浮世の画家

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評判

浮世の画家の評価:

3.98/5点 レビュー 56件。 D ランク

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Amazonレビュー一覧

Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全116件 1〜20 1/6ページ
No.116
(4pt)

原文と邦訳の「あれっ?」

「訳者あとがき」にはいくつか訳者と原作者とが合意の上で修正または改訳した部分が挙げられていますが、次のふたつはどういうわけか原文と異なります。
1)原文「Bach」に対し邦訳「ブラームス」
2)原文「since the surrender」に対し邦訳「無条件降伏以来」
これらは中公文庫版もハヤカワepi文庫版も共通しています。訳者がいずれも飛田茂雄氏ですから当然ですが、ハヤカワ版の校正校閲者である金子靖氏による「付記」にもこれらの修正には触れられていません。
 こうした細かい点はさておき、原作のちょっと晦渋で突き放した感がありながら深い内面描写が見事に邦訳されています。ハルキストの皆様のお怒りを買うかもしれませんが、ノーベル賞のレベルとはこういうものかとあらためて原作のすばらしさに気付いた次第です。
浮世の画家 (ハヤカワepi文庫) Amazon書評・レビュー: 浮世の画家 (ハヤカワepi文庫)より
4151200398
No.115
(4pt)

原文と邦訳の「あれっ?」

「訳者あとがき」にはいくつか訳者と原作者とが合意の上で修正または改訳した部分が挙げられていますが、次のふたつはどういうわけか原文と異なります。
1)原文「Bach」に対し邦訳「ブラームス」
2)原文「since the surrender」に対し邦訳「無条件降伏以来」
これらは中公文庫版もハヤカワepi文庫版も共通しています。訳者がいずれも飛田茂雄氏ですから当然ですが、ハヤカワ版の校正校閲者である金子靖氏による「付記」にもこれらの修正には触れられていません。
 こうした細かい点はさておき、原作のちょっと晦渋で突き放した感がありながら深い内面描写が見事に邦訳されています。ハルキストの皆様のお怒りを買うかもしれませんが、ノーベル賞のレベルとはこういうものかとあらためて原作のすばらしさに気付いた次第です。
浮世の画家 (中公文庫) Amazon書評・レビュー: 浮世の画家 (中公文庫)より
412201896X
No.114
(4pt)

原文と邦訳の「あれっ?」

「訳者あとがき」にはいくつか訳者と原作者とが合意の上で修正または改訳した部分が挙げられていますが、次のふたつはどういうわけか原文と異なります。
1)原文「Bach」に対し邦訳「ブラームス」
2)原文「since the surrender」に対し邦訳「無条件降伏以来」
これらは中公文庫版もハヤカワepi文庫版も共通しています。訳者がいずれも飛田茂雄氏ですから当然ですが、ハヤカワ版の校正校閲者である金子靖氏による「付記」にもこれらの修正には触れられていません。
 こうした細かい点はさておき、原作のちょっと晦渋で突き放した感がありながら深い内面描写が見事に邦訳されています。ハルキストの皆様のお怒りを買うかもしれませんが、ノーベル賞のレベルとはこういうものかとあらためて原作のすばらしさに気付いた次第です。
浮世の画家 Amazon書評・レビュー: 浮世の画家より
4120016471
No.113
(5pt)

迅速で的確な対応ありがとうございます

迅速で的確な対応ありがとうございます
浮世の画家 (ハヤカワepi文庫) Amazon書評・レビュー: 浮世の画家 (ハヤカワepi文庫)より
4151200398
No.112
(5pt)

迅速で的確な対応ありがとうございます

迅速で的確な対応ありがとうございます
浮世の画家 (中公文庫) Amazon書評・レビュー: 浮世の画家 (中公文庫)より
412201896X
No.111
(5pt)

迅速で的確な対応ありがとうございます

迅速で的確な対応ありがとうございます
浮世の画家 Amazon書評・レビュー: 浮世の画家より
4120016471
No.110
(4pt)

