わが子は殺人者

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種別
長編
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あらすじ

1961年09月01日 わが子は殺人者 (創元推理文庫)

三年前に妻が謎の自殺を遂げて以来、ジェークの生活はわびしいものとなった。夫からも息子からも愛されていた幸福な女が、なぜ自殺したのか? しかも今また、一人息子が恐ろしい事件に巻きこまれようとしている。横溢するサスペンス、緊密な構成、全編に流れる父性愛。名作『二人の妻をもつ男』と並ぶ、目眩く謎解き小説!(「BOOK」データベースより)

評判

わが子は殺人者の評価:

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わが子は殺人者の総合評価:

9.33/10点 レビュー 3件。

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No.3
(5pt)

(2024-102冊目) パトリック・クェンティン後期の切なくなる人間ミステリー

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 NYで出版社を経営する43歳のジェーク・ダルースは、3年前に妻を自殺で亡くしていた。以来、19歳の一人息子ビルとの関係はぎくしゃくしている。ある日、共同経営者のロニイ・シェルドンがイギリス出張から新妻ジェーンと義父母らを連れて帰国する。突然の結婚にジェークは驚くが、ビルがジェーンに思いを寄せ始めたところから、ジェークとロニイの関係が壊れ始める。そしてロニイが射殺体で発見されるに至り、息子のビルが容疑者として逮捕されてしまう。果たしてビルは本当にロニイを殺したのか……?
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 イギリス出身でアメリカで執筆活動をしたパトリック・クェンティンの1954年の作品『My son, The Murderer』の邦訳文庫です。
 パトリック・クェンティンは、舞台演出家ピーター・ダルースが事件に巻き込まれるミステリー〈ダルース〉シリーズで知られています。この『わが子は殺人者』はそのピーター・ダルースの兄ジェークが家族とともに事件に巻き込まれる様子が一人称で語られていきます。

 パトリック・クェンティンはリチャード・ウィルスン・ウェッブとヒュー・キャリンガム・ウィーラーの合作筆名で知られますが、1950年代に入るとヒュー・ウィーラーが単独で執筆することが多くなり、この〈ダルース〉シリーズの一冊もウィーラー単独作品です。ウィーラー単独作は、純粋に謎解きを楽しむだけではなく、主人公の心理描写に重きを置き、殺人事件によって登場人物たちの人生が崩壊していくさまを文学的に描いていく姿勢が強くなったと言われています。この『わが子は殺人者』もまさにその傾向が強く、ジェークは息子が容疑者となったことによって否が応でも家族の来し方を見つめ直さざるを得なくなります。
 そしてその見つめ直しの作業=捜査と推理の過程でジェークは、知りたくもなかった大きな秘密に突き当たってしまいます。その闇の大きさ、悲しみの深さを前にして、ジェークならずとも読者もまた、言葉を失うことになります。
 父親としての自分の目が節穴だったことにジェークは自らを強く責める思いに苛まれます。読んでいてこちらまでが実にやるせなくなってきます。そうした意味で、この推理小説は父性愛、家族愛の物語といえるでしょう。

 もちろんミステリーとしても謎解きのプロセスを大いに堪能できます。息子ビル以外にも容疑者らしい、一癖も二癖もある人物が陸続と登場し、そのひとりひとりについて、まさにこいつこそ真犯人だろうとジェークが順に追い詰めていくのですが、すんでのところで容疑が晴れてしまうのです。果てることのないかに見える追及劇の最中、読者はパトリック・クェンティンの術中にハマり続けることになり、作者に騙される心地よさが楽しめます。

 翻訳は大久保康雄による昭和36(1961)年の訳です。もちろん昭和半ばらしい古風な響きはところどころ残っていますが、それでも令和の今も十分読みやすい訳文です。つい先日もパトリック・クェンティンの『 二人の妻をもつ男 』を大久保康雄訳で大いに楽しんだところですが、クェンティン以外の作品で大久保康雄訳で読める古典ミステリーがあるなら探してみようかという気になっています。

――――――――
*全編:ロニイの妻の名前が「ジェーン」とカタカナ表記されていますが、英語原文はJeanです。つまり「ジーン」が原音に近い表記です。

*57頁:「いつでもジェーンを肉鍋と交換する」という表現が出てきますが、少し分かりにくいかもしれません。これは『旧約聖書』の出エジプト記第16章第3節にある次の言葉から取られています。
「イスラエルの人々は彼らに言った、「われわれはエジプトの地で、肉のなべのかたわらに座し、飽きるほどパンを食べていた時に、主の手にかかって死んでいたら良かった」
 つまり、「肉鍋fleshpot」は英語では「贅沢な暮らし」のアレゴリーなのですので、上述のくだりは「いつでもジーンを贅沢な暮らしの犠牲に差し出す」という意味です。

