(短編集)

黙過

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評判

黙過の評価:

3.76/5点 レビュー 21件。 D ランク

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平均点3.76pt

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※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
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全24件 21〜24 2/2ページ
No.4
(5pt)

連絡短編集のお手本のような一冊

連作短編集とはこうあるべき、というお手本のような一冊です。

 全部で5つの短編から構成されており、4作目まではそれぞれが独立したお話かと思っていたら、5作目でそれらが見事にまとまる様はまさに圧巻です。伏線も全て回収されます。驚きです。

 しかも、扱っているテーマが重いし新しい。全く知らなかった分野で、著者の社会派としての面目躍如といったところでは。とにかく、何から何まで素晴らしいの一語です。
黙過 (文芸書) Amazon書評・レビュー: 黙過 (文芸書)より
4198646082
No.3
(4pt)

(2018年―第92冊)私は最後まで読んで思いのほか楽しめた小説だが、最後までたどり着けない読者がきっと多いのではないかと、作者の代わりに心配してしまう。

黙過:知っていながら黙って見逃すこと。(大辞林 第三版より)――カバーのそでにこうあります。

◆『優先順位』
:光西(こうさい)大学付属病院に轢き逃げ被害者が意識不明で運ばれてくる。若き医師・倉敷敬二は肝臓移植をすれば一命はとりとめると見るが、指導役の進藤准教授は患者が臓器移植に同意していたことを知り、心臓などの移植を考えるべきだと主張する。そこへ女医の都准教授がやってきて、肝移植を検討すべきと進言。板挟みとなる倉敷だが、そうこうするうちに患者が忽然と姿を消す。同じ日、進藤医師による心臓移植手術の予定が入って…。

 ミステリー調で物語は進み、倉敷医師ならずとも読者の疑惑の目は進藤准教授に当然向けられるでしょう。しかも患者が轢き逃げに遭った晩、進藤が飲酒運転で病院に駆けつけていた映像が見つかる始末。
 しかし、最後に明らかになる事の成り行きに万人が納得いくのか、私には疑問に感じられました。それは<黙過>のひとつの形であるとはいえ、現代の医師はもっとドライに厳格にルールに則った医療をおこなうのが常だと思います。患者の失踪のからくりはいくらなんでも都合がよすぎると思いますし、その後の患者の行く末まで考えると、<黙過>で済ませられるほど事は単純に終わらないと思うのです。

◆『詐病』
:総司は兄から老父が行方不明になったと連絡を受け、実家へ戻る。父に勘当されてから初めての帰郷だ。兄が言うには、1年半前に父はパーキンソン病を患って厚生労働省事務次官の職を辞していた。果たして父はどこへ行ったのか…。

 タイトルに『詐病』とあるので、父のパーキンソン病が偽りであることは早い段階で予測できます。問題はその理由ですが、最後に父が明かす真相には、全く納得がいきませんでした。父は詐病によって世の中を動かしたいと壮大な計画を立てていたのですが、「それで世の中が動くのか?」と総司が問うのも当然です。父の介護のために大手広告代理店での仕事を休まざるを得なかった兄の不憫を思うと、<黙過>で済ませられるほど事は単純に終わらないと思うのです。

◆『命の天秤』
:仙石養豚場は動物愛護団体から過激な抗議を受けていた。そんなある日、出産間近だったはずの母豚たちの体内から胎児が抜き取られる事件が起きる。その数およそ100頭。犯人は誰なのか。そうこうするうち、次々と豚たちが感染症にかかり始める…。

 豚畜産農家にかなり徹底した取材をしたうえで書き上げた一編なのでしょう。豚は人間と異なり、胎盤を介して免疫を受け継ぐことができないが、生まれた直後に初乳に免疫抗体が含まれているのでそれを生まれて3時間以内に与えると抗体吸収能力が100%であるとか、子豚は尻尾をかじられると細菌感染を起こすので尻尾を焼き切る必要があること、子豚が母豚の乳頭を噛まないように歯切りをほどこす必要があること、去勢して肉質をやわらかくすること、などなど養豚の舞台裏が様々垣間見られる面白さがあります。

 しかし豚舎に感染症が広がった理由にあまりにもひねりがなく、豚の胎児の抜き取り事件の背景に意外性が見られないので、ミステリーとしてのおもしろみがありません。仙石養豚場が選択した<黙過>が、真に消費者の利益になるのかが疑問でした。

