ガラスの顔
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舞台は地下都市。人々は表情を持たず、面(おも)と呼ばれる作られた表情を教わり、感情を表現する。 地位の高い人ほど、さまざまな面を習得し、感情を表現できる。 一方、最下層の人々は、管理され無表情の一点しかあたえられていない。 奴隷のような生活を強いられているが、不満や怒りの表情もないため、周囲の想いを共有できず、反乱がおきる兆しすらつぶされている。 そんな地下都市が一人の少女によって動き出す。少女はどこから、なぜ現れたのか。 ミステリー&ファンタジーの大作。 | ||||
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50年前(!)に子どもだった私は、 家庭にも学校にも居場所が無く、ひたすら本の中に現実逃避をしていました。 図書館から借りた、国内外の児童書のなかの 健気に生きる少女たちに力を得て、なんとかあの時代を生き延びることができたと いまも本の力に感謝しています。 ただ、当時、夢中になって読んだ本の主人公たちは、 みんな教科書みたいに優等生だったなあ・・・と。 半世紀も前の自分が、フランシス・ハーディングの主人公の女の子たちを知っていたら もっともっと、勇気付けられていたのだろうと想像します。 いま、いろいろな事情で辛い状況にある子どもたちが、 ハーディング氏の著書に触れて ポジティブな力を得てくれることを願ってやみません。 「ガラスの顔」に関しては、 地下世界の描写が煩雑過ぎて、年寄りの頭では想像することが なかなかに困難だったので★3つとしました。 | ||||
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ハーディング作品は「カッコーの歌」「影を呑んだ少女」と読んできており、歴史ファンタジーの書き手と認識していたのだが、これは100%創作世界を舞台にした純ファンタジー作品である。作家としての新境地だな、と思ったら解説によると過去の邦訳作品に先行する作品であり、逆にこちらの方がいわばホームグラウンドにあたるらしい。 ストーリー紹介は「読んでのお楽しみ」ということで、以下セールスポイント(?)を挙げてみる。 ①イマジネーション溢れる「ファンタジー職人世界」 舞台である地下世界カヴェルナはいわば職人世界であり、”チーズ作り” ”ワイン作り” そして作品のカギとなる ”フェイススミス” などが尊重され、匠クラスになると宮廷を構成する支配階級でも容易には手を出せない存在になる。「ああチーズかい」などと思ったら大間違い、作り出される製品は爆発したり腐食性のガスを噴出したり記憶を消してしまったり、ととんでもない特性を持っていて、場合によっては作り手にすら襲いかかってくるような珍重される価値と同じぐらい危険きわまりないシロモノばかり。中には”地図作り”や”クレプトマンサー”などちょっと簡単には説明不能なものも続々登場し、読んでいると作者のイマジネーションに圧倒されて目が回るような気分になります。 ②謎また謎のサスペンス 開巻から大量の伏線がはられ、進行につれ次々に回収されそれがまた次の伏線となり・・・とサスペンスの連続で、飽きさせないストーリー。こういうハラハラドキドキ、というジェットコースター型の物語は作家の力量が足りないと空回りしたり逆に間延びしてしまったりで最後の伏線回収まで読者の興味をを持続できないこともあるが、そこはさすがのハーディング、過去作以上に見事な力量を示してくれます。 ③魅力的なキャラクター ハーディング作品の愛読者には当然かもしれませんが、主人公ネヴァフェルはじめ大量に登場するキャラクターが皆それぞれに魅力的。そんな彼らの思惑が入り乱れ、敵味方が二転三転する華麗な冒険物語が楽しめます。 ④創作の参考になる(?) 巻末の解説でハーディング自身が元になったアイディアのいくつかをを発言している。 ・嘘と陰謀の世界の中でひとりだけ嘘のつけない少女の物語を書こうと思った ・家族がクレプトマニア(精神医学用語:窃盗症)をクレプトマンサーと言い間違えたのをイメージを膨らませた などだが、自身創作を志す方なら参考になるかも。 「○○賞受賞作品」というのは今一つピンとこないな・・・というのも多いですが、フランシス・ハーディング作品に外れなしです。 駄文にて失礼いたしました。 | ||||
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過去翻訳された三作とは異なり、地下都市・カヴェルナと呼ばれる架空世界を舞台とした本作。 幼少期の記憶が無い主人公・ネヴァフェルの目を通して、その世界の文化や環境などが細部にわたるまで徹底的に描写されていく。 爆発するチーズや記憶を操作するワインなどファンタジー特有の非現実的な世界観を堪能できる。 しかし本作の作者はあのフランシス・ハーディングである。 架空世界を堪能させるだけで終わるはずがない。 本作もこれまでの著作同様、少女が世界に立ち向かうというストーリーとなっている。 世界そのものから虐げられ、誰も導いてくれない絶望的な状況であろうともフランシス・ハーディングの描く主人公たちは闘うことを選択する。 他者からの承認や評価ではなく、己の内側から溢れ出す声のみを頼りに勇気と知性を振り絞りながら懸命に前を向く少女たちの姿に心打たれないわけがない。 また本作では<面>と呼ばれる後天的に身に着ける表情が物語の鍵となっていく。 <面>は富裕層と貧困層とで取得できる表情の数が異なるので、必然的に貧困層の人々は持ち得る表情の数が乏しい。 この持つ者と持たざる者の構図はそっくりそのまま現代社会に当てはまる。 つまり架空世界を舞台とした本作が、過去作以上に現代社会の問題を浮き彫りにしていくのだ。 そんな現代社会の縮図とも捉えることができる地下都市において、少女はいかにして抵抗するのか。 その手段や動機はもちろんのこと、本作で特筆に値する点は張り巡らされた伏線と謎が謎を呼ぶ展開だ。 なぜネヴァフェルの記憶は失われたのか、といった自らの過去を追い求める旅が地下都市・カヴェルナそのものの謎へと繋がっていく見事な展開には驚きを隠せなかった。 そのクオリティは年間ベスト級のミステリーといっても過言ではない。 それほどまでに緻密に練り上げられた構成とあらゆるところに張り巡らされた伏線とに翻弄され、驚愕の真相に唸らされた。 児童文学という枠組みを軽々と超え、数々の傑作小説を生み出すフランシス・ハーディング。 彼女はファンタジーで世界を構築し、ミステリーとサスペンスで読者のページを繰る手を止めさせず、どれほど世界が残酷であろうと決して屈さない少女を描き私たちの心を打つ。 これほどまでに見事なストーリー展開で、私たちの奮い立たせてくれる作家はそうそうないだろう。 | ||||
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