【結城昌治】
軍旗はためく下に
評判
軍旗はためく下にの評価:
5.00/5点 レビュー 7件。 B ランク
Amazonレビュー一覧
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全31件 21〜31 2/2ページ
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| ー「生きて虜囚の辱めを受けず、死して罪禍の汚名を残すこと勿れ」(「戦陣訓」)より この一行から始まる「敵前逃亡・奔敵」をはじめ、「従軍免脱」、「司令官逃避」、「敵前堂与逃亡」、「上官殺害」 の5つの話が「回想録を作るための聞き取り」と言う形で複数の元軍人達の口から語られる。 ……… ……… ……… ……… ……… 敗戦後24年以上経ち「戦友会」の出席者も減り、回想録をまとめようと言う話が出た。原稿を募ると、将校や下士官だった者の手柄話が多く、部隊の大多数を占めていた兵隊の話が殆ど欠けている。これでは、自分達の過ごしたあの青春を、次の世代の青春に伝えることにはならない、と編集委員で手分けして聞き取りをすることになった。 「私」がその中でも軍法会議で処断された戦友の話を受け持つことになったのは、戦後恩赦関係の仕事をする機会があり、軍隊内の犯罪が意外と多いことを知ったからであると言う。 そう、この5つの話は、全て「陸軍刑法に基づいて処刑された兵士」の話である。本書で語られるのは、敵と戦って死ぬのではなく、自国の軍部から見捨てられ、あるいは軽んじられた兵士達が軍法と言う名の元に死刑にされて行く話だった。 ここに書かれる「命」の何と軽い事か…。虫けら同然、と言う比喩があるが、自然界で生きる虫の方が余程ましだと思うほど下級兵士の命は軽い。 彼らに何ら特殊な思想は無い。ただ、命じられるがまま動かなければ死ぬ。動いても死ぬ。目の前の敵と飢えとの戦い。恐怖。その平凡な兵士が、ひょんな事で軍規違反に問われ処刑されて行く。本人達は、反旗を翻そうなどと思っておらず、ひたすら戦争が早く終わって内地に帰りたいと思う者ばかりなのに…。 中でも「敵前党与逃亡」の馬渊軍曹の話は、まるで芥川の「薮の中」である。処刑された証拠が一切無いにも関わらず、厚生省の名簿に名前が連名記載されていると言うだけで、遺族は不名誉を負い遺族援護を却下され、不服申立て後15年経っても全く話が前に進まない。 馬渊軍曹を知る人々を訪ねると、逃亡などとんでもない、戦死だ、と言う者あり、記載ミスだと思うと言う者あり、仲間を庇っているだけで、やはり逃亡があったと思うと言う者あり、聞けば聞くほどに真相は薮の中。 そして証拠として残っているべき書類が無いのに、厚生省に名簿があるから、遺族年金も支払われず、犯罪者として扱われたまま月日は過ぎて行く。 処刑された兵士の仲間の回想を聞き出すにつれ浮かび上がる軍上層部の腐敗。乱れた軍における軍規の雑な扱い。上官は部下を殺害しても罪に問われないのに、底辺の兵士が自分の命を守ろうとした行動は安易に裁かれ、処刑される理不尽さ。 この話は多くの資料に基づいたフィクションである事はわかっていても、極限状況下で自国の軍規により安易に死刑にされた兵士達の無念と、生き残ってなお声をあげる事をためらう元兵士の見聞きした戦場の異常と悲惨が、鮮明に見えてくる一冊だった。 2015年8月12日 19:13:59 の変更内容が競合しています: 『軍旗はためく下に』 結城昌治 中公文庫BIBRIO Kindle版 こちらで先日ご紹介があった本。 ー「生きて虜囚の辱めを受けず、死して罪禍の汚名を残すこと勿れ」(「戦陣訓」)より この一行から始まる「敵前逃亡・奔敵」をはじめ、「従軍免脱」、「司令官逃避」、「敵前堂与逃亡」、「上官殺害」 の5つの話が「回想録を作るための聞き取り」と言う形で複数の元軍人達の口から語られる。 ……… ……… ……… ……… ……… 敗戦後24年以上経ち「戦友会」の出席者も減り、回想録をまとめようと言う話が出た。原稿を募ると、将校や下士官だった者の手柄話が多く、部隊の大多数を占めていた兵隊の話が殆ど欠けている。これでは、自分達の過ごしたあの青春を、次の世代の青春に伝えることにはならない、と編集委員で手分けして聞き取りをすることになった。 「私」がその中でも軍法会議で処断された戦友の話を受け持つことになったのは、戦後恩赦関係の仕事をする機会があり、軍隊内の犯罪が意外と多いことを知ったからであると言う。 そう、この5つの話は、全て「陸軍刑法に基づいて処刑された兵士」の話である。本書で語られるのは、敵と戦って死ぬのではなく、自国の軍部から見捨てられ、あるいは軽んじられた兵士達が軍法と言う名の元に死刑にされて行く話だった。 