砂漠のゲシュペンスト



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初公開日(参考)2009年08月
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長編小説

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砂漠のゲシュペンスト〈上〉 (ハヤカワ文庫NV)

2009年08月20日 砂漠のゲシュペンスト〈上〉 (ハヤカワ文庫NV)

1991年、湾岸戦争の末期。三人の傭兵がクウェートの砂漠で戦闘機に襲われ、瀕死の状態に陥った仲間を二人が置き去りにした。そして8年後、ケルンで青果店を営むエスカーの惨殺死体が発見され、メネメンチ警視正が捜査を開始する。その二日後、女性探偵ヴェーラの事務所にバトゲという男が現われ、旧友のマーマンを探してほしいと依頼する。バトゲは、マーマンに見つけられるよりも先に彼を探し出したいと望んでいた…。 (「BOOK」データベースより)




書評・レビュー点数毎のグラフです平均点7.00pt

砂漠のゲシュペンストの総合評価:6.83/10点レビュー 6件。Cランク


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全1件 1~1 1/1ページ
No.1:
(7pt)

一皮むけたシェッツィング

『深海のYrr』でミステリ界の話題を攫ったフランク・シェッツィングは第1作は歴史サスペンス、2作目はコージー・ミステリと作風をガラリと変えてきたが、邦訳最新作で実質3作目となる本書は女探偵を主人公にした正々堂々たるミステリ。湾岸戦争の怨念の正体を追う探偵物にして、本格ミステリ風のサプライズまで備えた作品となっている。

ケルンで起きた拷問の末の殺人事件が91年に起きた湾岸戦争で仲間に置き去りにされたスナイパーの復讐劇の始まりのように思わされる導入部。これに纏わって当初は謎めいた捜索願が女探偵の許へ依頼されるという形を取っている。
しかしこの謎は上巻の220ページ弱のあたりで早々に明かされる。

しかし冒頭のプロローグから連想されるプロットに反して、ヴェーラの捜査が進むに連れて、登場人物はどんどん増えていく。お宝に関わった3人以外にも外人部隊、それもZEROと呼ばれる精鋭たちで構成された部隊に所属していた戦争の亡霊たちが次々と事件に関わっていく。

そして復讐者と思われたマーマンも実は湾岸戦争時代の類い稀なる残忍さと拷問の技量を備えたイェンス・ルーボルトの標的である事が解り、物語は混迷を極める。

その混迷は下巻の242ページでようやくすっと霧が晴れるように消失する。

そして本書ではプロットのみではなく、登場人物の描写力も格段に良くなっている。今までは平板でプロトタイプ的な登場人物ばかりで、物語が上滑りしているように感じられたのがシェッツィングの欠点であったが、本書では登場人物の過去が因果となる性格形成をプロファイリングで説明するという手法を取っているからだろうか、なかなか厚みがあった。

ヴェーラの依頼人バトゲはヴェーラのガードを解きほぐす魅力を備えており、また謎めいた物腰がなかなか興味をそそる。

そして災厄の根源ルーボルトも怪物として描かれているが、単純に人智の及ばない怪人物として描かず、彼がなぜ怪物となったのかを生い立ちから語ることで、創造上の人物からどこか現実的にいる人物に感じられるようになっている。

その中でもやはり最も印象に残る人物は主人公である女探偵ヴェーラ・ジェミニだろう。最初はコンピュータに精通した、活きのいい気の強い女性と典型的な女探偵像で語られ、実に画一的な印象を受けたが、下巻、依頼人のバトゲにとうとう身体を許すようになって回想される彼女の結婚生活の失敗のエピソードで彼女の人物像に厚みが出てくる。
かつて同じ警察の鑑識員として働いていた元夫カールと離婚に至るまでに受けた彼女の肉体的、精神的苦痛と残る傷痕。そこで吐露されるヴェーラの男性観がなかなかに鋭く、身につまされる点もあった。カールの、男が社会で気を張って頑張らざるを得ないがために陥った自我の崩壊が理解できるだけに痛い。このエピソードでヴェーラの貌がようやく見えた。

さらに個人的にはほんの少ししか登場しなかったが軍隊時代のルーボルトの上官であったシュテファン・ハルムが印象に残った。こういう端役の人物に深みを感じるようなことは今まで彼の作品を読んで、初めてのことだ。

