虹の谷の五月

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評判

虹の谷の五月の評価:

4.08/5点 レビュー 36件。 B ランク

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平均点4.08pt

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全41件 41〜41 3/3ページ
No.1
(5pt)

ジャピーノの少年トシオの成長を、周囲の人の様々な死を通して描く直木賞受賞作

フィリピンのガルソボンガの村に、日本人画家と結婚して金持ちになったシルビアが帰ってきた。それが村に様々な軋みを起こす。シルビアの「日本に養女を迎えたい」という言葉に夢を託し翻弄される寒村の少女達。理想の国土を望む熱血漢のラモンとその恋人のトニア、トシオの育ての親で元抗日戦士のガブリエル爺さん、金まみれの首長チャペス、虹の谷に一人住む戦士ホセ・マンガハス。彼の母で老いて身動きの出来ないリベルタ婆さん。 小さな村で繰り広げられる首長の選挙戦で、ラモンは現役のチャペスに挑む。彼に想いを寄せるトニアとの恋は実を結ぶのか。人の心を動かす金の匂い。様々な人々の欲望が熱い大地に繰り広げるドラマを、船戸はいつに無く優しく描く。 同じ作者の『龍神町龍神三番地』については、その娯楽色をめぐって読者の評価は分かれたようだが、船戸の作品に共通して見られる黙示録的な終わり方は今回も変わらない。ただ、舞台が日本でないことと、貧しい村やマンガハスが住むジャングルの描写は話に広がりを生んでいる。過去の船戸作品に見られた、皆殺しがもたらす虚無感が幾分抑えられ、希望がかすかに見える点は受け容れられやすいだろう。 しかし、直木賞受賞作だからと気軽に手を出した人は、船戸が垣間見せる世界の真実にたじろぐのではないだろうか。そうは言っても、この本は彼の作品の中では『蝦夷地別件』や『猛き箱舟』『山猫の夏』『炎流れる彼方』ほどに衝撃的ではない。 この作品でも、過去に発表された中東を舞台にした作品同様、その地で何年か生活をしなければ絶対描けない汗や食べ物、流れる血の臭いは十二分に溢れている。受賞を期に、普通の日本人が、船戸の様々な作品を通じて世界を直視するようになれば幸いだ。彼の本で幸せな結末を望むのは無理だと分っていても、作品が出るたびに読んでしまうのは、何よりも船戸が見せる世界のリアリティのせいだろう。
虹の谷の五月 Amazon書評・レビュー: 虹の谷の五月より
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