浮世の画家
評判
浮世の画家の評価:
3.98/5点 レビュー 56件。 D ランク
Amazonレビュー一覧
Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全116件 21〜40 2/6ページ
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浮世の画家の評価:
3.98/5点 レビュー 56件。 D ランク
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原題「An Artist of the Floating World」、ウィットブレッド賞受賞。
ハヤカワ文庫版は、従来の飛田茂雄氏の訳に、金子靖氏の校正・校閲を加えたもので2006年刊。
戦後間もないころの日本。
画家を引退した小野益次は、娘・紀子の縁談が破談になってしまったことに、
自分の過去が関係していると気づく。
小野は、過去の歩みを顧み、師匠・弟子といったその時その時の周囲の人にも思いを馳せる。
作品としては、『日の名残り』や『わたしを離さないで』の方が上なのかもしれない。
けど、個人的には、最も頭に浮かぶことが多いのは、本作『浮世の画家』です。
単純に、舞台が日本だから、というのもあると思いますが、
今の日本だからこそ、頭に浮かぶことが多くなっているとも感じます。
雑誌を立ち読みして、「今の日本人は戦前の日本人に云々なんて書かれていると、
自ずと本作が頭に浮かびます。
戦前・戦中・戦後という価値観の揺らいでいく中で、
一人一人の振る舞いが変わってくるのが面白い。
主人公・小野の回想には、自己正当化、自己欺瞞がある。
一通り読み終えて、また最初に戻ってピラピラ読んでいくと、
自己欺瞞が次々と展開されているのが、手に取るようによく分かる。
あることを回想している最中に、別の回想へ移っていくところなんか絶妙としか言いようがない。
「大きな環境の変化の中での自己の曖昧さ」について考えさせられる。
「大きく環境が変化するとき = 環境が自分の中に侵入してくるとき」と言えると思う。
そういう時に、環境に順応していくのか、反発するのか、逃避するのか。
大きな自己欺瞞を伴っていないか、自意識が過剰に肥大化していないだろうか、
自意識が過剰に閉じこもっていないか、などなど考えてしまいます。
そういった諸々を内包しながら続いていく関係や、戦後という分断についても。
核心に触れず周囲を描くようなスタイルで、後を引きます。
で、その後を引きずった状態で周囲のリアルと接していくと、
色々見えてくるものがあったり、見えてないスペースもより広く認識できてくると思います。
個人的には、現時点までのイシグロ作品の中で、最も気になる作品です。
数年経つと、また読み返したくなるタイプ。