忘れられた巨人

【この小説が収録されている参考書籍】

【この小説が載っている参考書籍】

評判

忘れられた巨人の評価:

3.88/5点 レビュー 139件。 A ランク

Amazon書評・レビュー点数毎のグラフです

平均点3.88pt

Amazonレビュー一覧

Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全178件 121〜140 7/9ページ
No.58
(5pt)

Take me to the another world...

Take me to the another world...
カズオイシグロの本を読むたびにそう感じるけれど、今回ほどそれを強く感じたことはなかった。

「忘れられた巨人」は10年ぶりのカズオイシグロの長編小説だ。
発売されてすぐ買ったのに、1年半も寝かしてた。だって持ち歩きにくいんだもん(笑)

カズオイシグロという作家はそっと読者を物語のなかに誘うストーリーテラー。一つの薄暗い部屋に入ると奥のドアが開いていて、その光に導かれて次の部屋に入る、次の部屋にもまた開いたドアがある、そんな風に物語は進んでいく。

たくさんのメタファー、たくさんの謎に包まれて、何かが分かり、分からないままどんどん物語が私を運んで行く。
たくさんの出来事が起きるのに、語り尽くされることなく、しかし確かな何かを受け取って私は最後まで読み進む。

あとちょっとで最後ってところで自宅の駅に着いたけど、どうしても読まずにいられなくて、駅の改札を出て立ったまま読了した(笑)

私はカズオイシグロのような作家と同時代を生きて、死ぬまで彼の作品を読むことができて幸せだと心底思う。
まだ初期の作品で読んでない物があるから、悔いの残らないように死ぬまでに全部読まねばならないと強く感じた秋の夜であった。
忘れられた巨人 (ハヤカワepi文庫) Amazon書評・レビュー: 忘れられた巨人 (ハヤカワepi文庫)より
4151200916
No.57
(5pt)

Take me to the another world...

Take me to the another world...
カズオイシグロの本を読むたびにそう感じるけれど、今回ほどそれを強く感じたことはなかった。

「忘れられた巨人」は10年ぶりのカズオイシグロの長編小説だ。
発売されてすぐ買ったのに、1年半も寝かしてた。だって持ち歩きにくいんだもん(笑)

カズオイシグロという作家はそっと読者を物語のなかに誘うストーリーテラー。一つの薄暗い部屋に入ると奥のドアが開いていて、その光に導かれて次の部屋に入る、次の部屋にもまた開いたドアがある、そんな風に物語は進んでいく。

たくさんのメタファー、たくさんの謎に包まれて、何かが分かり、分からないままどんどん物語が私を運んで行く。
たくさんの出来事が起きるのに、語り尽くされることなく、しかし確かな何かを受け取って私は最後まで読み進む。

あとちょっとで最後ってところで自宅の駅に着いたけど、どうしても読まずにいられなくて、駅の改札を出て立ったまま読了した(笑)

私はカズオイシグロのような作家と同時代を生きて、死ぬまで彼の作品を読むことができて幸せだと心底思う。
まだ初期の作品で読んでない物があるから、悔いの残らないように死ぬまでに全部読まねばならないと強く感じた秋の夜であった。
忘れられた巨人 Amazon書評・レビュー: 忘れられた巨人より
4152095369
No.56
(5pt)

読者次第・・・・・

6世紀ごろ、アーサー王の頃のお話っていうだけで、相当しんどくなるけど、読み進めるにつれ、やはり、なかなかつらいものがある。とはいっても、読んでしまう。で、最後の最後に、これってどう考える?って、最後のセンテンスに読者が試される!って感じになっている。
 途中で投げ出さずに我慢強く読み続けてきた者だけが到達できる究極のラスト・シーン!
忘れられた巨人 (ハヤカワepi文庫) Amazon書評・レビュー: 忘れられた巨人 (ハヤカワepi文庫)より
4151200916
No.55
(5pt)

読者次第・・・・・

6世紀ごろ、アーサー王の頃のお話っていうだけで、相当しんどくなるけど、読み進めるにつれ、やはり、なかなかつらいものがある。とはいっても、読んでしまう。で、最後の最後に、これってどう考える?って、最後のセンテンスに読者が試される!って感じになっている。
 途中で投げ出さずに我慢強く読み続けてきた者だけが到達できる究極のラスト・シーン!
忘れられた巨人 Amazon書評・レビュー: 忘れられた巨人より
4152095369
No.54
(5pt)

