(短編集)

極楽行き: 清談 佛々堂先生



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    初公開日(参考)2011年11月
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    短編集

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    極楽行き 《清談 佛々堂先生》 (講談社文庫)

    2011年11月15日 極楽行き 《清談 佛々堂先生》 (講談社文庫)

    すり切れたシャツに、着古したデニム、乗り回すのは古ぼけたワンボックス・カー。住所不定の流れ者にしか見えない「けったいなおっちゃん」の正体は、知る人ぞ知る超一流の風流人だった。金で買えない料理、極楽の景色、幻の植物など、四季折々の無理難題を関西一の趣味人が解いていく、「和」美術の冒険譚。(「BOOK」データベースより)




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    極楽行き: 清談 佛々堂先生の総合評価:9.75/10点レビュー 4件。Bランク


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    No.1:
    (9pt)

    本書を読めば世界が色づく

    待ってました!
    現代の数寄者、佛々堂先生が一風変わった風流を求めて全国を巡り、それに関わった人々のちょっといい話が並ぶ極上の短編集第2弾。いよいよとばかりにページをめくった。

    本書では春夏秋冬の四季をテーマに4編収められている。まず始まりはやはり春。「縁起 春 門外不出」は奈良が舞台。
    東大寺のお水取り、伊豆の韮山の氷割れの竹、利休竹など初っ端から風流が横溢する世界が繰り広げられ、佛々堂ワールドに一気に引き込まれる。

    「縁起 夏 極楽行き」では佛々堂先生は全国を駆け巡る。
    田辺に秘密の花園を見せるために仕組んだ佛々堂先生の物々交換の旅は宇都宮のサービスエリアで移動養蜂家かられんげの種を手に入れ、それを基にれんげ米コシヒカリなるれんげを鋤き込んだ米をつくる魚沼の農家からワラを仕入れ、さらにそのワラを金沢の畳床の職人と魚籠に交換し、それを福井の山中で石屋を訪れ、石と交換し、その石を松江のいま如泥と呼ばれる名工に渡して、伝説の盃と交換するという、実に愉しい行脚の旅を佛々堂先生と愉しめる贅沢な作品となっている。
    そして田辺の亡き妻が夫に見せたかった場所とは白蓮が咲き誇るとある沼だった。花開く音は田辺のみが聞いた生命の力強さの象徴だったのかもしれない。

    「縁起 秋 黄金波」は箱根の山中で植物と戯れる。
    箱根の雄大な自然は実は人の手が悠久の時を経て作った風景であり、自然が創り上げたものではないことがまず驚きだ。
    特に薄の話は実に興味深い。なるほど昔の移動手段であった馬が道中で活力を得るための餌として人為的に植えられたものだったとは。
    箱根に生育する植物を愛でるあまり、外来種を毛嫌い、在来種の保存に精を出す友樹の母知加子はその熱意が高じて人の敷地に入っては手入れのされていない草木を失敬していた。彼女の夢である自然をありのままに再現した広大な原野が欲しいという望みとその持ち主である樺島浪美子の息子の願望を一気に解決するこれしかないという案は佛々堂しか成し得ないことだっただろう。

    さて最後の短編「縁起 冬 初夢」では骨董界1年の締めくくりである納会が絡んでくる。
    いやはや世の中にはまだまだ知らぬことがあるものだと感じ入った。鳩に図画の認識能力があるとは。視覚の優れた鳩は訓練で一流の鑑定士となるのである。粋人風見龍平が娘に託した鳩は利休の真筆を長年見させて真筆と右筆の違いを見分けることを可能にした鳩だった。
    しかし利休の書状に右筆、つまり代筆が多数存在するというのも知らなかった。350通以上にも上る書状が市場に出てくるたびにその真贋が話題になっていることも。
    さらには大福帳についての薀蓄も面白い。元々は商人の帳簿で取引記録を残す物だが、それゆえに揉め事が起きた時の貴重な証拠となり、大福帳は至極大事に保管されていた。それがために生半可な用紙で破れたり記録が水で読めなくなってはいけないため、長く消えずに残る墨で気球の材料にも使われた西ノ内和紙で書かれていた。そんな日本人古来の知恵と技を自己流で学んで遺した風見龍平という人物もまた一流の職人だといえよう。


    “平成の魯山人”、佛々堂先生は今日も古びたワンボックス・カーで全国各地を駆け巡り、東に困っている人いればアドバイスを与え、西に悩んでいる人がいれば、粋な仕掛けを施していく。しかも自分も愉しみ、また消えゆく逸品を後世に遺すために。
    そんな本書は四季折々の風流を織り込んだ日本の美意識を感じさせる短編集。

    それぞれの短編が昔話をモチーフにされているのが面白い。
    「門外不出」は『かぐや姫』こと『竹取物語』を、「極楽行き」では『わらしべ長者』が、「初夢」はなんとノアの方舟で有名な『創世記』である。