しかしそれに反して警察の面々は戯画化されたように書かれている。この凄惨な事件を任されたメネメンチやその部下クランツのやり取りは、残忍な事件を語る物語に挟まれる笑劇のようである。特にメネメンチは独身である事を実に悔やんでおり、前回読んだキュッパーもまた長く付き合っていた恋人との別れに愚痴を連ねていた。
シェッツィングはどうも警察官を女々しい人物と描く傾向があるようだ。それは権威的存在である警察官を読者のレベルまで引き下げる事で親しみを持ったキャラクターにしているのかもしれないし、黄金期の作家たちがよくやっていたように、権威を貶める事で読者の溜飲を下げているのかもしれない。

そうそうキュッパーと云えば、本作でカメオ出演しており、プロファイリングを披露する。『グルメ警部キュッパー』を読んだ時はそんなことしたかいな?と首を傾げるような感じではあるのだが、ケルンを舞台にして作品を著す著者にしてみればやはり警察に所属するこの2人が面識がないというのもおかしな物だと思ったのかもしれない。

本書の登場人物に共通するのは自らの存在意義への問い掛けだ。
自分が自分であることはどうやって証明できるのか?
また自分はどこから来て、どこへ行くのか?
誰かに見ていられることで自分は存在するのではないか?
そういう問い掛けを登場人物は行う。夫の暴力を克服して獲得した自分という物は果たして誰かに必要とされるのかと疑問視し、人に愛される事で自らが存在する事を解りながら、過去の結婚の過ちがトラウマとなり、一歩踏み出せない主人公ヴェーラを筆頭に、厳格な父親に育てられる事で、自分が幼少の頃にされた仕打ちを部下に強いる事で父親の翳を克服しようとするルーボルト、名前を変え、異国に隠れてルーボルトという驚異に怯えて暮し、あえて自らの存在を殺そうと務めるマーマン。現実世界に愛想を尽かし、仮想空間に真実を求めるマーマンの妹ニコラ、などなど。
最後にルーボルトが演説する、メディアに見られてこそ、事件は事件となり、存在は存在として認識されるという言葉は、名前ではなく、エンジニア、運転手、スナイパーと役職だけで語られるプロローグの匿名性を示唆しているようで興味深い。

匿名性と存在に対する他者の認識、そして人ならば必ず抱える自らの存在意義など、本書の主題とこれらのテーマが結び付いて、前作、前々作よりも明らかに出来映えが増している。

本書の後に1作挟んで発表されたのが『深海のYrr』である。ますます期待感が高まる。

しかしやはりこの邦題はどうにかならないだろうか?宣伝効果を煽るために「ゲシュペンスト」なる聞き慣れないドイツ語(「亡霊」という意味らしい)を冠するのはなんともダサい。
逆にドイツ語を知る人はそれほどいないのだから、自由に邦題を付けられるのだから、それを利点にしてもっとしびれるような邦題をつけてほしいものだ。


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No.5:
(5pt)

ドイツの作家の本初めてです、題名に惹かれました。

湾岸戦争のシーンから始まり、女性の探偵が主人公の話、なかなか良くできていました,上、下刊一気に読み切ってしまいました。次も読んでみたい。
砂漠のゲシュペンスト〈下〉 (ハヤカワ文庫NV)Amazon書評・レビュー:砂漠のゲシュペンスト〈下〉 (ハヤカワ文庫NV)より
4150412014
No.4:
(3pt)

ぼ、、冒険小説!?

たしか帯に冒険小説と宣伝されていたと思いますが、その気配は全くないです。
冒険というよりかは復讐劇という方が正しい・・かな?
もしも他のフランク・シェッツィングの本を読んだことがあるなら少々物足りなく感じるかもしれないです。
しかし・・この作品のなかには過去に出版された作品に出てくる人が出てくるので、マニアには必見です。
砂漠のゲシュペンスト〈上〉 (ハヤカワ文庫NV)Amazon書評・レビュー:砂漠のゲシュペンスト〈上〉 (ハヤカワ文庫NV)より
4150412006
No.3:
(3pt)

口上に偽り!?

