シャトゥーン ヒグマの森
評判
シャトゥーン ヒグマの森の評価:
3.22/5点 レビュー 101件。 B ランク
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全202件 61〜80 4/11ページ
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シャトゥーン ヒグマの森の評価:
3.22/5点 レビュー 101件。 B ランク
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厳しい閉鎖環境下での大幅な行動制限、そのような状況で生身の人間では太刀打ち不可能な相手が人間を狙ってくる。
宇宙船ノストロモ号船内での"エイリアン"や、南極越冬基地内での"物体X"を例に挙げるまでもなく、クリーチャー物としては定番の舞台設定です。
本作の舞台は厳冬期の天塩にある大学研究林深部にある研究施設(山小屋)、そこへ夜半にヒグマが強襲。
ベタベタにお約束な舞台設定になっており、主人公が娘を連れたシングルマザーと言う段階で、ぼんやりと生き残るメンツも見えてきます。
この前段で早くも陳腐臭が強めですが、ページをめくるたびに表紙のヒグマに惹かれて本書を手にしたことを後悔します。
なぜなら、登場人物の多くは舞台となる大学研究林に関係した研究者や研究者崩れとその関係者ですが、
それでいながらヒグマや自然に関する知識があまりにお粗末でツッコミどころ満載の内容となっています。
本書の致命的難点は大きく二つです。
一つは"付け焼き刃的な知識で描かれた北海道の自然"。
もう一つは"無理のありすぎる人物の設定"です。
更にそれらに起因するのですが、リアリティを出そうと盛り込んだディテールの殆どが空振りになっていることです。
本書に書かれている北海道の自然や林業など森林環境に触れてきた実情を知るものからすると、
ああ娯楽小説なんだなあ、と、生暖かく見守ろうとは思うのですが。
読み進めるとイライラやモヤモヤが増して行くばかりです。
「(シマフクロウ)研究者の私たちでも一生に何度見ることができるか」
え?研究者でしょ?研究者であればフィールドにいる限り毎日のように見れるはずですが?
確かに北海道内でシマフクロウの羽数は140羽程度しかおりません。
しかしこの140羽という数字がミソなのです。
通常であればこの羽数、100や200と言った概数になるのが普通です、
そもそも飼育個体ではなく野生個体なのですから、追い切れるわけがない…普通はそう思います。
ところが、推定羽数はあくまで約140羽と言うバリバリに具体的な数値なのです。
これが何を意味するのかと言うと、北海道内に住まうシマフクロウは殆ど全てが研究者達の努力によって監視下にあると言うことです。
北海道内に生息しているシマフクロウには"○○流域のつがいは○○先生"と言ったような受け持ちが固定していることが殆どです。
ほぼ全羽について行動範囲やカップリング状況が把握されており、研究者の方はフィールドにいる限り何度でも見ることができるのです。
また、それにより研究者同士での情報交換は盛んです。
故に、民間の自称研究者(その実アマカメラマンでしかない場合が多いですが笑)であればともかく、
大学という研究機関に身を寄せているのであれば、何度も見ることは当たり前なので、そんなことをほざくことはあり得ません。
作中に"西"と言う密猟者が登場します。
現代日本に密漁者はともかく、銃を持った密猟者と言う時点で色々とおかしいのですが…
なんでもフクロウの密猟をしているとかオカシナ設定です。
「ハリー・ポッター」でのシロフクロウブームは確かにありました、
そしてその際にシロフクロウの売値(現在は30~40万)は高騰していましたが、
それでも売値が100万を超えることはなかったように記憶しています。
売値でその程度と言うことは、市場原理で卸値はもっと安くなります。
さらにワイルド(捕獲した野生個体)となると、馴れにくい上、捕獲の際に傷があることも少なくなく、
特に野生の鳥類はシラミやダニがスゴイため、売り物にはなりにくいのです。
それも出所が怪しいと卸値はもっと下がります、正規流通には乗せられませんから。
儲けは非常に薄いのです、少なくとも法を犯してまでやることではありません。
更に、亜種エゾフクロウは亜種ホンドフクロウに比べて色が淡いとは言え、
あくまで比べれば薄い程度のレベルであり、シロフクロウの代わりになり得るような色合いとはとてもいえません、
確かにフクロウ自体そこそこ高価なのですが(種類にはよるが安くとも10万円以上)
"シロフクロウもどき"としてエゾフクロウを密猟等というのは、ばかばかしいと言わざるを得ません。
その西が作中唯一銃を所持しているのですが、
バックショットではヒグマを倒せないのは確かなのですが、極限状態にあって一発も発砲しないというのはあまりに不自然です。
作中にて撃たない理由は、"致命傷にならない傷をつけても怒りを煽るだけ"とは言いますが、
じゃあ別の場面で目を抉るのはどうなんだ?
