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時給三〇〇円の死神



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【この小説が収録されている参考書籍】
時給三〇〇円の死神 (双葉文庫)

時給三〇〇円の死神の評価: 3.81/5点 レビュー 42件。 Cランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.81pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全42件 41~42 3/3ページ
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No.2:
(5pt)

良い!!!!

名前に惹かれて何気無く購入した本ですがあっいう間に読み終えてしまいました。美しくも儚い物語で最後は泣いてしまいました。本当にオススメします。
時給三〇〇円の死神 (双葉文庫)Amazon書評・レビュー:時給三〇〇円の死神 (双葉文庫)より
4575520624
No.1:
(4pt)

人生のロスタイムにおいて人は何を以て最低限の納得を得ようとするのか?心優しいタッチで描かれた物語。良くも悪くも前作と通じる部分が多い。

4年前に大手ライトノベルレーベル電撃文庫の新人賞で金賞を受賞した作品
「明日、ボクは死ぬ。キミは生き返る。」でデビューした作家・藤まる。
本編完結後も一年後に短編集が刊行されるなど一定の人気を得ていたものの、その後音沙汰が無かった事で
「消えるには惜しい才能なのに」と歯噛みをしていたら、意外な事に双葉文庫から新作を発表。

主人公は不幸のどん底にいる高校生・佐倉真司。
将来を期待されるサッカー選手であったのに、大怪我で走れなくなり、
経営者だった父親は事件を起こして逮捕され会社は倒産、母親は離婚して実家へ。
そんなヘビーな状況の真司に一方的にバイトの話を持ち掛けてきたのは
天真爛漫な性格と可愛いルックスでクラスの人気者の花森雪希。
しかも紹介してくれた仕事の内容は「死神」。
未練を残したままこの世に居残り続ける「死者」をあの世に送ってあげる仕事。
時給は300円、残業代・交通費・福利厚生一切なしという極めつけのブラックバイトに躊躇する真司だが
足の怪我で力仕事も出来ない中、経済的困窮が迫っている事で契約書にサインしてしまう。
ところが初仕事で花森に連れていかれたは真司の幼馴染・朝月静香の家で……

良くも悪くもデビュー作である「明日ボク」の延長線上にあるタイプの作品。
「明日ボク」が好きだった方ならまずハズレではない、と断言できる。
いわゆる「悪人」が出てこないタイプの心温まる作風はライトノベルを離れても健在。

主人公・真司がクラスメイトの花森から紹介されたバイト「死神」をこなす中で、人間的に成長する過程を描いている。
少年の成長を中心に描くという意味では非常にライトノベル的要素の強い作品と言えるかもしれない。
未練を残して現世にとどまる「死者」を納得の上であの世に送り出す、この「死神」というバイトがまずユニーク。
プロットを聞いた時にはえんどコイチの名作「死神くん」みたいな作品なのかな?と思ったのだけど、
まず「死者」の設定が独特過ぎる。

真司たちの顧客となる「死者」は既に死んだ存在だけどいわゆる幽霊とはちょっと違う。
彼らは生前と同じ環境で同じ様に生活しているのである。
生活しているんなら死者でもなんでもねーじゃねえか、という方もおられると思うが、
なんとこの「死者」ある種のパラレルワールドを作って、その中で生きているのである。

もう少し詳しく言うと、「死者」は死ぬと同時に残した未練をどうにかするまで
自分が作り出したパラレルワールドで「死に至るまでの記憶」を残したまま囚われ続ける。
真司たち死神はそんなパラレルワールドに巻き込まれる形で「死者」の残した未練を突き止め、
その上で「死者」に納得してもらってあの世に旅立ってもらわねばならないという使命を課されている。

しかも「死者」たちは嘘つきなのである。
自分が幽霊もどきになるほどの悔いや向き合うのが辛い過去を持っているが故に、
自分自身の本当の気持ちや過去に目を背けなかなか本音を言わないし、
場合によっては「死神」である真司や花森に平然と嘘をついて欺いたりもするのである。
まことに厄介な仕事だと言わざるを得ない。