画家の頑固さ

3作読んだけど、まだイシグロさんの作風というものがつかめずにいる。やはりそれほど懐の深い作家ということなのだろうか?私はイシグロさんの小説に出てくる登場人物の「頑固さ」が好きだ。軽く流せば済むことでも、性格が許さないのかどうしてもこだわってしまう。この主人公の画家にもそんなところがある。あまりこだわることもなくなあなあで何でも流してしまう現代人からすると、懐かしい「頑固さ」だ。
浮世の画家 (ハヤカワepi文庫) Amazon書評・レビュー: 浮世の画家 (ハヤカワepi文庫)より
4151200398
No.109
(4pt)

画家の頑固さ

3作読んだけど、まだイシグロさんの作風というものがつかめずにいる。やはりそれほど懐の深い作家ということなのだろうか?私はイシグロさんの小説に出てくる登場人物の「頑固さ」が好きだ。軽く流せば済むことでも、性格が許さないのかどうしてもこだわってしまう。この主人公の画家にもそんなところがある。あまりこだわることもなくなあなあで何でも流してしまう現代人からすると、懐かしい「頑固さ」だ。
浮世の画家 (中公文庫) Amazon書評・レビュー: 浮世の画家 (中公文庫)より
412201896X
No.108
(4pt)

画家の頑固さ

3作読んだけど、まだイシグロさんの作風というものがつかめずにいる。やはりそれほど懐の深い作家ということなのだろうか?私はイシグロさんの小説に出てくる登場人物の「頑固さ」が好きだ。軽く流せば済むことでも、性格が許さないのかどうしてもこだわってしまう。この主人公の画家にもそんなところがある。あまりこだわることもなくなあなあで何でも流してしまう現代人からすると、懐かしい「頑固さ」だ。
浮世の画家 Amazon書評・レビュー: 浮世の画家より
4120016471
No.107
(4pt)

時代にかかわることが生きること

作家や映画監督が、違う分野の芸術家を主人公とした作品を創作した時、大抵自己投影した小説だったり映画だったりする場合が非常に多い気がする。しかし、カズオイシグロのケースでは、『遠い山並みの光』という長編デビューからわずか2作目において、小説家という権威に溺れて周囲がみえなくなるであろう将来の己れの姿を、透徹とした眼差しですでに見抜いているのである。ブッカー賞作家やノーベル賞作家としておだてられることの嫌悪感を、当時弱冠34歳の若手作家がすでに予感していたということであろう。

昨年渡辺謙を主役にNHKでドラマ化される際に、カズオイシグロがインタビューに応えてこんなことを述べている。
「ある情勢の中で定められた価値観に忠実に生きることに対する疑問、そして自分が一体何に貢献しているのかわからなくて苦悩するというテーマ。ただ1930年代1940年代のある国である世代に起こった出来事として見るのではなく、特に今の時勢だからこそなおさら、このテーマが現代の生活と深く関連するものとして見てもらいたいです。そしてこれが人間誰しもが持ち合わせる一部であるということ、とても複雑な社会に生き、良かれと思う方法で一生懸命貢献していることをわかってほしいです。」

戦後パラダイム変換の中で、ある過去の記憶を封印した老画家の疚しさを共有し鬱々とするのではなく、むしろ主人公の小野を励ます松田がドラマのラストで語ったような感想を、視聴者に求めたのではないか。
「自分達のしたことを不当に批難する必要はない。少なくとも俺達は信念にしたがって行動し、全力をつくしてことにあたった」
後出しジャンケンで、この老画家が戦中に行った、戦意を鼓舞し若者に進んで戦地におもむかせるような活動は、現代の価値観にあてはめれば当然ほめられたことじゃない、いやむしろ卑劣きわまりない人間として恥ずべき所行であると批判するのは簡単だ。

(現代の若者のように)何の信念も目的もなく、社会や時代との関わりを極力さけるような生き方は、小野のように後から時代に糾弾されることはないかもしれないが、逆に称賛されることもないだろう。小野の師匠であるモリさんのように夕暮れ迫る女郎宿に一時漂う“美”の瞬間を味わうこともなければ、次女節子の破談に自己責任を感じ火消しに奔走する老画家に、小津の映画に繰返し登場する笠智衆の姿を重ねることもないだろう。まして、苦悩する老画家とカズオイシグロを比較することなど思いつきもしないだろう。