後半の薫や昭の行為の殆どが怒りを煽るだけで事態を悪化させているのです。
名前は出るけど登場しない夏目先生は"山から戻ってこないけど、熊に食われたかもしれない。"と言う非常に雑な扱いになっています。
知床の世界遺産地区などでは、そういう結論もアリかもしれませんが、
しかし本小説の舞台は大学研究林なのです、後半ブルが出てきますが、林業的要素を過分に含んだ研究も数多く行われています。
ただでさえ危険の多い林業ですが、作業の安全を維持できなければ研究は進まないのです。
そもそも研究が前提なので、大学の抱える研究林や演習林は保護されているアンタッチャブルな原生林的なものではなく、
その内部が基本的に殆どが監視下、もしくは管理下にあります。
これらの点から人を食ったかもしれないヒグマが放置されているような状況というのは基本的にあり得ないのです。
研究機関とあろうものが、人間一人いなくなったのに"かもしれない"と言うようなふわふわした結論は出しません。
しかもその大学の先生が行方不明なのです、山林を管理する物として、研究機関としてありえません。
人を食べた可能性のあるヒグマが生息する林内で研究なんてとても恐ろしく、先生はデータが集まらず、学生は論文が進みません。
そうなっては研究林としての意味がなくなるのです。
本作中に何度か凄惨なヒグマにより人間の惨殺現場の描写がありますが、
その描写通り、全く痕跡が残らないことは基本的にあり得ません。
血痕、肉片、毛髪等々必ず残ります、埋めて土饅頭にしても、全て食い尽くされたと想定しても、毛髪や骨片入りの糞ができます。
さらにはぎ取られた被服は残ります、特に靴は何十年も残る物ですから、
痕跡が全く見つからない=熊に食われた、と言う結論にはなり得ません。
また登場人物が、苫前三毛別のヒグマ事件では胎児が食べられたとか。
(胎児は妊婦からかき出されただけで、しばらくの間うごめいて生きていた。)
レミングは過剰に増えると自殺するとか。
(過剰に増えることはあるが自殺はしない。)
おおよそ研究者らしくなく都市伝説的な戯言をポンポン口にするのにはなんともゲンナリ。
登場人物が作者を超えることが出来ないのは確かなのですが、
あまりに自然科学に対する作者の水準が低いため、登場人物が肩書きの割に皆お粗末な人物になっています。
知識面のみならず思考も残念です。
西は、高橋の弾痕を主人公の薫に咎められて追い詰められますが、
"ヒグマは高橋を打ち倒すと即座にこちらへ向かってきたので咄嗟のことで撃った"と言えば、
十分通じる言い訳になると思うのですが、ぐうの音も出なくなり逆ギレするだけのバカです。
そんな登場人物のオツムのスペックはさておき、本書で際立つ"無理のありすぎる人物の設定"は主人公薫の娘、美々の耐久力です。
マイナス38度の環境下、飲まず食わずに近い状態で夜通し歩き通し、
厚着をしていたとは言え、ギンコに踏まれ、噛まれても浅い傷だけで済む。
作中随一の耐久性を誇り、攻撃力の無いターミネーターレベルです。
マイナス20度を下回ると、フル装備の大人でも厳しく、体温を奪われやすい子供では…
筆者にはもうヒグマのことや北海道の自然を少し調べるなり勉強してから書いてほしいものです。
ミステリーや娯楽と割り切って読む分には良いのかも知れませんが、
リアリティを出そうと盛り込んだ物が全て失笑物の余計なオプションにしかなり得ていません。
誤植か本人のミスかは定かでありませんが、
夢枕獏氏の"シュミレーション"も文筆業としてはかなり恥ずかしいですね。
この程度の小説を持ち上げている時点でだいぶ恥ずかしい気もします。