    2作目ながらも全くその興趣溢れる彩り豊かな和の世界は衰えず、まさに文字で読む眼福といったところ。

    東大寺の春の一大法要、お水取りに始まり、夏は蓮の開花、秋は箱根の山中、そして一年の締めくくり冬は骨董商の納会に除夜の鐘。
    そんな四季折々の風景や祭事に織り込まれるのは正倉院で写経に使われていた円面硯、利休竹にれんげ米、如泥の盃、利休の書状、鏑木清方作の羽子板、西ノ内和紙などなど、ここには書ききれないほどの日本の技と美の結晶が隅々まで紹介され、物語を彩る。
    特に本書は利休に始まり、利休に終わる。それはやはり風流人である利休の功績ゆえだろうか。

    また前作にも負けず衰えず興味深い薀蓄が散りばめられているのが本書の素晴らしい所。
    例えば東大寺のお水取りの松明にはそのための松明山が伊賀にあること、山椒は花山椒、実山椒、青山椒、割山椒に粉山椒と花から実まで1年を通じて味覚を楽しませてくれること、水底の土中に埋まっている種子は埋土種子といい、数十年経っても日の目を見れば発芽すること、寺の鐘には黄鐘(おうしき)、双調(そうじょう)、平調(ひょうじょう)、壱越(いちこつ)、盤渉(ばんしき)と5つの音色があること、などなど。
    我々が何気なく使っている日用品や観ている景色、草木や花1つとっても実に深い世界が古来より備わっている。前述したように薄1本でさえ、歴史に裏付けされたその時代を生きた日本人の事情と知恵が由来している。そんな忘れ去られそうになる知識をトリビア、つまり役に立たない知識に風化させないためにも服部氏は佛々堂を生み出したのかもしれない。

    しかし衣服に書架、食に植物、骨董だけでなく、色んな事物に詳しく理と真を知る佛々堂の博識ぶりには毎度頭が下がる。いやこれは作者服部氏の博識ぶりでもあるわけだが、今回もまた知らない世界を見せてくれた。
    そしてこのような知識を得ることで今まで我々がいかに物を知らずに生きてきたかを痛感させられる。知識があるのと無いのとではこれほどまでに物が違って見えるのか。知らず知らず我々は無知ゆえに失礼な事や取り返しのつかないことをしているのかもしれないと思うと、恥ずかしくなる。
    そしてそんな理を知る人が確かにいるのである。そんな世界を知らなかったことがなんとも悔しいではないか。

    また本書では4編中3編に人の恋沙汰が隠し味となっている。「門外不出」では会社の上司の秘められた恋心が一連の課題に、「極楽行き」は亡くなった妻の隠された恋の話と、亡き妻が夫に託した思いが、「黄金波」ではプロポーズされた未亡人のある秘密とそれぞれの抱えた秘密や事情を佛々堂が意外な方向からアプローチし、解決する。
    そしてまた風流人たる佛佛堂もそれに乗っかって自分の欲しいものを手に入れるのである。そして表題に掲げられた縁起とはすなわち仏教用語でいう因果論を指しつつも、あることが起こる兆しと云う意味を指す。つまり佛々堂こそが縁起“者”なのである。

    さて本書では前作『清談 佛々堂先生』の1話目で登場した雑誌編集者の木島直子が登場するのだが、これは物語として輪が閉じることを暗示しているのだろうか?
    1ファンとしては筆の続く限り、このシリーズを書き継いでほしいものである。

    そして一人でも多くの読者が本書を読んでくれることを願いたい。読んだ後、身の回りの風景が1つ変わって見える事、保証しましょう。


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    Tetchy
    WHOKS60S
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    No.3:
    (5pt)

    読み始めるとやめられない

    読み始めるとやめられないです。そして、再び確認しながら二度と読み直すところもあります。善きです。
    極楽行き 《清談 佛々堂先生》 (講談社文庫)Amazon書評・レビュー:極楽行き 《清談 佛々堂先生》 (講談社文庫)より
    406277092X
    No.2:
    (5pt)

    とてもきれいな本でした。

    期待に違わずとても面白かったです。又このシリーズが、出たら買いたいです。
    極楽行き 《清談 佛々堂先生》 (講談社文庫)Amazon書評・レビュー:極楽行き 《清談 佛々堂先生》 (講談社文庫)より
    406277092X
    No.1:
    (5pt)

    面白い!!

    佛々堂先生、面白く拝見しました。服部真澄さんの他の作品とはちょっと違う。でもとても面白かったし、作者の広い見識にびっくりしました。
    極楽行き 《清談 佛々堂先生》 (講談社文庫)Amazon書評・レビュー:極楽行き 《清談 佛々堂先生》 (講談社文庫)より
    406277092X



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