記憶と忘却の意味を問う

カズオ・イシグロの10年振りの長編は、記憶と忘却をテーマにしている。例えば「東京物語」の老夫婦が家族の思い出を語り合うように、そもそも誰かが何かを憶えていなければ物語は始まらないのだが、アクセルとベアトリスは大事なことを忘れてしまっている。自分たちの息子がどこにいるのかも覚束ない。

大事なことを忘れているところからスタートする。この設定をクリアするために、筆者は「私を離さないで」に続いてファンタジーの採用に踏み切ったのだろう。「人の心には竜が棲んでいる」といえば隠喩にすぎないが、竜を物語の中に登場させればそれも隠喩なのだけどファンタジーになる。そのファンタジーが違和感なく受け止められるための仕掛け、それがアーサー王伝説だろうか。

ゲルマン系サクソン人がケルト系ブリトン人の土地に侵攻していた時代、侵略者に颯爽と立ち向かったのがアーサー王である。しかしローマ人がブリタニアを放棄した後のことでもあり、残念ながら史書にその記録は残されていない。アーサーはそもそも敗者の側であり忘れられていたのに、後世思い出されて英雄になった。それはキリスト教化していたブリトン人と未改宗のサクソン人という構図、つまり宗教戦争の英雄と位置づけられたからだ。歴史は時に勝者に都合の良いことのみを語り平然としているが、神話であればなおさら恥じる必要はない。アーサーだけでなく当時の西欧各地のローマ側の将軍たちは数に勝るゲルマン人を何度となく包囲殲滅しているが、やがて防御網を分断され敗れていった。ブリトン人もそうだったのだとすると、そこにどのような感情があったのか、神話に書かれていないけれども想像することはできる。

こうして、「記憶と忘却」「神話の中の宗教戦争」「民族間の憎悪」という道具立てが整った。ボスニア・ヘルツェゴビナの惨事を記憶に留めようとするのであれば、現地を取材してドキュメンタリーとして書き上げることもできたはず。しかしそれでは彼の壮大な想像力は現実の凄惨さの前に色あせてしまうかもしれない。彼が想像力を駆使する舞台に選んだのは、イギリスの古い血塗られた記憶、アーサー王の時代だった。

そもそも、人間は都合の悪いことを忘れたり、政治的な必要性から記憶を留めようとしたりする動物である。日本人は被爆の記憶を留めようと原爆記念公園を作り、そこに70年の間に記憶の薄れた敵方の大統領が訪問したと喜ぶが、一方で慰安婦像をソウルに建てて忘れまいとする人々には眉を顰める。竜の息は過去を正当化する悪なのか、人々が平和に暮らすための正義なのか。正義と悪だけでなく記憶と忘却も相対化してしまったところに、私は筆者の思考力の凄さを感じた。
忘れられた巨人 (ハヤカワepi文庫) Amazon書評・レビュー: 忘れられた巨人 (ハヤカワepi文庫)より
4151200916
No.53
(5pt)

記憶と忘却の意味を問う

カズオ・イシグロの10年振りの長編は、記憶と忘却をテーマにしている。例えば「東京物語」の老夫婦が家族の思い出を語り合うように、そもそも誰かが何かを憶えていなければ物語は始まらないのだが、アクセルとベアトリスは大事なことを忘れてしまっている。自分たちの息子がどこにいるのかも覚束ない。

大事なことを忘れているところからスタートする。この設定をクリアするために、筆者は「私を離さないで」に続いてファンタジーの採用に踏み切ったのだろう。「人の心には竜が棲んでいる」といえば隠喩にすぎないが、竜を物語の中に登場させればそれも隠喩なのだけどファンタジーになる。そのファンタジーが違和感なく受け止められるための仕掛け、それがアーサー王伝説だろうか。

ゲルマン系サクソン人がケルト系ブリトン人の土地に侵攻していた時代、侵略者に颯爽と立ち向かったのがアーサー王である。しかしローマ人がブリタニアを放棄した後のことでもあり、残念ながら史書にその記録は残されていない。アーサーはそもそも敗者の側であり忘れられていたのに、後世思い出されて英雄になった。それはキリスト教化していたブリトン人と未改宗のサクソン人という構図、つまり宗教戦争の英雄と位置づけられたからだ。歴史は時に勝者に都合の良いことのみを語り平然としているが、神話であればなおさら恥じる必要はない。アーサーだけでなく当時の西欧各地のローマ側の将軍たちは数に勝るゲルマン人を何度となく包囲殲滅しているが、やがて防御網を分断され敗れていった。ブリトン人もそうだったのだとすると、そこにどのような感情があったのか、神話に書かれていないけれども想像することはできる。