*66頁:ジョージア州に暮らす作家グエンドリン・スネイリーが「ジェーンを見たとたん」「サルオゴセモドキの下を駆け抜けてハーパース社へ乗り換えてしまう」とロニイが懸念を示します。「サルオゴセモドキ」は英語原文ではSpanish moss。日本語では最近は「サルオガセモドキ」、あるいはWikipediaによれば、「日本語の文献でもそのまま仮名書きにしたスパニッシュモス、あるいは希にこれの直訳であるスペインゴケを使う例がある」との由。いずれにしろ、日本人には知られていませんが、アメリカではSpanish mossは南部の植物というイメージがあります。ですから、グエンドリンがジョージア州という典型的な南部の人間だということをロニイはこの植物に託して表現しているわけです。

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わが子は殺人者 (創元推理文庫) Amazon書評・レビュー: わが子は殺人者 (創元推理文庫)より
4488147038
No.2
(5pt)

パトリック・クェンティン後期の切なくなる人間ミステリー

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 NYで出版社を経営する43歳のジェーク・ダルースは、3年前に妻を自殺で亡くしていた。以来、19歳の一人息子ビルとの関係はぎくしゃくしている。ある日、共同経営者のロニイ・シェルドンがイギリス出張から新妻ジェーンと義父母らを連れて帰国する。突然の結婚にジェークは驚くが、ビルがジェーンに思いを寄せ始めたところから、ジェークとロニイの関係が壊れ始める。そしてロニイが射殺体で発見されるに至り、息子のビルが容疑者として逮捕されてしまう。果たしてビルは本当にロニイを殺したのか……?
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 イギリス出身でアメリカで執筆活動をしたパトリック・クェンティンの1954年の作品『My son, The Murderer』の邦訳文庫です。
 パトリック・クェンティンは、舞台演出家ピーター・ダルースが事件に巻き込まれるミステリー〈ダルース〉シリーズで知られています。この『わが子は殺人者』はそのピーター・ダルースの兄ジェークが家族とともに事件に巻き込まれる様子が一人称で語られていきます。
わが子は殺人者 (創元推理文庫) Amazon書評・レビュー: わが子は殺人者 (創元推理文庫)より
4488147038
No.1
(5pt)

これ程の悪意は、存在するのか?

これ程の悪意を持った、人外変化は、この世に存在するのだろうか?いや、作者が、創作できたように、人の心の奥底に、こうした、妬み、嫉み、優越への飽く無き執着、その他、醜い心は、存在するのだろう。表に出ることは、稀だろうが、深く蟠っているに違いない。
 等と、哲学的になってしまう程に、この作品のモチーフは、激烈で、しかも、驚愕の真実として、逆転を演出している。これ程の心理描写を、ミステリの中で表しているものは、未だに知らない。
わが子は殺人者 (創元推理文庫) Amazon書評・レビュー: わが子は殺人者 (創元推理文庫)より
4488147038
No.0
(4pt)

人間の心の闇が浮かび上がる

パトQ得意の複雑な人間模様の中で起こる事件の果てに、人間の心の闇が浮かび上がって来るという作風のサスペンス小説。

主人公は出版社の共同経営者でインテリ。共同経営者は跡継ぎのボンボンで経営の才能は皆無だが、天才を見つけ出して来るという異能がある。今回も天才を拾ってくるが、主人公が驚いた事に本人だけでなく関係者を数人引き連れて来る。その中に愛人も混じっている。ここまでは人物紹介の感があるが、主人公の息子と愛人が関係を持つに至って、話が進行する。ここで愛人が殺される。当然容疑者は主人公の息子である。主人公は上述の通りインテリで行動派ではないのだが、息子のためにと彼なりに奮戦し、徐々に真相に近づいて行く...。

ラストで浮かび上がってくる二人の人物のエゴイズムの醜悪さの描写は圧巻。P.クェンティンが持ち味の、複雑な人間模様の中から人間心理の闇を浮かび上がらせる手法を如何なく発揮した秀作。
わが子は殺人者 (創元推理文庫) Amazon書評・レビュー: わが子は殺人者 (創元推理文庫)より
4488147038

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