ここに書かれる「命」の何と軽い事か…。虫けら同然、と言う比喩があるが、自然界で生きる虫の方が余程ましだと思うほど下級平常の命は軽い。 彼らに何ら特殊な思想は無い。ただ、命じられるがまま動かなければ死ぬ。動いても死ぬ。目の前の敵と飢えとの戦い。恐怖。その平凡な兵士が、ひょんな事で軍規違反に問われ処刑されて行く。本人達は、反旗を翻そうなどと思っておらず、ひたすら戦争が早く終わって内地に帰りたいと思う者ばかりなのに…。 中でも「敵前党与逃亡」の馬渊軍曹の話は、まるで芥川の「薮の中」である。処刑された証拠が一切無いにも関わらず、単に厚生省の名簿に名前が連名記載されていると言うだけで、遺族は家族の不名誉を負い異族援護を却下され、不服申立て後15年経っても全く話が前に進まない。 馬渊軍曹を知る人々を訪ねると、逃亡などとんでもない、戦死だ、と言う者あり、記載ミスだと思うと言う者あり、仲間を庇っているだけで、やはり逃亡があったと思うと言う者あり、聞けば聞くほどに真実はわからない。そして証拠として残っているべき書類が無いのに、厚生省に名簿だけがあるから、遺族年金も支払われず、犯罪者として扱われたまま月日は過ぎて行く。 前線で戦って、処刑された兵士の真相を紐解くにつれ浮かび上がる上層部の腐敗。乱れた軍における軍規の雑な扱い。上官は部下を殺害していても罪に問われないのに、底辺の兵士が自分の命を守ろうとした行動が安易に裁かれ、処刑される理不尽さ。この話は多くの資料に基づいたフィクションである事はわかっていても、極限状況で自国の軍規に余りにも安易に死刑にされた兵士達の無念が哀れでならない。 2015年8月12日 19:14:17 の変更内容が競合しています: 『軍旗はためく下に』 結城昌治 中公文庫BIBRIO Kindle版 こちらで先日ご紹介があった本。 ー「生きて虜囚の辱めを受けず、死して罪禍の汚名を残すこと勿れ」(「戦陣訓」)より この一行から始まる「敵前逃亡・奔敵」をはじめ、「従軍免脱」、「司令官逃避」、「敵前堂与逃亡」、「上官殺害」 の5つの話が「回想録を作るための聞き取り」と言う形で複数の元軍人達の口から語られる。 ……… ……… ……… ……… ……… 敗戦後24年以上経ち「戦友会」の出席者も減り、回想録をまとめようと言う話が出た。原稿を募ると、将校や下士官だった者の手柄話が多く、部隊の大多数を占めていた兵隊の話が殆ど欠けている。これでは、自分達の過ごしたあの青春を、次の世代の青春に伝えることにはならない、と編集委員で手分けして聞き取りをすることになった。 「私」がその中でも軍法会議で処断された戦友の話を受け持つことになったのは、戦後恩赦関係の仕事をする機会があり、軍隊内の犯罪が意外と多いことを知ったからであると言う。 そう、この5つの話は、全て「陸軍刑法に基づいて処刑された兵士」の話である。本書で語られるのは、敵と戦って死ぬのではなく、自国の軍部から見捨てられ、あるいは軽んじられた兵士達が軍法と言う名の元に死刑にされて行く話だった。 ここに書かれる「命」の何と軽い事か…。虫けら同然、と言う比喩があるが、自然界で生きる虫の方が余程ましだと思うほど下級平常の命は軽い。 彼らに何ら特殊な思想は無い。ただ、命じられるがまま動かなければ死ぬ。動いても死ぬ。目の前の敵と飢えとの戦い。恐怖。その平凡な兵士が、ひょんな事で軍規違反に問われ処刑されて行く。本人達は、反旗を翻そうなどと思っておらず、ひたすら戦争が早く終わって内地に帰りたいと思う者ばかりなのに…。 中でも「敵前党与逃亡」の馬渊軍曹の話は、まるで芥川の「薮の中」である。処刑された証拠が一切無いにも関わらず、単に厚生省の名簿に名前が連名記載されていると言うだけで、遺族は家族の不名誉を負い異族援護を却下され、不服申立て後15年経っても全く話が前に進まない。 馬渊軍曹を知る人々を訪ねると、逃亡などとんでもない、戦死だ、と言う者あり、記載ミスだと思うと言う者あり、仲間を庇っているだけで、やはり逃亡があったと思うと言う者あり、聞けば聞くほどに真実はわからない。そして証拠として残っているべき書類が無いのに、厚生省に名簿だけがあるから、遺族年金も支払われず、犯罪者として扱われたまま月日は過ぎて行く。 前線で戦って、処刑された兵士の真相を紐解くにつれ浮かび上がる上層部の腐敗。乱れた軍における軍規の雑な扱い。上官は部下を殺害していても罪に問われないのに、底辺の兵士が自分の命を守ろうとした行動が安易に裁かれ、処刑される理不尽さ。この話は多くの資料に基づいたフィクションである事はわかっていても、極限状況で自国の軍規に余りにも安易に死刑にされた兵士達の無念が哀れでならない。 | ||||
