ウロボロスの純正音律
評判
ウロボロスの純正音律の評価:
3.20/5点 レビュー 5件。 C ランク
Amazonレビュー一覧
Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全6件 1〜6 1/1ページ
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ウロボロスの純正音律の評価:
3.20/5点 レビュー 5件。 C ランク
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アナロジカルに見て面白いのは、(一部で誤解されているように)ゲーデルの定理によって通常の数学が崩壊したわけではなくむしろ発展したように、ミステリは『匣―』式の変則ミステリを含みこむことで、以前の時代に比して驚くほど多様になっていったということだ。例えば綾辻行人はごりごりの正統派に見えるが、かつての古典をモデル(イデア)として立てたミステリ観から書かれてはいない。あくまで平行線公理の否定も成り立つことを認めた上での平行線公理の使用である。今では「正統ミステリ」とは、いつでも変更可能で廃棄可能な、一定の「公理」を採用したミステリの意にほかならない。
竹本健治は『匣の中の失楽』の神話性を自ら破壊するかのごとく、その構築的脱ミステリ性自体をパロディ化して、現実のミステリ作家やミステリ関係者を多数登場させた、現実と虚構の決定不可能性を試行する『ウロボロスの偽書』を上梓した。当初は賛否両論あったかと思うが、続編『ウロボロスの基礎論』あたりでは、その作法はおおむね好意的に受け入れられ、さらなる続編の期待が高まっていった。そのウロボロスシリーズの三作目にして最終作として満を持して出版されたのが、この『ウロボロスの純正音律』である。
前作では二つの系、前々作では三つの系と、複数の系が絡み合ってストーリーが進行した(つまり多重世界的であった)のに対して、今作はストーリーが一本化している。それに呼応するかのように、シリーズ中もっとも正統ミステリ感が濃い。定番の薀蓄も残っている(純正律についてのそれには感心した)が、はっきりストーリーの伏線になっている。そもそも謎の洋館の中で生じる「見立て」連続殺人という時点で、ばりばりの正統派である(もちろん上記の通り、今日のミステリファンはそれを文字通り取るわけではない)。探偵役もいつもの綾辻行人に、作品中の京極堂さながらの京極夏彦、意外な伏兵北村薫と揃っている。
竹本健治のストーリーテーラーぶりが遺憾なく発揮されており、ミステリファンはもちろんそうでないひとにも、躊躇なくお勧めできる、娯楽小説になっている。