生きることとはまさにその時代に関わること。後で何と揶揄されようと今の時代に積極的に関わる勇気を持つことの大切さを、ドラマを見たり小説を読んだ若い層に、カズオイシグロが前述のインタビューの中で伝えようとしたのではないだろうか。それは本作を執筆当時、遠い異国の地において作家としての地位もまだまだ不安定だった頃、これから筆1本で生きていくことを決めた、一人の若い日本人作家としての覚悟でもあったはずなのである。
浮世の画家 (ハヤカワepi文庫) Amazon書評・レビュー: 浮世の画家 (ハヤカワepi文庫)より
4151200398
No.106
(4pt)

時代にかかわることが生きること

作家や映画監督が、違う分野の芸術家を主人公とした作品を創作した時、大抵自己投影した小説だったり映画だったりする場合が非常に多い気がする。しかし、カズオイシグロのケースでは、『遠い山並みの光』という長編デビューからわずか2作目において、小説家という権威に溺れて周囲がみえなくなるであろう将来の己れの姿を、透徹とした眼差しですでに見抜いているのである。ブッカー賞作家やノーベル賞作家としておだてられることの嫌悪感を、当時弱冠34歳の若手作家がすでに予感していたということであろう。

昨年渡辺謙を主役にNHKでドラマ化される際に、カズオイシグロがインタビューに応えてこんなことを述べている。
「ある情勢の中で定められた価値観に忠実に生きることに対する疑問、そして自分が一体何に貢献しているのかわからなくて苦悩するというテーマ。ただ1930年代1940年代のある国である世代に起こった出来事として見るのではなく、特に今の時勢だからこそなおさら、このテーマが現代の生活と深く関連するものとして見てもらいたいです。そしてこれが人間誰しもが持ち合わせる一部であるということ、とても複雑な社会に生き、良かれと思う方法で一生懸命貢献していることをわかってほしいです。」

戦後パラダイム変換の中で、ある過去の記憶を封印した老画家の疚しさを共有し鬱々とするのではなく、むしろ主人公の小野を励ます松田がドラマのラストで語ったような感想を、視聴者に求めたのではないか。
「自分達のしたことを不当に批難する必要はない。少なくとも俺達は信念にしたがって行動し、全力をつくしてことにあたった」
後出しジャンケンで、この老画家が戦中に行った、戦意を鼓舞し若者に進んで戦地におもむかせるような活動は、現代の価値観にあてはめれば当然ほめられたことじゃない、いやむしろ卑劣きわまりない人間として恥ずべき所行であると批判するのは簡単だ。

(現代の若者のように)何の信念も目的もなく、社会や時代との関わりを極力さけるような生き方は、小野のように後から時代に糾弾されることはないかもしれないが、逆に称賛されることもないだろう。小野の師匠であるモリさんのように夕暮れ迫る女郎宿に一時漂う“美”の瞬間を味わうこともなければ、次女節子の破談に自己責任を感じ火消しに奔走する老画家に、小津の映画に繰返し登場する笠智衆の姿を重ねることもないだろう。まして、苦悩する老画家とカズオイシグロを比較することなど思いつきもしないだろう。

生きることとはまさにその時代に関わること。後で何と揶揄されようと今の時代に積極的に関わる勇気を持つことの大切さを、ドラマを見たり小説を読んだ若い層に、カズオイシグロが前述のインタビューの中で伝えようとしたのではないだろうか。それは本作を執筆当時、遠い異国の地において作家としての地位もまだまだ不安定だった頃、これから筆1本で生きていくことを決めた、一人の若い日本人作家としての覚悟でもあったはずなのである。
浮世の画家 (中公文庫) Amazon書評・レビュー: 浮世の画家 (中公文庫)より
412201896X
No.105
(4pt)

時代にかかわることが生きること

作家や映画監督が、違う分野の芸術家を主人公とした作品を創作した時、大抵自己投影した小説だったり映画だったりする場合が非常に多い気がする。しかし、カズオイシグロのケースでは、『遠い山並みの光』という長編デビューからわずか2作目において、小説家という権威に溺れて周囲がみえなくなるであろう将来の己れの姿を、透徹とした眼差しですでに見抜いているのである。ブッカー賞作家やノーベル賞作家としておだてられることの嫌悪感を、当時弱冠34歳の若手作家がすでに予感していたということであろう。

