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真夏の航海
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真夏の航海の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.14pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全2件 1~2 1/1ページ
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カポーティの小説は大好きでだいたい読んでいるが、こんな幻の処女作がこっそり出版されていたとは知らなかった。なぜ今ごろになってこれが日の目を見るに至ったか? という経緯は、巻末にアラン・U・シュワルツさんという人が詳しく書いていて、こう言ってはなんだが本編以上に面白い。カポーティがアパートを引き払うときに「捨ててくれ」と頼んだものを、守衛がこっそり取っておき…。おっと、つづきは本作でどうぞ。 小説そのものは、やはりシュワルツさんの言葉がドンピシャリと的を射ているように思われる。「独自の天性と、驚くべき熟達した散文の書き手の出現を予言している」。まさに、おっしゃる通りだ。まあ、ちょっと冷めた言い方をすれば、それ以上でもそれ以下でもない、というのが僕の読了後の感想ではある。文壇デビューしてからのカポーティの濃密な作品世界を知っている読者には、いささか物足りない“習作”だろう。しかし、若書きの中にも優れた原石を垣間見るような喜びは確かにあった。 でも…誤解を恐れずに言うと、安西水丸さんの訳はちょっと硬い。僕は水丸さんのエッセイや映画評の大ファンだけれど、それとこれとはまた別の話。シンプルな文章のときはとてもリズムよく読ませるのだが、カポーティらしい凝った言い回しや流麗な比喩表現が出てくると、途端にぎこちない訳文になってしまう、と感じた。だから、この原石をカットするのは、やはり専門の名工の手(プロの翻訳家)に委ねてほしかった、というのが偽らざる気持ちだ。もちろん、そもそもの原文がぎこちないのかもしれないが…。 それでも、カポーティ節とでもいうべき片鱗に触れてドキッとすることもしばしばあった。例えば150ページ、主人公のグレディが友人のピーターと部屋で話をする場面のこんな描写。「さほど重要ではないことについては話すことがたくさんあったので、二人は同じ言葉と同じ価値観を分け合うことができた」。20歳になるやならずの作品で、この辛辣! さらりとしているだけに、かえって凄味のある一文だ。ちなみに、本作は女優のスカーレット・ヨハンソンによって映画化されるらしい、とウェブ上のニュースで読んだが…その後どうなったのだろう? | ||||
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「幻の」処女作がいまになって発表されるに至った経緯については、巻末の「失われた処女作の軌跡」に詳しいので、ここで改めて述べることはしませんが、完成させた本作をなぜカポーティが「ゴミ収集に間に合わせて、(略)道に出しておいてくれと指示し」たのか、そのことが読み始める前から気になっていました。結論としては、「ルーシーはそうしてはならなかった。子供をまだ未完成のままおいていってはいけなかったのだ。」といった語り手の解説や人物の造形、物語の構図といったところが、カポーティが考えるフィクションの枠組みからはみ出しているのが原因ではないかと思うのですが、どうでしょう。ともあれ、「あなたってふしぎな子ね。」という書き出しをはじめ、その後の作品を思わせる手触り満載で、カポーティの愛読者が楽しめること請け合いです。ただ、訳が良くなかったなどと尊大なことを言うつもりはありませんが、秀逸な表紙の写真をお選びになった安西水丸さんの訳に最後まで(というか、どういう理由か自分でも判然としませんが、頁が進むにつれてますます)どうしても馴染めませんでした。 | ||||
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