回想のビュイック8
評判
回想のビュイック8の評価:
3.13/5点 レビュー 23件。 D ランク
Amazonレビュー一覧
Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全8件 1〜8 1/1ページ
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回想のビュイック8の評価:
3.13/5点 レビュー 23件。 D ランク
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キングは着想から物語の完成までの、執筆そのものを題材に織り込んだ作品を折々に発表している。それらの作品のなかで批評家に毒を、それよりもはるかにマイルドな毒を「着想をどこから得るのか?」「自分の作品を怖いと思ったことはあるか?」といったおきまりの質問しかしてこない、せいぜい熱心な本好きにとどまっていたほうが身の為といったファン兼作家志望の人々に対して吐いてきている。また、自分のキャリアがどのように語られようとも、主流−現在まで長らくその座を保持してきたのは、ざっくばらんに言ってしまえば最新の政情や武器や医科学の情報がふんだんに盛り込まれたクライムサスペンスということになるだろう−たりえないことももらしている。キングは物語はあくまで物語であってそこにフィルターをかけて解釈するようなことは愚の骨頂とあきれるだろう、しかしこの作品で繰り広げられる語りにはそういった彼の真情を読み取らざるをえない。
《ネタバレ注意》
四辻で出会った悪魔に魂を売り渡したブルーズマンじゃないが、異世界との交点としてところの、ビュイックであってビュイックでないこのものは創作において何らかの機能を果たすもの、端的に言えば才能であり、「オイルはきれいだ!」といい残して掻き消えた黒衣の男は、全くケイオティックに才能をどうにかできてしまう(あるいはしなくてはならない)悪魔ってところだろう(これは悪魔にとっても疎ましい仕事なのかもしれない)。
この作品を読んでいてまず気になる点は、間歇的に異界から送りだされるものが、あまりに矮小で、短命なことだ。
作中で価値あるものは、分署の身内の安否だけで、それが危うくされるところが物語のただひとつの起伏としての要素なんだけど、だったら警官だけを執拗に狙う、そしてその犯人のいびつな動機に新米が絡めとられていくようなリアルなクライムサスペンスを読めばいいわけで。キング作品を読むからには異界に精神的に囚われて、ついには肉体をそちらに自ら送り出してしまう強迫観念(それを引き起こすのも「うなり」とか「頭の中に聞こえてくる声」とか・・・キングじゃなければ失笑ものの)だけじゃなく、異界からもたらされるものがなにか日常にしみこんでじわじわと人々の正気を犯していくような話を運びを期待してしまう、それがないとあまりにもアンバランスだと感じるのは俺だけじゃないはずだ。
しかしこの作品では、異界から送られてくるものは、悪臭を放ちつつあっという間に腐食したり、証拠物件として袋に入れられ地下牢のような小部屋にしまいこまれたり、やがては単に焼却処分にされてしまうほどのぞんざいな扱いを受けるまでに貶められる。唯一の生存者?も警官的であるよりもはるかに原始的なリアクション、発作的なリンチによってたちまち惨殺されてしまう。
俺にはこれが、なんだかキングのあまりにも自己否定的な過去の清算のように思える。
こういう見方をすると、作品のすべての要素が象徴的に見えてしまうけれど、蝙蝠めいた生き物なんかはその最たるものだろう。
後年モダンホラーの帝王と呼ばれることになるキングだけど、結局お前の書いてるものは何なん?動物?トリ?ホラー?ヒューマンドラマ?サイコスリラー?SF?中途半端なんだよ!という内外の葛藤は常にあったはずだ。しかも最大の支柱であるホラーというジャンルは少なくともキングのキャリアスタート時点では傍流もいいところで格調高い作品、つまりホラーと銘打ってはいても実際は俗物のためのブンガク作品、の需要はそれなりにあったかもしれないけど、娯楽となるとそれは一般のオトナからすればもう蔑視の対象でしかなかったのではないだろうか。その道なき道を筆一本で切り開いてきたキング。マイナーなジャンルを主戦場にせざるをえなかったものにとって盛者必衰の理の酷薄さはひとしおだっただろう。ただそこには、メインストリームの作家と読者にはない「あなたでなきゃダメなの!」的なつながりがあったことだろう。
そしてここからは鶏が先か卵が先かという話になるが、作品に勢いはなくなり、ファンの声も昔の作品を懐かしむ類のものが多くなってきた。確かに俺が身をおいているジャンルはマイナーかもしれないが、俺ほどファンを愉しませているやつはそうはいない、いてたまるか!という自負はそのまま重い十字架になったはずだ。
一方で日本のコミックブームの少なからぬ影響力は、世界中にエコーとなって響き渡り、近年では洋ドラでも異能力ホラー・SF・ファンタジーは、もはやブームに左右されない定番となり、それらは文化の中で不動のレギュラーの地位を確立したといっていい(まあ紛争地帯を除く世界が幼児化させられているのかもしれないが)。マイナーなジャンルが脚光を浴びるのは大いに結構なことだけど、実質は変わってなくて、アイドル露出装置が俗悪なものへとどんどん仕様が変更されたってだけで、キングからすれば金の流れが変わった今こそドカンと派手に本物の花火を打ち上げたい、しかし・・・この作品で、俺が最後に受け取ったメッセージは、「おれ、そっち方面は枯れたっぽいわ^^まだわかんないけど、そういうことにしといて、頼むよ。でも書きたいことはまだあるから、そこんとこヨロシク」というあっけらかんとした開き直り、達観だ。
たしかに悪い意味でキングにしかかけない作品の冗長さ、退屈さに触れるくらいなら、ひとまずホラーやサイコスリラーの思い出は脇において、キングの新境地を先入観なく愉しみたい。ただ今回のこれに関して言わせてもらえば・・・面白くなかったです^^