昨年渡辺謙を主役にNHKでドラマ化される際に、カズオイシグロがインタビューに応えてこんなことを述べている。
「ある情勢の中で定められた価値観に忠実に生きることに対する疑問、そして自分が一体何に貢献しているのかわからなくて苦悩するというテーマ。ただ1930年代1940年代のある国である世代に起こった出来事として見るのではなく、特に今の時勢だからこそなおさら、このテーマが現代の生活と深く関連するものとして見てもらいたいです。そしてこれが人間誰しもが持ち合わせる一部であるということ、とても複雑な社会に生き、良かれと思う方法で一生懸命貢献していることをわかってほしいです。」

戦後パラダイム変換の中で、ある過去の記憶を封印した老画家の疚しさを共有し鬱々とするのではなく、むしろ主人公の小野を励ます松田がドラマのラストで語ったような感想を、視聴者に求めたのではないか。
「自分達のしたことを不当に批難する必要はない。少なくとも俺達は信念にしたがって行動し、全力をつくしてことにあたった」
後出しジャンケンで、この老画家が戦中に行った、戦意を鼓舞し若者に進んで戦地におもむかせるような活動は、現代の価値観にあてはめれば当然ほめられたことじゃない、いやむしろ卑劣きわまりない人間として恥ずべき所行であると批判するのは簡単だ。

(現代の若者のように)何の信念も目的もなく、社会や時代との関わりを極力さけるような生き方は、小野のように後から時代に糾弾されることはないかもしれないが、逆に称賛されることもないだろう。小野の師匠であるモリさんのように夕暮れ迫る女郎宿に一時漂う“美”の瞬間を味わうこともなければ、次女節子の破談に自己責任を感じ火消しに奔走する老画家に、小津の映画に繰返し登場する笠智衆の姿を重ねることもないだろう。まして、苦悩する老画家とカズオイシグロを比較することなど思いつきもしないだろう。

生きることとはまさにその時代に関わること。後で何と揶揄されようと今の時代に積極的に関わる勇気を持つことの大切さを、ドラマを見たり小説を読んだ若い層に、カズオイシグロが前述のインタビューの中で伝えようとしたのではないだろうか。それは本作を執筆当時、遠い異国の地において作家としての地位もまだまだ不安定だった頃、これから筆1本で生きていくことを決めた、一人の若い日本人作家としての覚悟でもあったはずなのである。
浮世の画家 Amazon書評・レビュー: 浮世の画家より
4120016471
No.104
(5pt)

おもしろかった

この人の小説をいくつか読んで、おもしろい小説を書く人という印象を持っていましたが、この本もそのとおりのおもしろい小説です。
読み終わっても結局何が本当なのかわからないお話で、謎解きとか種明かしはないのですが、それで別にイライラしたりしないのは、それだけうまく書かれたお話だということでしょう。

考えてみれば実際の人生でも、他人の考えなど本当のところはわからないし、他人が口にしたことでも、その意図まではわからないし、そもそも他人の言ったことを細かく憶えているわけでもありません。
それどころか、自分が考えたことさえ、後になって都合よく修正していると自分で思うこともあるし、それさえ思わずに無意識に都合よく憶えているだけかもしれません。

広い意味での戦争責任を扱った小説でもあるのですが、それがあまり印象に残らないのは、主人公がいろいろ思っているだけであまり深刻なものではなさそうなことと、それも含めて曖昧な人生そのものがテーマであるからだと思います。

翻訳がすごくいいので、まるで日本語で書かれた小説みたいと思いましたが、訳者(飛田茂雄)の後書きや、金子靖による文庫版のための解説を読むと、日本語で書かれたと思うのも無理がないと納得しました。
浮世の画家 (ハヤカワepi文庫) Amazon書評・レビュー: 浮世の画家 (ハヤカワepi文庫)より
4151200398
No.103
(5pt)

おもしろかった

この人の小説をいくつか読んで、おもしろい小説を書く人という印象を持っていましたが、この本もそのとおりのおもしろい小説です。
読み終わっても結局何が本当なのかわからないお話で、謎解きとか種明かしはないのですが、それで別にイライラしたりしないのは、それだけうまく書かれたお話だということでしょう。