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| ー「生きて虜囚の辱めを受けず、死して罪禍の汚名を残すこと勿れ」(「戦陣訓」)より この一行から始まる「敵前逃亡・奔敵」をはじめ、「従軍免脱」、「司令官逃避」、「敵前堂与逃亡」、「上官殺害」 の5つの話が「回想録を作るための聞き取り」と言う形で複数の元軍人達の口から語られる。 敗戦後24年以上経ち「戦友会」の出席者も減り、回想録をまとめようと言う話が出た。原稿を募ると、将校や下士官だった者の手柄話が多く、部隊の大多数を占めていた兵隊の話が殆ど欠けている。これでは、自分達の過ごしたあの青春を、次の世代の青春に伝えることにはならない、と編集委員で手分けして聞き取りをすることになった。 「私」がその中でも軍法会議で処断された戦友の話を受け持つことになったのは、戦後恩赦関係の仕事をする機会があり、軍隊内の犯罪が意外と多いことを知ったからであると言う。 そう、この5つの話は、全て「陸軍刑法に基づいて処刑された兵士」の話である。本書で語られるのは、敵と戦って死ぬのではなく、自国の軍部から見捨てられ、あるいは軽んじられた兵士達が軍法と言う名の元に死刑にされて行く話だった。 ここに書かれる「命」の何と軽い事か。虫けら同然、と言う比喩があるが、自然界で生きる虫の方が余程ましだと思うほど下級兵士の命は軽い。 彼らに何ら特殊な思想は無い。ただ、命じられるがまま動かなければ死ぬ。動いても死ぬ。目の前の敵と飢えとの戦い。恐怖。その平凡な兵士が、ひょんな事で軍規違反に問われ処刑されて行く。本人達は、反旗を翻そうなどと思っておらず、ひたすら戦争が早く終わって内地に帰りたいと思う者ばかりなのに。 中でも「敵前党与逃亡」の馬渊軍曹の話は、まるで芥川の「薮の中」である。処刑された証拠が一切無いにも関わらず、厚生省の名簿に名前が連名記載されていると言うだけで、遺族は不名誉を負い遺族援護を却下され、不服申立て後15年経っても全く話が前に進まない。 馬渊軍曹を知る人々を訪ねると、逃亡などとんでもない、戦死だ、と言う者あり、記載ミスだと思うと言う者あり、仲間を庇っているだけで、やはり逃亡があったと思うと言う者あり、聞けば聞くほどに真相は薮の中。 そして証拠として残っているべき書類が無いのに、厚生省に名簿があるから、遺族年金も支払われず、犯罪者として扱われたまま月日は過ぎて行く。 処刑された兵士の仲間の回想を聞き出すにつれ浮かび上がる軍上層部の腐敗。乱れた軍における軍規の雑な扱い。上官は部下を殺害しても罪に問われないのに、底辺の兵士が自分の命を守ろうとした行動は安易に裁かれ、処刑される理不尽さ。 この話は多くの資料に基づいたフィクションである事はわかっていても、極限状況下で自国の軍規により安易に死刑にされた兵士達の無念と、生き残ってなお声をあげる事をためらう元兵士の見聞きした戦場の異常と悲惨が、鮮明に見えてくる一冊だった。 2015年8月12日 19:13:59 の変更内容が競合しています: 『軍旗はためく下に』 結城昌治 中公文庫BIBRIO Kindle版 こちらで先日ご紹介があった本。 ー「生きて虜囚の辱めを受けず、死して罪禍の汚名を残すこと勿れ」(「戦陣訓」)より この一行から始まる「敵前逃亡・奔敵」をはじめ、「従軍免脱」、「司令官逃避」、「敵前堂与逃亡」、「上官殺害」 の5つの話が「回想録を作るための聞き取り」と言う形で複数の元軍人達の口から語られる。 敗戦後24年以上経ち「戦友会」の出席者も減り、回想録をまとめようと言う話が出た。原稿を募ると、将校や下士官だった者の手柄話が多く、部隊の大多数を占めていた兵隊の話が殆ど欠けている。これでは、自分達の過ごしたあの青春を、次の世代の青春に伝えることにはならない、と編集委員で手分けして聞き取りをすることになった。 「私」がその中でも軍法会議で処断された戦友の話を受け持つことになったのは、戦後恩赦関係の仕事をする機会があり、軍隊内の犯罪が意外と多いことを知ったからであると言う。 そう、この5つの話は、全て「陸軍刑法に基づいて処刑された兵士」の話である。本書で語られるのは、敵と戦って死ぬのではなく、自国の軍部から見捨てられ、あるいは軽んじられた兵士達が軍法と言う名の元に死刑にされて行く話だった。 ここに書かれる「命」の何と軽い事か。虫けら同然、と言う比喩があるが、自然界で生きる虫の方が余程ましだと思うほど下級平常の命は軽い。 彼らに何ら特殊な思想は無い。ただ、命じられるがまま動かなければ死ぬ。動いても死ぬ。目の前の敵と飢えとの戦い。恐怖。その平凡な兵士が、ひょんな事で軍規違反に問われ処刑されて行く。