話の発端が単にクウエートの砂漠なだけで、全然冒険物とは
違うジャンルだろう? 作者自身 違う意図で本書を
書いたことは明白で、後書きにもあるように、湾岸戦争
(イラク戦争よりはるか前)でのメディアのあり方に
ついて一言物申したい、というのが本筋の他に結構な
ページを割かれている。マア、主人公の女探偵も
見せられている物と、現実が実は違うものであると、
思い当たって、犯人の正体に行き着くんだが...
翻訳のせいもあるのか、ないのか、えらい高飛車な
感じで、最後まで好意を持てなかった。
話の方も、ところどころに矛盾がみられて痛い。
たとえば、クラブ経営の男が、なんで危険を犯してまで
わざわざ探偵の新聞広告に反応したのか?金が必要なら
もう一方の方を強請ったほうがよっぽど、簡単に
金になったと思うんだが...
犯人の正体も上巻まではわからなかったが、登場人物も
それほど多くないので、下巻に入ってだいたい察しが
つく。もっとも作者もあんまり謎解きに重きを置いている
とは思えない。
本書を<冒険サスペンス>にしたかったら、復讐犯を
主人公に据えた物語にした方が、よほど面白い
物語になったと思うのだが。。。置き去りにされた砂漠から
如何に脱出して、復讐の為に祖国に舞い戻ったのか。。。
わくわくするなぁ。
それから、本の帯に第三弾とかかれていたので、てっきり
<深海の..>の後の最新作と思ったのだが、実は7年も前の
作品だった。第三弾というのは日本での発売順。
後書き読まない方が悪いのか?
それから翻訳に関してだが、誰が喋っているのか分かりづらい
箇所があるし、文面から情景を思い浮かべられない箇所も
あり、もうすこし読者が理解しやすい配慮欲しい。
(例えば下巻のP56−P57この女王の像は
いったどんな格好なのか?それにどう縛り付けられているのか?
云々)

面白く無いわけではないんだが、騙された様な感覚が
抜けず、(特に冒険!のうたい文句)評価も低くなってしまう。
砂漠のゲシュペンスト〈上〉 (ハヤカワ文庫NV)Amazon書評・レビュー:砂漠のゲシュペンスト〈上〉 (ハヤカワ文庫NV)より
4150412006
No.2:
(3pt)

ネット批判として読むと面白いかも(でも賛成はしないが)

上巻の展開がまだろっこしく、また、主人公の女性探偵に感情移入もできなかったせいか、なかなか読み進めなかったが、下巻は打って変わってスリリングな展開に。

ただ、犯人については、うすうす感じてたとおりで意外性がないが、この小説は謎解きがメインというよりは、ミステリ小説の形式をとった現代社会批判、特にメディア、インターネット社会批判なのかもしれない。

この小説が書かれた90年代後半とは比較にならないぐらいネット社会が進み、著者が言うような現実とヴァーチャルの境目がわからなくなった現代人ということは、もっと顕著になったようにも思うが、そもそも現実とヴァーチャルというようにインターネット社会をとらえる方がおかしいのではないか。それも一つの社会の現実というべきか、あるいは、現実の社会もある意味、ヴァーチャルなものというべきか。

小説としては、この本の前に翻訳された2作にはかなわないと思うが、著者の問題意識は、なかなか鋭い。
砂漠のゲシュペンスト〈下〉 (ハヤカワ文庫NV)Amazon書評・レビュー:砂漠のゲシュペンスト〈下〉 (ハヤカワ文庫NV)より
4150412014
No.1:
(3pt)

前半の展開は物足りないが...

前作『深海のYrr』や『黒のトイフェル』がなかなか面白かったので、こちらも期待して読み始めた。

今回の舞台設定は現代(といっても1990年代後半のドイツ)。湾岸戦争でのある事件をきっかけに女性の私立探偵が残虐な殺人事件に巻き込まれる。

湾岸戦争と傭兵部隊の関係なんて興味深い話なんだけど、上巻ではあまり話が発展しないので、ちょっとやきもきする。特に女性探偵と依頼人の関係もよく分からない。

下巻の盛り上がりに期待したい。
砂漠のゲシュペンスト〈上〉 (ハヤカワ文庫NV)Amazon書評・レビュー:砂漠のゲシュペンスト〈上〉 (ハヤカワ文庫NV)より
4150412006



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