浮世の画家

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浮世の画家の評価:

3.98/5点 レビュー 56件。 D ランク

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未読の方はご注意ください

全116件 21〜40 2/6ページ
No.96
(5pt)

イシグロ作品中、最も頭に思い浮かべることが多い作品

1986年、日系英国人作家カズオ・イシグロ氏の作品です。
 原題「An Artist of the Floating World」、ウィットブレッド賞受賞。
 ハヤカワ文庫版は、従来の飛田茂雄氏の訳に、金子靖氏の校正・校閲を加えたもので2006年刊。

 戦後間もないころの日本。
 画家を引退した小野益次は、娘・紀子の縁談が破談になってしまったことに、
自分の過去が関係していると気づく。
 小野は、過去の歩みを顧み、師匠・弟子といったその時その時の周囲の人にも思いを馳せる。

 作品としては、『日の名残り』や『わたしを離さないで』の方が上なのかもしれない。
 けど、個人的には、最も頭に浮かぶことが多いのは、本作『浮世の画家』です。

 単純に、舞台が日本だから、というのもあると思いますが、
今の日本だからこそ、頭に浮かぶことが多くなっているとも感じます。
 雑誌を立ち読みして、「今の日本人は戦前の日本人に云々なんて書かれていると、
自ずと本作が頭に浮かびます。

 戦前・戦中・戦後という価値観の揺らいでいく中で、
一人一人の振る舞いが変わってくるのが面白い。
 主人公・小野の回想には、自己正当化、自己欺瞞がある。
 一通り読み終えて、また最初に戻ってピラピラ読んでいくと、
自己欺瞞が次々と展開されているのが、手に取るようによく分かる。
 あることを回想している最中に、別の回想へ移っていくところなんか絶妙としか言いようがない。 

 「大きな環境の変化の中での自己の曖昧さ」について考えさせられる。
 「大きく環境が変化するとき = 環境が自分の中に侵入してくるとき」と言えると思う。
 そういう時に、環境に順応していくのか、反発するのか、逃避するのか。
 大きな自己欺瞞を伴っていないか、自意識が過剰に肥大化していないだろうか、
自意識が過剰に閉じこもっていないか、などなど考えてしまいます。
 そういった諸々を内包しながら続いていく関係や、戦後という分断についても。

 核心に触れず周囲を描くようなスタイルで、後を引きます。
 で、その後を引きずった状態で周囲のリアルと接していくと、
色々見えてくるものがあったり、見えてないスペースもより広く認識できてくると思います。
 個人的には、現時点までのイシグロ作品の中で、最も気になる作品です。
 数年経つと、また読み返したくなるタイプ。
浮世の画家 Amazon書評・レビュー: 浮世の画家より
4120016471
No.95
(4pt)

いなくなってしまった子供たちと大人たちへの憧憬

お正月、偶然ですが、今年の3月にNHKで放送されるという「浮世の画家」("An Artist Of The Floating World")の原作を読みました。作者は、言うまでもなくカズオ・イシグロです。
 背景は、カズオ・イシグロが自分の思い出を反映させた戦中、戦後の日本ということなのでしょうが、それは<日本>のようでいて、<日本>ではない、パラレル・ワールドとしてのもう一つの<日本>のようなイメージが受け取れます。解説にも少し言及されていますが、特に前半の主人公の小野とその二人の娘とのやり取り、所作には、まるで小津安二郎の「晩春」を見ているような、英国人が好む日本、ローアングル・キャメラの視点がしっかりと確保されている文章のきらめきがあるような気がします。そして、その時代を生きていないにも関わらず、何故か大きなお屋敷の縁側にさす陽光のような懐かしい暖かさに包まれます。
 物語の詳細を語ることはできませんが、映画化された「わたしを離さないで」があまりにも物語の深みに欠けていたことから、今回のテレビ化はどうなのだろうという危惧と興味が生まれています。とは言え、私はテレビを見る習慣がないので、確認ができません(笑)
 一人の芸術家が一つの戦争を乗り切り、芸術家としての深い苦悩の中での己が矜持と一人の娘たちの幸せを祈る生活者としての心の葛藤を描き、さりとて信念に従って力を尽くして行動した男の静かな自尊心と諦観をも垣間見せた、優れた小説なのだと思いました。この作品が、より深みを増して、あの「日の名残り("The remains of the day")」へとつながっていきますね。