本人達は、反旗を翻そうなどと思っておらず、ひたすら戦争が早く終わって内地に帰りたいと思う者ばかりなのに。 中でも「敵前党与逃亡」の馬渊軍曹の話は、まるで芥川の「薮の中」である。処刑された証拠が一切無いにも関わらず、単に厚生省の名簿に名前が連名記載されていると言うだけで、遺族は家族の不名誉を負い異族援護を却下され、不服申立て後15年経っても全く話が前に進まない。 馬渊軍曹を知る人々を訪ねると、逃亡などとんでもない、戦死だ、と言う者あり、記載ミスだと思うと言う者あり、仲間を庇っているだけで、やはり逃亡があったと思うと言う者あり、聞けば聞くほどに真実はわからない。そして証拠として残っているべき書類が無いのに、厚生省に名簿だけがあるから、遺族年金も支払われず、犯罪者として扱われたまま月日は過ぎて行く。 前線で戦って、処刑された兵士の真相を紐解くにつれ浮かび上がる上層部の腐敗。乱れた軍における軍規の雑な扱い。上官は部下を殺害していても罪に問われないのに、底辺の兵士が自分の命を守ろうとした行動が安易に裁かれ、処刑される理不尽さ。この話は多くの資料に基づいたフィクションである事はわかっていても、極限状況で自国の軍規に余りにも安易に死刑にされた兵士達の無念が哀れでならない。 2015年8月12日 19:14:17 の変更内容が競合しています: 『軍旗はためく下に』 結城昌治 中公文庫BIBRIO Kindle版 こちらで先日ご紹介があった本。 ー「生きて虜囚の辱めを受けず、死して罪禍の汚名を残すこと勿れ」(「戦陣訓」)より この一行から始まる「敵前逃亡・奔敵」をはじめ、「従軍免脱」、「司令官逃避」、「敵前堂与逃亡」、「上官殺害」 の5つの話が「回想録を作るための聞き取り」と言う形で複数の元軍人達の口から語られる。 敗戦後24年以上経ち「戦友会」の出席者も減り、回想録をまとめようと言う話が出た。原稿を募ると、将校や下士官だった者の手柄話が多く、部隊の大多数を占めていた兵隊の話が殆ど欠けている。これでは、自分達の過ごしたあの青春を、次の世代の青春に伝えることにはならない、と編集委員で手分けして聞き取りをすることになった。 「私」がその中でも軍法会議で処断された戦友の話を受け持つことになったのは、戦後恩赦関係の仕事をする機会があり、軍隊内の犯罪が意外と多いことを知ったからであると言う。 そう、この5つの話は、全て「陸軍刑法に基づいて処刑された兵士」の話である。本書で語られるのは、敵と戦って死ぬのではなく、自国の軍部から見捨てられ、あるいは軽んじられた兵士達が軍法と言う名の元に死刑にされて行く話だった。 ここに書かれる「命」の何と軽い事か。虫けら同然、と言う比喩があるが、自然界で生きる虫の方が余程ましだと思うほど下級平常の命は軽い。 彼らに何ら特殊な思想は無い。ただ、命じられるがまま動かなければ死ぬ。動いても死ぬ。目の前の敵と飢えとの戦い。恐怖。その平凡な兵士が、ひょんな事で軍規違反に問われ処刑されて行く。本人達は、反旗を翻そうなどと思っておらず、ひたすら戦争が早く終わって内地に帰りたいと思う者ばかりなのに。 中でも「敵前党与逃亡」の馬渊軍曹の話は、まるで芥川の「薮の中」である。処刑された証拠が一切無いにも関わらず、単に厚生省の名簿に名前が連名記載されていると言うだけで、遺族は家族の不名誉を負い異族援護を却下され、不服申立て後15年経っても全く話が前に進まない。 馬渊軍曹を知る人々を訪ねると、逃亡などとんでもない、戦死だ、と言う者あり、記載ミスだと思うと言う者あり、仲間を庇っているだけで、やはり逃亡があったと思うと言う者あり、聞けば聞くほどに真実はわからない。そして証拠として残っているべき書類が無いのに、厚生省に名簿だけがあるから、遺族年金も支払われず、犯罪者として扱われたまま月日は過ぎて行く。 前線で戦って、処刑された兵士の真相を紐解くにつれ浮かび上がる上層部の腐敗。乱れた軍における軍規の雑な扱い。上官は部下を殺害していても罪に問われないのに、底辺の兵士が自分の命を守ろうとした行動が安易に裁かれ、処刑される理不尽さ。この話は多くの資料に基づいたフィクションである事はわかっていても、極限状況で自国の軍規に余りにも安易に死刑にされた兵士達の無念が哀れでならない。 | ||||
