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死はすぐそこの影の中
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死はすぐそこの影の中の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.00pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全12件 1~12 1/1ページ
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主人公をピアノの調律師に据えることでベーゼンドルファーだとかディアパソンだとかの、本書を読まなければ知ることがなかったピアノの名前を知ることができる上に、ドビュッシーの「沈める寺」、ラヴェルの「水の戯れ」と「オンディーヌ」、ショパンの「雨だれ」などのピアノ曲(この四曲がそれぞれ章題となっている)のことまで(クラシックの素人にとっては)知識として得ることができる。いやそれどころか、タイトルの「死はすぐそこの影の中」さえ実はショパンの「雨だれ」の別名なのだと言う。そんなピアノの音を背景にしたこのミステリーは、出来事としては過去に起こった一つの「死」だけではあるのだが、主人公も含めてそれを取り巻くすべての「人間」たちが何らかの点で「異常」であることが特徴と言えるだろう。しかもその「死」の真相が明らかになった途端に二転し三転するのだから油断がならない。いやそれどころかなぜ「人間」たちも「異常」なのかが最終的には思いもかけぬ構図を描く(ここで「人間」と括弧付きで記述していることにも意味がある)。唯一「解決」とは言えない事象が残されているのも、余韻を引きずるという意味では正解だろう(心情的には心残りだが、それこそ余韻を生む)。というわけでこれは傑作。 | ||||
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推理作家協会賞受賞作家ということで、ミーハー心を起こして読んでみたら結構ハマった。 ぶっちゃけトリックらしいトリックはあまりないが、それが主題の作品ではないので気にならない。 水、それから水にまつわるテーマを題材にしたクラシック音楽を通奏底温として響かせつつ、もみ洗いされるように、麻衣子が自身の過去とともに、歪んだ人間が隠し持っていた黒い本性を暴いていく様子が本作の素晴らしさであり、おそろしく上手であるように思う。 工夫を凝らす悪意よりも恐ろしい悪意が、この世にはあるのだ。 はからずも耽美趣味、幻想趣味も味わうことができた喉ごしの良さもあいまって、個人的にたいへん満足な一冊。他の作品も読みたい。 | ||||
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作品の性質上、ネタバレを含ませて頂く。題名の「死はすぐそこの影の中」というショパンのビアノ曲は「全ての人間は2つの顔を持つ」という意味で、これを受けて、ヒロインのピアノ調律師の麻衣子が「多重人格者」である事及び作中で"聖母"として描かれる麻衣子の伯母の幸枝が実は"悪魔"であった事を軸としたサイコ・ホラー。 これを伝奇的ホラーと見せ掛けるために、麻衣子(あるいは幸枝)の出身地である愛媛の七富利村を"隠れキリシタン"の伝説の村としたり、麻衣子の育ての親の伯父(幸枝の夫)の一藤士日出男の怪異性・嗜虐性を大仰に描いて、麻衣子が"一藤家の血脈を切る"ために生きて行く決意(あるいは男を遠ざけて死んだ様になっている風情)を強調したり、ダム建設推進派の村長だった日出男の遺体発見時、体に"十字架"に見える紋様を入れたり、全体をワザと茫洋な記述にして、時系列も縦横に飛ぶ等、様々な工夫をしてるが、麻衣子が日出男に引き取られた時の唯一の仲間のミチル君(決して大きく成長しない)を登場させたり、麻衣子がピンチの時にはスーパー・ウーマンの如くに必ず麻衣子を救う"司"という女性友達を登場させたり(即ち、"司"は「多重人格」を司る支配人格)して、作者の意図はミエミエである。 作者としては珍しく冴えない作品。これまでの私の経験では「多重人格」を扱って成功したミステリは無い(ミステリと「多重人格」とは相性が悪いのである。"何でもアリ"という事になってしまうので)。ミステリとは相性が悪い「多重人格」を軸としたサイコ・ホラーとしてしまった凡作だと思った。 | ||||
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きれいな状態で届きました。 | ||||
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恐らく大洲の隠れキリシタンを題材に作った作品。 宇佐美先生らしい展開に引き込まれました。 そろそろどの作品か映画にならないかな…。 | ||||
