リカーシブル
評判
リカーシブルの評価:
3.76/5点 レビュー 45件。 B ランク
Amazonレビュー一覧
Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全88件 81〜88 5/5ページ
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リカーシブルの評価:
3.76/5点 レビュー 45件。 B ランク
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描かれるものは高速道路誘致を巡って地方都市でくすぶる不穏な空気であり、表紙のハイウェイナイトランはイメージ画像、なわけですが。なんかこう、発売から数ヶ月も経ってネット上にカーゴカルトに触れた感想の一つも見当たらないってなんなの?いや、僕だけが真髄に触れているんだぁなんて言いませんよ。はいはいカーゴカルトカーゴカルトと思う読者の百人や千人いないわけがない。そのごく浅い衒学すら取りこぼされて、イヤミスな地方都市で挫けないハルカの選択に勇気をもらいました(ほっこり)が支配的空気になるインターネット上の書評空間に絶望した!
なお、謎解き自体は明かしませんが、展開には触れますので以下【ネタバレ】気味です。
現代の事件の香りに古文書の記述がリンクし、神話的解釈が事実を浮かび上がらせ、伝説が今に通じる人間社会の生々しく苦い話として蘇る…という展開は、さよなら妖精や犬はどこだでも見せた十八番で、汎夢殿の面目躍如。しかし砂を噛むような散文的現実が暴かれたそれら過去作品と異なり、本作では合理的に解ける謎が仕分けされて明かされた結果、解けずに残った伝奇要素が不気味さを醸し出して終わります。これは新味、いやむしろ旧味な怪奇風味というべきか、今風でない新境地で驚きを感じさせてくれます。
合理的に謎が解決された後にオカルトをほのめかして終わるミステリは、横溝が完全にホラー扱いだった頃、合理性が疎んじられて「ミステリー」が怪異を意味した長い冬に、伝奇を装って本格をやりたかった先人の苦難の賜物。新本格の勃興で過去のものとなりましたが、冬の時代の産物です。本作はあえて冬の時代の記憶を呼び起こし、転入した女子中学生ハルカが地方都市で感じている不安感にシンクロさせてミステリマニアの肝胆を寒からしめる大技を繰り出して来ました。
いや、本作では一旦全てが無機質な論理のもとに暴かれ尽くすことさえなく、ミステリとして提示された謎まで解き残されてしまいます。ちょっと激しく戸惑いましたが、論理が尽くされない、すなわち「理不尽」。そう、これはまさに割り切れない理不尽さの演出なのです。ガチガチのミステリであったインシテミルをホラーとして再解釈した映画版に触発されたものか、よねぽ先生が土俗ホラーに挑んだ新境地と捉えることも可能でしょう。
全体の大きな真相は、ぶっちゃけそんな舞台設定を用意するなら何でもアリになってしまうもの、ではあります。しかしこれは、舞台が謎のために用意されている本格や新本格の系譜を継ぐという態度表明なのです。そして、新本格とは様相を異にするような、人が死ぬとはいえどちらかといえば日常の謎系に属する小さな謎解きを積み上げた上で出て来た大きな真相がそれであることには、館ものなどでは持ち得ない意味合いが生まれます。犯人個人が異常者という結末ではなく、そこまでやる犯人を抱える地方都市全体の闇が顕になる苦味。これは謎が物語に奉仕させられている状態でもあります。舞台は謎に、謎は物語に、相互に尽くすのです。物語が謎に奉仕するものでしかないと本格ミステリを非難してきた人々は、本作に絶大な拍手を送らねばならないでしょう。
衝撃のラスト一行も健在。素直に読むとある人物の行為と捉えて読み終えてしまう記述は、よくよく考えてみれば実は別の人物のそれなのです!その人物があの状況で平気でそんな行動をしているというのが、もう、衝撃と言えましょう。ボトルネックのあれが悪意かツンデレ善意か、という長い議論にも結論を出せるように思われます。
息もつかせぬ不穏で面白そうな展開、衒学趣味を軽く刺激してくれる伝説・神話の解釈に、露骨なものから何気ない記述まで張り巡らされた伏線から怒涛の畳み掛け。名推理披露が終わっても謎が解き残されていて初めて不安になりますが、よねぽ先生のことだから終章で・ラスト一行で処理してくれると信じて読み、最後の最後でだけ肩透かしを食らって呆然とするのです。
当然、その肩透かしさえも、趣向でしょう。文句なく面白かったと思う本でも導入がたるかったりエピローグがどうでもよかったりはしがちなところ、本作は本当に最後の最後の一行まで余すことなく楽しめてしまいました。謎がスカされたことで先への期待がラスト一行まで続きます。「天才作家はつまらない話を最終回に持ってくる。ワクワクして、最高で、幕引きだけちょっとショボい。そこまで楽しませてもらったのに文句を言うヤツの方がどうかしてる」という名言を実感します。読み終えると謎を未解決で放り出されたような、いや、ようなではなくまさにそのものの寂寥感が残るものの、それも味わい深い余韻。目から鱗が落ちました。また、読んでいる最中の満足度で言えば間違いなくピカイチでした。