◆『不正疑惑』
:精神神経医療研究センターの医師・小野田は有名大学の細胞研究所に勤める友人医師・柳谷彰浩の自死に衝撃を受ける。柳谷の幼い娘は心臓の移植を受けた後に急変して亡くなっていて、さらに彼自身も死を選んだのだ。ところが真崎という医療ジャーナリストによれば、柳谷は娘の移植順位を不正に操作していた疑いがあるという…。

 これまでの三作に比べれば多少なりとも移植をめぐる柳谷の疑惑の真相が知的に明らかにされていく過程に引き込まれました。とはいえ、この『不正疑惑』はこの書の中では最も短い一編で、わずか40頁ほどしかありません。ですからミステリーはいささか短時間で解決される点が残念に思えます。

―――と、ここまで読み継いできて、ミステリーとしてのクォリティーの低さ、論理展開の強引さばかりが目につき、不平をたれながら頁を繰る読書になってしまいました。残念な時間を過ごすことになってしまったなと思いつつも、ここまで読んだのだからと、最終作『究極の選択』に足を踏み入れて、私は目を見張らされることになりました。

◆『究極の選択』
:これまでの『優先順位』『詐病』『命の天秤』『不正疑惑』それぞれの終幕で真相とされたことが、一気に覆されます。いかに自分が騙されていたのかを思い知り、同時に、作中の探偵を騙すだけでなく、読み手も騙す手立てに長けたものこそが上質のミステリーの名にふさわしいことを再確認させられました。
 そして書を閉じたときにまず思ったのは、私自身が前4作に向けた疑念がごく当然のものであったという安堵、そして次に心をよぎったのは、作者・下村氏の大胆不敵で見事な構成力、さらに考えてしまったのは、読者の多くが最終作にたどり着く前にこの書を放擲してしまうのではないかという、作者に成り代わっての懸念でした。

 この最終作の内容には敢えて触れません。どうか前4作は少しの間辛抱しながら読み進めて、この最終作まで到達することを多くの読者に薦めておきたいと思います。

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 一か所校閲漏れがありました。文庫化の折に修正されることを期待します。
*262頁:「改ざんしている可能がある」と書かれていますが、「可能」ではなく、正しくは「可能性」でしょう。

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黙過 (徳間文庫) Amazon書評・レビュー: 黙過 (徳間文庫)より
4198945918
No.2
(4pt)

(2018年―第92冊)私は最後まで読んで思いのほか楽しめた小説だが、最後までたどり着けない読者がきっと多いのではないかと、作者の代わりに心配してしまう。

黙過:知っていながら黙って見逃すこと。(大辞林 第三版より)――カバーのそでにこうあります。

◆『優先順位』
:光西(こうさい)大学付属病院に轢き逃げ被害者が意識不明で運ばれてくる。若き医師・倉敷敬二は肝臓移植をすれば一命はとりとめると見るが、指導役の進藤准教授は患者が臓器移植に同意していたことを知り、心臓などの移植を考えるべきだと主張する。そこへ女医の都准教授がやってきて、肝移植を検討すべきと進言。板挟みとなる倉敷だが、そうこうするうちに患者が忽然と姿を消す。同じ日、進藤医師による心臓移植手術の予定が入って…。

 ミステリー調で物語は進み、倉敷医師ならずとも読者の疑惑の目は進藤准教授に当然向けられるでしょう。しかも患者が轢き逃げに遭った晩、進藤が飲酒運転で病院に駆けつけていた映像が見つかる始末。
 しかし、最後に明らかになる事の成り行きに万人が納得いくのか、私には疑問に感じられました。それは<黙過>のひとつの形であるとはいえ、現代の医師はもっとドライに厳格にルールに則った医療をおこなうのが常だと思います。患者の失踪のからくりはいくらなんでも都合がよすぎると思いますし、その後の患者の行く末まで考えると、<黙過>で済ませられるほど事は単純に終わらないと思うのです。

◆『詐病』
:総司は兄から老父が行方不明になったと連絡を受け、実家へ戻る。父に勘当されてから初めての帰郷だ。兄が言うには、1年半前に父はパーキンソン病を患って厚生労働省事務次官の職を辞していた。果たして父はどこへ行ったのか…。

