ブルックリン・フォリーズ

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ブルックリン・フォリーズの評価:

4.68/5点 レビュー 44件。 A ランク

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平均点4.68pt

Amazonレビュー一覧

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※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全82件 61〜80 4/5ページ
No.22
(4pt)

尽きぬ人間への興味

私にとってオイスターを読むことは、一種苦行だった。なぜ、ここまで文章ともどもわかりにくく、屈折しているのか?
それでも、なぜか気になって読まずにいられない、そんな作家だったのだが、これは別人ではないかと思えるほど、読みやすい。翻訳の柴田元幸氏によれば、「ゆるい」オイスターによる人間ドラマ。

文学者として挫折した甥のトム、出奔したまま、ポルノ雑誌で肢体をさらすトムの妹のオーロラ。オーロラの娘の物言わぬルーシー。
その他、作者の投影であるネイサンが否応なしに関わりを持つことになる、ブルックリンの人々。

その1人1人の人生を描いても、一冊の本ができただろう。ぶつっと切れて章が終わり、意外な展開となって続くのは、柴田氏の名訳と相まって、読んでいて快感だった。
2011年9月11日の朝8時。ネイサンの、多幸的ともいえる世界を見る目とともに終わる。そこに、「それでも私はリンゴの木を植える」というような、肯定的な姿勢を感じた。それまでにたっぷりと、それぞれの物語を聞かせてもらったから。

だが、しかし。読み終えて、わからないというか、なんともおさまりの悪いものを感じたのも確かだ。
まず、「知的」という言葉が多用されているが、知的であるということは、それほどに重要なことだろうか。たとえば、ネイサンとトムが文学的な会話を交わす場面でも、工具箱を持つ人々が大勢いるダイナーで、という但し書きがつく。その工具箱を持つ人々にも、彼らの人生の物語があるわけで・・・

トムとの友情は甥、叔父の関係を超えたものなのだが、それにしても姪オーロラ、亡き妹ジューンへの愛着、オーロラが兄トムへ寄せる兄弟愛もわからない。これは本作に限らず、海外の小説を読んでいて、よく感じる「?」なのだけれど、これって、親子でも「I love you」といいあう文化のちがいなのかもしれない。

孫が生まれると知って、涙ぐむというのも・・・・。私はネイサンと同世代で、初孫も生まれたばかりなのだが、この箇所を読んで、なんだかしらけてしまった。涙ぐんだことも、ネイサンが執筆中の「愚行の書」に入れてほしい。
ーーと、ここまで書いて気がついた。「知的」の多用も含め、私はオイスターの釣り針に引っかけられたのかもしれない。
ブルックリン・フォリーズ (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: ブルックリン・フォリーズ (新潮文庫)より
410245117X
No.21
(4pt)

尽きぬ人間への興味

私にとってオイスターを読むことは、一種苦行だった。なぜ、ここまで文章ともどもわかりにくく、屈折しているのか?
それでも、なぜか気になって読まずにいられない、そんな作家だったのだが、これは別人ではないかと思えるほど、読みやすい。翻訳の柴田元幸氏によれば、「ゆるい」オイスターによる人間ドラマ。

文学者として挫折した甥のトム、出奔したまま、ポルノ雑誌で肢体をさらすトムの妹のオーロラ。オーロラの娘の物言わぬルーシー。
その他、作者の投影であるネイサンが否応なしに関わりを持つことになる、ブルックリンの人々。

その1人1人の人生を描いても、一冊の本ができただろう。ぶつっと切れて章が終わり、意外な展開となって続くのは、柴田氏の名訳と相まって、読んでいて快感だった。
2011年9月11日の朝8時。ネイサンの、多幸的ともいえる世界を見る目とともに終わる。そこに、「それでも私はリンゴの木を植える」というような、肯定的な姿勢を感じた。それまでにたっぷりと、それぞれの物語を聞かせてもらったから。

だが、しかし。読み終えて、わからないというか、なんともおさまりの悪いものを感じたのも確かだ。
まず、「知的」という言葉が多用されているが、知的であるということは、それほどに重要なことだろうか。たとえば、ネイサンとトムが文学的な会話を交わす場面でも、工具箱を持つ人々が大勢いるダイナーで、という但し書きがつく。その工具箱を持つ人々にも、彼らの人生の物語があるわけで・・・

