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ラブレス



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ラブレス

ラブレスの評価: 8.00/10点 レビュー 1件。 Aランク
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全1件 1~1 1/1ページ
No.1:
(8pt)

幸せは自分一人のもの(非ミステリー)

時代に押しつぶされながらも、流されながらも、自分一人の幸せを生ききった女の物語。読んでいる途中で何度も胸にこみ上げて来るものがある、強く情感に訴える物語である。
道東の貧しい開拓地で育った百合江は、看護婦になりたいという夢も叶わず、中学卒業と同時に奉公に出されるが、その町で見た旅芸人一座に心を惹かれ、奉公先を飛び出して一座に加わってしまう。だたひたすら歌うことだけを生き甲斐に、それなりに幸せな日々だったが、座長の病気を機に一座は解散し、百合江は一座の仲間だった宗之介と行動を共にすることになった。宗之介との間で妊娠したとき、故郷へ帰ろうとするのだったが拒絶され、妹・里実が働いていた釧路で生活することにした。しかし、娘・綾子が生まれると、宗之介は姿を消した。ミシンを使った縫製仕事で生きていた百合江と綾子に里実が縁談を持ち込み再婚したのだが、相手は金と女にだらしないマザコン息子だった。夫の借金を返すために温泉旅館で仲居と歌手として働き、借金を返済したのだが、二番目の子供・理恵を出産したとき、綾子を勝手によそにやられたことから、結婚生活が破綻し、再び釧路で暮らし始めることになった。
途中、穏やかに暮らす時期はあるものの、生涯のほとんどは貧困と悲惨な家族関係に翻弄される百合江だったが、本人は自分が選んだ人生だと諦観し、そんな人生にも幸せを見出している。対照的な性格の妹・里実だが、里実には里実の深い悩みがあり、けっして絵に描いたような幸せではない。
桜木作品の例に漏れず、出てくる男たちはほとんどがだらしなく、逆に女性が強すぎるのだが、強い女が持つ脆さ、というか強くならなければいけない流れが、非常に説得力がある。
人間の本当の強さとは何かを考えさせられる小説である。

iisan
927253Y1

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