■スポンサードリンク


もの語る一手



新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!
【この小説が収録されている参考書籍】
もの語る一手

もの語る一手の評価: 4.50/5点 レビュー 2件。 -ランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.50pt


■スポンサードリンク


Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全2件 1~2 1/1ページ
No.2:
(4pt)

個人的には「マルチンゲールの罠」、「なれなかった人」、「女の戦い」が好きだった

将棋を巡って数々のドラマが詰まった豪華作家陣による短編集。

将棋には無数の選択肢や様々な制約、自分との闘い、奨励会という厳しい関門など、様々なドラマや見所があるが、豪華作家陣が独自の視点で将棋にまつわる短編が描かれていて楽しめた。

個人的には、以下の3つが好きだった。

葉真中顕「マルチンゲールの罠」

橋本長道「なれなかった人」

綾崎隼「女の戦い」

「マルチンゲールの罠」は、賭け将棋の真剣師を生業とする男が、将棋道場に通って賭け将棋で小遣い稼ぎをしている子どもをこらしめる話。子どもの棋力を見極めながら一局ごとに賭け金を倍にしていくのだが、最後はまさかの展開が待っていて楽しめた。

「なれなかった人」は、棋士になれなかった人の話。奨励会を年齢制限で退会後、プロ編入試験を受けて棋士になることを目指している55歳の男に、落ち目の45歳の棋士が立ちはだかる。この二人には過去に因縁があるのだが、棋士に挑戦し続ける男の生き様が見事だった。

「女の戰い」は、20歳で東大生の奨励会初段の女性が、棋士を目指して奮闘する話。女性は奨励会を退会しても女流棋士になるという逃げ道があると揶揄される中、棋士になることを夢見て棋士の高校生たちと研究会に勤しむ。
綾崎先生の別の将棋小説である「盤上に君はもういない」、「ぼくらに嘘がひとつだけ」が好きで、長瀬京介と朝比奈千明が出てきたのはファンとしても嬉しかった。

余談だが、「将棋の渡辺くん」を書いている渡辺明九段の奥様だった伊奈めぐみさんの表紙の絵も好きだった。
もの語る一手Amazon書評・レビュー:もの語る一手より
4065389542
No.1:
(5pt)

推しの先生が増えすぎて・・

まさに夢のような一冊。
あぁ、魂が宿るってこういうことなんだな、と実感しました。

将棋がテーマの作品集ですが、
全くの素人の私でも夢中にさせてくれましたよ。

伝わってきたのは
年代も立場もさまざまな人々の真剣な想い。

彼らの熱意にほだされ、葛藤に共感し、
優しさに癒されました。

実は一人の先生だけが目当てで
手にしたのですが、全編にわたり
圧倒されっぱなしでしたよ。

新たな作家を発掘できるのも
こういう企画の魅力ですが、
推しの先生が増えすぎて嬉しい悲鳴を上げそうです。

「授かり物」には家族愛の温もりを感じ、
「マルチンゲールの罠」では思わぬ勝負の行方に没頭、
「誰も読めない」では棋士の冴えに舌を巻き、
「なれなかった人」には共感がありすぎでした。

さらに、「王手馬取り」には意外な真相に唸り、
「おまえレベルの話はしてない」の深みに驚き、
「女の闘い」に刮目、
「桂跳ね」では、これぞ”もの語る一手”というのを体感しました。

やはり、瀬戸際での葛藤というのは
沁みるものですね。

迷える奨励会員の生き様や、
パッとしないプロ棋士の決断など、
主役だけでなく脇役の振舞いに至るまで魅力的。

文字通り、心をグッと掴まれました。

どの作品も素晴らしいのですが、
楽しさという点では「女の闘い」を推します。

毒のある言葉を浴びて傷ついても立ち上がり、
迷いながら突き進む主人公の魅力。
これが凄いんです!

そこに純粋な少年や、口さがない善人が
絶妙な形で関わるから、どんどんページが進みましたよ。

しかも読者の気持ちをフワリと上げてくれるラスト。
この物語の続き、出ないですかね?

最も読み易いのは間違いなく「授かり物」。
この作品は主人公の主婦と同様に、
将棋のしょの字も知らなくても大丈夫です。
すぐに物語の世界に入り込めると思います。

戦型が出てくるような作品にも、
サッと説明が入ったりするので助かりましたよ。

世界観が一転する最終話「桂跳ね」は
ハッキリ言って難読です。
難読ですが、読んでいるうちに少しずつ
情景が浮かぶようになり、終盤では
ギュっと鷲掴みにされました。

8編に共通していたのは、
繊細に選びぬかれた言葉の響き。

そういう作家さんの作品だけを
選りすぐった贅沢なアンソロジーなんですね。

おかげで極上の読書タイムとなりましたよ。

(対象年齢は13歳以上かな?)
もの語る一手Amazon書評・レビュー:もの語る一手より
4065389542

スポンサードリンク

  



新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!