考えてみれば実際の人生でも、他人の考えなど本当のところはわからないし、他人が口にしたことでも、その意図まではわからないし、そもそも他人の言ったことを細かく憶えているわけでもありません。
それどころか、自分が考えたことさえ、後になって都合よく修正していると自分で思うこともあるし、それさえ思わずに無意識に都合よく憶えているだけかもしれません。

広い意味での戦争責任を扱った小説でもあるのですが、それがあまり印象に残らないのは、主人公がいろいろ思っているだけであまり深刻なものではなさそうなことと、それも含めて曖昧な人生そのものがテーマであるからだと思います。

翻訳がすごくいいので、まるで日本語で書かれた小説みたいと思いましたが、訳者(飛田茂雄)の後書きや、金子靖による文庫版のための解説を読むと、日本語で書かれたと思うのも無理がないと納得しました。
浮世の画家 (中公文庫) Amazon書評・レビュー: 浮世の画家 (中公文庫)より
412201896X
No.102
(5pt)

おもしろかった

この人の小説をいくつか読んで、おもしろい小説を書く人という印象を持っていましたが、この本もそのとおりのおもしろい小説です。
読み終わっても結局何が本当なのかわからないお話で、謎解きとか種明かしはないのですが、それで別にイライラしたりしないのは、それだけうまく書かれたお話だということでしょう。

考えてみれば実際の人生でも、他人の考えなど本当のところはわからないし、他人が口にしたことでも、その意図まではわからないし、そもそも他人の言ったことを細かく憶えているわけでもありません。
それどころか、自分が考えたことさえ、後になって都合よく修正していると自分で思うこともあるし、それさえ思わずに無意識に都合よく憶えているだけかもしれません。

広い意味での戦争責任を扱った小説でもあるのですが、それがあまり印象に残らないのは、主人公がいろいろ思っているだけであまり深刻なものではなさそうなことと、それも含めて曖昧な人生そのものがテーマであるからだと思います。

翻訳がすごくいいので、まるで日本語で書かれた小説みたいと思いましたが、訳者(飛田茂雄)の後書きや、金子靖による文庫版のための解説を読むと、日本語で書かれたと思うのも無理がないと納得しました。
浮世の画家 Amazon書評・レビュー: 浮世の画家より
4120016471
No.101
(5pt)

イシグロは戦中・戦後の日本人(人間?)の、―――芸術家と呼ばれる人々の―――こころの浅ましさ、弱さを顕在化させて見せたのでしょう。

この著者についての何の情報もなければ、日本人作家の作品と思うでしょう。それくらいあの当時の日本の状況を良く知っている。日本人(人間?と広義にできれば良いのですが)の弱さを巧みな筆致で記述している優れた、おもしろい作品、と思いつつ、あっという間に、読み終えました。物語は1人称(わたし、小野:画家の目線)で記述されており、3人称のように、天空から見下ろしている神の視座でないのが効果を発揮している。

  物語の細部の描き方は、かなり大雑把で、日本人の作家さんとはかなり感性が違う。日本の作家は、いったん物語に登場させた人物はそれなりの役目を果たさせ、きれいに始末するが、この作家は、「そんなことまで俺が責任持つ必要あるの」、とでも言うように適当に(日常の景色と同様に)舞台から消えさせる。主人公の娘、長女節子などの心情、二女、紀子の見合い相手の斉藤家の思いをかなり思わせぶりに書いたり、・・・・実はそれほどのこともないのだが・・・・日本の作家とは記述の内的基準が異なることが面白い。 
  主人公の孫の一郎君の記述も必要以上で、しかも彼の拙いセリフ内容が思わせぶり(ほとんど意味を持っていない)。 同様の意味で、登場人物全員の記述が、かなりいい加減。ただ、それが、自然なのかもしれません。日常ってそんなものですから。
浮世の画家 (ハヤカワepi文庫) Amazon書評・レビュー: 浮世の画家 (ハヤカワepi文庫)より
4151200398
No.100
(5pt)