トムとの友情は甥、叔父の関係を超えたものなのだが、それにしても姪オーロラ、亡き妹ジューンへの愛着、オーロラが兄トムへ寄せる兄弟愛もわからない。これは本作に限らず、海外の小説を読んでいて、よく感じる「?」なのだけれど、これって、親子でも「I love you」といいあう文化のちがいなのかもしれない。

孫が生まれると知って、涙ぐむというのも・・・・。私はネイサンと同世代で、初孫も生まれたばかりなのだが、この箇所を読んで、なんだかしらけてしまった。涙ぐんだことも、ネイサンが執筆中の「愚行の書」に入れてほしい。
ーーと、ここまで書いて気がついた。「知的」の多用も含め、私はオイスターの釣り針に引っかけられたのかもしれない。
ブルックリン・フォリーズ Amazon書評・レビュー: ブルックリン・フォリーズより
4105217151
No.20
(5pt)

2001 9.11 AM8:00

複雑な人間模様がスピーディーかつドラマチックに展開するので、簡単な人脈図を作りつつ読まなければ、いきなりルーシーなる9歳半の女の子が現れたり、ゴードン・ドライヤーなる悪人が出てきたりするので、「こいつは誰やったんや?」と分からなくなっちまう。だけど、そこはそれ、ストーリー・テリングの実に巧いオースターと彼の文体を実に小気味よい日本語に翻訳してくれる柴田センセとの名コンビのおかげで読者は最後まで全く飽きることがない。いやいや、残りページ数が徐々に少なくなってゆくのが名残惜しくなる。それほど、ネイサンとのブルックリン・ライフをもっともっと楽しみたくなるのだ。

 神の存在を信じないユダヤ人、ネイサン・グラスが語り手であり、一応この物語の主人公だけど、それぞれの小咄が実に面白く、かつ柴田センセの言葉によれば「ゆるく」書かれているのがいい。

 「自分の人生が何らかの意味で終わってしまったと感じている男の物語」シリーズの3冊目だそうだけど、まだまだいける!もう一丁花を咲かせてやろうじゃないかって雰囲気で終わっているのが実にさわやかで、清々しい。
 
 そう、2001年9月11日の朝8時にこの物語は、ハッピー・エンドで終わっている・・・・・・・・・・

ブルックリン・フォリーズ (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: ブルックリン・フォリーズ (新潮文庫)より
410245117X
No.19
(5pt)

2001 9.11 AM8:00

複雑な人間模様がスピーディーかつドラマチックに展開するので、簡単な人脈図を作りつつ読まなければ、いきなりルーシーなる9歳半の女の子が現れたり、ゴードン・ドライヤーなる悪人が出てきたりするので、「こいつは誰やったんや?」と分からなくなっちまう。だけど、そこはそれ、ストーリー・テリングの実に巧いオースターと彼の文体を実に小気味よい日本語に翻訳してくれる柴田センセとの名コンビのおかげで読者は最後まで全く飽きることがない。いやいや、残りページ数が徐々に少なくなってゆくのが名残惜しくなる。それほど、ネイサンとのブルックリン・ライフをもっともっと楽しみたくなるのだ。

 神の存在を信じないユダヤ人、ネイサン・グラスが語り手であり、一応この物語の主人公だけど、それぞれの小咄が実に面白く、かつ柴田センセの言葉によれば「ゆるく」書かれているのがいい。

 「自分の人生が何らかの意味で終わってしまったと感じている男の物語」シリーズの3冊目だそうだけど、まだまだいける!もう一丁花を咲かせてやろうじゃないかって雰囲気で終わっているのが実にさわやかで、清々しい。
 
 そう、2001年9月11日の朝8時にこの物語は、ハッピー・エンドで終わっている・・・・・・・・・・


ブルックリン・フォリーズ Amazon書評・レビュー: ブルックリン・フォリーズより
4105217151
No.18
(5pt)

