蜃気楼の王国
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東郷平八郎、シーボルト、遠山の金さん、他他他。歴史上の有名人たちが目撃する、偽史、稗史の成立事情であります。 世界的スケールのあの珍説がはるばる日本へやってきたあの人の悪ふざけの思いつきだったり、いまや古典のあの小説がライバル学者への嫌がらせだったり、ゆるーく繋がった五話からなる歴史小説連作短編集。 時には政権の思惑のため、時には民衆の期待のため、正しい歴史は得てして、検証にもとづく正確な事実ではなく、こうあって欲しいという理想の真実になってしまいがち。読者の皆さんも、トンデモ歴史には御用心。 ところで、まったく偶然なのですが本書を読んでいるさなか、三笠宮崇仁親王殿下薨去の報が飛び込んでまいりました。謹んで哀悼の意を捧げます。 メディアでは親王殿下の生前の御発言をいろいろ採り上げているのですが、これがいちいち本書のテーマと合致することばかり。歴史改変への危惧が決して絵空事でないことを教えてもらえます。 印象深いものを↓に転載させていただくと、 「偽りを述べる者が愛国者と称えられ、真実を語る者が売国奴と罵られた世の中を、私は経験してきた」 世間では突飛な珍説ほど熱烈に歓迎されるもの。地道な検証がないがしろにされるんです。 話題になっているからといって、ほいほい信用なさってはいけません。 「新聞・ラジオは日本人の悪いことは言わないし、また相手の良いことは言わない。我らはこれらに惑わされてはならない」 トンデモ歴史を唱える方々は自説に都合の悪いことはおっしゃいません。 それでいて研究者を誹謗中傷することに熱心ですが、真に受けてはなりません。 「そして内実が正義の戦いでなかったからこそ、いっそう表面的には聖戦を強調せざるを得なかったのではないか」 トンデモ歴史の実態は真実の追及とはほど遠いものです。 だからこそ、表面的には歴史の真相をアピールせざるを得ないのです。 「架空な歴史—それは華やかではあるがーを信じた人たちは、また勝算なき戦争—大義名分はりっぱであったがーを始めた人たちでもあったのである」 トンデモ歴史はいかに魅力的でも、本気にするとろくなことがないという教訓です。 トンデモ歴史の危うさを知る、とっかかりによし。 | ||||
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1.漂流巌流島 東京創元社 単行本2008年 文庫本2010年 四篇収録 文庫のみ本格ミステリ作家有栖川有栖の解説あり 2.柳生十兵衛秘剣考 東京創元社 文庫本2011年 四篇収録 文芸評論家細谷正充の解説あり 3.本能寺遊戯(ゲーム) 東京創元社 単行本2013年 五編収録 4.蜃気楼の王国 光文社 単行本2014年 五編収録 というわけで本書は、2014年現在、1.の文庫化も含めると著者五冊目の本、第四短編集になります。今までの著作と同様に連作短編集の体裁をとっており、今回は題名通り「蜃気楼の王国」とその周辺の国々を巡る連作短編集なのですが、今までとは違う点もあります。どこが違うかというと…。 今までと違う点その1発売元が光文社! 1.の表題作で第二回ミステリーズ!新人賞を受賞して以来、東京創元社でその著作を出版されてきた著者ですが、本作が東京創元社以外での著作の初出版、記念すべき第一作となります。 本作は五つの短編からなっており、元々は光文社のミステリ雑誌「ジャーロ」45-49号に掲載されたものです。ちなみに今までの著作では、1.のうち表題作以外の三篇と2.の全て、3.の終わりの二編は書き下ろし、1.の表題作と3.の最初の三篇、が東京創元社のミステリ雑誌「ミステリーズ!」のそれぞれvol.13,40,42,49に掲載されています。 今までとは違う点その2全篇を通して共通のワトソン役・ホームズ役が不在! 駆け出しのシナリオライターと「勢いとアイデアと悪ノリで勝負するビデオ映画」の、しかし筋金入りのプロである、演出屋の怪しい二人組、右足のやや不自由な男装の女武者とこれまた片目の不自由な「ひどく気まぐれな」男武者(とは言わないが)の二人連れ、 蓮台野高等学校2年C組のオタク留学生といまどきのいわゆる”歴女”の端くれと一見優等生の三人組、 と今までの短編集ではそれぞれに全篇を通して共通の登場人物がいたわけですが、 流石に今回は二百年以上の長きにわたって「蜃気楼の王国」とその周辺を扱うために登場人物はほぼバラバラ状態で、 それを辛うじて結び付けているのが、「蜃気楼の王国」とその周辺の、あるいは周辺でない国々というわけです。 細谷正充さんが著者の作品を歴史ミステリと時代ミステリに分けておられますが、それに従うなら1.と3.が歴史ミステリ、2.と4.が時代ミステリというところでしょうか。 私見では、というか自分が気に入っているのは、この方の時代、または歴史、小説の活劇、特に剣戟、を「らしく」描ける点で、 それはおそらく、有栖川有栖さんによれば、「中学時代より歴史小説を通して知識を得、センスを磨き、面白いオハナシに対して非常に鼻が利くようになって」おり、「愛読していた山田風太郎、高橋克彦、隆慶一郎といった先達に導かれ」て、培われたオハナシづくりのセンスと無関係ではないでしょう。 また本書の一篇目が、第二回ミステリーズ!新人賞受賞を遡ること四年前に創元推理短編賞に投じられた「近未来を舞台にした冒険小説」と同題なのも気になるところです。勿論、本書の一篇目は冒険小説などではないのですが、元の同題の冒険小説の方も「蜃気楼の王国」が関係しているらしいので、いつかこの幻の作品も目にしてみたいものです。 | ||||
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