こうして、「記憶と忘却」「神話の中の宗教戦争」「民族間の憎悪」という道具立てが整った。ボスニア・ヘルツェゴビナの惨事を記憶に留めようとするのであれば、現地を取材してドキュメンタリーとして書き上げることもできたはず。しかしそれでは彼の壮大な想像力は現実の凄惨さの前に色あせてしまうかもしれない。彼が想像力を駆使する舞台に選んだのは、イギリスの古い血塗られた記憶、アーサー王の時代だった。

そもそも、人間は都合の悪いことを忘れたり、政治的な必要性から記憶を留めようとしたりする動物である。日本人は被爆の記憶を留めようと原爆記念公園を作り、そこに70年の間に記憶の薄れた敵方の大統領が訪問したと喜ぶが、一方で慰安婦像をソウルに建てて忘れまいとする人々には眉を顰める。竜の息は過去を正当化する悪なのか、人々が平和に暮らすための正義なのか。正義と悪だけでなく記憶と忘却も相対化してしまったところに、私は筆者の思考力の凄さを感じた。
忘れられた巨人 Amazon書評・レビュー: 忘れられた巨人より
4152095369
No.52
(4pt)

児童文学としてもいいかも

おとぎ話を舞台設定にして、民族の対立や家族愛を物語っています。
個人的に、児童文学はレベルの高いジャンルだと考えているもので、「これこそ子どもたちに積極的に読んでほしい」と声を大にして言いたい。

竜をほろぼし、記憶を取り戻すことで、「わすれられた巨人」である人々の憎しみも動き出す……。
暴力の未来を予感させながらも、「ブリテン人を憎む」ことを約束した少年はブリテン人の老夫婦と友人だったことは忘れないと誓う。この不幸の予感の中に一点の光明の描き方もすばらしい。
小学校高学年あたりから、読ませてみてはいかがでしょう?
忘れられた巨人 (ハヤカワepi文庫) Amazon書評・レビュー: 忘れられた巨人 (ハヤカワepi文庫)より
4151200916
No.51
(4pt)

児童文学としてもいいかも

おとぎ話を舞台設定にして、民族の対立や家族愛を物語っています。
個人的に、児童文学はレベルの高いジャンルだと考えているもので、「これこそ子どもたちに積極的に読んでほしい」と声を大にして言いたい。

竜をほろぼし、記憶を取り戻すことで、「わすれられた巨人」である人々の憎しみも動き出す……。
暴力の未来を予感させながらも、「ブリテン人を憎む」ことを約束した少年はブリテン人の老夫婦と友人だったことは忘れないと誓う。この不幸の予感の中に一点の光明の描き方もすばらしい。
小学校高学年あたりから、読ませてみてはいかがでしょう?
忘れられた巨人 Amazon書評・レビュー: 忘れられた巨人より
4152095369
No.50
(4pt)

何度でも

この著者の作品は初めて読みました。
多忙な中、時間を捻出して細切れに読んでいきましたが、かえってそれが物語のテンポに合ったようです。
登場人物の会話や行動が本を閉じている時間によく思い出されて、背景や意味するところ、言い回しや雰囲気等を味わいながら、物語の展開を楽しみに読み進みました。
とはいえ、この作品から受けとるものが多く、また、大きな余韻が残る終わり方だったので、たった1回読んだだけでは咀嚼しきれず、とても満足できたものではありせんでした。
年齢や人生経験によって、受けとったものへの解釈や思いがきっと変わるんだろうな…。
というわけで、何年経っても飽きずに何度でも読み返していく予感がしています。
それもこれもファンタジー形式でかなり昔の時代のこととして書かれているからだと思います。
忘れられた巨人 (ハヤカワepi文庫) Amazon書評・レビュー: 忘れられた巨人 (ハヤカワepi文庫)より
4151200916
No.49
(4pt)

