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さまよう刃



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【この小説が収録されている参考書籍】
さまよう刃
さまよう刃 (角川文庫)

さまよう刃の評価: 7.74/10点 レビュー 19件。 Aランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点7.74pt

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サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
全12件 1~12 1/1ページ
No.12:3人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(10pt)

ぐいぐい引き込まれた

始まりから、何かが起きそうな予感、、、
宿命、分身、秘密、白夜行、幻夜、時生トキオと並び、東野の最高傑作の一つに数えて良いと思った。
とにかくグイグイと引き込まれ、止めることができず、500ページの長編を一気に読み終えてしまった。
最後の結末は、自分の「こうなって欲しい」という気持ちが裏切られて、やや残念だったが、これはこれでアリかな?と

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mustang
PCGQIQ4X
No.11:2人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(9pt)

法は我々を護るのか?それとも我々が法を守るのか?

人を殺すと云う事についてその意味を問う問題作だ。

ここでは二種類の殺人が描かれる。
1つは未成年の男性2人による、遊び半分で女性を襲い、クスリを打って強姦したはずみでの殺人。
もう1つは大事な愛娘を殺害された恨みを晴らすための殺人。
どちらも人を殺すことでは同じながらもその動機は全く以て異なる。

今まで数々のミステリが書かれる中で、数多く書かれた復讐のための殺人について、改めて実に遣る瀬無い理由によって殺人を犯そうとすることの意味を問う。

物語は長峰が菅野快児を探す物語と長峰を追う警察の捜査の模様、そして菅野にいいなりになって犯罪に加担した中井誠の3つの視点で語られる。

長峰のパートでアクセントとなって加わるのが丹沢和佳子という女性だ。長峰が菅野捜索の過程で滞在するペンションの経営者の娘だ。しかし彼女には最愛の息子を目を離した隙に公園の滑り台から転落させて亡くしたという位過去を持ち、その事故が原因で離婚をし、いまだに哀しみから抜け切れない日々を送っている。その彼女が長峰の協力者となり、一緒に菅野快児を探す手伝いをする。

この彼女の心情が実に上手い。同じ子供を亡くした親同士という共通点があり、片や事故で亡くしながら、その割り切れなさで蟠りを抱えて生きている。そこに娘を非人道的な所業によって殺害された男が犯人に復讐するという目的を持って現れる。それは彼女にとって長年抱えていた蟠りを別の形で晴らすことに繋がると見出したのだろう。
しかし殺人はよくないという理屈と感情のせめぎ合いの中で半ば衝動的に手を貸す、心の移り変わりが、決して明確な理屈で語られるわけではないのだが、行間から立ち上ってくるのだ。

尤も、彼女が長峰に協力しようと思ったのは実の息子を幼くして亡くしただけではない。彼女は長峰の娘が犯人に凌辱されるVTRを目の当たりにしたからこそ、ただ同情するだけではなく、何が正しいのか見つけるために行動したのだ。
そのことを父親へ告げる408ページの台詞を私はすっと読み流すことが出来ずにしばらく何度も噛みしめてしまった。

毎日報道される数々の事件。それらをただのニュースの一つとして捉えて、我々は時に関心を持ち、職場や家族で話題にしながらも数分後には次の話題に移っている。
それは無関心というわけでなく、事件そのものを深く知らないからゆえに他ならない。新聞でたった数行で語られる事件、TVのワイドショーで数分取り上げられる事件の中枢を知らないからこそ、毎日を平穏に過ごせるのかもしれない。

事件の本質を知らされると世間がどうなるのか?
本書では長峰の手紙が公開されて、世論は長峰擁護に傾くようになる。長峰の邪魔をするなと警察に多くの抗議の電話が鳴り響くようになる。

法治国家だからどんな理由であれ、殺人はよくない、こんなことを許せば秩序が無くなる。確かにそうだろう。
しかし犯人が我が子になした悪魔のような行為を見ると果たして誰もがそんな言葉を口にするのを躊躇うことだろう。

作中、長峰がこう述べる。「法律は人間の弱さを理解していない」と。秩序を守るために論を以て判断し、判定を下すのだ。人の命を奪うのではなく、罪を憎んで人を憎まず、更生させてその人の人生を変えるのだと。
しかし長峰が云うように残された遺族はそこまで大人になれない。人間が感情で生きる動物だからこそ、そんなに簡単に割り切れないのだ。

1+1は確かに2だろう。しかしその1はそれぞれ過ごした時間と関わった人によって込められた背景がある。だから人間関係とは1+1は2ではなく、3にでも5にでも、10でも100や1000にもなり得るのだ。

長峰は復讐を成就できるのか。
それとも菅野が先に警察に保護されるのか。

ただこんな二者択一のような単純な構図の物語においても東野圭吾氏はサプライズを忘れない。

長峰事件の後、辞職願を出して退職した久塚は最後にこう述べる。我々警察は市民を守っているのではなく、不完全な法律を守っているのだ、と。

これはまさに東野圭吾氏が持っている考えそのものではないだろうか。

それは殺人という行為についてこの頃の東野氏は色んなアプローチで語っていることからも推察される。

『手紙』では殺人を犯した兄が被る弟の人生について語り、『殺人の門』では折に触れ人生を狂わされる男がその張本人に殺意を抱き、その最後の境界線を越えるまでを描いた。そして本作では2種類の殺人が描かれる。

1つは家庭も持ち、仕事もありながら、周囲に迷惑をかけることを解りつつも亡き娘の為に敢えて殺人を犯そうとする男。

もう1つは自らの快楽の為に心が壊れるまで蹂躙し、寧ろ死ぬことで自らの犯罪が露見しないことを悦ぶ獣たち。

殺人と云う非人道的な行為を通じてこの2者が社会に下す裁きは全く異なる。前者は成人男性の為、刑法が適用され、後者は未成年ゆえにが少年法という保護下に置かれるからだ。