「愚かしさ」へのオマージュ

「本の力をあなどってはならない」。文末の一文にあるように、この物語は偉大な文学者たちへのオマージュである。そしてその賛辞は偉大とは対極にある「愚かしさ」に注がれる。
 主人公は長年、損害生命保険業に携わってきた老齢の男で、肺ガンを患って孤独な余生を送っている。舞台はニューヨーク・ブルックリン。帰巣本能に憑かれたようにこの街に舞い戻ると、男はあるプロジェクトを思い立つ。それは、これまでの生涯における愚行を編んだ『人間の愚行の書』を著すことだった。しかしその時点では自らの生きてきた自省をランダムにメモ書きするという想定であったが、突如、物語は動き出す。金と女と欲望が引き金になって。
 作者はこれを著すにあたって、骨格となるエピソードをまず思い立ったのではなかろうか。それはアメリカが誇る文学者エドガー・アラン・ポーとチェコのユダヤ人作家フランツ・カフカがいずれも40歳で亡くなったという事実だ(保険業に携わり、職業別死亡率について半生を費やした主人公の職種の意味がここにある)。
 薄命の作家カフカは生涯最後の年に恋をした。相手となるその女性と公園をデートしている最中、人形を無くした少女と出会い、毎日、その子のために人形からの虚構の手紙を贈り続け、悲しみを癒したという。生前、評価されることがなかった点では共通する一方のポーは、死後も不運が重なり、四半世紀の間、墓標に名前が記されることはなかったという。ほかにも文学者の没年が列挙されているが、いずれも40歳以下で、ここが薄命と愚行を分ける分水嶺と見なしているようだ。
 愚行の典型が哲学者のヴィトゲンシュタインだ。このエピソードもおもしろい。『論理哲学論考』を書き上げ、功成り名を遂げた知の巨人は、リタイア後の人生をオーストリアで教師として過ごすことになるが、学ぶ姿勢のない子どもへの体罰が過ぎて職を辞することとなる。再び哲学の道に戻り偉大な業績を残すが、教師時代の罪悪感にさいなまれ、かつての教え子に許しを乞うのだが、このあとの展開は本書でご覧いただきたい。生きながらえることには人間的な欲望がつきまとい、人間的であればあるほど「愚かしさ」から免れることはできないのである。
 これまでオースターの本を読んできた人にとっては、本書に対して異質な感懐を抱くかもしれない。偶然が謎を呼び、不可抗力に引き寄せられるように転落する人間群像を描くという点ではオースター的なのだが、そこにあるのは暖かな慕情とでもいうべきものだ。その舞台として選ばれたブルックリンは、人間であることの「愚かしさ」を見つめる場所としてまことにふさわしい場所であるが、最後に9.11のあの惨事がエピソード的に触れられているということは、次回作は「ポスト9.11」の物語が用意されているということだろうか。
ブルックリン・フォリーズ (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: ブルックリン・フォリーズ (新潮文庫)より
410245117X
No.17
(5pt)

「愚かしさ」へのオマージュ

「本の力をあなどってはならない」。文末の一文にあるように、この物語は偉大な文学者たちへのオマージュである。そしてその賛辞は偉大とは対極にある「愚かしさ」に注がれる。
 主人公は長年、損害生命保険業に携わってきた老齢の男で、肺ガンを患って孤独な余生を送っている。舞台はニューヨーク・ブルックリン。帰巣本能に憑かれたようにこの街に舞い戻ると、男はあるプロジェクトを思い立つ。それは、これまでの生涯における愚行を編んだ『人間の愚行の書』を著すことだった。しかしその時点では自らの生きてきた自省をランダムにメモ書きするという想定であったが、突如、物語は動き出す。金と女と欲望が引き金になって。
 作者はこれを著すにあたって、骨格となるエピソードをまず思い立ったのではなかろうか。それはアメリカが誇る文学者エドガー・アラン・ポーとチェコのユダヤ人作家フランツ・カフカがいずれも40歳で亡くなったという事実だ(保険業に携わり、職業別死亡率について半生を費やした主人公の職種の意味がここにある)。
 薄命の作家カフカは生涯最後の年に恋をした。相手となるその女性と公園をデートしている最中、人形を無くした少女と出会い、毎日、その子のために人形からの虚構の手紙を贈り続け、悲しみを癒したという。生前、評価されることがなかった点では共通する一方のポーは、死後も不運が重なり、四半世紀の間、墓標に名前が記されることはなかったという。ほかにも文学者の没年が列挙されているが、いずれも40歳以下で、ここが薄命と愚行を分ける分水嶺と見なしているようだ。
 愚行の典型が哲学者のヴィトゲンシュタインだ。このエピソードもおもしろい。『論理哲学論考』を書き上げ、功成り名を遂げた知の巨人は、リタイア後の人生をオーストリアで教師として過ごすことになるが、学ぶ姿勢のない子どもへの体罰が過ぎて職を辞することとなる。再び哲学の道に戻り偉大な業績を残すが、教師時代の罪悪感にさいなまれ、かつての教え子に許しを乞うのだが、このあとの展開は本書でご覧いただきたい。生きながらえることには人間的な欲望がつきまとい、人間的であればあるほど「愚かしさ」から免れることはできないのである。
 これまでオースターの本を読んできた人にとっては、本書に対して異質な感懐を抱くかもしれない。偶然が謎を呼び、不可抗力に引き寄せられるように転落する人間群像を描くという点ではオースター的なのだが、そこにあるのは暖かな慕情とでもいうべきものだ。その舞台として選ばれたブルックリンは、人間であることの「愚かしさ」を見つめる場所としてまことにふさわしい場所であるが、最後に9.11のあの惨事がエピソード的に触れられているということは、次回作は「ポスト9.11」の物語が用意されているということだろうか。
ブルックリン・フォリーズ Amazon書評・レビュー: ブルックリン・フォリーズより
4105217151
No.16
(4pt)

