空間亀裂
評判
空間亀裂の評価:
5.00/5点 レビュー 5件。 B ランク
Amazonレビュー一覧
Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全5件 1〜5 1/1ページ
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空間亀裂の評価:
5.00/5点 レビュー 5件。 B ランク
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読んでみて高評価の理由も納得できました。登場人物のキャラと巧みなストーリー展開で読ませる異世界SFでした。
超高速移動機の内部に発見された「空間亀裂」。その亀裂の向こうには荒涼とした別の世界(平行世界=パラレルワールド)が広がっていた。
この物語設定自体は、私にジェリイ・ソールの『異次元への冒険』(ハヤカワ文庫SF)を思い出させました。30年以上前に読んだ異次元世界ものの傑作。
『異次元への冒険』も面白かったけど、それを上回るのが本作『空間亀裂』でした。
まず人物設定で一番目を引くのは、黒人初の大統領をめざすジム・ブリスキン候補。
主要登場人物だけでも20人近い本作の中でも、彼は主役級の扱いです。
本作は、オバマ大統領の登場を40年前に予言していたという点でも注目されたようです。
開巻早々、大統領選挙運動がピークをむかえている時期であることが分る。それに伴う、現職大統領ビル・シュウォルツ陣営と、ブリスキン陣営との丁々発止の政治的な攻防戦が見どころのひとつ。
ブリスキン候補にはソール・ハイムという名選挙参謀がいて、このハイムの縦横無尽の活躍も見もの。妻のパトリシアとの、おしどり夫婦ぶりも読んでいて楽しい。
かたや超高速移動機の開発元、テラン開発の老社長ターピンや、専務のスタンリー、はたまた超高速移動機自体の製造・販売業者であるペテル等、SFをSFたらしめている技術面担当のキャラも立っている。
おまけにこの作品世界、たいへんな人口過剰に悩まされており、これ以上人口を増やさないために、避妊具は無料配布、地球の上空には娼館衛星なる巨大人工衛星が周回していて、男性たちは大挙して娼館衛星を訪れ、5000人もの美女たちと性の遊戯を楽しんでいる。
その天空の巨大娼館のオーナーが、ジョージ・ウォルトという、1つの頭に2つの体を有する結合双生児の御仁。この男が本作最大の大悪党―――言い方を変えればトリックスター的な存在。
貧しい有色人種(コルズ)たちは、人口過剰であるがゆえに職も住居もままならず、本人たちの希望で冷凍保存され凍民 (ビブズ) になっている。その数7千万人以上!
今回、超高速移動機の故障による空間亀裂の彼方に新天地が発見されたことを機に、大統領候補のブリスキンは、新天地への大量移民を選挙公約として謳いあげ、国民の心を掴むことに成功する。
ところがどっこい、新天地 (パラレルワールド) には独自の進化をとげ、ある種の科学技術さえ有している北京原人が住んでいて移民なんかできたものではなかった。
しかも、娼館衛星オーナーの悪党ジョージ・ウォルトが、あろうことか北京原人がわに寝返って、結合双生児という奇妙な体型を利用して異世界で神として崇められることに成功する。
こうして、現生人類(ホモサピエンス) VS 北京原人の間で、あわや戦争というところまで行きそうになるが・・・・。
という具合で、とにかく登場人物たちのキャラが立っており、現大統領シュウォルツ陣営 VS 黒人候補ブリスキン陣営の丁々発止の政治的駆け引き、プラス、現生人類 VS 北京原人の駆引きという2段構えのストーリー展開が読者の興味を引きつけて離さない構造になっているのです。
駆け引きに次ぐ駆け引きは非常に読みごたえがあり、途中で読むのをやめられなくなりますね。ディックの術中にハマった感じです。
ディックファンは言うにおよばず、異世界・異次元・平行世界の荒涼としたディストピア的な風景に郷愁(?)のようなものを覚えるかたにも、ぜひお勧したい作品です。