終点のあの子
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あらすじ
ゆらぎやすい女子高生の友情を描く短篇集。プロテスタント系女子高の入学式の日。中学からの内部進学者の希代子は、高校から入学した奥沢朱里に声をかけられた。海外暮らしが長い彼女の父は有名なカメラマンだった。希代子は風変わりな朱里が気になって仕方がないが、一緒にお昼を食べる仲になった矢先、ある変化が訪れる。外部からの進学者の朱里には見えない、女子校ならではの「ルール」。希代子はその枠から飛び出した存在になってしまうのか?華やかに見える少女たちの日常に潜む、複雑な心情と、絡み合う人間関係。少女たちの繊細な心理描写が各紙誌で絶賛されたオール讀物新人賞受賞作「フォーゲットミー、ノットブルー」を含むオムニバス四篇。(「BOOK」データベースより)
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評判
終点のあの子の評価:
0.00/10点 レビュー 0件。 A ランク
終点のあの子の総合評価:
8.06/10点 レビュー 33件。
感想一覧
サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
Amazonレビュー
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
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直近の芥川賞受賞者の市川先生の仰る気持ちも理解できます。
もっと俗な理由で、書籍だと置き場所に困るという話も。
けれど、紙の質感で読んだ方が自分の中により物語が浸透し、刻み込まれる時がある。この本はそちら側に定義できる作品でした。
以下、ネタバレが大いに含まれます。
『フォーゲット ミー ノット ブルー』。
冒頭の高架工事についての内容から、少女たちの普段の様子や、工事独特のあの薬剤の匂いや白い壁がまざまざと脳裏に浮かんでくるようで、もっと早くこの本を手に取りたかったと思う反面、自分がまだ彼女たちの傷に共感するような年齢の時分に読んだなら、苦しくて途中で読めなくなったかもしれない。それくらいに、表題作を始めとしたすべてのお話が、わたしたち少女だった人、あるいは今の少女たちの話でした。
主人公の希代子が、転校生で有名な建築家の父を持つ、松濤暮らしの朱里に憧れを抱き、やがて彼女の目から見た自分が「つまらないもの」であること、自分の大切な人たちが自分よりも彼女を大事に思うよう(に見える)になるに従って、彼女を変えてやりたいと思うようになります。
自分たちのような「普通」の人間の気持ちを考えようとしない朱里。
自分たちを内心で莫迦にしている朱里。
経堂駅の小田急線ホームで、電車に乗った方と、踏みとどまった方。
わたしはつまらない人間じゃない。
朱里はすごい。でも、彼女は人の痛みを知らない。思い知るべきだ。
ここからどう展開するんだろう、と予想できない気持ちで読みました。
読み進めるにつれて「わたしも朱里に一泡ふかせたい」という気持ちになりましたが、どんどん物語が加速していくに従って、それは完全に苛めに変容します。
この頃にはもう希代子にも共感できないようになっています。ただ、彼女たちの着地点を見守るだけです。ページをめくる手が早くなったり、遅くなったり。時々前に戻ってみたり。
取り返しのつかないところまできてやっと、希代子は止まりました。
そして希代子の気持ちが明らかになった時、朱里との関係はもう修復不可能のところまで来ていました。
好きだった。憧れていた。だからこそ悲しかった。彼女に変わってほしかった。
「わたしの中に占める彼女の割合」「彼女の中に占めるわたしの割合」が釣り合っていなくて悲しかった。
彼女にわたしを同じように思ってほしかった。
切実で傲慢な考えです。
でも、共感できないとは言えない。
あの方法以外はなかったのだろうか。作中でも出てくる言葉です。
でも、あの時の彼女にはあの方法しか思いつかなかった。
柚木麻子先生がインタビューで、「女子高の担任をしている友人から聞いたいじめの話に対して抱いた感情を形にした」と仰っていて、わたしも現実にあったらしいこの経験を追体験した気持ちになりました。
連作なので、お話はこのクラスの中で、主人公を変えて続きます。
「ふたりでいるのに無言で読書」の、思春期時代の考え方の違いによる分かり合えなさ(大人になったらもう少しうまく付き合えるのに、それができない)、最後の恭子さんのエピソードがほろ苦さを添えています。
無印の梅干、現実のアイドルの名前。
時折差し込まれるそのはっとするような単語が、お話にさらに現実を加味するので、登場人物たちの痛みが際立ちます。
読んで損はない作品だと思います。
わたしはあの痛みも含めて大好きです。