初・ポールオースター

たとえ行動パターンは奇抜でも、ニューヨーカー(もしくはアメリカ人)も日本人も、その奥深い部分の心持ちは何ら変わらないんだなと、温かいような、ホッとさせられるような気持ちになりました。

細かく章で刻まれてますが、話があちこちへ飛ばず、一本道で追っていけるのでとても読みやすかったし、登場人物達の口調がとても今風で愉快でした。こちらは訳者の力ですね。
ブルックリン・フォリーズ (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: ブルックリン・フォリーズ (新潮文庫)より
410245117X
No.15
(4pt)

初・ポールオースター

たとえ行動パターンは奇抜でも、ニューヨーカー(もしくはアメリカ人)も日本人も、その奥深い部分の心持ちは何ら変わらないんだなと、温かいような、ホッとさせられるような気持ちになりました。

細かく章で刻まれてますが、話があちこちへ飛ばず、一本道で追っていけるのでとても読みやすかったし、登場人物達の口調がとても今風で愉快でした。こちらは訳者の力ですね。
ブルックリン・フォリーズ Amazon書評・レビュー: ブルックリン・フォリーズより
4105217151
No.14
(4pt)

ちくちくと肌に触れる夏の終わりの日射しが伝わる

死に場所を求めていた、という冒頭は、これまで読んでいたオースター作品の独特の切羽詰まった描写の幕開けのように思えるのですが、実際には穏やかで緩やかな悲喜劇の始まりでした。

自分と他人の小さな愚かさを本に書き進めていく主人公。甥と姪、その子供、近隣住民とその家族など、登場人物が徐々に現れ、その中で自分と彼らの関係を作っていく様子の緩急がとても自然で心地よく読み進めます。

そして夏の終わりのちくちくと肌を刺激するような強い日射しが読んでいるこちらにも幸福感として伝わるようなラストシーン--愚者ばかりの人間たちの中で、それでも人は生きていることで幸福なんだという、それが9.11の直前として描かれることで作品の余韻が非常に大きなものになっています。ちょっとあざとい気もしますが、舌を巻くほどうまいラストシーンだと思います。

読後すぐは、技術的にはうまいながらも作風として平凡に感じられたのですが、時間が経つにつれてだんだんと好きになってきた作品です。オースターの初期作品ファンとしては、昔の作風にも未練はあるのですが、こんなふうなユーモアとペーソスあふれる人間喜劇を描くこともできる作家になったというのを評価したいです。
ブルックリン・フォリーズ (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: ブルックリン・フォリーズ (新潮文庫)より
410245117X
No.13
(4pt)

ちくちくと肌に触れる夏の終わりの日射しが伝わる

死に場所を求めていた、という冒頭は、これまで読んでいたオースター作品の独特の切羽詰まった描写の幕開けのように思えるのですが、実際には穏やかで緩やかな悲喜劇の始まりでした。