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| ー「生きて虜囚の辱めを受けず、死して罪禍の汚名を残すこと勿れ」(「戦陣訓」)より この一行から始まる「敵前逃亡・奔敵」をはじめ、「従軍免脱」、「司令官逃避」、「敵前堂与逃亡」、「上官殺害」 の5つの話が「回想録を作るための聞き取り」と言う形で複数の元軍人達の口から語られる。 敗戦後24年以上経ち「戦友会」の出席者も減り、回想録をまとめようと言う話が出た。原稿を募ると、将校や下士官だった者の手柄話が多く、部隊の大多数を占めていた兵隊の話が殆ど欠けている。これでは、自分達の過ごしたあの青春を、次の世代の青春に伝えることにはならない、と編集委員で手分けして聞き取りをすることになった。 「私」がその中でも軍法会議で処断された戦友の話を受け持つことになったのは、戦後恩赦関係の仕事をする機会があり、軍隊内の犯罪が意外と多いことを知ったからであると言う。 そう、この5つの話は、全て「陸軍刑法に基づいて処刑された兵士」の話である。本書で語られるのは、敵と戦って死ぬのではなく、自国の軍部から見捨てられ、あるいは軽んじられた兵士達が軍法と言う名の元に死刑にされて行く話だった。 ここに書かれる「命」の何と軽い事か。虫けら同然、と言う比喩があるが、自然界で生きる虫の方が余程ましだと思うほど下級兵士の命は軽い。 彼らに何ら特殊な思想は無い。ただ、命じられるがまま動かなければ死ぬ。動いても死ぬ。目の前の敵と飢えとの戦い。恐怖。その平凡な兵士が、ひょんな事で軍規違反に問われ処刑されて行く。本人達は、反旗を翻そうなどと思っておらず、ひたすら戦争が早く終わって内地に帰りたいと思う者ばかりなのに。 中でも「敵前党与逃亡」の馬渊軍曹の話は、まるで芥川の「薮の中」である。処刑された証拠が一切無いにも関わらず、厚生省の名簿に名前が連名記載されていると言うだけで、遺族は不名誉を負い遺族援護を却下され、不服申立て後15年経っても全く話が前に進まない。 馬渊軍曹を知る人々を訪ねると、逃亡などとんでもない、戦死だ、と言う者あり、記載ミスだと思うと言う者あり、仲間を庇っているだけで、やはり逃亡があったと思うと言う者あり、聞けば聞くほどに真相は薮の中。 そして証拠として残っているべき書類が無いのに、厚生省に名簿があるから、遺族年金も支払われず、犯罪者として扱われたまま月日は過ぎて行く。 処刑された兵士の仲間の回想を聞き出すにつれ浮かび上がる軍上層部の腐敗。乱れた軍における軍規の雑な扱い。上官は部下を殺害しても罪に問われないのに、底辺の兵士が自分の命を守ろうとした行動は安易に裁かれ、処刑される理不尽さ。 この話は多くの資料に基づいたフィクションである事はわかっていても、極限状況下で自国の軍規により安易に死刑にされた兵士達の無念と、生き残ってなお声をあげる事をためらう元兵士の見聞きした戦場の異常と悲惨が、鮮明に見えてくる一冊だった。 2015年8月12日 19:13:59 の変更内容が競合しています: 『軍旗はためく下に』 結城昌治 中公文庫BIBRIO Kindle版 こちらで先日ご紹介があった本。 ー「生きて虜囚の辱めを受けず、死して罪禍の汚名を残すこと勿れ」(「戦陣訓」)より この一行から始まる「敵前逃亡・奔敵」をはじめ、「従軍免脱」、「司令官逃避」、「敵前堂与逃亡」、「上官殺害」 の5つの話が「回想録を作るための聞き取り」と言う形で複数の元軍人達の口から語られる。 敗戦後24年以上経ち「戦友会」の出席者も減り、回想録をまとめようと言う話が出た。原稿を募ると、将校や下士官だった者の手柄話が多く、部隊の大多数を占めていた兵隊の話が殆ど欠けている。これでは、自分達の過ごしたあの青春を、次の世代の青春に伝えることにはならない、と編集委員で手分けして聞き取りをすることになった。 「私」がその中でも軍法会議で処断された戦友の話を受け持つことになったのは、戦後恩赦関係の仕事をする機会があり、軍隊内の犯罪が意外と多いことを知ったからであると言う。 そう、この5つの話は、全て「陸軍刑法に基づいて処刑された兵士」の話である。本書で語られるのは、敵と戦って死ぬのではなく、自国の軍部から見捨てられ、あるいは軽んじられた兵士達が軍法と言う名の元に死刑にされて行く話だった。 ここに書かれる「命」の何と軽い事か。虫けら同然、と言う比喩があるが、自然界で生きる虫の方が余程ましだと思うほど下級平常の命は軽い。 彼らに何ら特殊な思想は無い。ただ、命じられるがまま動かなければ死ぬ。動いても死ぬ。目の前の敵と飢えとの戦い。恐怖。その平凡な兵士が、ひょんな事で軍規違反に問われ処刑されて行く。本人達は、反旗を翻そうなどと思っておらず、ひたすら戦争が早く終わって内地に帰りたいと思う者ばかりなのに。 中でも「敵前党与逃亡」の馬渊軍曹の話は、まるで芥川の「薮の中」である。処刑された証拠が一切無いにも関わらず、単に厚生省の名簿に名前が連名記載されていると言うだけで、遺族は家族の不名誉を負い異族援護を却下され、不服申立て後15年経っても全く話が前に進まない。 