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【高井忍】
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蜃気楼の王国の評価:
4.00/5点 レビュー 2件。 - ランク
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トンデモ歴史の危うさを知る、とっかかりによし
今一番気になる著者の一人である高井忍さんの四番目の著書です。
世界的スケールのあの珍説がはるばる日本へやってきたあの人の悪ふざけの思いつきだったり、いまや古典のあの小説がライバル学者への嫌がらせだったり、ゆるーく繋がった五話からなる歴史小説連作短編集。
時には政権の思惑のため、時には民衆の期待のため、正しい歴史は得てして、検証にもとづく正確な事実ではなく、こうあって欲しいという理想の真実になってしまいがち。読者の皆さんも、トンデモ歴史には御用心。
ところで、まったく偶然なのですが本書を読んでいるさなか、三笠宮崇仁親王殿下薨去の報が飛び込んでまいりました。謹んで哀悼の意を捧げます。
メディアでは親王殿下の生前の御発言をいろいろ採り上げているのですが、これがいちいち本書のテーマと合致することばかり。歴史改変への危惧が決して絵空事でないことを教えてもらえます。
印象深いものを↓に転載させていただくと、
「偽りを述べる者が愛国者と称えられ、真実を語る者が売国奴と罵られた世の中を、私は経験してきた」
世間では突飛な珍説ほど熱烈に歓迎されるもの。地道な検証がないがしろにされるんです。
話題になっているからといって、ほいほい信用なさってはいけません。
「新聞・ラジオは日本人の悪いことは言わないし、また相手の良いことは言わない。我らはこれらに惑わされてはならない」
トンデモ歴史を唱える方々は自説に都合の悪いことはおっしゃいません。
それでいて研究者を誹謗中傷することに熱心ですが、真に受けてはなりません。
「そして内実が正義の戦いでなかったからこそ、いっそう表面的には聖戦を強調せざるを得なかったのではないか」
トンデモ歴史の実態は真実の追及とはほど遠いものです。
だからこそ、表面的には歴史の真相をアピールせざるを得ないのです。
「架空な歴史—それは華やかではあるがーを信じた人たちは、また勝算なき戦争—大義名分はりっぱであったがーを始めた人たちでもあったのである」
トンデモ歴史はいかに魅力的でも、本気にするとろくなことがないという教訓です。
トンデモ歴史の危うさを知る、とっかかりによし。