死都日本
評判
死都日本の評価:
4.20/5点 レビュー 132件。 A ランク
Amazonレビュー一覧
Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全356件 201〜220 11/18ページ
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死都日本の評価:
4.20/5点 レビュー 132件。 A ランク
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小説の詳細ページを閲覧すると、ここに履歴が表示されます。最近閲覧した小説詳細ページへ簡単に戻る事が出来ます。
に巨大噴火、南九州は火砕流に飲み込まれて瞬時に
壊滅し、本州でも大量の降灰で交通・ライフラインが
途絶、日本国は一日にして存亡の危機に瀕する。
これが本書の想定であるが、過去の記録に照らせば
決して絵空事ではない。2014年の神戸大学の発表
によると、本書の想定と同じ火山噴火指数7の
「破局噴火」が100年以内に九州で起きる確率は
1%、その場合は本州全域が厚さ10cm以上の
火山灰に覆われ、最大で1億2千万人の生活不能者
(実質的には死者)が生じるとされる。約9万年前
の阿蘇山噴火はさらに大きく、富士山宝永噴火の
1000倍の量のマグマを放出、火砕流は海を渡って
山口県に上陸し、北海道東部にまで15cmの火山灰
を降らせた。他にも本書では、古今東西の噴火の
記録を引用して、その想定の現実性を強調している。
火山学者達が本書を絶賛し、そのタイトルを冠した
シンポジウムまで開催していることからも分かる通り、
本書は正確な火山学の知識に裏打ちされた
シミュレーション小説であり、「日本沈没」などの
空想小説とは一線を画する。しかもその描写の強烈さ
は「日本沈没」以上である。なぜなら後者の設定では
地盤沈下がゆっくりと進むのに対して、本書では
高さ数百メートル、幅数十キロの巨大な火砕流が
時速数百キロで爆走し、一瞬で都市を飲み込むのだ。
また後者の設定では国外脱出まで数ヶ月の猶予が
あり、かつ被害は日本に局限されるのに対して、
本書の想定する破局噴火は突発的であり、かつ
世界的な寒冷化による食糧危機と政情不安を招来
するからだ。(事実、天明の大飢饉やフランス革命の
一因はフィンランドの火山噴火にあるらしい。)
本書の紙数の半分は、主人公の火山学者が迫り来る
火砕流をかわして日南海岸に到達するまでの決死の
ドライブの描写にあてられている。超高温の火砕流
堆積物に降り積もった火山灰の上で車が走れるのか?
という疑問は湧くが、これは小説の設定として目を
つぶらないと、戦慄すべき火山現象の目撃談が成立
しないだろう。本書の終章は、主人公が東京に飛び、
その入れ知恵を受けた首相が日本の再建策を世界に
発信するところで終わる。しかしその再建策は日本
の経済破綻を避けるための大芝居ということもあり、
極めて楽観的な内容となっている。またその前提と
して、噴火の兆候を事前に察知した政府当局が、
川内原発の核燃料抜き取り、海外からの食糧購入
予約、火山灰に耐える特殊ヘリコプターや船舶の
建造など、あらゆる対策を打つことになっている。
しかし噴火の正確な予知はできないと火山学会が
宣言している現状では、このような事前策は期待
できない。(原発の全廃ぐらいは火山と関係なく
進めるべきだが。ちなみに川内原発には過去に
少なくとも3つの火砕流が到達した可能性を
九州電力が認めている。)したがって噴火後
24時間以降の「ザ・デイ・アフター」は、本書の
想定を越えてはるかに過酷なものになるはずだ。
食糧一つとっても、陸と空の交通が途絶した中、
1億人を上回る被災者に救援物資が行き渡るとは
考えにくい。(これが前述した「1億2千万人の
生活不能者」の根拠となっているようだ。)
ともあれ、本書は災害の恐怖をあおるだけでなく、
長期的な視点に立った国土開発計画や食糧政策
の必要性、原発の危険性を指摘している点で、
バランスの取れたものとなっている。
もう一つ本書の興味深い記述は火山神伝説である。
古事記の岩戸隠れ、ヨハネの黙示録の一部、北欧
神話のラグナロク(神々の黄昏)などが破局噴火の
描写だという指摘だが、実に鋭くもっともな説だ。
岩戸隠れが冬至または日食の描写であるとする
通説では、「常夜」(長時間続く暗闇)や「狭蝿」
(フワフワと飛散する火山灰と本書では解釈)などの
記述が理解できないのである。天の岩戸遺跡がまさに
九州の火山地帯にあることも本書の説を後押しする。
九州の古名は「火の国」(後に転じて「肥の国」)
であり、一万年に一度の巨大噴火によって当地の
文明が滅びることは宿命と言わざるを得ない。
約7300年前の鬼界アカホヤ噴火では九州の縄文
文化が断絶した。食糧や資源の大量輸送に依存する
現代では、日本全体が巨大噴火によって壊滅的な
影響を受ける「火の国」となったとも言えよう。
2011年の大地震を経て日本列島の火山活動が
活発化している今、本書はより多くの人に
読まれるべき小説だと思う。