 主人公に対して、孫の一郎がこう言います。
 「ママがおさけをのませてくれなかったこと、しんぱいしなくていいからね」
 「おまえは急に大きくなったな」と、わたしはまた笑いながら言った。

 かつてこの国にもいたような子供たち、そしてもしかするといなくなってしまった子供たちと大人たちへの憧憬、失われた心もまた胸を震わせます。
 昨年、この小説を読むようある人が原本を渡してくれましたが、飛田茂雄さんによる翻訳を読んでしまいました。お許しを(笑)。とても読みやすい綺麗な日本語でした。
浮世の画家 (ハヤカワepi文庫) Amazon書評・レビュー: 浮世の画家 (ハヤカワepi文庫)より
4151200398
No.94
(4pt)

いなくなってしまった子供たちと大人たちへの憧憬

お正月、偶然ですが、今年の3月にNHKで放送されるという「浮世の画家」("An Artist Of The Floating World")の原作を読みました。作者は、言うまでもなくカズオ・イシグロです。
 背景は、カズオ・イシグロが自分の思い出を反映させた戦中、戦後の日本ということなのでしょうが、それは<日本>のようでいて、<日本>ではない、パラレル・ワールドとしてのもう一つの<日本>のようなイメージが受け取れます。解説にも少し言及されていますが、特に前半の主人公の小野とその二人の娘とのやり取り、所作には、まるで小津安二郎の「晩春」を見ているような、英国人が好む日本、ローアングル・キャメラの視点がしっかりと確保されている文章のきらめきがあるような気がします。そして、その時代を生きていないにも関わらず、何故か大きなお屋敷の縁側にさす陽光のような懐かしい暖かさに包まれます。
 物語の詳細を語ることはできませんが、映画化された「わたしを離さないで」があまりにも物語の深みに欠けていたことから、今回のテレビ化はどうなのだろうという危惧と興味が生まれています。とは言え、私はテレビを見る習慣がないので、確認ができません(笑)
 一人の芸術家が一つの戦争を乗り切り、芸術家としての深い苦悩の中での己が矜持と一人の娘たちの幸せを祈る生活者としての心の葛藤を描き、さりとて信念に従って力を尽くして行動した男の静かな自尊心と諦観をも垣間見せた、優れた小説なのだと思いました。この作品が、より深みを増して、あの「日の名残り("The remains of the day")」へとつながっていきますね。

 主人公に対して、孫の一郎がこう言います。
 「ママがおさけをのませてくれなかったこと、しんぱいしなくていいからね」
 「おまえは急に大きくなったな」と、わたしはまた笑いながら言った。

 かつてこの国にもいたような子供たち、そしてもしかするといなくなってしまった子供たちと大人たちへの憧憬、失われた心もまた胸を震わせます。
 昨年、この小説を読むようある人が原本を渡してくれましたが、飛田茂雄さんによる翻訳を読んでしまいました。お許しを(笑)。とても読みやすい綺麗な日本語でした。
浮世の画家 (中公文庫) Amazon書評・レビュー: 浮世の画家 (中公文庫)より
412201896X
No.93
(4pt)