何度でも

この著者の作品は初めて読みました。
多忙な中、時間を捻出して細切れに読んでいきましたが、かえってそれが物語のテンポに合ったようです。
登場人物の会話や行動が本を閉じている時間によく思い出されて、背景や意味するところ、言い回しや雰囲気等を味わいながら、物語の展開を楽しみに読み進みました。
とはいえ、この作品から受けとるものが多く、また、大きな余韻が残る終わり方だったので、たった1回読んだだけでは咀嚼しきれず、とても満足できたものではありせんでした。
年齢や人生経験によって、受けとったものへの解釈や思いがきっと変わるんだろうな…。
というわけで、何年経っても飽きずに何度でも読み返していく予感がしています。
それもこれもファンタジー形式でかなり昔の時代のこととして書かれているからだと思います。
忘れられた巨人 Amazon書評・レビュー: 忘れられた巨人より
4152095369
No.48
(5pt)

ズシン。

色々な事を考えさせられます。
現代顕在化している、介護、痴呆、愛の形、家族、民族間紛争、言われなき差別などなどの問題をストレイトに小説にするのではなく、アーサー王時代の英国を舞台にしたファンタジーという形で著したカズオ・イシグロにただただ感心です。
上記の問題を身近に感じている人や当事者には胸に迫るものがあります。
翻訳も抜群に良くてスラスラ読めます。
忘れられた巨人 (ハヤカワepi文庫) Amazon書評・レビュー: 忘れられた巨人 (ハヤカワepi文庫)より
4151200916
No.47
(5pt)

ズシン。

色々な事を考えさせられます。
現代顕在化している、介護、痴呆、愛の形、家族、民族間紛争、言われなき差別などなどの問題をストレイトに小説にするのではなく、アーサー王時代の英国を舞台にしたファンタジーという形で著したカズオ・イシグロにただただ感心です。
上記の問題を身近に感じている人や当事者には胸に迫るものがあります。
翻訳も抜群に良くてスラスラ読めます。
忘れられた巨人 Amazon書評・レビュー: 忘れられた巨人より
4152095369
No.46
(4pt)

一冊のラブレター

女性の視点からですが、いったいイシグロさんの奥様はこれを読んでどう思ったんだろう、とずっと考えながら読んでいました。騎士道やカトリック教会の闇など、イギリス古来の文化に触れながらも、根底には(読んでいてときどき恥ずかしくなるほど)えんえんと妻に対する愛が語られています。

イシグロさんも60歳になり、奥様と別々の「舟」で「向こう側の島」に行くことに恐怖を感じていたのでしょうか。最後の章では、胸が張り裂けそうになり号泣してしまいました。イシグロさん、来るべき日がきたら「向こう側の島」で家族と再会できるといいですね…。

こうもセンチメンタルな話を書くには、童話のような設定はぴったりだと思いました。
キリッとした本当に美しい英語を書く人。読める人は英語版がおすすめ。
忘れられた巨人 (ハヤカワepi文庫) Amazon書評・レビュー: 忘れられた巨人 (ハヤカワepi文庫)より
4151200916
No.45
(4pt)

一冊のラブレター

女性の視点からですが、いったいイシグロさんの奥様はこれを読んでどう思ったんだろう、とずっと考えながら読んでいました。騎士道やカトリック教会の闇など、イギリス古来の文化に触れながらも、根底には(読んでいてときどき恥ずかしくなるほど)えんえんと妻に対する愛が語られています。

イシグロさんも60歳になり、奥様と別々の「舟」で「向こう側の島」に行くことに恐怖を感じていたのでしょうか。最後の章では、胸が張り裂けそうになり号泣してしまいました。イシグロさん、来るべき日がきたら「向こう側の島」で家族と再会できるといいですね…。

こうもセンチメンタルな話を書くには、童話のような設定はぴったりだと思いました。
キリッとした本当に美しい英語を書く人。読める人は英語版がおすすめ。
忘れられた巨人 Amazon書評・レビュー: 忘れられた巨人より
4152095369
No.44
(5pt)

忘却

アーサー王よりすこし後の、物語。
アクセルとベアトリスの老夫婦は、自分達の息子に会うために、
旅にでる。
竜の息のために、記憶は曖昧で、老夫婦は、
どうして息子がいなくなったのか、、、など、大事な事も思い出せない。
認知症なのかと思ったが、世の中のヒト全ての記憶が曖昧である。

二人の道行きには、鬼や、妖精、竜がでてきたり。
部族間の深刻な対立が暗示されたり。
鳥葬を暗示するような、狂った宗教感がでてきたり。
なかなか、順調には、息子の村にはたどり着かない。

作者自身は、本質的には、老夫婦のラブストーリーなんだ、、そうだが、
私には、”忘却する事”の大事さ、
他人への恨みつらみを、忘れる事の意義を示したかったようにみえてならない。
竜の息は、途切れなくてよかった、、、と思えた。