馬渊軍曹を知る人々を訪ねると、逃亡などとんでもない、戦死だ、と言う者あり、記載ミスだと思うと言う者あり、仲間を庇っているだけで、やはり逃亡があったと思うと言う者あり、聞けば聞くほどに真実はわからない。そして証拠として残っているべき書類が無いのに、厚生省に名簿だけがあるから、遺族年金も支払われず、犯罪者として扱われたまま月日は過ぎて行く。 前線で戦って、処刑された兵士の真相を紐解くにつれ浮かび上がる上層部の腐敗。乱れた軍における軍規の雑な扱い。上官は部下を殺害していても罪に問われないのに、底辺の兵士が自分の命を守ろうとした行動が安易に裁かれ、処刑される理不尽さ。この話は多くの資料に基づいたフィクションである事はわかっていても、極限状況で自国の軍規に余りにも安易に死刑にされた兵士達の無念が哀れでならない。 2015年8月12日 19:14:17 の変更内容が競合しています: 『軍旗はためく下に』 結城昌治 中公文庫BIBRIO Kindle版 こちらで先日ご紹介があった本。 ー「生きて虜囚の辱めを受けず、死して罪禍の汚名を残すこと勿れ」(「戦陣訓」)より この一行から始まる「敵前逃亡・奔敵」をはじめ、「従軍免脱」、「司令官逃避」、「敵前堂与逃亡」、「上官殺害」 の5つの話が「回想録を作るための聞き取り」と言う形で複数の元軍人達の口から語られる。 敗戦後24年以上経ち「戦友会」の出席者も減り、回想録をまとめようと言う話が出た。原稿を募ると、将校や下士官だった者の手柄話が多く、部隊の大多数を占めていた兵隊の話が殆ど欠けている。これでは、自分達の過ごしたあの青春を、次の世代の青春に伝えることにはならない、と編集委員で手分けして聞き取りをすることになった。 「私」がその中でも軍法会議で処断された戦友の話を受け持つことになったのは、戦後恩赦関係の仕事をする機会があり、軍隊内の犯罪が意外と多いことを知ったからであると言う。 そう、この5つの話は、全て「陸軍刑法に基づいて処刑された兵士」の話である。本書で語られるのは、敵と戦って死ぬのではなく、自国の軍部から見捨てられ、あるいは軽んじられた兵士達が軍法と言う名の元に死刑にされて行く話だった。 ここに書かれる「命」の何と軽い事か。虫けら同然、と言う比喩があるが、自然界で生きる虫の方が余程ましだと思うほど下級平常の命は軽い。 彼らに何ら特殊な思想は無い。ただ、命じられるがまま動かなければ死ぬ。動いても死ぬ。目の前の敵と飢えとの戦い。恐怖。その平凡な兵士が、ひょんな事で軍規違反に問われ処刑されて行く。本人達は、反旗を翻そうなどと思っておらず、ひたすら戦争が早く終わって内地に帰りたいと思う者ばかりなのに。 中でも「敵前党与逃亡」の馬渊軍曹の話は、まるで芥川の「薮の中」である。処刑された証拠が一切無いにも関わらず、単に厚生省の名簿に名前が連名記載されていると言うだけで、遺族は家族の不名誉を負い異族援護を却下され、不服申立て後15年経っても全く話が前に進まない。 馬渊軍曹を知る人々を訪ねると、逃亡などとんでもない、戦死だ、と言う者あり、記載ミスだと思うと言う者あり、仲間を庇っているだけで、やはり逃亡があったと思うと言う者あり、聞けば聞くほどに真実はわからない。そして証拠として残っているべき書類が無いのに、厚生省に名簿だけがあるから、遺族年金も支払われず、犯罪者として扱われたまま月日は過ぎて行く。 前線で戦って、処刑された兵士の真相を紐解くにつれ浮かび上がる上層部の腐敗。乱れた軍における軍規の雑な扱い。上官は部下を殺害していても罪に問われないのに、底辺の兵士が自分の命を守ろうとした行動が安易に裁かれ、処刑される理不尽さ。この話は多くの資料に基づいたフィクションである事はわかっていても、極限状況で自国の軍規に余りにも安易に死刑にされた兵士達の無念が哀れでならない。 | ||||
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| このような非人間的暴力組織である日本帝国軍隊が滅びるのは歴史的必然であった。そして現代のアメリカ軍もいずれ死滅するであろう! | ||||
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| このような非人間的暴力組織である日本帝国軍隊が滅びるのは歴史的必然であった。そして現代のアメリカ軍もいずれ死滅するであろう! | ||||
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| このような非人間的暴力組織である日本帝国軍隊が滅びるのは歴史的必然であった。そして現代のアメリカ軍もいずれ死滅するであろう! | ||||
