(短編集)

疾き雲のごとく

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評判

疾き雲のごとくの評価:

4.33/5点 レビュー 18件。 A ランク

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平均点4.33pt

Amazonレビュー一覧

Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

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全22件 21〜22 2/2ページ
No.2
(5pt)

「的確な歴史解釈」と「絶妙のストーリーテリング」の融合

この作者の緻密な文章構成は既に定評のあるものだが、この作品は短編集という性格から歴史小説初心者の方にも受け入れやすい仕上がりとなっている。
早雲という男を媒体に各章それぞれに個性際立つ登場人物が登場して飽きさせない。
短編集と言うと、どうしても一編ずつの内容が希薄になりがちだがこの作品では的確な歴史解釈により深みのあるものになっている。
これも地道な考証の賜物ということなのだろう。
しっかりした考証に基づいた流麗な文脈が際立つ素直に楽しめる秀作と思う。
疾(はや)き雲のごとく〜早雲と戦国黎明の男たち〜 Amazon書評・レビュー: 疾(はや)き雲のごとく〜早雲と戦国黎明の男たち〜より
4900833533
No.1
(5pt)

新たな時代小説来たる!

本書では戦国時代初期の関東地方を舞台に短編6編が収録されている。それぞれが伊勢宗瑞(北条早雲)に何らかの関連性があり、各登場人物が伊勢宗瑞の知略・策謀によって運命が大きく変わっていく。いわば伊勢宗瑞という男は、それぞれの登場人物にとって破滅の記号でなのである。それだけに、各章を読み進めるにつれ、伊勢宗瑞が敵対して登場するならば、その男は必ず破滅するということがみえみえなのである。これは水戸黄門を視ているかのようで、小説としてはこれほどおもしろくないものはない。

文章は流麗で、耽美・諦観・焦燥感がよく出ている。また歴史の考証を行っており、場面場面の歴史的記述は詳細を極めている。両方がうまく組み合わさっているのであれば、これほど素晴らしい著述はないといえるのだろう。しかしながら、実際にはその組み合わせは完全に破綻しており、文はそれぞれ美麗字句であっても、文章の性質がことなるため、不協和音を奏でている。いうなれば「冬のソナタ」のようなメロドラマに、NHK教育の「高校日本史B」が組み合わさったような、強烈な違和感が感じられる。この破綻ぶりは違和感と通り越して、滑稽ですらある。

しかも歴史の考察は、(仮に)それ自体は問題ないとしても、そこの考察はいったい何の意義・必然性があるのか、よくわからないところがある。その最たるものが、「箱根山の守護神」である。本書の「あとがき」には、著者が大森氏について、考証を行ったあとが見受けられるのであるが、しかしながら「箱根山の守護神」本編には、それらの考証は全く意義をなしていない。主人公は架空の人物であるし、それをとりまく第二の重要人物ですら、架空の人物である。つまり、それ以外の人物は、別の時代、別の場所に置き換えられたとしても、話は成立するのであって、考証を付け加えることによって必ずしも付加価値を得られるものではないことを端的に示している。

以上のように、欠点は多いものの、文章の流麗さはそれをカバーしてあまりある。とくに「修善寺の菩薩」は本書のなかでも傑作である。著者が足利茶々丸の諱をあえて設定せず、幼名の「茶々丸」のままにしておいたことによって、茶々丸の甘えぶりや暴虐性が、「茶々丸」という幼名の印象と相俟って、その行動倫理が未成長の精神性に基づくものであることが、深く印象づけられるからである。さらに茶々丸にとってファムファタール的存在である香月は、破滅の記号である伊勢宗瑞が登場する以前から、茶々丸が破滅に導かれることを示唆している。著者の今後の作品が期待できるところである。
疾(はや)き雲のごとく〜早雲と戦国黎明の男たち〜 Amazon書評・レビュー: 疾(はや)き雲のごとく〜早雲と戦国黎明の男たち〜より
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