いなくなってしまった子供たちと大人たちへの憧憬

お正月、偶然ですが、今年の3月にNHKで放送されるという「浮世の画家」("An Artist Of The Floating World")の原作を読みました。作者は、言うまでもなくカズオ・イシグロです。
 背景は、カズオ・イシグロが自分の思い出を反映させた戦中、戦後の日本ということなのでしょうが、それは<日本>のようでいて、<日本>ではない、パラレル・ワールドとしてのもう一つの<日本>のようなイメージが受け取れます。解説にも少し言及されていますが、特に前半の主人公の小野とその二人の娘とのやり取り、所作には、まるで小津安二郎の「晩春」を見ているような、英国人が好む日本、ローアングル・キャメラの視点がしっかりと確保されている文章のきらめきがあるような気がします。そして、その時代を生きていないにも関わらず、何故か大きなお屋敷の縁側にさす陽光のような懐かしい暖かさに包まれます。
 物語の詳細を語ることはできませんが、映画化された「わたしを離さないで」があまりにも物語の深みに欠けていたことから、今回のテレビ化はどうなのだろうという危惧と興味が生まれています。とは言え、私はテレビを見る習慣がないので、確認ができません(笑)
 一人の芸術家が一つの戦争を乗り切り、芸術家としての深い苦悩の中での己が矜持と一人の娘たちの幸せを祈る生活者としての心の葛藤を描き、さりとて信念に従って力を尽くして行動した男の静かな自尊心と諦観をも垣間見せた、優れた小説なのだと思いました。この作品が、より深みを増して、あの「日の名残り("The remains of the day")」へとつながっていきますね。

 主人公に対して、孫の一郎がこう言います。
 「ママがおさけをのませてくれなかったこと、しんぱいしなくていいからね」
 「おまえは急に大きくなったな」と、わたしはまた笑いながら言った。

 かつてこの国にもいたような子供たち、そしてもしかするといなくなってしまった子供たちと大人たちへの憧憬、失われた心もまた胸を震わせます。
 昨年、この小説を読むようある人が原本を渡してくれましたが、飛田茂雄さんによる翻訳を読んでしまいました。お許しを(笑)。とても読みやすい綺麗な日本語でした。
浮世の画家 Amazon書評・レビュー: 浮世の画家より
4120016471
No.92
(5pt)

面白いけど…

”わたし”の語りが面白くて、すらすらと読んでしまうけど、すらすらと読んでしまう割には、語りが横道に飛びすぎ、脱線する機会が多々あって、読者としては多少なりとも面食らう。次女紀子の縁談がうまくいっているのかいないのか、読者としては心配になってくるけど、次のシーンでは、もうすでに結婚している!っていう塩梅、こういう箇所が何度も出てくる。

 ま、いいか。ブッカー賞候補作品、で、ウイットブレッド賞受賞作品だから!っていうことで、納得した英国読者もいることだし。

 戦争中の国の方針べったりの絵を描いていたことに後ろめたさを感じているなら、そのようにはっきりといえばいいのに、言わないんだな、この”わたし”は。作者も書かないんだな…その理由を…

 ま、いずれにせよ、ノーベル文学賞作家の初期作品!っていうこと、さらにはこの2019年にTVドラマ化される!っていう話題性からも興味を持って読んでみる価値はある作品かもしれない。
浮世の画家 (ハヤカワepi文庫) Amazon書評・レビュー: 浮世の画家 (ハヤカワepi文庫)より
4151200398
No.91
(5pt)

面白いけど…

”わたし”の語りが面白くて、すらすらと読んでしまうけど、すらすらと読んでしまう割には、語りが横道に飛びすぎ、脱線する機会が多々あって、読者としては多少なりとも面食らう。次女紀子の縁談がうまくいっているのかいないのか、読者としては心配になってくるけど、次のシーンでは、もうすでに結婚している!っていう塩梅、こういう箇所が何度も出てくる。

 ま、いいか。ブッカー賞候補作品、で、ウイットブレッド賞受賞作品だから!っていうことで、納得した英国読者もいることだし。

 戦争中の国の方針べったりの絵を描いていたことに後ろめたさを感じているなら、そのようにはっきりといえばいいのに、言わないんだな、この”わたし”は。作者も書かないんだな…その理由を…

 ま、いずれにせよ、ノーベル文学賞作家の初期作品!っていうこと、さらにはこの2019年にTVドラマ化される!っていう話題性からも興味を持って読んでみる価値はある作品かもしれない。
浮世の画家 (中公文庫) Amazon書評・レビュー: 浮世の画家 (中公文庫)より
412201896X
No.90
(5pt)

面白いけど…

”わたし”の語りが面白くて、すらすらと読んでしまうけど、すらすらと読んでしまう割には、語りが横道に飛びすぎ、脱線する機会が多々あって、読者としては多少なりとも面食らう。次女紀子の縁談がうまくいっているのかいないのか、読者としては心配になってくるけど、次のシーンでは、もうすでに結婚している!っていう塩梅、こういう箇所が何度も出てくる。