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| このような非人間的暴力組織である日本帝国軍隊が滅びるのは歴史的必然であった。そして現代のアメリカ軍もいずれ死滅するであろう! | ||||
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| どこにも売っていなくて(近隣地区)、アマゾンで見つかり、親も喜んでおりました。 | ||||
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この一行から始まる「敵前逃亡・奔敵」をはじめ、「従軍免脱」、「司令官逃避」、「敵前堂与逃亡」、「上官殺害」
の5つの話が「回想録を作るための聞き取り」と言う形で複数の元軍人達の口から語られる。
……… ……… ……… ……… ………
敗戦後24年以上経ち「戦友会」の出席者も減り、回想録をまとめようと言う話が出た。原稿を募ると、将校や下士官だった者の手柄話が多く、部隊の大多数を占めていた兵隊の話が殆ど欠けている。これでは、自分達の過ごしたあの青春を、次の世代の青春に伝えることにはならない、と編集委員で手分けして聞き取りをすることになった。
「私」がその中でも軍法会議で処断された戦友の話を受け持つことになったのは、戦後恩赦関係の仕事をする機会があり、軍隊内の犯罪が意外と多いことを知ったからであると言う。
そう、この5つの話は、全て「陸軍刑法に基づいて処刑された兵士」の話である。本書で語られるのは、敵と戦って死ぬのではなく、自国の軍部から見捨てられ、あるいは軽んじられた兵士達が軍法と言う名の元に死刑にされて行く話だった。
ここに書かれる「命」の何と軽い事か…。虫けら同然、と言う比喩があるが、自然界で生きる虫の方が余程ましだと思うほど下級兵士の命は軽い。
彼らに何ら特殊な思想は無い。ただ、命じられるがまま動かなければ死ぬ。動いても死ぬ。目の前の敵と飢えとの戦い。恐怖。その平凡な兵士が、ひょんな事で軍規違反に問われ処刑されて行く。本人達は、反旗を翻そうなどと思っておらず、ひたすら戦争が早く終わって内地に帰りたいと思う者ばかりなのに…。
中でも「敵前党与逃亡」の馬渊軍曹の話は、まるで芥川の「薮の中」である。処刑された証拠が一切無いにも関わらず、厚生省の名簿に名前が連名記載されていると言うだけで、遺族は不名誉を負い遺族援護を却下され、不服申立て後15年経っても全く話が前に進まない。
馬渊軍曹を知る人々を訪ねると、逃亡などとんでもない、戦死だ、と言う者あり、記載ミスだと思うと言う者あり、仲間を庇っているだけで、やはり逃亡があったと思うと言う者あり、聞けば聞くほどに真相は薮の中。
そして証拠として残っているべき書類が無いのに、厚生省に名簿があるから、遺族年金も支払われず、犯罪者として扱われたまま月日は過ぎて行く。
処刑された兵士の仲間の回想を聞き出すにつれ浮かび上がる軍上層部の腐敗。乱れた軍における軍規の雑な扱い。上官は部下を殺害しても罪に問われないのに、底辺の兵士が自分の命を守ろうとした行動は安易に裁かれ、処刑される理不尽さ。
この話は多くの資料に基づいたフィクションである事はわかっていても、極限状況下で自国の軍規により安易に死刑にされた兵士達の無念と、生き残ってなお声をあげる事をためらう元兵士の見聞きした戦場の異常と悲惨が、鮮明に見えてくる一冊だった。
2015年8月12日 19:13:59 の変更内容が競合しています:
『軍旗はためく下に』 結城昌治 中公文庫BIBRIO Kindle版
こちらで先日ご紹介があった本。
ー「生きて虜囚の辱めを受けず、死して罪禍の汚名を残すこと勿れ」(「戦陣訓」)より
この一行から始まる「敵前逃亡・奔敵」をはじめ、「従軍免脱」、「司令官逃避」、「敵前堂与逃亡」、「上官殺害」
の5つの話が「回想録を作るための聞き取り」と言う形で複数の元軍人達の口から語られる。
……… ……… ……… ……… ………
敗戦後24年以上経ち「戦友会」の出席者も減り、回想録をまとめようと言う話が出た。原稿を募ると、将校や下士官だった者の手柄話が多く、部隊の大多数を占めていた兵隊の話が殆ど欠けている。これでは、自分達の過ごしたあの青春を、次の世代の青春に伝えることにはならない、と編集委員で手分けして聞き取りをすることになった。
「私」がその中でも軍法会議で処断された戦友の話を受け持つことになったのは、戦後恩赦関係の仕事をする機会があり、軍隊内の犯罪が意外と多いことを知ったからであると言う。
そう、この5つの話は、全て「陸軍刑法に基づいて処刑された兵士」の話である。本書で語られるのは、敵と戦って死ぬのではなく、自国の軍部から見捨てられ、あるいは軽んじられた兵士達が軍法と言う名の元に死刑にされて行く話だった。
