双生児
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あらすじ
1999年英国、著名な歴史ノンフィクション作家スチュワート・グラットンのもとに、第二次世界大戦中に活躍した空軍大尉J・L・ソウヤーの回顧録のコピーが持ちこまれる。グラットンは、次作の題材として、第二次大戦中の英国首相ウィンストン・チャーチルの回顧録のなかで記されている疑義―英空軍爆撃機操縦士でありながら、同時に良心的兵役拒否者であるソウヤーなる人物(いったい、そんなことが可能なのか?)―に興味をもっており、雑誌に情報提供を求める広告を出していた。ソウヤーの回顧録を提供した女性アンジェラ・チッパートン(旧姓ソウヤー)は、自分の父親は第二次大戦中、爆撃機操縦士を務めていたと言う。果たして、彼女の父親はほんとうにグラットンの探しているソウヤーなのだろうか?作家の棲む現実から幕を開けた物語は、ジャックとジョーという同じイニシャル(J)をもった二人の男を語り手に、分岐したそれぞれの歴史の迷宮をひたすら彷徨していく…。稀代の物語の魔術師プリーストが、SF、ミステリにおける技巧を縦横無尽に駆使して書き上げた“もっとも完成された小説”。英国SF協会賞/アーサー・C・クラーク賞受賞作。(「BOOK」データベースより)
外部リンク
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評判
双生児の評価:
7.00/10点 レビュー 1件。 B ランク
双生児の総合評価:
8.38/10点 レビュー 13件。
感想一覧
サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
Amazonレビュー
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第二次世界大戦期を扱うノンフィクション作家として知られるスチュワート・グラットンが、ダービシャー州バクストンの書店で新作のサイン会を行っているところへ一人の女性が現れた。
アンジェラと名乗ったその女性は、サインが主目的ではなく、スチュワートが出している広告が興味を惹いたらしい。
彼は、チャーチルの回顧録の中に見つけ出した人物、ソウヤー空軍大尉についての情報を求めて雑誌などに広告を出していたのだ。
回顧録の記述によれば、ソウヤーは良心的兵役拒否者であると同時に、空軍大尉でもあったのだが、そんなことがあり得るのだろうか。
アンジェラの旧姓はソウヤーであり、亡父の遺した戦時の体験記がスチュワートにもたらされるのだが・・・
アンジェラの父、J.L.ソウヤー氏の体験記は、仕官前の青年時代から始まっており、そこで双子であることと片割れのイニシャルもJ.L.であることが明かされ、早急に核心に迫るのかと思うと、かなり裏切られることになる。
体験記は、1941年5月10日のハンブルク爆撃の帰途で撃墜されたソウヤーが、外傷とともに記憶障害を患ったため、時間を追って書かれてはおらず、また、二人のソウヤーの視点が出てくるため、相当に混乱させられるが、その混乱が本書の醍醐味。
ソウヤー兄弟は、性格は異なるものの、二人とも同じ大学のボート部に所属しており、1936年のベルリンオリンピックに揃って出場して三位に入賞し、ルドルフ・ヘスその人から銅メダルを授与される。
ドイツの副総統であるヘスは、和平交渉のため1941年5月10日、強行的な夜間飛行でイギリスへ渡ったが、今でも替え玉説などか云々されていて、この歴史上の人物を巻末に至るまで巧みに活用している。
そもそも、スチュワートがソウヤー空軍大尉に興味をもったきっかけは、自分自身の生年月日である1941年5月10日が奇しくも英独戦争の終結した日であることからなのだが、フィクション部分も含めて全てが「1941年5月10日に何があったのか?」という謎に収束されていく展開の技巧性は見事の一言。
また、謎を追っているはずのスチュワート自身が謎の核心であることに気付いた時は、慄然とさせられた。
プリーストの他の作品、特に「奇術師」との類似性は多いが、様々な仕掛けの多さでは本作に軍配。
SF関連の賞も受賞しているが、読み解く愉しさが感じられる作品でもあり、本邦ではミステリとしての評価が高いのも頷ける。