 ま、いいか。ブッカー賞候補作品、で、ウイットブレッド賞受賞作品だから!っていうことで、納得した英国読者もいることだし。

 戦争中の国の方針べったりの絵を描いていたことに後ろめたさを感じているなら、そのようにはっきりといえばいいのに、言わないんだな、この”わたし”は。作者も書かないんだな…その理由を…

 ま、いずれにせよ、ノーベル文学賞作家の初期作品!っていうこと、さらにはこの2019年にTVドラマ化される!っていう話題性からも興味を持って読んでみる価値はある作品かもしれない。
浮世の画家 Amazon書評・レビュー: 浮世の画家より
4120016471
No.89
(4pt)

きれいな本でした。

到着がやや遅かったけど◎です。
本の中の街並みが、日本的な印象はないし、表紙のイメージが内容と合わない。
浮世の画家 (ハヤカワepi文庫) Amazon書評・レビュー: 浮世の画家 (ハヤカワepi文庫)より
4151200398
No.88
(4pt)

きれいな本でした。

到着がやや遅かったけど◎です。
本の中の街並みが、日本的な印象はないし、表紙のイメージが内容と合わない。
浮世の画家 (中公文庫) Amazon書評・レビュー: 浮世の画家 (中公文庫)より
412201896X
No.87
(4pt)

きれいな本でした。

到着がやや遅かったけど◎です。
本の中の街並みが、日本的な印象はないし、表紙のイメージが内容と合わない。
浮世の画家 Amazon書評・レビュー: 浮世の画家より
4120016471
No.86
(4pt)

銀幕のオマージュ

主人公像の参考はレオナール藤田かな?パリサロンでの浮世絵的手法や戦争画のアッツ島玉砕。
主人公と孫との会話は執拗に芝居がかっている。なぜ?後半に来てああ、小津監督へのオマージュかと気付く。浮草、浮世の画家、浮世の自分はどうなのか?、、考えさせられますね。
浮世の画家 (ハヤカワepi文庫) Amazon書評・レビュー: 浮世の画家 (ハヤカワepi文庫)より
4151200398
No.85
(4pt)

銀幕のオマージュ

主人公像の参考はレオナール藤田かな?パリサロンでの浮世絵的手法や戦争画のアッツ島玉砕。
主人公と孫との会話は執拗に芝居がかっている。なぜ?後半に来てああ、小津監督へのオマージュかと気付く。浮草、浮世の画家、浮世の自分はどうなのか?、、考えさせられますね。
浮世の画家 (中公文庫) Amazon書評・レビュー: 浮世の画家 (中公文庫)より
412201896X
No.84
(4pt)

銀幕のオマージュ

主人公像の参考はレオナール藤田かな?パリサロンでの浮世絵的手法や戦争画のアッツ島玉砕。
主人公と孫との会話は執拗に芝居がかっている。なぜ?後半に来てああ、小津監督へのオマージュかと気付く。浮草、浮世の画家、浮世の自分はどうなのか?、、考えさせられますね。
浮世の画家 Amazon書評・レビュー: 浮世の画家より
4120016471
No.83
(5pt)

オブラートに包まれた戦争の跡

意外と読みやすかった。最初から日本語で書いてあるみたいに読めた。
婉曲な表現の中から、垣間見得てくるものがある。
蒸留されたような内容なので、戦争の重苦しさは感じられない。
浮世の画家 (ハヤカワepi文庫) Amazon書評・レビュー: 浮世の画家 (ハヤカワepi文庫)より
4151200398
No.82
(5pt)

オブラートに包まれた戦争の跡

意外と読みやすかった。最初から日本語で書いてあるみたいに読めた。
婉曲な表現の中から、垣間見得てくるものがある。
蒸留されたような内容なので、戦争の重苦しさは感じられない。
浮世の画家 (中公文庫) Amazon書評・レビュー: 浮世の画家 (中公文庫)より
412201896X
No.81
(5pt)

