悪意
評判
悪意の評価:
4.05/5点 レビュー 260件。 A ランク
Amazonレビュー一覧
Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全522件 61〜80 4/27ページ
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悪意の評価:
4.05/5点 レビュー 260件。 A ランク
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小説の詳細ページを閲覧すると、ここに履歴が表示されます。最近閲覧した小説詳細ページへ簡単に戻る事が出来ます。
『眠りの森』『どちらかが彼女を殺した』で採用されていた章分けとは異なり、かなり細分化された章の中、一人称が切り替わっていくスタイルで物語が進んでいく。
……いや、進んでいくという表現は、今回ばかりは適切ではない。
この作品はとにかく「明かしていく」ことに焦点を当てた作品だからだ。
ミステリー小説において「殺人の動機」は必要不可欠な要素である。これがないと人間ドラマが描けず平坦な作品になってしまうし、人々の共感も得られない。だがその動機はたいてい事件の真相暴きには関与してくることがなく、明かされただけで終わりになるのがほとんどだ。
しかしこの『悪意』という作品は、「動機を暴くことで真実を暴き、さらに動機を追い求めることでその真実さえも覆す」というストーリーラインを構成している点で、きわめて秀逸なクオリティーになっている。周到に計算されつくしたどんでん返しは、何度見ても飽きることがない。
一人称かつ手記というスタイルを採用している点も、東野圭吾先生の趣だ。
通常ミステリーを読む際、読者の目線は神の目線である。つまり一度描写されたことがらは絶対に裏切らない真実であり、それを破ることは御法度ともいえる。小説はどうしても事実を並べる方式になりがちだから、一人称であろうと三人称であろうとそれは変わらない。
だがこの作品は、いわゆる「陳述」の形式は一切存在しない。地の文はすべて「手記」か「独白」のいずれかであり、しかもそれは読者でない作中の人間、すなわち「加賀恭一郎」に読ませることを前提に書かれている。この前提のもとならば、事実と違うことがらが地の文にあったとしても不思議ではなく、しかも容易に読者までも騙せてしまう。
究極の斜述トリック。どんな思考回路してたらこんな方式が思いつくというのか。
今まではテクニックについてばかり語っていたが、この『悪意』がシリーズ全体でも高い評価を受けている理由はそれだけではない。
では何が最大の要因か。
それはこの作品が、読者を引き込むことに極めて長けていることだと推察する。
例えばストーリーの展開。普通なら一つだけしかないはずの「真相を暴くシーン」が三つも存在する。そればかりか、三つすべてが読者の想定をことごとく覆してくる。こうあっては、359ページなどあっという間に読み終えてしまうことは必至だ。
作品全体を覆う負のオーラも、魅力をぐっと増大させている。
『眠りの森』は悲しみ、『どちらかが彼女を殺した』は怒りのオーラが全体から漂っていた。
ならば『悪意』はどうか?答えは単純、『悪意』は「悪意」のオーラに満ちているのだ。
「彼等を知る者たちの話」という章では、いじめを俯瞰する人々の無関心が、これでもかというほど残酷に描かれている。冒頭の野々口と日高の対話も、実際にどんな内容が交わされていたのかは最後まで明かされることがない。なぜなのかというと、それは犯人の「悪意」がそうさせたからに他ならない。
とにかく不気味なオーラをまとった作品だ。その不気味さこそ、高い評価を受ける最大の要因なのだろう。
余談ではあるが、この作品が発表されたのが1996年と知って驚嘆している。
『秘密』といい『悪意』といい、20年も前にこんな描写ができるあたり、改めて東野圭吾先生の恐ろしさを思い知った。