イシグロは戦中・戦後の日本人(人間?)の、―――芸術家と呼ばれる人々の―――こころの浅ましさ、弱さを顕在化させて見せたのでしょう。

この著者についての何の情報もなければ、日本人作家の作品と思うでしょう。それくらいあの当時の日本の状況を良く知っている。日本人(人間?と広義にできれば良いのですが)の弱さを巧みな筆致で記述している優れた、おもしろい作品、と思いつつ、あっという間に、読み終えました。物語は1人称(わたし、小野:画家の目線)で記述されており、3人称のように、天空から見下ろしている神の視座でないのが効果を発揮している。

  物語の細部の描き方は、かなり大雑把で、日本人の作家さんとはかなり感性が違う。日本の作家は、いったん物語に登場させた人物はそれなりの役目を果たさせ、きれいに始末するが、この作家は、「そんなことまで俺が責任持つ必要あるの」、とでも言うように適当に(日常の景色と同様に)舞台から消えさせる。主人公の娘、長女節子などの心情、二女、紀子の見合い相手の斉藤家の思いをかなり思わせぶりに書いたり、・・・・実はそれほどのこともないのだが・・・・日本の作家とは記述の内的基準が異なることが面白い。 
  主人公の孫の一郎君の記述も必要以上で、しかも彼の拙いセリフ内容が思わせぶり(ほとんど意味を持っていない)。 同様の意味で、登場人物全員の記述が、かなりいい加減。ただ、それが、自然なのかもしれません。日常ってそんなものですから。
浮世の画家 (中公文庫) Amazon書評・レビュー: 浮世の画家 (中公文庫)より
412201896X
No.99
(5pt)

イシグロは戦中・戦後の日本人(人間?)の、―――芸術家と呼ばれる人々の―――こころの浅ましさ、弱さを顕在化させて見せたのでしょう。

この著者についての何の情報もなければ、日本人作家の作品と思うでしょう。それくらいあの当時の日本の状況を良く知っている。日本人(人間?と広義にできれば良いのですが)の弱さを巧みな筆致で記述している優れた、おもしろい作品、と思いつつ、あっという間に、読み終えました。物語は1人称(わたし、小野:画家の目線)で記述されており、3人称のように、天空から見下ろしている神の視座でないのが効果を発揮している。

  物語の細部の描き方は、かなり大雑把で、日本人の作家さんとはかなり感性が違う。日本の作家は、いったん物語に登場させた人物はそれなりの役目を果たさせ、きれいに始末するが、この作家は、「そんなことまで俺が責任持つ必要あるの」、とでも言うように適当に(日常の景色と同様に)舞台から消えさせる。主人公の娘、長女節子などの心情、二女、紀子の見合い相手の斉藤家の思いをかなり思わせぶりに書いたり、・・・・実はそれほどのこともないのだが・・・・日本の作家とは記述の内的基準が異なることが面白い。 
  主人公の孫の一郎君の記述も必要以上で、しかも彼の拙いセリフ内容が思わせぶり(ほとんど意味を持っていない)。 同様の意味で、登場人物全員の記述が、かなりいい加減。ただ、それが、自然なのかもしれません。日常ってそんなものですから。
浮世の画家 Amazon書評・レビュー: 浮世の画家より
4120016471
No.98
(5pt)

イシグロ作品中、最も頭に思い浮かべることが多い作品

1986年、日系英国人作家カズオ・イシグロ氏の作品です。
 原題「An Artist of the Floating World」、ウィットブレッド賞受賞。
 ハヤカワ文庫版は、従来の飛田茂雄氏の訳に、金子靖氏の校正・校閲を加えたもので2006年刊。

 戦後間もないころの日本。
 画家を引退した小野益次は、娘・紀子の縁談が破談になってしまったことに、
自分の過去が関係していると気づく。
 小野は、過去の歩みを顧み、師匠・弟子といったその時その時の周囲の人にも思いを馳せる。

 作品としては、『日の名残り』や『わたしを離さないで』の方が上なのかもしれない。
 けど、個人的には、最も頭に浮かぶことが多いのは、本作『浮世の画家』です。

 単純に、舞台が日本だから、というのもあると思いますが、
今の日本だからこそ、頭に浮かぶことが多くなっているとも感じます。
 雑誌を立ち読みして、「今の日本人は戦前の日本人に云々なんて書かれていると、
自ずと本作が頭に浮かびます。