おまけに「死者」をあの世に旅立たせ、このパラレルワールドもどきを解消してしまうと
パラレルワールド内で誰かに語った言葉も、手渡した贈り物も「無かった事」にリセットされてしまう上に、
パラレルワールドの体験者である死神にかろうじて残る記憶も半年のバイト期間が終わると消えてしまうのだから
まことに救われず、報われない仕事である事がお分かり頂けるだろう。

始めは訳の分からないまま、花森の案内で幼馴染・朝月の入院生活を送り続ける妹が絡んだ仕事に臨んだ真司が
朝月の隠していた秘密を知った事からこの「死神」という仕事の本質を知るくだりは中々残酷な物があるのだが、
その残酷さに一度は荒れた気持ちになったままバイトを続けることになった真司が様々な事情を背負った「死者」と
関わる中で少しずつ変化していく過程の繊細な描き方は藤まるの真骨頂と言うべき。

無駄に偉そうな態度で息子からの失くした手紙を河原で探す事を命じてくる中年男・黒崎、
貧困と病魔の中で本音を殺して生きてきた末に授かった子宝を奪われた広岡さん、
団地で母親からの巧妙に隠された虐待を受け続けながら、それでも母親を求め続けた夕ちゃん、
複雑な事情を抱えて、しかも全員極めつけの嘘つきだらけの「死者」と関わる中で、
真司が不平を漏らし、人の弱さを突き付けられ、何より彼らの未練が絶対に晴らせないと思い知らされる中で
何とか彼らに「最低限の納得を得た上であの世に旅立ってもらいたい」と奮闘する姿にはグイグイと引き付けられる物がある。

作中で「死者」の生み出すパラレルワールドを花森が「ロスタイム」と称する部分があるが、
点差が思い切りついた、どう足掻いても試合の結果をひっくり返しようがないロスタイム。
「あの時ああすれば良かった」、「なんで自分はあんな事を」と後悔しても「死」という決定的事実によって
取り返しのつかない状況を前に人間的弱さから「逃げ」を見せる「死者」に対し
未熟ながらも必死で向き合おうとする少年の姿には何ともいえぬ切なさが漂う。

そして物語の後半で真司は「死神」の先輩である花森が隠してきた、ある秘密を知ってしまう事になるのだが…
ここからの展開はかなり「明日ボク」に被る部分が多い。
……というか花森のキャラがかなり「明日ボク」のヒロイン・夢前光に被っているのである。
陽気でイタズラ大好きな茶目っ気たっぷりの女の子という性格面もそうだけれども、
その過剰なまでの陽気さの裏に隠したものという点でも相通じるものを感じさせる。
何より、序盤から結構「花森は何かしらの事情を抱えている」という事が匂わされているので、
前作を読んでおられる方ならば花森の正体については割と早い段階で気付いてしまわれるかもしれない。

ただ、だからと言って誤解して欲しくないのは花森の正体が明かされてからの怒涛の展開にこそ、
藤まるという「人が幸せであるという事はどういう事か?」という問題に正面から向き合う作家にしか描けない、
「人として生きる上で逃げられない『死=完全なる消失という運命を背負った存在』の悲しさ、切なさ、
だからこそ前を向いて生きる事の強さ、素晴らしさ」が存分に描き出されているのである。

不幸のどん底にいる、と自分の境遇を嘆き諦めるだけだった少年・真司が
「もうどうにもならない」「どう足掻いてもひっくり返せない」負け人生のロスタイムを過ごす「死者」と
向き合う中で何を掴み取ったのか、その掴み取ったもので自分自身をどう変化させたのか
是非お確かめあれと強くお勧めさせて頂きたくなる、そんな一冊である。
時給三〇〇円の死神 (双葉文庫)Amazon書評・レビュー:時給三〇〇円の死神 (双葉文庫)より
4575520624

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