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「入らずの森」、「虹色の童話」に続いて読んだ宇佐美まこと氏の3冊目でした。湊かなえ氏の小説と同じくイヤミス傾向の作風ですね。あとがきにも書かれていましたが「あえて人間の暗部に切り込んでいきたいのです。(中略)人間は弱くてずるくて汚いものだし、嘘はつくし欲もある。だけどそれだからこそ魅力的でミステリアス」ということ、特にこの作品はまさにそういう人間を描いた作品だと思います。 資産家の娘でピアノが大好きだった麻衣子そして母は、父親が死亡して事業が立ち行かなくなり、家を手放さないといけなくなってしまいます。仕方なく父親の兄が暮らす四国の村へ移住。その一藤家は元は庄屋の家柄で村では名家でしたが、村長を務める伯父は異形というほど醜い男で、その妻に日常的に暴力をふるっていました。古く因習的な村で、母親はショックから抜け出せず無気力に暮らし、麻衣子も転校した学校で執拗ないじめにあいます。それを助けてくれたのは、転校生で大柄、力もある司という女の子でした。ある日、麻衣子は伯父が母親と関係を持っていることを知ってショックを受けます。そんな時、伯父が熱湯の風呂に入ってひどい火傷で亡くなり、それは事故だったのか、それとも・・・という前半。 その後、村はダム建設で水の底に沈み、村人はみんなばらばらに。母と伯母と一緒に東京に引っ越した麻衣子は急な環境の変化に対応できず精神科に入院、その後、回復して大好きなピアノの調律師になり、やっと自立を果たして働き始めます。ところが、そこへ現れたのは同じ村の出身だったというジャーナリストの三谷。彼は村長の死に不審を抱き、記事にしようと麻衣子につきまとうようになります。 愛媛の村の雰囲気は、横溝正史風のお話が好きな人ならきっと気に入ると思います。麻衣子自身の事情がだんだんわかってくるにつれて、様々な真相が明らかになっていく過程はスリリングです。そして伯父の死因はただの事故だったのか、それとも誰かに殺されたのか?本当に恐ろしいのはいったい誰だったのか・・?屈折した人間の怖さがじりじりと迫ってきます。 医学的な症状が正確に描かれているのか、そしてラストの終わり方には賛否両論あるかと思いますが、よくできたお話でよかったと思います。他の作品も読んでいくのが楽しみです。 | ||||
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筆者の作品は4冊目だが、序盤から何か気配を感じて背後が気になるような、そろりそろりと忍び寄る恐怖を感じる作品だと思う。例えるなら、随分古い映画になるが、ヒッチコックの「鳥」を見て感じたような心理的に追い詰められる感じだろうか。 あまりツッコミを入れずに素直に引き込まれれば、エンターテイメントとして面白いと思う。 | ||||
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そりゃあもちろん解離性障害をガジェットにするミステリーは多いけれども、要はどこまで人間の心の奥深い闇に光をあてることができるかという作家としての力量が問われるのだと思う。その点、いうことなし。まいりました。おみごと。『愚者の毒』に続いて2年連続推理作家協会賞を差し上げてもおかしくないくらい。次回作が楽しみです。 | ||||
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主人公の麻衣子は、5歳の時に父が自殺し、愛媛の山奥にある父の実家に母と共に身を寄せます。その村がダムに沈むことになり、伯母、母と共に東京に転居しますが、それまでの10年間は麻衣子にとって大変辛い毎日でした。 上京して15年後、今はピアノ調律師として働く麻衣子のもとに、愛媛の同じ村の出身であるという自称・ライターの胡散臭い男性が尋ねてきて、それをきっかけに過去の事件が蘇り‥‥という感じで話が進みます。分類としてはサイコホラーかなと思います。 話もテンポ良く進み、一気に読了できました。伏線もうまく張ってあります。 とりあえず一件落着(?)な時点で話は終わりますが、さらに新たな悲劇の予兆を残しながら終わっているところは、ホラーのお約束というところでしょうか。 | ||||
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調律師の主人公。とてもおどおどしていて強い人に言われっぱなしの女性です。 出身がダムに沈んだ村で、そこでは隠れキリシタンの呪いがあり…。 そういう方向のホラーかな?と思って読んでいたので、期待していた方向に進まなかったのは残念ではありますが、話自体はとても面白く、さくさく読めました。 ただ、もうちょっとオチがわかりにくければよかったのにな、とは思いました。予想が全部あたってしまって、驚きがありませんでした。 | ||||
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