カラマ-ゾフの兄弟
評判
カラマ-ゾフの兄弟の評価:
4.26/5点 レビュー 686件。 C ランク
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※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全561件 41〜60 3/29ページ
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まず、主要登場人物は、異常なほど生命力の旺盛な父親、そして3人の子供(年齢は、20歳、24歳、28歳くらい)であるようだ。テーマは、どうやら女性とか財産あるいは信仰を巡る、父親と二人の子(長男と2男)の争いであるらしく、その仲を取り持つのが、正直者でかつ考え深い3男アリョーシャだと思えた(アリョーシャは仲裁をせずにはいられない性格なので、すでに自ら前途の苦労を予感している)。ちなみに、父親とは、「わたしゃね、過ぎ去った青春に、私の嘗めたあらゆる屈辱に、仕返ししてやるんだ!」と言ってテーブルを拳でたたくような男である(218頁)。
次に、この作品の文学性について述べたい。とりあえず、3男アリョーシャに関する次の一文(42頁)を読んでほしい。
少年時代と青年時代の彼は、ほとんど感情を表にあらわさず、口数さえ少なかったが、それはべつに猜疑心とか内気のせいでもなければ、気むずかしい人見知りのためでもなく、むしろまるきり反対に、何か別のもの、つまり他人には関係のない、もっぱら個人的な、内心の悩みとでも言うべきもののためで、それが当人にとってはあまり重大なことなので、そのためにほかの人たちを忘れるような形になってしまうのだった。
これはまるで筆者のことでもあるような気さえしたのだが(そして筆者は、これほど鮮やかに自分を表現できずに半世紀以上を生きてきたのだが)、この作品には、このような心理描写がざらに見られる。と言うか、ほとんどがこのような深さの連続である。やはりドストエフスキーは、かねて予想していた通り、世界文学史上の巨人だなという印象だ。
最後に、(上)巻の終わりの第二部第五編 プロとコントラ における三~五について述べたい。ページ数では上巻659頁の内の96頁を占める。この箇所に来るまでは、確かに内容と言い、登場人物の関係と言い、複雑極まりないものであったが、内容自体がドラマチックであり、思いがけない展開が続くのでどうやら読み進めて来られた。ところがこの箇所ではいきなり思想的な問題が出てくる。難解そうだなと思ったのだが、落ち着いて読み返すと、なんとか意味が分かり始めた。さて、この部分の内容は、キリスト教に関する、2男イワンと3男アリョーシャの討論であるが、ほとんど一方的にイワンがしゃべる。イワンは果てに、自分の作った叙事詩『大審問官』を披露する。その内容を概略的に示そう。「舞台は十六世紀のセヴィリヤ。悪魔が、突然現れたキリストに対して、三つのことを要求する。――石ころをパンに変えよ、神殿から飛び降りよ、ひれ伏して俺を拝めば全世界をお前に与えよう。そうすれば、民衆は奇蹟に驚き、お前に従い、お前は民衆を幸せにする(パンを与える)ことができるだろう。キリストは、すべてを拒否する。それは、ただ民衆を自分の奴隷にしたくないから(民衆から、『個人の自由な決定』権を奪いたくないから)。しかし、その結果民衆の心は一つにまとまらず、調和のある世界は生まれなかった」
イワンの考えは、ある宗教社会においては、『少数の支配者』がつつましい大多数を服従させ、そうして幸福を存分に施す形態がいいのではないか、ということのようだ。このイワンの主張を読みながら、筆者は幾多の独裁者を連想した。筆者としてはイワンの主張に全く同意できない(つつましい大多数も、少数の支配者と同様、心の中は苦悩している)。ドストエフスキーもある面では時代の子であったのだろう。