動機
評判
動機の評価:
4.27/5点 レビュー 98件。 A ランク
Amazonレビュー一覧
Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全6件 1〜6 1/1ページ
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4.27/5点 レビュー 98件。 A ランク
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で、今回この短編集を読んでみたわけだが、二話目には正直没入した。殺人犯として、「もはや社会で明るく前向きに生きることなど不可能」な描写に、犯罪者でなくとも、今の日本で同じような状況に置かれている大勢の人間の姿が重なってしまったのだ。自分の人生には、もう何もない、ただ時が過ぎゆくのみという。実際、ほぼその通りだし、真面目な話ディープインパクトなみの脚力でもなければ、底辺からの逆転などありえないし、逆にそんなやつは実力ではなく運がいいだけだという重い寂寥感が当然の現実として存在している。
しかし、読後、主人公ではなく元妻の態度に、納得の共感を持ってしまい前述の気持ちが雲散霧消してしまった。世間に日々報道されるセクハラ事件、その大部分は男が加害者として報道されるが、一般の感想としては「そんなわけねーだろ」という女の悪を簡単に見逃す社会性に強い憤りは確かにある、が、主人公の行動が殺人に至ってしまっては、もはや自業自得で、夫婦関係の再構築などそりゃないだろうと強く思ってしまった。傷害で留まっていれば、まあ復縁の可能性はゼロにはならんだろうが。被害者遺族の怒りも、その線上で受け続けるのは当たり前のこととなる。
要は、この作品をもって、表からは窺い知れない犯罪加害者と被害者の実体とするのは間違っているわけだ。そこを書くなら加害者の確信の罪と、それ故の内心の開き直り、もしくは事件の忘却、それに対する遺族の絶え間ない憎しみ、諦めを主軸とすべきだろう。主人公山本は、単に自らの軽率さで人生を捨てることになったわけで、横山の他の作品にも言えることだが、主人公の生きざまをいかにも重そうにクレーンで引き上げて読者に見せるという手法が、やっぱり現実の日常で日々を過ごす人間との大きな乖離と、そこを描く能力の欠如を感じるんだよなあ。作者の気持ちのいい「主観」に筆力をもって付き合わされる感覚が、鼻につくわけよ。
もちろん小説なんだからそれでいいんだけど、それならこの世の実体に筆の力で挑んでいるという態度を読者に感じさせるべきではないね。
虚構は、それとして描くべきだ。