自分と他人の小さな愚かさを本に書き進めていく主人公。甥と姪、その子供、近隣住民とその家族など、登場人物が徐々に現れ、その中で自分と彼らの関係を作っていく様子の緩急がとても自然で心地よく読み進めます。

そして夏の終わりのちくちくと肌を刺激するような強い日射しが読んでいるこちらにも幸福感として伝わるようなラストシーン--愚者ばかりの人間たちの中で、それでも人は生きていることで幸福なんだという、それが9.11の直前として描かれることで作品の余韻が非常に大きなものになっています。ちょっとあざとい気もしますが、舌を巻くほどうまいラストシーンだと思います。

読後すぐは、技術的にはうまいながらも作風として平凡に感じられたのですが、時間が経つにつれてだんだんと好きになってきた作品です。オースターの初期作品ファンとしては、昔の作風にも未練はあるのですが、こんなふうなユーモアとペーソスあふれる人間喜劇を描くこともできる作家になったというのを評価したいです。
ブルックリン・フォリーズ Amazon書評・レビュー: ブルックリン・フォリーズより
4105217151
No.12
(5pt)

オースターとは思えぬおかし味

なぜか好きなポ−ル・オースター。読んだ作品はどちらかと言うと暗め。今回もそのつもりで読み始めたら、大違い。アマゾンで買ってよかった!どこかの書店で買って、帰りの電車で読み始めたら大変な事になっていたと思う。笑いが尾を引いて大変だった!!!果たして笑いを我慢できたかどうか・・・。とはいえ、オースターらしさは全開!いつもと違うのは、所々にちりばめられた、笑いの要素。オースターの作品をページターナーと評すると異論があるかもしれないけれど、個人的には『ブルックリン・フォリーズ』はそんな作品。
ブルックリン・フォリーズ (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: ブルックリン・フォリーズ (新潮文庫)より
410245117X
No.11
(5pt)

オースターとは思えぬおかし味

なぜか好きなポ−ル・オースター。読んだ作品はどちらかと言うと暗め。今回もそのつもりで読み始めたら、大違い。アマゾンで買ってよかった!どこかの書店で買って、帰りの電車で読み始めたら大変な事になっていたと思う。笑いが尾を引いて大変だった!!!果たして笑いを我慢できたかどうか・・・。とはいえ、オースターらしさは全開!いつもと違うのは、所々にちりばめられた、笑いの要素。オースターの作品をページターナーと評すると異論があるかもしれないけれど、個人的には『ブルックリン・フォリーズ』はそんな作品。
ブルックリン・フォリーズ Amazon書評・レビュー: ブルックリン・フォリーズより
4105217151
No.10
(5pt)

書かれていることが全てではなく、ここに書かれていないことにも。

ブルックリンを舞台に主人公ネイサンとその周辺の人間の再生の物語です。わかる人にはオースター自身が関わった映画「スモーク」、「ブルー・イン・ザ・フェイス(こちらはようやくDVD/BDで出ましたね)」を彷彿とさせる世界と言えば分りやすいかな。後半になるにつれよりメッセージも直接的になり、オースターの作品中最も「わかりやすい作品」だとも確かに言えます。読んでいる間は主人公の話す(書いた)物語の世界にじっくりと浸るといいと思います。ただ読み終わって本を閉じた後もう一度思い返してみると、主人公が世界に絶望していた甥・トムについてどう語っていたか、主人公が書いていたのは「愚行の書」。ということは、、、等、考えれば考えるほどこの本が単純ではないと思えてきました。皆さんも読み終わった後に自分なりにこの本の感想を考えてみてください。
ブルックリン・フォリーズ (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: ブルックリン・フォリーズ (新潮文庫)より
410245117X
No.9
(5pt)

それでも最後には「いいなぁ」と思える悲喜劇

仕事を辞め、妻と別れ、死に場所を求めてブルックリンに越してきた初老の男ネイサン。
将来を嘱望された文学青年でありながら、論文に挫折し、一時はタクシードライバーに成り下がってしまった甥のトム。
誰とも疎遠になっていた2人は偶然にもブルックリンの古書店で奇跡の再会を果たした。
そこにバイで詐欺師でトムの雇主にして古書店の店主であるハリーを合わせた3人の小さな共同体生活が始まるのであった。

