(短編集)
射手座の香る夏
- SF (392)
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「十五までは神のうち」が秀作。 ノスタルジックな趣帯びたSF作品が収録されているものの、上記は青春ミステリー風味が強い短編。巻き戻しにより息子の存在を消された四十代の主人公が、子供時代を過ごした離島に帰り、三十年前に巻き戻しを選んだ兄を追憶する話で、ノスタルジックな情景描写がしみじみした余韻をもたらす。 どちらかというと「夏の葬列」、もしくは菅浩江や深緑野分の短編に近い雰囲気で、兄が巻き戻しを選択した真相の苦さと切なさが際立っていた。 先生の最後の呟きが本心だったら、兄の独善的判断は批判されるに足るもの。自分を神様だと思っているが故の全能感の行使が、話し合いを回避させたのだろうか?怜奈が本当に好きなのは「僕」だったんだろうな。 巻き戻しの設定自体は実際にあり得ないと言い難い。このあたりの匙加減が絶妙で、他人事と割り切らせない身近さを生んでいた。震災やコロナの絡め方も上手く、実際にこの手法が確立したら、こんな風に世界情勢が変化しそうな説得力を持っていた。 主人公が兄の思い出を追想するノスタルジックなSF短編として進めながら、終盤で世界の見え方を裏返し、真相を明かす構成も上手い。 ぶっちゃけ先生の相手はすぐ想像付くので驚きはないものの、ぼんやりした将来への不安や希死念慮が動機と見せかけ、心情的に大変納得できる、俗っぽい動機に落とし込むのが好みだった。 が、欠点もある。作中で遡及中絶は両親と話し合ってよく決めることと告知されているにもかかわらず、主人公の出張中に息子の存在が抹消された、というのは無理矢理すぎ。 アレだけ反対の声が上がった共同親権法案が成立しているので、その逆バージョンで父親が知らぬ存ぜぬ間に息子が消えるのもアリ……なのか?いやいやないだろさすがに。 仮に母親と子供の二者間の合意のみが重視され、婚姻関係を結んだ父親の意志が蔑ろにされる法令なら、この手の訴訟やトラブルが社会問題化するはず。 また、母体がタイムトラベル薬を服用することで訴求中絶が成立するため、既に母親が死んでいる子は適用外というのも大雑把に感じた。 ということは母親が不明な捨て子や孤児も全員対象から外れるわけで、こんな人道的にアンフェアで反発を招く法案が認められるものだろうか?体外受精や養子の場合さらに拗れそうだが……。 タイムトラベル薬が情報戦に利用されるなど、要所要所にリアリティーを感じられこそすれ、肝心な所で設定の詰めが甘く消化不良なのが惜しい。 作者さんは難解な用語が頻出するSFより、ジュブナイルな目線で日常の謎を扱ったミステリーが向いてる気がするので、そっち方面を期待してる。 | ||||
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