 戦前・戦中・戦後という価値観の揺らいでいく中で、
一人一人の振る舞いが変わってくるのが面白い。
 主人公・小野の回想には、自己正当化、自己欺瞞がある。
 一通り読み終えて、また最初に戻ってピラピラ読んでいくと、
自己欺瞞が次々と展開されているのが、手に取るようによく分かる。
 あることを回想している最中に、別の回想へ移っていくところなんか絶妙としか言いようがない。 

 「大きな環境の変化の中での自己の曖昧さ」について考えさせられる。
 「大きく環境が変化するとき = 環境が自分の中に侵入してくるとき」と言えると思う。
 そういう時に、環境に順応していくのか、反発するのか、逃避するのか。
 大きな自己欺瞞を伴っていないか、自意識が過剰に肥大化していないだろうか、
自意識が過剰に閉じこもっていないか、などなど考えてしまいます。
 そういった諸々を内包しながら続いていく関係や、戦後という分断についても。

 核心に触れず周囲を描くようなスタイルで、後を引きます。
 で、その後を引きずった状態で周囲のリアルと接していくと、
色々見えてくるものがあったり、見えてないスペースもより広く認識できてくると思います。
 個人的には、現時点までのイシグロ作品の中で、最も気になる作品です。
 数年経つと、また読み返したくなるタイプ。
浮世の画家 (ハヤカワepi文庫) Amazon書評・レビュー: 浮世の画家 (ハヤカワepi文庫)より
4151200398
No.97
(5pt)

イシグロ作品中、最も頭に思い浮かべることが多い作品

1986年、日系英国人作家カズオ・イシグロ氏の作品です。
 原題「An Artist of the Floating World」、ウィットブレッド賞受賞。
 ハヤカワ文庫版は、従来の飛田茂雄氏の訳に、金子靖氏の校正・校閲を加えたもので2006年刊。

 戦後間もないころの日本。
 画家を引退した小野益次は、娘・紀子の縁談が破談になってしまったことに、
自分の過去が関係していると気づく。
 小野は、過去の歩みを顧み、師匠・弟子といったその時その時の周囲の人にも思いを馳せる。

 作品としては、『日の名残り』や『わたしを離さないで』の方が上なのかもしれない。
 けど、個人的には、最も頭に浮かぶことが多いのは、本作『浮世の画家』です。

 単純に、舞台が日本だから、というのもあると思いますが、
今の日本だからこそ、頭に浮かぶことが多くなっているとも感じます。
 雑誌を立ち読みして、「今の日本人は戦前の日本人に云々なんて書かれていると、
自ずと本作が頭に浮かびます。

 戦前・戦中・戦後という価値観の揺らいでいく中で、
一人一人の振る舞いが変わってくるのが面白い。
 主人公・小野の回想には、自己正当化、自己欺瞞がある。
 一通り読み終えて、また最初に戻ってピラピラ読んでいくと、
自己欺瞞が次々と展開されているのが、手に取るようによく分かる。
 あることを回想している最中に、別の回想へ移っていくところなんか絶妙としか言いようがない。 

 「大きな環境の変化の中での自己の曖昧さ」について考えさせられる。
 「大きく環境が変化するとき = 環境が自分の中に侵入してくるとき」と言えると思う。
 そういう時に、環境に順応していくのか、反発するのか、逃避するのか。
 大きな自己欺瞞を伴っていないか、自意識が過剰に肥大化していないだろうか、
自意識が過剰に閉じこもっていないか、などなど考えてしまいます。
 そういった諸々を内包しながら続いていく関係や、戦後という分断についても。

 核心に触れず周囲を描くようなスタイルで、後を引きます。
 で、その後を引きずった状態で周囲のリアルと接していくと、
色々見えてくるものがあったり、見えてないスペースもより広く認識できてくると思います。
 個人的には、現時点までのイシグロ作品の中で、最も気になる作品です。
 数年経つと、また読み返したくなるタイプ。
浮世の画家 (中公文庫) Amazon書評・レビュー: 浮世の画家 (中公文庫)より
412201896X