前半は結婚生活、家庭問題、死別や挫折など3人の悲劇的な独白で占められているものの、それぞれどこか前を向いた所があり、
ポール・オースターのウィットに富んだ文のおかげで、テンポよく興味を刺激されながら読み進めることが出来ました。

特に中盤以降、ルーシーが登場してからは暇さえ有れば読みふけるほどハマり込みました。
この笑顔がステキで頭のいい少女がなぜ、あえて喋ろうとしないのか。彼らの元に突然現れたのか。
解き明かされていくと同時に、変化していくネイサン達の心情に思わず感情移入してしまいました。

悲劇を抱えた(抱えることになる)人物の多い物語ですが、それでも読み終わった後には喜劇と思えたり、どこかしら光がさしている。
読んだあと温かくなれた作品でした。
ブルックリン・フォリーズ (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: ブルックリン・フォリーズ (新潮文庫)より
410245117X
No.8
(5pt)

書かれていることが全てではなく、ここに書かれていないことにも。

ブルックリンを舞台に主人公ネイサンとその周辺の人間の再生の物語です。わかる人にはオースター自身が関わった映画「スモーク」、「ブルー・イン・ザ・フェイス(こちらはようやくDVD/BDで出ましたね)」を彷彿とさせる世界と言えば分りやすいかな。後半になるにつれよりメッセージも直接的になり、オースターの作品中最も「わかりやすい作品」だとも確かに言えます。読んでいる間は主人公の話す(書いた)物語の世界にじっくりと浸るといいと思います。ただ読み終わって本を閉じた後もう一度思い返してみると、主人公が世界に絶望していた甥・トムについてどう語っていたか、主人公が書いていたのは「愚行の書」。ということは、、、等、考えれば考えるほどこの本が単純ではないと思えてきました。皆さんも読み終わった後に自分なりにこの本の感想を考えてみてください。
ブルックリン・フォリーズ Amazon書評・レビュー: ブルックリン・フォリーズより
4105217151
No.7
(5pt)

それでも最後には「いいなぁ」と思える悲喜劇

仕事を辞め、妻と別れ、死に場所を求めてブルックリンに越してきた初老の男ネイサン。
将来を嘱望された文学青年でありながら、論文に挫折し、一時はタクシードライバーに成り下がってしまった甥のトム。
誰とも疎遠になっていた2人は偶然にもブルックリンの古書店で奇跡の再会を果たした。
そこにバイで詐欺師でトムの雇主にして古書店の店主であるハリーを合わせた3人の小さな共同体生活が始まるのであった。

前半は結婚生活、家庭問題、死別や挫折など3人の悲劇的な独白で占められているものの、それぞれどこか前を向いた所があり、
ポール・オースターのウィットに富んだ文のおかげで、テンポよく興味を刺激されながら読み進めることが出来ました。

特に中盤以降、ルーシーが登場してからは暇さえ有れば読みふけるほどハマり込みました。
この笑顔がステキで頭のいい少女がなぜ、あえて喋ろうとしないのか。彼らの元に突然現れたのか。
解き明かされていくと同時に、変化していくネイサン達の心情に思わず感情移入してしまいました。

悲劇を抱えた(抱えることになる)人物の多い物語ですが、それでも読み終わった後には喜劇と思えたり、どこかしら光がさしている。
読んだあと温かくなれた作品でした。
ブルックリン・フォリーズ Amazon書評・レビュー: ブルックリン・フォリーズより
4105217151
No.6
(4pt)

舌なめずりして楽しみながら書いている!

朝日新聞の朝刊で、もはや何の噺だったのかも分からず意味不明の学校ネタと自動車ネタを小林秀雄の晩年の講演会の如く垂れ流している奥田英朗、伊坂幸太郎。そして吹けば飛ぶよなこんにゃく文体で下らないヨタ噺を書き飛ばして原稿料を略取している重松清に失望落胆かつあきれ果てたら、この1冊を手にとってみよう。

オースターは毎年1冊のペースで力作を出し続けているようだが、これは2005年の作品でニューヨークのブルックリン界隈に棲息する市井の人々のいかにもありそうで、しかし絶対にない話を抜群のストーリーテリング術を駆使、するのみならず、舌なめずりして楽しみながら書いている! から空恐ろしい。