オブラートに包まれた戦争の跡

意外と読みやすかった。最初から日本語で書いてあるみたいに読めた。
婉曲な表現の中から、垣間見得てくるものがある。
蒸留されたような内容なので、戦争の重苦しさは感じられない。
浮世の画家 Amazon書評・レビュー: 浮世の画家より
4120016471
No.80
(5pt)

画壇、画家の地位が、戦争で如何に変化してゆくかを語る。

戦前の、古きよき時代の価値観を、高名な画家たちが、名声や、社会的立場を、「戦争協力者」という、時代の波に飲まれて変化して行く姿を、象徴的に描く。カズオ イシグロの初期作品のテーマ、「近代化の変化に、人は如何に、翻弄され、価値観を変化させて行くか。」
 戦前の日本社会は。成熟した文化を育んでいた、人々はこの価値観の中で、疑問も持たず生活をしている。戦争という大きな社会通念の転換期、民主主義の下、かつての権威、封建主義、家長制度と言うものが大きく揺らぐ。
 主人公は、かつて高名な画家であり、地域社会のなかで、行政おも動かせる力があった。しかし、戦争協力者の汚名を着る。娘の結婚話にこれは、大きな負債であった。時代が進むにつれ、彼の汚名は次第に、忘れられてゆく。
浮世の画家 (ハヤカワepi文庫) Amazon書評・レビュー: 浮世の画家 (ハヤカワepi文庫)より
4151200398
No.79
(5pt)

画壇、画家の地位が、戦争で如何に変化してゆくかを語る。

戦前の、古きよき時代の価値観を、高名な画家たちが、名声や、社会的立場を、「戦争協力者」という、時代の波に飲まれて変化して行く姿を、象徴的に描く。カズオ イシグロの初期作品のテーマ、「近代化の変化に、人は如何に、翻弄され、価値観を変化させて行くか。」
 戦前の日本社会は。成熟した文化を育んでいた、人々はこの価値観の中で、疑問も持たず生活をしている。戦争という大きな社会通念の転換期、民主主義の下、かつての権威、封建主義、家長制度と言うものが大きく揺らぐ。
 主人公は、かつて高名な画家であり、地域社会のなかで、行政おも動かせる力があった。しかし、戦争協力者の汚名を着る。娘の結婚話にこれは、大きな負債であった。時代が進むにつれ、彼の汚名は次第に、忘れられてゆく。
浮世の画家 (中公文庫) Amazon書評・レビュー: 浮世の画家 (中公文庫)より
412201896X
No.78
(5pt)

画壇、画家の地位が、戦争で如何に変化してゆくかを語る。

戦前の、古きよき時代の価値観を、高名な画家たちが、名声や、社会的立場を、「戦争協力者」という、時代の波に飲まれて変化して行く姿を、象徴的に描く。カズオ イシグロの初期作品のテーマ、「近代化の変化に、人は如何に、翻弄され、価値観を変化させて行くか。」
 戦前の日本社会は。成熟した文化を育んでいた、人々はこの価値観の中で、疑問も持たず生活をしている。戦争という大きな社会通念の転換期、民主主義の下、かつての権威、封建主義、家長制度と言うものが大きく揺らぐ。
 主人公は、かつて高名な画家であり、地域社会のなかで、行政おも動かせる力があった。しかし、戦争協力者の汚名を着る。娘の結婚話にこれは、大きな負債であった。時代が進むにつれ、彼の汚名は次第に、忘れられてゆく。
浮世の画家 Amazon書評・レビュー: 浮世の画家より
4120016471
No.77
(4pt)

絵のタイトルが「独善」ですか…。

ほかの方々が仰っているように小津安二郎の映画をほうふつとさせる雰囲気もありますが、内容からも、一人称の語りという作りからも、私は高橋和巳の「悲の器」を思い出してしまいました。
信念や価値観を偉そうに語り、現実に偉くもなってご満悦のとんちんかん親父をこのように描き出す作家の視点というか視座は、とても興味深いものがあります。
この作品や「日の名残り」を読むにつけ、どんな人たちがこの人のノーベル賞受賞を決めたのかという点もちょっと好奇心を刺激するかな?^^
浮世の画家 (中公文庫) Amazon書評・レビュー: 浮世の画家 (中公文庫)より
412201896X