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ハイド
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ハイドの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.00pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全2件 1~2 1/1ページ
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遮断されたり透けたり人格毎の明確な断絶なし。ただ、薬以外の分裂原因の設定と、裏に時代故の悪辣な企みを匂わせたのは良し。 | ||||
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この作品において『ジキル博士とハイド氏』(以下、『ジキル』)と一線を画す点は、「私はジキルを憎んでいない」と、明確にハイド自身の口から発言されている箇所であろう。この物語において最大の前提がそれであり、『ジキル』において「ハイドはジキルを憎んでいる」と記述されている箇所はジキル博士の遺書中に見られるが、成程確かにこれはあくまでジーキルの自己申告であって、ハイド本人の口から「私はジキルを憎んでいる」と発言されたことは、『ジキル』中にないのである。宗教書への涜神の落書きも父の肖像画への侮辱も、ジキルの手紙にジキル自身でさえ意図しない場合が含まれたとしても、全てハイドの仕業であると言い切ることが、ハイド以外の誰にできよう? 読者として、ジキルの遺書に書かれていることが全て真実である、という前提の元読んでいた自分とって、これは衝撃であった。『ハイド』読了後からジキル博士のハイド観、要するにハイドという生き物は非人間である、という考え にはいささか疑念を抱くようになったが「物語とは語り手と聞き手の間に信頼関係があって初めて成り立つものである」の文言の示すとおり、我々読者は原点ジキル博士の手紙を、全くの真実であると認識せざるを得ないのである。たとえあの手紙が極度の寝不足と疲労の下、カルー殺害の犯人として絞首台に上る恐怖、そして絶えず遅い来る変身への恐怖と戦う男がかいた手紙であろうとしてもだ(一応記述するが、この一連の発言にジキル博士の善性を貶める意図は含まない)。作品の「善と悪の対立」というテーマ上、悪であるハイドに対しジキルは善として描かれ、その善性が強調されるようになっているのだが、ジキル本人も遺書中述べているように実際はジキルとて人間すなわち善悪の混合物であり、本編でもハイドの手紙をでっち上げるなどしているし、十分あり得る話であると思うのだが、どうだろうか。 『ハイド』では、ジキルは多々ハイドを誤解しているように描かれている。ジキル同様、ハイドも善悪の混合物ーー歴とした人間なのである。またハイドは無機質な地獄の泥などではないジキルは理解していない。否、判ろうとしなかったのか、ハイドとて人を愛することが出来、また愛情故に臆病になることもできるのだと、ハイドを純粋な悪だと思い込んでいたジキルは了解し得なかったのである。『ジキル』においてジキルが「ジキルはハイドに対し父親以上の関心を持ち、ハイドはジキルに対し息子以上に無関心であった」「山賊が追跡を免れるために身を隠す洞窟を憶えているくらいにしか彼を憶えていなかった」と述べていたのとは相反し、ハイドはジキルに対し無関心などでは決して無く、自己防衛・自己愛の延長ないし1種のナルシシズムとも形容できるであろう感情をジキルに対し抱いている。 しかし、一般に『ジキル』の解釈を決定付けたとされるショウォールターの著書を読んだ方は、少々違和感を覚えるのではあるまいか。かくいう私もその1人である。『ジキル』には恋愛対象としての女性が全くといって良いほど登場せず、ジキルの邸宅の女中、そしてソーホーのハイド宅の使用人の老婆程度なのだが、『ハイド』では恋愛対象として女性が多数登場し、つまるところラブストーリーとしても読めるようになっている。『ジキル』においてそういった脚色傾向は、映画化(=ビジュアル化)される際に顕著なのだが、この作品もその例に漏れない。 …以下、余談というかただの蛇足。『ハイド』の解説にも似たような事が書かれているが、『ジキル』でのカルー卿殺害は確かに唐突な感じが否めない。が、この本においてのカルー殺害の動機付けだとジキルが遺書に「あんなちょっとしたことで腹を立ててああいう罪を犯すはずがない」って残すのは動機が動機だけにさすがに矛盾してやしまいか…それほどまでにジキルが善人であったということだろうか…その矛盾っぷりというか開き直りっぷりというか、『ジキル』のとあるシーンでアタスンが「熱病にうかされたような友の様子が気に入らなかった」とか言ってたのも頷けるというか…何はともあれ、面白かったです。読んでよかった。 | ||||
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