翻訳もよいのだろうけれど、
平易な文章であるが、
とても、”忘れるという事”について、考えさせられ、
繰り返し、戻り、帰り、読んだ。
他者を許すには、忘れる事も、過程として必要だろうと思った。
忘れられた巨人 (ハヤカワepi文庫) Amazon書評・レビュー: 忘れられた巨人 (ハヤカワepi文庫)より
4151200916
No.43
(5pt)

忘却

アーサー王よりすこし後の、物語。
アクセルとベアトリスの老夫婦は、自分達の息子に会うために、
旅にでる。
竜の息のために、記憶は曖昧で、老夫婦は、
どうして息子がいなくなったのか、、、など、大事な事も思い出せない。
認知症なのかと思ったが、世の中のヒト全ての記憶が曖昧である。

二人の道行きには、鬼や、妖精、竜がでてきたり。
部族間の深刻な対立が暗示されたり。
鳥葬を暗示するような、狂った宗教感がでてきたり。
なかなか、順調には、息子の村にはたどり着かない。

作者自身は、本質的には、老夫婦のラブストーリーなんだ、、そうだが、
私には、”忘却する事”の大事さ、
他人への恨みつらみを、忘れる事の意義を示したかったようにみえてならない。
竜の息は、途切れなくてよかった、、、と思えた。

翻訳もよいのだろうけれど、
平易な文章であるが、
とても、”忘れるという事”について、考えさせられ、
繰り返し、戻り、帰り、読んだ。
他者を許すには、忘れる事も、過程として必要だろうと思った。
忘れられた巨人 Amazon書評・レビュー: 忘れられた巨人より
4152095369
No.42
(4pt)

記憶を呼び戻す旅は是か非か

カズオ・イシグロは書く度に異なった作風を発表してきた。『私を離さないで』から10年、イシグロは新しい作風で読者を驚かせた。『忘れられた巨人』は、中世のイングランドを舞台に、鬼や龍、勇者、騎士などが登場し、主人公たちが旅するファンタジー風で寓意が散りばめられた小説だ。
 だが主人公が老夫婦という設定からして、一般的なファンタジーとは違う。老夫婦は息子を訪ねて旅に出る。それは記憶を訪ねる旅でもある。何とも穏やかに慈しみあう二人の旅は幾度もの苦難に遭遇する。
 この国の人々は皆、眠れる龍の吐く霧によって大事なものを忘却している。龍を対峙せんとする勇者と、それを阻もうとする者。支配者は何を望み、民は何に期待するのか。すべてを失った老夫婦の末路はいかが。小説に結論は無い。読者の想像力だけが結果を導く。
 忘れることは是か非か。過去の侵略や殺戮、裏切りと略奪は忘れるべきだろうか。個人の記憶の回復は、民族の記憶に繋がる。記憶の回復は愛を取り戻すのか、それとも引き裂くのか。記憶なき平和は本物だろうか。そもそも記憶とは何か? 死とは何か?
忘れられた巨人 (ハヤカワepi文庫) Amazon書評・レビュー: 忘れられた巨人 (ハヤカワepi文庫)より
4151200916
No.41
(4pt)

記憶を呼び戻す旅は是か非か

カズオ・イシグロは書く度に異なった作風を発表してきた。『私を離さないで』から10年、イシグロは新しい作風で読者を驚かせた。『忘れられた巨人』は、中世のイングランドを舞台に、鬼や龍、勇者、騎士などが登場し、主人公たちが旅するファンタジー風で寓意が散りばめられた小説だ。
 だが主人公が老夫婦という設定からして、一般的なファンタジーとは違う。老夫婦は息子を訪ねて旅に出る。それは記憶を訪ねる旅でもある。何とも穏やかに慈しみあう二人の旅は幾度もの苦難に遭遇する。
 この国の人々は皆、眠れる龍の吐く霧によって大事なものを忘却している。龍を対峙せんとする勇者と、それを阻もうとする者。支配者は何を望み、民は何に期待するのか。すべてを失った老夫婦の末路はいかが。小説に結論は無い。読者の想像力だけが結果を導く。
 忘れることは是か非か。過去の侵略や殺戮、裏切りと略奪は忘れるべきだろうか。個人の記憶の回復は、民族の記憶に繋がる。記憶の回復は愛を取り戻すのか、それとも引き裂くのか。記憶なき平和は本物だろうか。そもそも記憶とは何か? 死とは何か?
忘れられた巨人 Amazon書評・レビュー: 忘れられた巨人より
4152095369
No.40
(5pt)