法によってその残虐な行為が軽減され、護られる者。法によって満足な裁きが成されず、最愛の者を亡くした哀しみを一生抱えなければならない者。そして法によって裁かれることで自身の復讐を重い刑罰で継ぐわなければならない者。

人は法の下では平等であるというが、何とも虚しい響きだと感じてしまう。このような胸に残る割り切れなさを表したのが久塚の言葉であり、東野氏の言葉のように思えるのだ。

最愛の娘を亡くした恨みを晴らすために犯人を追う。この私怨を晴らす物語はハリウッド映画などで山ほど書かれた物語だ。
しかし東野圭吾氏にかかるとこれが非常に考えさせられる物語に変わる。それは通常アクション映画のような活劇ではなく、復讐を誓う一介のサラリーマンとそれを取り巻く警察、犯人、協力者たちが我々市井のレベルでじっくり描かれるからだろう。
つまりアクション映画のようにどこか別の世界で起こっている物語ではなく、いつか我々の狭い世間でも起こり得る事件として描かれているから臨場感があるのだ。

自らの正義を成就すべきか、それとも復讐のための殺人は決して許される物ではないという世の道徳を採るべきか。物語の舵を取った時からどちらに落ち着いてもやりきれなさが残ると想像される物語の行く末を敢えて選び、そしてそれを見事に結末に繋げるという作家東野圭吾氏の技量は改めて並々ならぬ物ではないと痛感した。
このような「貴方ならどうしますか?」と問われ、ベストの答が決して出ない、論議を巻き起こす命題について敢えて挑むその姿勢は単にベストセラー作家であるという地位に甘んじていないからこそ、読者もついていくのだろう。

さて次はどのような問題を我々に突付け、彼ならではの答を見せてくれるのか。とにかく興味は尽きない。


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Tetchy
WHOKS60S
No.10:1人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(9pt)

さまよう刃の感想

とても重厚。
主人公よりも、周辺の人間達のほうが苦悩している様が、印象的だった

mick
M6JVTZ3L
No.9:1人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(9pt)

さまよう刃の感想

切なすぎる。深い親の愛情を感じました。

Ralph
YYNH4PU8
No.8:5人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(9pt)

さまよう刃の感想

少年法の是非を問う作品はこれまでも何作か読んできました。
最愛の娘を殺害された恨みを晴らすために犯人を追うという物語は映画などでもよくあります。
しかし東野圭吾にかかるとこうなるのかと。


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梁山泊
MTNH2G0O
No.7:2人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(10pt)

とてもハラハラ


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スズ
LFH2FGR6
No.6:1人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(9pt)

父親の

東野圭吾らしい人情が描かれていて、読むたびに切なく、そして展開にハラハラさせられる。

phantom
XG7WFVJT
No.5:1人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(9pt)

さまよう刃の感想

東野圭吾の作品の中ではかなりシリアスな内容でした。
怒り憎しみ哀しみの中での犯人の行動、それに共感し賛同する人の気持ちなどが私に大きくのし掛かり、ドップリ入り込んでしまいました。
話の展開や構成はさすが東野圭吾らしさが光ってます。
とても良い作品だと思います。

マグル
ZH9M7YFR
No.4:4人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(9pt)

さまよう刃は己の手の中に

一気に読んだ、というのは大袈裟としても最近の読書スピードを遥かに上回った。冒頭に繰り広げられる少年たちの犯罪はあまりにも残酷で、彼らの醜悪さに頬がびりびりと泡立つほど腹が立って・・・怒りに任せてページを繰った。主人公の感情にに寄り添い、その勢いのままに読み進んでいく。さらに、主人公同様にふと立ち止まっては様々なことを考える。少年法、正義、良心・・・普段は考えないことばかりだ。そして、訪れるやり切れない結末・・・にも拘らず、読後感は決して悪くない。それは、ちょっとしたミスリードから生じた謎(違和感)がラストで解き明かされるせいか、それともビクつきながらも主人公に手を差し伸べた協力者のせいか。ミステリ色は薄いが、ともかくも面白かった・・・重く一筋縄ではいかないテーマを扱いつつも、押しつけがましくなく、中だるみのないスリリングな展開に惹きつけられた。この作家だからこその読ませる力なのだろう。主人公を始めとする人々の行動が是か非か・・・その根拠となるのは怒りか、良心か、法律か・・・ならば、己はどこに立つのか、を問われるまでもなく思い知らせてくれる作品である。

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驚愕冬彦
2WGNS0HA
No.3:2人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(9pt)

当事者たち

冒頭から物語は急展開し、息つく間もなく読了。被害者遺族のやるせなさを扱った小説は数あれど、スリリングな物語に仕立てながら、様々な人々の心情を描ききるあたり、さすが東野圭吾。
結局、法律は社会の秩序を守るために存在しているわけで、加害者に十分な罪が必ず課せられるわけでも、被害者が法律によって救われるわけでもない。何が正義かを決めるのはその人自身しかあり得ないことを痛感させられました。

たろじゅん
545PYLEP
No.2:3人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(9pt)

主人公の気持ちになって読んでしまう

それぞれの登場人物がどのような性格であるか、どんな家庭環境なのか、どんな過去を持っているのか…等が丁寧に描かれているため、グイグイ引き込まれて一気に読めてしまう作品。

内容がシリアスなので、「おもしろかった!」というオススメの仕方はできないが、読んで良かったと思える一冊でした。

MUMU
YYDFLVXQ
No.1:2人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(9pt)

殺人者の殺意を理解できた作品


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あさみ
6TDFPU33

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