ここに書かれる「命」の何と軽い事か…。虫けら同然、と言う比喩があるが、自然界で生きる虫の方が余程ましだと思うほど下級平常の命は軽い。
彼らに何ら特殊な思想は無い。ただ、命じられるがまま動かなければ死ぬ。動いても死ぬ。目の前の敵と飢えとの戦い。恐怖。その平凡な兵士が、ひょんな事で軍規違反に問われ処刑されて行く。本人達は、反旗を翻そうなどと思っておらず、ひたすら戦争が早く終わって内地に帰りたいと思う者ばかりなのに…。
中でも「敵前党与逃亡」の馬渊軍曹の話は、まるで芥川の「薮の中」である。処刑された証拠が一切無いにも関わらず、単に厚生省の名簿に名前が連名記載されていると言うだけで、遺族は家族の不名誉を負い異族援護を却下され、不服申立て後15年経っても全く話が前に進まない。
馬渊軍曹を知る人々を訪ねると、逃亡などとんでもない、戦死だ、と言う者あり、記載ミスだと思うと言う者あり、仲間を庇っているだけで、やはり逃亡があったと思うと言う者あり、聞けば聞くほどに真実はわからない。そして証拠として残っているべき書類が無いのに、厚生省に名簿だけがあるから、遺族年金も支払われず、犯罪者として扱われたまま月日は過ぎて行く。
前線で戦って、処刑された兵士の真相を紐解くにつれ浮かび上がる上層部の腐敗。乱れた軍における軍規の雑な扱い。上官は部下を殺害していても罪に問われないのに、底辺の兵士が自分の命を守ろうとした行動が安易に裁かれ、処刑される理不尽さ。この話は多くの資料に基づいたフィクションである事はわかっていても、極限状況で自国の軍規に余りにも安易に死刑にされた兵士達の無念が哀れでならない。
2015年8月12日 19:14:17 の変更内容が競合しています:
『軍旗はためく下に』 結城昌治 中公文庫BIBRIO Kindle版
こちらで先日ご紹介があった本。
ー「生きて虜囚の辱めを受けず、死して罪禍の汚名を残すこと勿れ」(「戦陣訓」)より
この一行から始まる「敵前逃亡・奔敵」をはじめ、「従軍免脱」、「司令官逃避」、「敵前堂与逃亡」、「上官殺害」
の5つの話が「回想録を作るための聞き取り」と言う形で複数の元軍人達の口から語られる。
……… ……… ……… ……… ………
敗戦後24年以上経ち「戦友会」の出席者も減り、回想録をまとめようと言う話が出た。原稿を募ると、将校や下士官だった者の手柄話が多く、部隊の大多数を占めていた兵隊の話が殆ど欠けている。これでは、自分達の過ごしたあの青春を、次の世代の青春に伝えることにはならない、と編集委員で手分けして聞き取りをすることになった。
「私」がその中でも軍法会議で処断された戦友の話を受け持つことになったのは、戦後恩赦関係の仕事をする機会があり、軍隊内の犯罪が意外と多いことを知ったからであると言う。
そう、この5つの話は、全て「陸軍刑法に基づいて処刑された兵士」の話である。本書で語られるのは、敵と戦って死ぬのではなく、自国の軍部から見捨てられ、あるいは軽んじられた兵士達が軍法と言う名の元に死刑にされて行く話だった。
ここに書かれる「命」の何と軽い事か…。虫けら同然、と言う比喩があるが、自然界で生きる虫の方が余程ましだと思うほど下級平常の命は軽い。
彼らに何ら特殊な思想は無い。ただ、命じられるがまま動かなければ死ぬ。動いても死ぬ。目の前の敵と飢えとの戦い。恐怖。その平凡な兵士が、ひょんな事で軍規違反に問われ処刑されて行く。本人達は、反旗を翻そうなどと思っておらず、ひたすら戦争が早く終わって内地に帰りたいと思う者ばかりなのに…。
中でも「敵前党与逃亡」の馬渊軍曹の話は、まるで芥川の「薮の中」である。処刑された証拠が一切無いにも関わらず、単に厚生省の名簿に名前が連名記載されていると言うだけで、遺族は家族の不名誉を負い異族援護を却下され、不服申立て後15年経っても全く話が前に進まない。
馬渊軍曹を知る人々を訪ねると、逃亡などとんでもない、戦死だ、と言う者あり、記載ミスだと思うと言う者あり、仲間を庇っているだけで、やはり逃亡があったと思うと言う者あり、聞けば聞くほどに真実はわからない。そして証拠として残っているべき書類が無いのに、厚生省に名簿だけがあるから、遺族年金も支払われず、犯罪者として扱われたまま月日は過ぎて行く。
前線で戦って、処刑された兵士の真相を紐解くにつれ浮かび上がる上層部の腐敗。乱れた軍における軍規の雑な扱い。上官は部下を殺害していても罪に問われないのに、底辺の兵士が自分の命を守ろうとした行動が安易に裁かれ、処刑される理不尽さ。この話は多くの資料に基づいたフィクションである事はわかっていても、極限状況で自国の軍規に余りにも安易に死刑にされた兵士達の無念が哀れでならない。