一は全、全は一

“Never Let Me Go”でも一定の、ある意味安定したトーンでストーリーは進んで行きましたが、
今回の“The Buried Giant”もイギリスの天候を思わせるようなグレーで且つ深緑色の雰囲気の中に私を引き込んでくれました。
ファンタジーということでドラゴンクエストのようなものを想像してしまって少し読むのをためらっていたのですが、
一度読み始めると小野不由美著の「十二国記」のように世界観の構成と表現にためらいがなく、
現実世界ではないはずなのに本当は歴史上そうであったのかもしれないと錯覚してしまうくらいで、仕上げるのに10年かけただけはあるなぁと感じました。

巨人といいながら本の中には“巨人”は出てきません。Giantはこの本での大切なメタファーになります。
本の登場人物はみなそれぞれの理由でそれぞれのGiantに執着し、忘れ(ようとして)、そして時の中に埋めてきました。
Giantは時には偉大なるアーサー王であり、クエリグ竜であり、老夫婦の寂しさであり、戦士のアイデンティティーでもあり少年の母でもあります。
しかしそれだけでは終わりません。漫画“鋼の錬金術師”の「一は全、全は一」を彷彿させるように
Giantは個人の中だけで完結せず周りの人、世界にも関わってくるのです。

そして最後のアクセルの表現は著者から私たちへの問いかけのような気がしました。
それは現実世界にいる私たちへ「あなたならどうですか?憎しみや復讐心を思い出してしまったとき、
遠い昔のことだったとしても全てを忘れて(許して)今これからも平穏に過ごしていけますか?」というような・・・。
船頭の横を何も言わずに進んでいったアクセルの表情はどうだったのか、どんな思いを抱いていたのか。
ベアトリスへの愛は霧が晴れたあとも変わらなかったのか。
一途で無邪気な二人の愛が本当のハッピーエンドで終わらないだろうと感じ始めた時から
心がざわつき、読後は目に涙が滲んでいました。
読んで数日は心の中にこの本に閉じ込められている様々な思いに魅入られてしまう作品でした。
忘れられた巨人 (ハヤカワepi文庫) Amazon書評・レビュー: 忘れられた巨人 (ハヤカワepi文庫)より
4151200916
No.39
(5pt)

一は全、全は一

“Never Let Me Go”でも一定の、ある意味安定したトーンでストーリーは進んで行きましたが、
今回の“The Buried Giant”もイギリスの天候を思わせるようなグレーで且つ深緑色の雰囲気の中に私を引き込んでくれました。
ファンタジーということでドラゴンクエストのようなものを想像してしまって少し読むのをためらっていたのですが、
一度読み始めると小野不由美著の「十二国記」のように世界観の構成と表現にためらいがなく、
現実世界ではないはずなのに本当は歴史上そうであったのかもしれないと錯覚してしまうくらいで、仕上げるのに10年かけただけはあるなぁと感じました。

巨人といいながら本の中には“巨人”は出てきません。Giantはこの本での大切なメタファーになります。
本の登場人物はみなそれぞれの理由でそれぞれのGiantに執着し、忘れ(ようとして)、そして時の中に埋めてきました。
Giantは時には偉大なるアーサー王であり、クエリグ竜であり、老夫婦の寂しさであり、戦士のアイデンティティーでもあり少年の母でもあります。
しかしそれだけでは終わりません。漫画“鋼の錬金術師”の「一は全、全は一」を彷彿させるように
Giantは個人の中だけで完結せず周りの人、世界にも関わってくるのです。

そして最後のアクセルの表現は著者から私たちへの問いかけのような気がしました。
それは現実世界にいる私たちへ「あなたならどうですか?憎しみや復讐心を思い出してしまったとき、
遠い昔のことだったとしても全てを忘れて(許して)今これからも平穏に過ごしていけますか?」というような・・・。
船頭の横を何も言わずに進んでいったアクセルの表情はどうだったのか、どんな思いを抱いていたのか。
ベアトリスへの愛は霧が晴れたあとも変わらなかったのか。
一途で無邪気な二人の愛が本当のハッピーエンドで終わらないだろうと感じ始めた時から
心がざわつき、読後は目に涙が滲んでいました。
読んで数日は心の中にこの本に閉じ込められている様々な思いに魅入られてしまう作品でした。
忘れられた巨人 Amazon書評・レビュー: 忘れられた巨人より
4152095369