは自分なのか? 増殖していく、分裂していく、薄まっていく、……、そもそもが、空っぽだった? あるいは、……と思わされる、反復されるモティーフ。

(前略)三年子はらっきょうの名前でもあるのです。三年かけて作られて、けっきょく芯も何もなくて奥歯にかかれば一回で完全に噛み砕かれてまう、そんならっきょうの三年子でもあるんです。

大きな口の中の舌のうえにもうひとつ口が現れます。そしてその口の中にもう一枚の小さな舌。それならばあの治療室をのせているさらに大きな舌があるのかもしれないですねえ。

振り返れば一歩ごとのわたしが列になってつづいている、並んでる、過ぎていった無数の今がゆるい曲線の軌跡になって、おお、わたしは無数のわたしの先頭となって走りつづけ青木の後を追うようにして夜の中を前進します、前進します、

人間が、一人称が、何でできてるかゆうてみい、一人称なあ、あんたらなにげに使うてるけどなこれはどえらいもんなんや、おっとろしいほど終りがのうて孤独すぎるもんなんや、これが私、と思ってる私と思ってる私と思ってる私と思ってる私と思ってる私と思ってる私と思ってる私と思ってる私!! これ死ぬまでいいつづけても終りがないんや、私の終りには着かんのや、ぜんぶが入ってぜんぶが裏返ってるようなそれくらい恐ろしいもんなんや私っていうもんは考えたら考えるだけだだ漏れになっていくもんなんや私ってもんはな、

 併録作「感じる専門家 採用試験」。母胎回帰への願望が生み出した世界、ということなのだろうか? 

 二作とも、自分には、おどろき、の衝撃波が強すぎて、頭が働かない。頭が働かないのは、生まれつきだろ、と自分に突っ込みを入れて、痛む歯を押さえながら、レヴューに、幕。
わたくし率 イン 歯ー、または世界 (講談社文庫) Amazon書評・レビュー: わたくし率 イン 歯ー、または世界 (講談社文庫)より
4062767104
No.10
(4pt)

新しい日本文学の曙光

歯科助手として働く語り手が、わたしとは奥歯であるという信念(というほどでもないが)のもと、青木なる恋人にせっせと恋文を書いたり、未来の子供に「お母さんは」と言って手紙を書いたりしながら、大阪弁の地の文で怒涛の展開を見せるという小説。言葉のスピード感は、芥川賞選評で山田詠美が言っていたように、面白いものがあり、個人的にはネタばれしている『アサッテの人』よりも小説として面白く読んだ。とくに、喧嘩したら、奥歯(つまり「わたくし」)を見せ合って、それで仲直りするという約束というか物語を作る、というモチーフをもっと掘り下げていければ面白かったように思う。

 残念なことに、小説は、語り手の青木に対する思いが一方的な妄想であり、それが青木ととくにその恋人の強烈なミナミ訛りの大阪弁によって暴露されていくという展開をとる。小説の主題は、そこでいじめとその苦痛というテーマになり、語り手は幼少期からずっといじめられ(歯科医院でもいじめられている)、中学で青木に『雪国』の「国境の長いトンネルを抜けると雪国だった」には主語がないという言葉に感動して、苦痛を超越した主体のない(「わたしく率ゼロの」)境地を目指すことを気づくのだが、奥歯が「わたし」だというのも、語り手は虫歯になったことがなく、歯痛というものを経験したことがないので、唯一苦痛を感じない奥歯を「わたし」とし、そこに苦痛を集めることで、苦痛を耐え忍ぶためだったのである。

 この苦痛を集めた奥歯は抜かれる。小説はこうして西田幾多郎的純粋経験の世界を志向して終わってしまう。このエンディングはある意味ネタばれしていて、この小説の言葉の力を縮減しているが、さらに最後にでてくる「無歯症」(永久歯が生えない病気)かもしれない子供のエピソードが、「わたし」の欠如した、つまりは痛みを感じる主体を書いた世代の登場を微妙に予言しているようで、この純粋経験への言及を相対化しているようにも見える。つまり「わたくし率ゼロ」で奥歯のない存在が、この作者によって肯定されているのか否定されているのかは宙づりになっているのだ。

 川上未映子は興味深い作家である。もうすこし思想的な深化をみせ、モチーフを丁寧に展開する技量をみがけば、彼女のもっている言葉の力は充実した作品となって結実するように思われる。いずれにしても新しい日本文学の曙光を感じさせる作家である。
わたくし率 イン 歯ー、または世界 Amazon書評・レビュー: わたくし率 イン 歯ー、または世界より
4062142139
No.9
(4pt)

新しい日本文学の曙光

歯科助手として働く語り手が、わたしとは奥歯であるという信念(というほどでもないが)のもと、青木なる恋人にせっせと恋文を書いたり、未来の子供に「お母さんは」と言って手紙を書いたりしながら、大阪弁の地の文で怒涛の展開を見せるという小説。言葉のスピード感は、芥川賞選評で山田詠美が言っていたように、面白いものがあり、個人的にはネタばれしている『アサッテの人』よりも小説として面白く読んだ。とくに、喧嘩したら、奥歯(つまり「わたくし」)を見せ合って、それで仲直りするという約束というか物語を作る、というモチーフをもっと掘り下げていければ面白かったように思う。

 残念なことに、小説は、語り手の青木に対する思いが一方的な妄想であり、それが青木ととくにその恋人の強烈なミナミ訛りの大阪弁によって暴露されていくという展開をとる。小説の主題は、そこでいじめとその苦痛というテーマになり、語り手は幼少期からずっといじめられ(歯科医院でもいじめられている)、中学で青木に『雪国』の「国境の長いトンネルを抜けると雪国だった」には主語がないという言葉に感動して、苦痛を超越した主体のない(「わたしく率ゼロの」)境地を目指すことを気づくのだが、奥歯が「わたし」だというのも、語り手は虫歯になったことがなく、歯痛というものを経験したことがないので、唯一苦痛を感じない奥歯を「わたし」とし、そこに苦痛を集めることで、苦痛を耐え忍ぶためだったのである。

 この苦痛を集めた奥歯は抜かれる。小説はこうして西田幾多郎的純粋経験の世界を志向して終わってしまう。このエンディングはある意味ネタばれしていて、この小説の言葉の力を縮減しているが、さらに最後にでてくる「無歯症」(永久歯が生えない病気)かもしれない子供のエピソードが、「わたし」の欠如した、つまりは痛みを感じる主体を書いた世代の登場を微妙に予言しているようで、この純粋経験への言及を相対化しているようにも見える。つまり「わたくし率ゼロ」で奥歯のない存在が、この作者によって肯定されているのか否定されているのかは宙づりになっているのだ。

 川上未映子は興味深い作家である。もうすこし思想的な深化をみせ、モチーフを丁寧に展開する技量をみがけば、彼女のもっている言葉の力は充実した作品となって結実するように思われる。いずれにしても新しい日本文学の曙光を感じさせる作家である。
わたくし率 イン 歯ー、または世界 (講談社文庫) Amazon書評・レビュー: わたくし率 イン 歯ー、または世界 (講談社文庫)より
4062767104