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【レオ・ペルッツ】
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夜毎に石の橋の下での評価:
5.00/5点 レビュー 2件。 - ランク
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。 未読の方はご注意ください
心地よい眩暈
かすかにふれあう運命の静謐さ。
カフカの『審判』でヨーゼフKが裁判に出頭するため出向いてゆく郊外のごちゃごちゃとした貧民街にも似たような面影があった。
とりわけ屋根裏部屋に忽然として出現する未確認飛行物体的な裁判所のイメージは強烈なインパクトを残した。
子供心にもいったいカフカはどこからこんな奇抜なトポロジーの着想を得たのだろうとつくづく感心したものだったが、ここでペルッツが幻想的な小話を重ねながらゲットー化したプラハのユダヤ人街の風景を実に陰影深く描き出してくる
ゴーレムの生み親と言われる神秘主義者のラビや神聖ローマ帝国の伝説的な狂王、ユダヤの神話的な大富豪に宮中の策士、天使と幽霊、錬金術師と道化、大道芸人に盗賊の一味・・・魅力的な御伽噺の人物が走馬灯の影絵のように交錯するこの連作集の舞台にも、同じ陰微で謎めいた裏通りの気配が決して晴れることのない歴史の霧のように立ち込めている。
訳者さんの後書きを読んで、ここで語られている多くのエピソードが部分的に史実に基づいていたり、中欧のユダヤ人にとっては馴染み深い伝説の数々に取材していることを知ったのだけど、古典的な怪談の体裁を取りながらも、この作者特有の人を食ったようなユーモアと神妙なアイロニーが現代的で洒脱な趣きを与えています。
所々くすくす笑いが抑えきれずに爆笑に変わってしまうような抱腹絶倒の瞬間があると思えば、夜毎の夢を通して結ばれながらも決して白昼のもとでは成就されることのない皇帝とユダヤ商人の妻の間の悲恋のように色艶があるだまし絵めいた小話にも事欠かない。
『サラゴサの手稿』のファンは迷わず読むべきでしょう。
各章が切りのいい長さで、すっきりとした小粋な落ちとともに終わっているので、気張ることなく各人のペースで読み進めることができるのもいい。
それでいて、それぞれの独立したエピソードが思わぬ場所で連環しているので、大伽藍の全景を確認したり、細部の意匠の微妙を味わいなおすために、一読だけでは飽き足らず、何度も戻って行きたくなるような麻薬的な魅力に富んでいます。