「私は静かに死ねる場所を探していた」

という出だしからして読む者をじゅうぶんに惹きつけるが、続く数ページでもはや読者は完璧に著者が繰り出すものがたりの蜘蛛の糸の虜になってしまうに違いない。

んなわけであるからしてあらすじ等については触れないが、晩年のカフカが公園で出会った人形を無くして悲しんでいる少女のために、なんと3週間続けて渾身の力を振るって人形からの手紙を書き続けた、という感動的な逸話ははたして本当なのかしらん。

そんな手紙は少なくとも私が読んだ2種類の全集には収められてはいなかったが、これもオースターの「天才的な」作り話だったりして。
ともあれ小説家のプロの仕事の最良の見本が、ここにある。
ブルックリン・フォリーズ (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: ブルックリン・フォリーズ (新潮文庫)より
410245117X
No.5
(4pt)

舌なめずりして楽しみながら書いている!

朝日新聞の朝刊で、もはや何の噺だったのかも分からず意味不明の学校ネタと自動車ネタを小林秀雄の晩年の講演会の如く垂れ流している奥田英朗、伊坂幸太郎。そして吹けば飛ぶよなこんにゃく文体で下らないヨタ噺を書き飛ばして原稿料を略取している重松清に失望落胆かつあきれ果てたら、この1冊を手にとってみよう。

オースターは毎年1冊のペースで力作を出し続けているようだが、これは2005年の作品でニューヨークのブルックリン界隈に棲息する市井の人々のいかにもありそうで、しかし絶対にない話を抜群のストーリーテリング術を駆使、するのみならず、舌なめずりして楽しみながら書いている! から空恐ろしい。

「私は静かに死ねる場所を探していた」

という出だしからして読む者をじゅうぶんに惹きつけるが、続く数ページでもはや読者は完璧に著者が繰り出すものがたりの蜘蛛の糸の虜になってしまうに違いない。

んなわけであるからしてあらすじ等については触れないが、晩年のカフカが公園で出会った人形を無くして悲しんでいる少女のために、なんと3週間続けて渾身の力を振るって人形からの手紙を書き続けた、という感動的な逸話ははたして本当なのかしらん。

そんな手紙は少なくとも私が読んだ2種類の全集には収められてはいなかったが、これもオースターの「天才的な」作り話だったりして。
ともあれ小説家のプロの仕事の最良の見本が、ここにある。
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4105217151
No.4
(5pt)

待望の翻訳

9.11以降、右傾化するアメリカの中にあって、一時期は「ニューヨーク市独立論」さえ真剣に考える論評を書くに至ったオースターが、他の作品とは一味違う、まっすぐなアンチブッシュを打ち出した愛と決意の物語。ある場所のある時間の中にしか書けなかった唯一無二の物語にあふれる人間賛歌には、あの歴史的瞬間に向かっているNYの、真に人間らしい「そこに生きる人々」のレクイエムの気持ちが込められている。フランスっぽいオースターやマンハッタンっぽいオースター、アナザー・ワールドっぽいオースターがあるとすれば、これは下町オースター。こういうオースターにはめったに出会えないからこそ、何年も待っていた待望の翻訳に拍手です。
ブルックリン・フォリーズ (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: ブルックリン・フォリーズ (新潮文庫)より
410245117X
No.3
(5pt)

待望の翻訳

9.11以降、右傾化するアメリカの中にあって、一時期は「ニューヨーク市独立論」さえ真剣に考える論評を書くに至ったオースターが、他の作品とは一味違う、まっすぐなアンチブッシュを打ち出した愛と決意の物語。ある場所のある時間の中にしか書けなかった唯一無二の物語にあふれる人間賛歌には、あの歴史的瞬間に向かっているNYの、真に人間らしい「そこに生きる人々」のレクイエムの気持ちが込められている。フランスっぽいオースターやマンハッタンっぽいオースター、アナザー・ワールドっぽいオースターがあるとすれば、これは下町オースター。こういうオースターにはめったに出会えないからこそ、何年も待っていた待望の翻訳に拍手です。
ブルックリン・フォリーズ Amazon書評・レビュー: ブルックリン・フォリーズより
4105217151