 タイトルに『詐病』とあるので、父のパーキンソン病が偽りであることは早い段階で予測できます。問題はその理由ですが、最後に父が明かす真相には、全く納得がいきませんでした。父は詐病によって世の中を動かしたいと壮大な計画を立てていたのですが、「それで世の中が動くのか?」と総司が問うのも当然です。父の介護のために大手広告代理店での仕事を休まざるを得なかった兄の不憫を思うと、<黙過>で済ませられるほど事は単純に終わらないと思うのです。

◆『命の天秤』
:仙石養豚場は動物愛護団体から過激な抗議を受けていた。そんなある日、出産間近だったはずの母豚たちの体内から胎児が抜き取られる事件が起きる。その数およそ100頭。犯人は誰なのか。そうこうするうち、次々と豚たちが感染症にかかり始める…。

 豚畜産農家にかなり徹底した取材をしたうえで書き上げた一編なのでしょう。豚は人間と異なり、胎盤を介して免疫を受け継ぐことができないが、生まれた直後に初乳に免疫抗体が含まれているのでそれを生まれて3時間以内に与えると抗体吸収能力が100%であるとか、子豚は尻尾をかじられると細菌感染を起こすので尻尾を焼き切る必要があること、子豚が母豚の乳頭を噛まないように歯切りをほどこす必要があること、去勢して肉質をやわらかくすること、などなど養豚の舞台裏が様々垣間見られる面白さがあります。

 しかし豚舎に感染症が広がった理由にあまりにもひねりがなく、豚の胎児の抜き取り事件の背景に意外性が見られないので、ミステリーとしてのおもしろみがありません。仙石養豚場が選択した<黙過>が、真に消費者の利益になるのかが疑問でした。

◆『不正疑惑』
:精神神経医療研究センターの医師・小野田は有名大学の細胞研究所に勤める友人医師・柳谷彰浩の自死に衝撃を受ける。柳谷の幼い娘は心臓の移植を受けた後に急変して亡くなっていて、さらに彼自身も死を選んだのだ。ところが真崎という医療ジャーナリストによれば、柳谷は娘の移植順位を不正に操作していた疑いがあるという…。

 これまでの三作に比べれば多少なりとも移植をめぐる柳谷の疑惑の真相が知的に明らかにされていく過程に引き込まれました。とはいえ、この『不正疑惑』はこの書の中では最も短い一編で、わずか40頁ほどしかありません。ですからミステリーはいささか短時間で解決される点が残念に思えます。

―――と、ここまで読み継いできて、ミステリーとしてのクォリティーの低さ、論理展開の強引さばかりが目につき、不平をたれながら頁を繰る読書になってしまいました。残念な時間を過ごすことになってしまったなと思いつつも、ここまで読んだのだからと、最終作『究極の選択』に足を踏み入れて、私は目を見張らされることになりました。

◆『究極の選択』
:これまでの『優先順位』『詐病』『命の天秤』『不正疑惑』それぞれの終幕で真相とされたことが、一気に覆されます。いかに自分が騙されていたのかを思い知り、同時に、作中の探偵を騙すだけでなく、読み手も騙す手立てに長けたものこそが上質のミステリーの名にふさわしいことを再確認させられました。
 そして書を閉じたときにまず思ったのは、私自身が前4作に向けた疑念がごく当然のものであったという安堵、そして次に心をよぎったのは、作者・下村氏の大胆不敵で見事な構成力、さらに考えてしまったのは、読者の多くが最終作にたどり着く前にこの書を放擲してしまうのではないかという、作者に成り代わっての懸念でした。

 この最終作の内容には敢えて触れません。どうか前4作は少しの間辛抱しながら読み進めて、この最終作まで到達することを多くの読者に薦めておきたいと思います。

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 一か所校閲漏れがありました。文庫化の折に修正されることを期待します。
*262頁:「改ざんしている可能がある」と書かれていますが、「可能」ではなく、正しくは「可能性」でしょう。

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黙過 (文芸書) Amazon書評・レビュー: 黙過 (文芸書)より
4198646082
No.1
(5pt)

構成がすごい

とにかく最後まで読んで!しか言えません。
構成が本当に素晴らしかった。
人はどこまで許されるのか――考えさせられる作品でした。
黙過 (文芸書) Amazon書評・レビュー: 黙過 (文芸書)より
4198646082